関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

Musubu―本とアート : 東京―カリフォルニア―うらわ 【うらわ美術館】

先週の土曜日に うらわ美術館でコレクション交流展「Musubu―本とアート : 東京―カリフォルニア―うらわ」を観てきました。この記事を書いている時点で残り1日となってしまいましたが、面白い内容でしたのでご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 コレクション交流展「Musubu―本とアート : 東京―カリフォルニア―うらわ」

【公式サイト】
 http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p055525.html

【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅

【会期】2017年9月12日(火)~9月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。無料で観られたのも嬉しい。

さて、この展示はうらわ美術館が得意とする本に関する展示で、カルフォルニアと東京で活動するブックアーティストの作品を紹介する内容となっています。54点ほどあり、中には古い作品もありますが大半はここ数年以内に作られたものとなっていました。気になったものを一言くらいずつメモを取ったので、簡単にいくつか作品をご紹介しようと思います。

藤井敬子「アリス・B・トラクスの料理本」
これは今回のポスターにもなっている緑色の幾何学模様の本です。何処と無く草や竹林を想像するような見た目ですが、料理本のようです。非常に洗練されたデザインが好みだけど、内容伝わるかな?w

中尾あむ「きものの着付け」
こちらはジグザグに重ねて折った(つづら折り)折本で結構小さめです。中身を観るとタイトル通りの着物の着付けをイラストで描いていて、それが可愛らしい雰囲気で好み。普通の本よりもつづら折りの方が広げっぱなしにしやすいので、着付けをしながら観るにはこっちのほうが便利そうでした。

中野裕子「水茎の跡は」
こちらは2つのピラミッドを底同士でくっつけたような、菱形の容器に見える本です。どうやって中身を読むのか、先端の部分はページになっているのか、まったく想像も出来ない形でした。

佐藤真紀「半衿刺繍型紙帖」
こちらはA3くらいある大きな折本です。草花文が表されていて、タイトルから察するに刺繍の型に使うのかな? 洒脱な印象を受けるデザインが好みでした。

田口洋子「<ヨーロッパ>切手コレクション」
こちらはタイトル通りに様々な切手が並んでいる折本。切手の絵柄や色合いも洒落ていますが、本自体も仔牛の革が使われているなど豪華な印象を受けました。この展覧会で最も自分の部屋に欲しいと思ったのはこれかなw

津村明子「本所七不思議」
こちらはお菓子の箱のように見えましたが、中に小さな折本がいくつか入っていました。また、作品リストの素材欄に豆とか種とか書いてあるのが気になりましたw

ALEEXSNDER Jody「Boro Vessel:Topsy Turvy,Inside Out」
これは布で出来た本で、上記のポスターにも載っています。幾何学的なテキスタイルのような感じで、本の形はしているものの読本という訳では無さそうでしたが、発想が面白い作品です。

KOKIN Lisa「Lost in Translation」
これはフランス語の辞書のページを古新聞のように折ったものを幾つも作り、それを紐で連ねてオブジェのようにしたものです。紐を解かないと読めないし、もはや本ではありませんw しかし見た目は洒落たアクセサリーのようで面白さがありました。

KIRING Bryan「Moveable Diorama Box Book」
これは本というか箱のような形で、横から中を覗くと海に浮かぶヨットが観られるようになっていました。飛び出す絵本の要領で遠近法のようになっているのが面白く、まさに持ち運びできるジオラマといった感じです。

MUNSON Howard「The Artist's Reunion」
これは飛び出す絵本のような感じのアコーディオン型で、ピエロたちが沢山出て来る本です。かなり凝った作りになっていて見応えがあるので飾る用なのかも。

WILKES Kenneth「IN-BETWEEN」
これは六曲一隻の屏風のような形の本です。そこに抽象的な人物像が描かれていて、日本的な媒体に西洋的な雰囲気の絵となっているのが面白かったです。

ウィリアム・モリス/エドワード・バーン=ジョーンズ「ジェフリー・チョーサー作品集」
これは美術好きの間では有名かも。出版史上最も美しいと言われている豪華本で、アーツ・アンド・クラフツを提唱したウィリアム・モリスとラファエル前派に深く関わったエドワード・バーン=ジョーンズによるものです。(上記のポスターにも載っています) 装飾性が高く、様式化された草花紋で囲われた中に洗練されたフォントで書かれた文字や、神話的な挿絵など、非常に完成度の高い本となっています

リチャード・アヴェドン他 「コンヴェックス・ミラー(凸面鏡)の自画像」
こちらはレコードのような円形に自画像や文字が描かれています。これも本というよりはレコードにしか思えませんが、発想の自由さが面白かったです。


ということで、一言に本と言っても色々な形があって楽しめました。昨今は電子書籍が徐々に盛り上がってきていますが、本とは何か?と挑戦する作品や装丁の美しさ・面白さを再認識できる内容だと思います。(今回挙げたものはamazonで探しても出てこないものばかりです) もう会期がほとんど残っていませんが、ブックアートが好きな方向けの展示だと思います。



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評価




白樺派の世界展 【清春白樺美術館】 (山梨 北杜編)

1週間ほど続いた山梨北杜編も今回で最終回です。前回ご紹介した清春芸術村の中にある清春白樺美術館で「白樺派の世界展」を観てきました。この展示は既に終了していますが、恐らく常設に近い内容だと思いますのでご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 白樺派の世界展 志賀直哉コレクションを中心として 

【公式サイト】
 http://www.kiyoharu-art.com/museum/index.htm

【会場】清春白樺美術館
【最寄】長坂駅

【会期】2017年7月11日(火)~9月10日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

前々回でもご紹介しましたが、美術館の外観はこんな感じ。
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清春芸術村と同じチケットで入れます。

さて、この美術館はその名前からしても分かるように武者小路実篤や志賀直哉などが発行していた雑誌『白樺』のメンバーが創設を夢見ていたものの、幻となっていた美術館を、親交のあった吉井長三 氏が実現したものです。白樺派は文人だけでなく多くの芸術家が参加していて、梅原龍三郎や岸田劉生といった画家や、バーナード・リーチ、柳宗悦といった民藝運動にも深く関わったメンバーもいました。そして、白樺ではゴッホ、セザンヌ、ロダン等、まだ日本では知られていなかった美術を紹介するなど、日本の美術界の発展にも寄与していたようです。 その為、この美術館にはそうしたゆかりの芸術家の作品が集められ展示されていました。
 参考記事:柳宗悦展-暮らしへの眼差し (そごう美術館)

美術館の中はそれほど広くないので30分くらいで観終わりますが、大きく分けて2つに分けることができます。まずは第一展示室で、こちらは今回の企画展が開催されていました。ごく簡単にご紹介すると(出品リストを失くしてメモも取ってなかったので1ヶ月前の記憶頼りですが)企画展には梅原龍三郎(油彩数点、書簡や筆・パレットなども)、岸田劉生、椿貞雄、児島喜久雄、有島生馬といった画家メンバーの作品や、高村光太郎などの陶芸・彫刻作品などが1~2点程度ずつありました。それ以外に志賀直哉旧蔵の品々の中に尾形乾山とかもあったかな。もちろんそれらの作品も素晴らしいのですが、ちょっと驚いたのが志賀直哉や武者小路実篤、高村智恵子による絵画で、これが中々モダンな絵でよく出来た作品でした。他には「白樺」の各号が並んでいたりします。 ゴッホも小品があったように思いますが公式サイトを観ると、他にも少数ながらセザンヌやピカソといった画家やロダン、ブールデルといった彫刻家の作品もコレクションにあるようです(忘れただけでこの部屋にもあったかもw)ので、時期によってはそうした作品も観られると思います。

そしてもう1つが第二展示室のルオーコレクションです。こちらは常設展示らしく、油彩が数点と版画15点程度ありました。大半はキリストの「ミセレーレ」のモノクロ版画となっていますが、版画となっても重厚かつ厳かな雰囲気は失われておらず、画面は平坦なのにルオー独自の厚塗りの力強さと同様のものが感じられます。
 参考記事:ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
また、ここにはルオーが使っていた絵筆や絵の具なんかもありました。その他、日本人彫刻家によるルオー像やロダンの作品が数点あったと記憶しています。


ということで、それほど大きくない美術館でしたが、白樺派に関する芸術家が一堂に会するという白樺派の夢が叶えられた美術館でした。清春芸術村は色々な建物があって面白いですが、この美術館は特に見どころと言えそうです。行く前に白樺派のメンバーと紹介されていた芸術家について知っておくと、より楽しめると思います。

これで北杜編は終了です。


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評価




『頭の不思議』展 【平山郁夫シルクロード美術館 2Fカフェ】 (山梨 北杜編)

ここ4日ほど平山郁夫シルクロード美術館についてご紹介してきましたが、この美術館については今回が最後です。美術館の中にあるカフェのスペースでも「頭の不思議」という展示をやっていましたので、それも観てきました。この展示は既に終了していますが、撮影することができたので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 夏休み特別コーナー展示『頭の不思議』展

【公式サイト】
 http://www.silkroad-museum.jp/exhibition#past

【会場】平山郁夫シルクロード美術館 2Fカフェ
【最寄】甲斐小泉駅

【会期】2017年7/15(土)~8/31(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はカフェスペースの脇で開催されていたもので、古今東西の生き物の頭部の骨を集めた内容となっていました。平山郁夫の美術館で何故このような展示をやっているかというと、この美術館の理事長であり平山郁夫の息子でもある平山廉 氏は早稲田大学で古生物学を研究している教授で、特に化石爬虫類・カメ類などを専門としているそうです。その為、久慈市で発掘された化石など貴重な品もあり予想以上に見応えのある展示でした。詳しくは写真と共に展示構成に従ってご紹介していこうと思います。

展示スペースはこんな感じ。
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右側にあるのがミュージアムカフェで、左側が今回の展示スペースとなっていました。いつもここで展示をやっているわけでも無さそうですが、昨年の夏も化石関連の展示をやっていたようです。

私は時間がなくてカフェには寄りませんでしたが、カフェ「キャラバンサライ」のメニューはこんな感じ。
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飲み物とお菓子くらいしかないので、ここでお昼というわけにはいかないと思います。(ランチをするなら周辺徒歩圏内にいくつかお店があります)

そしてここからが展示内容です。

<魚類>
まずは魚類のコーナー。魚は5億年以上前のカンブリア紀からいるそうですが、当時は顎がなく歯も無かったそうです。(そうした魚は今でもヤツメウナギなどごく少数残っているようです。) 一方、サメなどはエラの一部が発達して下顎になったそうで歯も発達しています。サメの歯は抜けても何度でも生えてくるらしく、ここではサメなどの骨を見ることができました

これは現代の太平洋にいたホホジロザメの頭部
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人間の頭が丸ごと入りそうな大きな口を開けてます。鋭い歯が非常に恐ろしい。


<両生類>
続いて両生類のコーナー。両生類は魚のヒレが手足に、エラの代わりに肺が発達して進化しました。両生類の頭は平べったいという特徴があるそうで、ほとんど噛まずに丸呑みにする習性と関係していると考えられるのだとか。

これは2億2千年程前の三畳紀に存在したメトポサウルスという両生類の頭部
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聞いたこともない生物ですが、たしかに頭が平べったいのがよく分かります。

この他にも現代のサンショウウオや蛙の頭部もありましたが、いずれも立体感の少ない頭部となっていました。


<哺乳類型爬虫類>
古生代石炭紀から中生代白亜紀(3億年~1億年程前)にかけて化石が残っている「哺乳類型爬虫類」は哺乳類の先祖らしく、肉食も草食も雑食も存在したそうです。その特徴は目の後ろのこめかみの部分に1つだけ穴が空いていて、顎を動かす筋肉が付くスペースになっている点だそうで、これは人間にも共通する特徴なのだとか。しかし脳が小さく歯が何度も生え変わる点などは爬虫類的と言えるようです。

これは6600年程前(白亜紀)のシモスクスという絶滅した爬虫類のワニの一種
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植物を主食とするワニだったそうで水に入らず地上で暮らしていたのだとか。顔も短いしワニのイメージと全く違うような…。なお、この骨は日本初公開ということでこの展示でも一押しされていました。


<恐竜>
続いて、みんな大好き恐竜のコーナー。恐竜は爬虫類の仲間でもあり鳥類の祖先とも考えられています。最近では多くの恐竜が羽毛が生えていたことが明らかになってきている等、私の子供の頃に比べてイメージも変わりつつあります。

こちらは7000万年程前(白亜紀)のプロトケラトプスという恐竜。
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角のない角竜類で、トリケラトプスの祖先だそうです。くちばしみたいな口は鳥に似てるかも。後ろの襟飾りは仲間とのコミュニケーションに使われたと考えられているそうです。

こちらは1億5000万年程前(ジュラ紀)のステゴサウルス。
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意外と小さくて驚き。頭だけ観ると鳥っぽい感じも受けます。

近くにはジュラシックパークで有名になったヴェロキラプトルの頭部などもありました。

これは9000万年程前(白亜紀)の頃の地層から見つかった琥珀。
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こんな大きな琥珀を観るのは初めてです。NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」でも有名になった久慈市で取れた琥珀のようです。水に浸しているのは劣化防止の為とのこと。


<鳥類>
鳥類はジュラ紀(約1億5000万年前)の始祖鳥から始まったとされてきましたが、最近の研究ではそれより古い約1億6000万年前にもほとんど同じ特徴の生物がいたのが分かっているようです。白亜紀には既に現在と同じくらい多様化していたのだとか。

これは1万年程前のニュージーランドのモア
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ダチョウの一種で、飛べなくなるという進化を遂げましたが、人間によって住む所を奪われる等して絶滅してしまいました。


<哺乳類>
哺乳類は意外と歴史が古く、最古の恐竜やワニが現れた三畳紀の終わり(2億2000万年前頃)に出現しました。当時はハツカネズミくらいの小さな生き物でだったそうで、特徴としては体毛で覆われていること、母乳で子供を育てること、歯が1度だけ生え変わること、脳が大きいこと、耳の構造が複雑なことなどがあげられるそうです。恐竜の絶滅によって、急速に多様化・大型化の進化を遂げました。

これは現代のコアラ。
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可愛さのかけらも残っていないw

これは現代のインドネシアに住むバビルサというイノシシの一種の雄。
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この変わった牙は、曲がった牙を持つ雄ほどモテるという傾向から進化したと考えられるようです。もはや武器になってないし頭に突き刺さりそうw

こちらは現代のカピバラ
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カピバラはげっ歯類らしい顔をしているのが骨だけになっても分かるのが面白い

こちらは2万年程前のサーベルタイガー
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何と言っても2本の牙が特徴的で、一目で分かります。この展示の中でも最もカッコイイ


<大型哺乳類>
最後は大型の哺乳類の骨が並ぶコーナー。象やイルカなどの骨がありました。

こちらは現代のエゾシカの雄。
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角は喧嘩の道具であり雌を集める仕掛けでもあるそうです。非常に立派ですが、繁殖期が終わると抜け落ちることもあるというのが驚き。

こちらは現代のアフリカのシロサイ。
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角は毛と同じタンパク質でできているので骨としては残らないのだとか。角のあった場所はザラザラした感じになっています。

こちらは現代のアフリカゾウ
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遠くからでも一目でわかる形です。頭蓋骨もかなり大きくて重そう。

他にもキリンやアジア象などもありました。

最後にこちらは30万年ほど前の北京原人の頭部。
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原人だけあって頭が小さめ。他にもネアンデルタール人やオラウータンなどもあり、比較して観ることができました。


ということで、思いがけない展示でしたが興味深く面白い内容となっていました。既に終了してしまいましたが、昨年の夏も同様の展示があったらしいので今後の夏も似た企画が行われるかどうか、チェックしてみるのも良いかもしれません。


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評価




雲母 Kira 平山郁夫とシルクロードのガラス 【平山郁夫シルクロード美術館】 (山梨 北杜編)

前回に引き続き、平山郁夫シルクロード美術館についてです。今回は特別展として開催されていた『雲母 Kira 平山郁夫とシルクロードのガラス』についてです。この記事を書いている時点で最終日になってしまいましたが、この展示も撮影できたので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 夏期 特別企画展 『雲母 Kira 平山郁夫とシルクロードのガラス』 

【公式サイト】
 http://www.silkroad-museum.jp/exhibition#ex03

【会場】平山郁夫シルクロード美術館
【最寄】甲斐小泉駅(山梨県)

【会期】2017年7月22日(土)~9月18日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は前々回ご紹介した小展示と共に開催されていたもので、シルクロードのガラスの起源と発展についての内容となっています。あまり調べずに行ったので、小さいものも合わせると250点もの作品がある展示だと知って驚きました。もちろん点数だけでなく優品美品の多い充実の内容となっていましたので、展覧会構成に沿って3つの章に分けてご紹介していこうと思います。

<1章 ガラスのはじまり>
まずはガラスの起源の頃のコーナーです。ガラスがいつ何処で発明されたのかが明らかになったのは割と最近のことだそうで、以前はエジプトや東地中海が起源と考えられていたようです。しかし70年ほど前にイラクでアメリカの調査隊がガラスの円筒印章やガラスの塊を発見し、最も古いガラスは4300年前のメソポタミアであることが判明しました。ここにはそうした時代からの古い技法で作られた品々が並んでいました。

前16~13世紀頃の北メソポタミアの首飾り
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青く線状の模様がついていて、既に加工技術が装飾品を作るまでになっているのがよく分かります。

前14~13世紀頃のミュケナイの鋳造ビーズ。
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ミュケナイはギリシャのミケーネのこと。細かい文様の金の飾りと共にビーズが使われています。こちらも既に中を空洞にできるだけの技術と美しさに驚き。


前4~3世紀頃の東地中海地域の「両耳付瓶と金製台」
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装身具だけでなく身の回りの品にもガラスが使われました。今はあまり透明感が無いように思えますが、装飾性が見事。

ちなみに古代のガラスはほとんどがこんな感じで風化しているようです。表面が白くなったり虹色に輝く皮膜のようになっているのを「銀化」と呼ぶそうで、長い間土の中にあると化学変化をおこしてこうした感じになるようです。しかし別の風合いが生まれるのでそれはそれで美しい。

前1世紀頃の東地中海地域の碗
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日本の茶器のような侘び寂びを感じるのは風化した為かも。こうしたガラス器は鋳型を使った製法で作られていたようです。

前1世紀頃の東地中海地域のリブ装飾碗
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この時代のガラス器が好みのツボかもw 色だけでなく周囲のひだの形も面白いのですが、この形は「熱垂下法」という特殊な成形が行われたようで、上下逆さにしたお椀状の型に、予め刻んだ模様(日章旗の太陽みたいな形)を乗せ、再び溶かして流れ落とすという方法で作ったそうです。 古代の人たちの知恵は凄い…。

前1世紀頃の東地中海地域のミルフィオリ(千華文)皿
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表面に無数に華の模様が付いた皿。こちらはミルフィオリガラスと呼ばれるもので、モザイクの切片を鋳型に敷き詰めて熔着しているようです。華やかな宴会で使われたのかな?

前1世紀頃のエジプトや東地中海の小さいガラス
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モザイクガラスやとんぼ玉、ペンダントなど。鳥の形や神々の頭など、ユーモラスな感じが面白い。


<2章 ガラスのひろがり>
前1世紀頃、東地中海地域で吹きガラスの技法が生まれ、これまでの鋳造ガラスやコアガラスと異なり格段に早く大量に生産できるようになったそうです。その為、ごく一部の人の贅沢品だったのが一般の人々の日用品へとなっていきました。また、ガラスの色の技術も発展し、徐々に透明になり紀元1世紀には窓ガラスも作られるようになったそうです。 こした技術はローマ帝国全土に広まり、やがてササン朝ペルシアやイスラーム王朝に受け継がれ、シルクロードを経て中国や日本にももたらされたそうです。ここにはそうした技術の広がりの時代の品々が並んでいました。

紀元1~2世紀頃の東地中海地域の吹きガラス。
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これまでのガラスと違って無色透明にかなり近づいています。消色剤としてアンチモンやマンガンを加え鉄分等の発色を抑え、温度を調節することでこうした透明度を実現しているのだとか。ローマの科学技術には毎度驚かされます。

日用品である水差しもこんな感じで沢山あります。
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紀元前後のローマの著述家によるとガラスの杯は銅貨1枚で買えるとのことなので、以前に比べて一気に値段が下がって日常に溶け込んでいったのが伝わります。

この他にもリュトンや首飾りなど様々な品が並んでいました。吹きガラスによって表現力も増して装飾に関してもさらに多様化したようです。

こちらは別の部屋で展示してあった大英博物館所蔵の「ゴールドサンドイッチガラス碗」の再現模型
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オリジナルは前3~2世紀頃に作られたとされているようですが、非常に高い技術で作られていて海外では再現の研究も行われてこなかったそうです。金箔の装飾は日本の敷金と同じような技術のようで、そうした点などもあって2013年に日本の研究者によって再現されました。 現代でも簡単に再現できないほどの技術が2000年前にあったというのは驚異的です。


<3章 ガラス 西へ東へ>
最後はガラスが交易などで広まっていったことを示すコーナーです。ガラスは安価な原料で出来ますが、洗練された器や装身具は交易品として好まれたそうで、ヨーロッパでは毛皮や琥珀、東南アジアではスパイス、中国では絹 など様々な品と交換されたようです。そうしてガラス製造も各地で行われるようになりましたが、同じ技法でも原材料の僅かな差や好みの違いでそれぞれの地域の特質が生まれたそうです。

こちらは7~8世紀頃のイランの「短形切子碗」
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透明度が高く薄手で、カットまで入っている碗。ここまで来ると現代にも通じるような出来栄えになっているように思えます。

こちらは7~8世紀頃のシリア~エジプトの「羽状文小壺」
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マーブルのような模様が緻密で美しい小壷。

12世紀頃のイランの三脚付浅鉢
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既に技術が育ちきっていたのか、8世紀頃とあまり変わらない気がしますが透明度が高く面白い形。

14世紀頃のシリア~エジプトの「エナメル彩装飾瓶」
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シリア~エジプトの辺りはこうした装飾が好みなのかも。

9~10世紀頃のシリアの腕輪
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イスラーム化する前は単色無文のシンプルなものが多かったようですが、9世紀頃からガラス棒をひねって様々な色を巻きつけるタイプが作られるようになったそうです。イスラームの人たちの好みに合ったのかな?


ということで様々なガラスを見ることができました。作品同様に解説も充実していたので、もっとじっくり見たかったですが日帰りで電車の時間もあったのでやや駆け足気味になってしまいましたw この展示はもう終わってしまいますが、今後も面白そうな展示のラインナップとなっているようなので、この美術館に行く際には事前に調べていくことをお勧めします。



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評価




道遥か展 【平山郁夫シルクロード美術館】 (山梨 北杜編)

8月最後の土曜日に、青春18切符を使って山梨県の北杜市へ美術館めぐりに行ってきました。今日から山梨北杜編としていくつかの展示をご紹介していこうと思います。美術館めぐりは最初に平山郁夫シルクロード美術館に行ってきました。この美術館は国民的画家である平山郁夫 氏の奥さんの平山美知子 氏によって設立された美術館で、多くの平山郁夫コレクションが所蔵されています。いくつか展示があったので、まずは最初に観た「道遥か展」からご紹介していきます。(この展示は公式サイトにも載っていないので期間が不明です)

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【展覧名】
 道遥か展 

【公式サイト】
 http://www.silkroad-museum.jp/exhibition#past

【会場】平山郁夫シルクロード美術館
【最寄】甲斐小泉駅(山梨県)

【会期】不明(2017年8月26日時点では開催されていました)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お昼頃から観始めましたが、結構お客さんはいましたが快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は小規模な展示で平山郁夫シルクロード美術館の常設の一角で開催されていました。中身としては平山郁夫の自伝画集「道遥か」を元にしたもので、平山郁夫の生い立ちを自身の絵で辿ることができるという一石二鳥の内容となっていました。館内では撮影することもできましたので、いくつか写真を使ってご紹介していこうと思います。


<第一章 プロローグ>
まず最初は平山郁夫と原爆についてです。結構有名な話ですが平山郁夫は被爆者の1人です。当時 私立修道中学校の3年で、広島の近くで勤労動員として働いているところで被爆したそうで、エノラ・ゲイも目撃していたようです。(それを描いた絵も展示されていました) 

「昭和二十年八月六日 原爆の茸雲」
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平山郁夫は原爆投下の落下傘を見て「変なものが落ちてくるぞ!」と言いながら小屋に入ったところ、閃光に包まれたそうです。3km程度離れたところにいたようですが、それから見たものは相当凄惨な光景だったようです。この後、原爆の後遺症にも悩まされることになります…。


<第二章 少年時代>
続いては少年時代のコーナーで、一章とは時系列が多少前後します。平山郁夫は広島県の生口島の出身で、父は早稲田大学出身、兄は島で初めての東大法学部の出身という非常に優秀な家だったそうです。ここには少年時代に過ごした島の絵などが並んでいます。

「瀬戸田町 祇園神社から家並みを見る」
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のんびりした瀬戸内海の街の風景。 子供の頃は優秀な兄と違ったとのことですが、絵が好きで小学2年生の時に図画大会で2等を取るなど早くも片鱗を見せていたようです。さらに泳ぎも得意で大会で全国でも何番目かというようなタイムを記録したのだとか。


<第三章 画家への道>
原爆を受けた後、平山郁夫は現在の竹原市に転校し、そこで祖母の兄で彫金家の清水南山の疎開先に下宿することになったそうです。清水南山は東京美術学校の彫金科の教授を長く務めていたほどの人物らしく、元々は日本画をやっていたのが菱田春草の才能に勝てないと思い彫金に転向したという経緯があるそうです。(相手が凄すぎるw) そこで大叔父の仕事の手伝いをしながら岡倉天心や菱田春草の話などを聞いていたそうですが、農作業をしたり歩いて学校に通えと言われたり、大叔父との生活は結構大変だったようです。そして、進路を決める際に「東京美術学校の日本画科を受けろ」と言われたそうです。平山郁夫は法学に行こうと考えて勉強していたようですが、それを見ていたはずの大叔父に「何故最初から美校に行けと言わなかったのか?」と問うと、「腕があっても頭がないと早く行き詰まる。だからまず高校に入れるくらいの学力をつけてもらいたかった」と答えたそうです。流石多くの芸術家を育てた教授の言葉は鋭い…。

「彫金の仕事をする清水南山」
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これが大叔父。ちょっと頑固そうだけど芸術家然とした雰囲気がエピソード通りの印象を受けます。

「東京美術学校(現 東京藝術大学)玄関」
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ここで安田靫彦と小林古径というビッグな2人のもとで「自由に描く」という方針の教えを受けたそうです。とは言え、絵の具の作り方もよくわからない状態での模索だったのだとかw (日本画は顔料をにかわに混ぜて使うので、結構調合が難しいそうです)

この後、結婚・出産といった人生の節目を超えて絵の上でも転機に差し掛かった頃、激しい疲労や眼の前が真っ暗になるという症状が出るようになったそうです。これは原爆被爆による白血球の減少が原因だったようで、その症状のため八甲田山への写生旅行などは歩いていくのもやっとという状態だったのだとか。

東京オリンピックの少し前の頃に、新聞で聖火がシルクロードを渡ってギリシャからやってくるという記事を見た平山郁夫は、玄奘三蔵法師をイメージしたそうで、玄奘三蔵法師の旅の苦難と自身が死ぬ思いをしたのを重ね、これは描けそうだと考えたそうです。また、これが最後になるという思いもあったそうで、緊張感を持ってシルクロードを題材にした作品に挑みました。

「仏教伝来(小下図)」
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「仏教伝来」というタイトルの作品だったそうで、院展に出品すると新聞にも取り上げられて、非常に喜んで何度も新聞を読み返したのだとか。29歳の頃の作品。


<第四章 シルクロードへ、そして世界へ>
その後の病気のことについては解説されていませんでしたが、80歳近くまで生きて様々な活動をしました。特に芸大の調査や文化財保護の「文化財赤十字」といった活動でシルクロードの国々に赴いて活動したことは評価されているようです(歴史認識の不正確さで批判もありますが…) 最後の章はそうしたシルクロードにまつわる作品が並んでいました。

「ビザンティン時代の洞窟修道院 バハティン教会 ベルシラマ村 カッパドキア トルコ」
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一気に時代が進んで61歳の作品。カッパドキアの洞窟を描いたもの。カッパドキアの浪漫溢れる感じが出ています。

「敦煌 莫高窟」
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こちらも61歳の作品。文化財保護活動の対象だったそうです。


ということで、小展示ながらも平山郁夫について詳しく知ることができて満足度の高い内容となっていました。いつまでやっているのか期間が分からないですが、平山郁夫について知りたい方はこの美術館に行けばこの展示でなくても分かるのではないかとは思います。 この後も様々な展示と常設で写真を撮ってきましたので、次回以降それらをご紹介していこうと思います。




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