関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

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評価




藤本能道 命の残照のなかで 【智美術館】

泉屋博古館分館で「新春展 春の妝い」を観た後、大倉集古館の前を通って、智美術館に行き、「藤本能道 命の残照のなかで」を観てきました。この美術館に行ったのは初めてでした。この美術館は結構新しい割りに話題にもあまり出ないんですよね・・・。

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【展覧名】
 藤本能道 命の残照のなかで

【公式サイト】
 http://www.musee-tomo.or.jp/exhibition.html

【会場】菊池寛実記念 智美術館
【最寄】神谷町/六本木一丁目/溜池山王/虎ノ門


【会期】2009年10月31日(土)~2010年4月18日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(平日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
あまり説明が無く、どういう経歴の作家なのかよく分かりませんでしたが、ここの設立者である菊池智 氏と生前に深い付き合いがあった人間国宝の方のようです。何しろ情報が少ないので観た感想だけしか書けませんが、良い作品が多かったのでさらっとご紹介しようと思います。平日だったせいか貸しきり状態でゆっくり観ることが出来ました。点数の割りにぐるっとパス対象外の企画展で1300円という価格設定も厳しいのかもw

「草白釉釉描色絵金彩翡翠図六角筥」
正六角形に近い陶器の箱です。蓋にはかわせみが草の上にとまっている姿が描かれています。背景には乳白色の地に淡い色で流れのようなものが描かれていて、側面にも彩色されていました。この整った六角形の形と透き通るような磁器の色が非常に好みでテンションが上がりました。

「雪白釉色絵山帰来鶉図六角大筥」
こちらも六角形の陶器です。大きな植物(木蓮?)とウズラが描かれています。鮮やかに細かく描かれていて背景の白とあわせて美しい色合いでした。こうした六角形や八角形の箱(すべて陶器)は結構展示されていて、鳥が描かれている作品も多くありました。

「草白釉釉描加彩野葡萄と雀図角隅切筥」
八角形の箱に見えるけど角が丸くなっています。三羽の雀が樹にとまっておしゃべりしているかのようにお互いの顔を見ているのが可愛かったです。色合いも絶妙でした。

「草白釉釉描色絵金彩溪流紅葉図長四角筥」
丸みを帯び膨らんだ感じの楕円形の箱です。川の流れの上を鳥が翼を広げて飛んでいる様子を、さらに上の位置からみたような構図です。右上には鮮やかな紅葉が描かれていました。川の淡い色彩が繊細でした。それにしても箱の形が陶器とは思えないほど整っていて温かみがあります。

「雪白釉釉描色絵金銀彩月下木乃葉ずく四角筥」
樹にとまるフクロウの絵が描かれた四角い箱です。これもやや丸みがあります。この作品は蓋の中もみることが出来て、中には朧げな月と草が描かれていました。・・・ということは他の箱の中にも何か描かれているのかな?と思いましたが、詳細は不明です。

「梅白釉釉描色絵金彩鴉山帰来図八角大筥」
ほとんど円に近い八角形の箱で、蓋にもふくらみがあります。カラスと植物(いちじく?)が描かれていました。ここまでも色々と鳥が出てきましたが、身近な鳥も含めて好きだったんでしょうね。

「草白釉釉描加彩渚夕陽図四角筥」
丸みのある四角形の箱で、水辺に映る夕陽と三羽の鳥が飛ぶ様子が描かれています。郷愁を誘う深い赤が印象的で、まるで絵画のようでした。

「霜白釉釉描色絵金彩陶火窯焔に舞ふ陶額」
遠くからぱっと見たとき、速水御舟の「炎舞」を陶器の額に描いたようだなと思いました。赤々として装飾的な炎と、その周りを飛ぶ蛾たちが描かれています。火には金粉のようなものが塗られているようで、ちょっと角度を変えてみると黄色くも見えます。この辺りは赤が印象的な作品が多かったのですが、これは特に目を引かれる作品でした。
 参考記事:速水御舟展 -日本画への挑戦- (山種美術館)

「霜白釉釉描色絵金彩花と虫図六角大筥」
六角形の箱に金色のカミキリムシと蛾が描かれています。また、先ほどの陶額の炎と同じ赤色で花が描かれていました。燃えるような色が花に使われると、華やかな感じがするのが面白かったです。

大きな部屋が2つあった後に小さな部屋があるのですが、ここには大量の食器セットがずらっと手前から奥の天井の方に向かって並んでいました。まず、その量と展示方法に驚きましたw これは1976年5月に天皇皇后両陛下が菊池家に宿泊した際に、その晩餐会に使うために菊池智 氏が藤本能道 氏に依頼したものだそうです。全部で15人分230ピースあるそうで、この展覧会では5列×20個で100点ほどが展示されています。花鳥をあしらった食器の他に、燭台もありました。 両陛下を迎えるだけあって、凄い気合の入れようです…。中々壮観な光景でした。

「陶額 翡翠図」
最後(最初の入口付近)には3点ほど小さな四角い額があり、翡翠が描かれていました。愛らしい翡翠が小さい額に描かれているのが似合っているように思いました。


ということで、もっと初心者にわかるように解説してくれればいいのに・・・と思いましたが、面白い作品が多かったので満足しました。色彩とその形が独特ですので、陶器好きの方には特に面白い展覧会だと思います。
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評価




柴田是真の漆×絵 【三井記念美術館】

もう終わってしまった展覧会で申し訳ないのですが、展覧会の最終日に三井記念美術館の「特別展 江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」を観てきました。素晴らしい内容だったので、ご紹介しておきたいと思います。

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【展覧名】
 特別展 江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition_end/091205.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅
【会期】2009年12月05日(土)~2010年02月07日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間40分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
最終日だったこともあり、結構込み合っていました。内容も良かったから評判だったのかも。
この展覧会は大半が「エドソンコレクション」となっていて、エドソン夫妻の願いで祖国である日本に里帰りし、柴田是真の個展として開催されていました。柴田是真は幕末から明治にかけて漆職人と絵師の両方で活躍したまさに漆の芸術家と呼べる存在で、その巧みな技術と洒脱なセンスで作られたクオリティの高い作品が展示されていました。また、様々な技法についても学ぶことのできる、三井記念美術館らしい濃い内容となっていました。(作品リストの他に用語説明のパンフレットまでくれる心意気。美術展の鏡です^^) 
今回も気に入った作品を通してその作風をご紹介しようかと思います。なお、作品ナンバーが「e-」で始まるのはエドソンコレクションです。(jで始まるのは日本にある作品) その豊富で質の高いコレクションに驚きながら観てきました。


e-04 「宝尽文料紙箱」
青銅塗りと呼ばれる技法で作られた用紙箱です。木炭などを使ってまるで金属で作られているように見えますが、実際には漆器です。表面にはかさや鍵、横側には蓑や分銅、掛け軸などが描かれていて、緑に輝く七宝も綺麗でした。漆の作品には金や銀が多く使われますが、それだけではなく黒でこれだけ魅せるのは凄い技術と美意識です。

e-38 「円窓雛人形印籠」
円形の窓のなかに3段飾の雛人形のいる印籠です。金色で華やかな印象で、その意匠も面白いです。 柴田是真は木炭や紫檀の質感を出したり、新品を古く見せたり、重そうに見せて軽かったりと、様々な技術で人を驚かせたようです。

e-16 「砂張漆盆」
砂張というのは銅と錫と鉛の合金のことで、この皿のようなお盆は鈍い反射がありどう見ても金属製に見えます。しかし、実際は漆器で出来ている騙し漆器で、実際に手に取るとその軽さに驚くのだとか。確かにこれが漆器と言われても驚くばかりです。きっと柴田是真は洒落のきいた人で皆が驚くのが好きだったんだろうなあw

e-13 「柳に水車文重箱」
川の流れと水車が描かれた黒い5段の重箱です。水車の羽は1枚1枚違うデザインとなっています。また、この展覧会でよく出てくる技法の1つに「青海波塗り」という技法がありのですが、この作品もその技法で作られています。これは変塗の1種で波の文様を表すもので、この作品にぴったりの技法でした。

第4室くらいからは絵画作品が登場してきました。

e-54 「松に藤小禽図」
松の木の上に小鳥がとまり、下に向けるその視線の先には松から垂れた藤が水に浸かり、先端はさらにくねって再度水から出てきている様子が描かれています。これは昔からある梅の構図を藤に置き換えたそうで、知的な雰囲気を感じる作品でした。なお、柴田是真は円山応挙に影響を受けた四条派に入門し、絵画を学んだそうです。

e-58 「四睡図」
豊干禅師、寒山、拾得、虎の3人と1匹が眠る図です。このモチーフは他でも観た記憶があるので、定番なのかも。 虎の上に禅師が乗って寝て、他の2人は硯や箒を持って顔をふせて寝ています。 そんな時に寝るなwと突っ込みたくなりましたが安らかな印象を受けました。

e-61 「瀑布に小雀図」
描表装の掛け軸なのかな? 真下を向いて滝の崖に止まる小鳥が描かれています。掛け軸の外まで紅葉が描かれ、開放的な感じでした。
 描表装の参考記事:奇想の王国 だまし絵展 (2回目 感想後編) (Bunkamuraザ・ミュージアム)

e-63 「瀑布に鷹図」
2枚セットの掛け軸です。左は滝の前の崖にとまる親子の鷹が描かれています。子供は親を仰ぎ見て、親は右の掛け軸のほうをしげしげと見つめています。その視線の先の右の掛け軸には、滝に親鷹の顔がぼやーっと反射して写っていました。つまり親鷹は滝に写った自分の顔を眺めていたわけです。こうしたユーモアを感じるのが柴田是真の魅力の1つだと思います。
ちなみに、この作品がきっかけでエドソン夫妻は是真の作品を集め始めたのだとか。漆器ではなく絵から入ったというのも是真の幅広さを感じる面白い出会いです。


ここからは絵師としても漆職人としても成功した柴田是真の集大成とも思える漆絵が展示されていました。


e-41 「面相描図漆絵」
和紙に漆を塗って描いた絵です。硯、筆、水滴、沢山の人形の首 などが描かれている様子から人形の顔を描いている作業場のようです。描きかけた顔や完成したものも並んでいて、普通なら不気味に見えそうですが、愛らしい雰囲気の作品になっていました。漆で絵を描くこと自体も大変らしいのに驚きのセンスです。

e-43 「南瓜に飛蝗図漆絵」
黄色いカボチャの花にとまるバッタが描かれています。緻密に描かれた花はグラデーションが繊細で漆絵ということを忘れるくらいです。花の奥を覗き込めそうな立体感や色使いの巧みな葉っぱも素晴らしかったです。

e-46 「霊芝に蝙蝠図漆絵」
蝙蝠と霊芝(こんもりとボリュームのあるキノコ)が描かれています。どちらも中国では吉祥のモチーフらしく、お目出度い漆絵です。特に霊芝はボリューム感があり存在感がありました。色の微妙な表現も素晴らしいです。漆絵というのは5色くらいしか色を出せないそうですが、是真はこうしたグラデーションなどでそれをカバーしているのが目の当たりにできました。
また、解説の逸話によると漆絵は巻物には不向きである(巻いたら剥がれるから)と言われた是真は、数日で巻いても大丈夫な漆絵を作成したのだとか。天才過ぎですねw

e-10 「紫檀塗波兎図木刀」
これは30cmくらいの木刀です。紫檀塗りと呼ばれる技法でつくられ、まるで高級木材の紫檀のような質感で艶やかさがあります。そこに走る兎と青海波塗りの波が描かれていました。小さな作品でもそのデザインセンスと高い技術の融合が素晴らしい。

e-50 「宝貝尽図漆絵」
漆で描かれた貝の静物画です。絵の貝に、貝を細かく砕いたものが貼り付けてあり、青い輝きを放っていました。掛け軸(巻き物)に貼り付けていくのは大変な技術だと思われます。普通なら巻いたらぽろぽろと剥がれそうなのに、どうやっているのか不思議でした。

e-52 「漆絵画帖」
横に20枚くらいの小さな絵が並んだ画帖です。花鳥風月やお目出度いものが描かれ、華やかなものから粋なものまで様々なものがありました。漆であるのに細かく描かれていて驚きます。漆絵は一方向にしか筆を運べないという制限があるのに、闊達な筆を見せるのは、漆を知り尽くし絵でも成功した是真ならではかもしれません。

e-17 「波に千鳥角盆」
黒い四角いお盆です。よく観るとグラデーションやマチエールの違いで波を表現しています。青海波塗りの波のうねりの中に銀色の千鳥も見えました。派手さは無いものの素晴らしい技術を感じる作品でした。

e-34 「蚊帳を覗く幽霊図印籠」
印籠・とんこつ(煙草入れ)を集めた部屋がありました。(ここは狭い部屋なのでメチャクチャ混んでました。)
この作品は、蚊帳の上から覗く幽霊が描かれた印籠です。怖い顔をしていて黒地に溶け込みそうなほど暗くうっすら描かれていました。逆側には蚊帳の内側が描かれていました。 面白い題材です。

最後は日本国内の作品の部屋となっていましった。

j-01 「闇夜桜扇面蒔絵書棚」
金の扇子と螺鈿の桜が目を引く作品。大きく黒い漆の空間が取られているのも印象的です。扇子には青海波塗りの海や千鳥など細部まで細かい細工があります。
画家としても成功し、下絵も描ける蒔絵師となった是真は、職人から総合的な芸術家となった貴重な存在と言えそうです。

j-10 「稲菊蒔絵鶴卵盃」
鶴の卵の殻に金を塗って盃にしたもの。内側にはマットな質感で金が塗られています。外側には植物の模様がかかれ、卵の殻とは思えないくらい華麗です。こうした卵の入れ物はヨーロッパで人気だったそうです。

j-20 「漆絵画帖<墨林筆哥>」
いくつかの絵からなる画帖です。ひょうたんから馬が出てきている絵(瓢箪から駒?w)や5重の塔と虹、葉っぱとカブトムシ、草団子など身近なものから諺を題材にした漆絵が描かれていました。遊び心を感じる自由闊達な画帖です。

j-15 「花瓶梅図漆絵」
紫檀の板に蒔絵が施されているように見えますが、これはすべて漆絵で出来た騙し絵のようなもので、額縁の木目のようなものも描かれているのが面白いです。紫檀塗りをはじめ、青磁の花瓶や梅も漆で描かれていて、その質感表現に驚きっぱなしでした。

j-11 「富士田子浦蒔絵額」
雄大な富士山、青海波塗りの海、田子の浦の浜で塩作りする人々、そして金砂子の朝焼けが描かれた華やかな作品。西洋絵画のように額に納められているのですが、その額には様々な貝が描かれているのも可愛らしかったです。

j-30 「猫鼠を覗う図」
台から落ちた柘榴を食べる鼠と、屏風の裏から鼠を覗う猫が描かれています。猫は身を屈め今にも飛び出してきそうな緊迫感がありますが可愛かったw 面白い構図です。

j-03 「烏鷺蒔絵菓子器」
銀白色のサギと真っ黒なカラスがびっしり描かれた箱です。箱の形は2つの箱が合体したような変わった形をしてました。それぞれにサギとカラスが描かれ、これは御伽草子の鴉鷺合戦物語(あろがっせん)を題材にしているそうです。カラスは真っ黒に見えますが、よく観ると微妙な色の違いが細かく描かれていて驚愕でしたw


ということで、だいぶ楽して驚きの多い内容でした。こんなに面白いならもっと早く行って2回くらい行けば良かった…。様々な手法も知ることが出来、今後の鑑賞にも役立ちそうです。


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評価




小村雪岱とその時代 【埼玉県立近代美術館】

前回ご紹介した河鍋暁斎記念美術館に行った後、京浜東北線に乗って北浦和に移動して、埼玉県立近代美術館で「小村雪岱とその時代」展を観てきました。

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【展覧名】
 小村雪岱とその時代

【公式サイト】
 http://www.momas.jp/3.htm

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅


【会期】2009年12月15日~2010年02月14日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私は上村松園や鏑木清方、伊東深水といった淡く優美な絵を描く画家の作品が大好きなのですが、どこか似たような雰囲気を持つ小村雪岱(こむらせったい)も気になっていました。しかし今までたまに名前を見ても詳しくは知らなかったので、今回の展覧は良い機会でした。
実際に観てみると、かなり分量のある展覧で、学生時代の作品から時代を追って知ることができる貴重な内容となっていました。 今回も章ごとに気に入った作品を追いながらご紹介しようと思います。(似たような名前の作品もいくつかあったので、一応作品番号を振っておきます。)

<第1章 粋でモダンな東京で -資生堂意匠部時代->
まずは雪岱の学生時代から仕事の始まりについてのコーナーです。雪岱は東京美術学校の日本画科を経て、松岡英丘や下村観山に学びました。その後、小説家の泉鏡花との出会いによってデザインの道へ入り、資生堂の意匠部に入社しました。そこで日本調のデザインを担当していたようで、資生堂時代の作品もこのコーナーに展示されていました。
 参考リンク
  泉鏡花のwiki

1-6 小村雪岱 「北野天神縁起絵巻模写」
松岡英丘が文部省から模写の依頼を受けて、学生だった雪岱が担当した2枚のうちの1枚。貴族たちが家で何かを話している様子を描いた作品で、色鮮やかで緻密な模写でした。

1-12 小村雪岱 「香水 菊」
これは資生堂意匠部時代の作品で、香水瓶です。海外進出を考えていた資生堂の社長は、日本風のデザインが欲しかったらしく、日本の象徴である菊を描いたこの作品もその意向に沿ったもののようです。他にも水仙、フリージア、マグノリアなどの香水瓶が展示されていました。

<第2章 『日本橋』-装幀家・小村雪岱の誕生>
2章は本の表紙や見返しなどをデザインする「装幀家」となった雪岱の仕事がメインの章です。元々憧れていた泉鏡花と交流し、彼の小説『日本橋』の装幀を手がけたのが装幀家としてのスタートでした。 『日本橋』が出版されるとその装幀が絶賛され、以降のほとんどの泉鏡花作品は雪岱が手がけることになったようです。ちなみに「雪岱(せったい)」の画号は泉鏡花に名づけてもらったそうです。 この章では雪岱が泉鏡花らの作品と共に装幀家としての不動の地位を築いて行くのがわかります。

2-4 装幀:小村雪岱 『日本橋』
初めて装幀を手がけた、表紙や見返しが美しい本です。簡略化されデフォルメされた感じで、淡く上品に雪の町並みや夜の裏小路などを描いています。柳と誰もいない畳の部屋を描いた挿絵も好みでした。、

2-71 装幀:小村雪岱 『綵房綺言』
本の表紙を両面観られる展示方法でした。寝転んで本を読む青い着物の女性と、膝に本を置いて読む桃色の着物の女性が描かれています。どちらも清純な雰囲気でかなり好みの作風でした。

2-17 装幀:小村雪岱 『芍薬の歌』
大きな川か港湾か判別できませんが、そこに長く弧を描く橋が架かっている絵です。静まり返ったような水面の薄い青が美しい作品でした。

2-55 小村雪岱 『スヰート』表紙
明治製菓の広報誌の表紙です、その題字は雪岱が資生堂に勤めていた頃にデザインしたものらしいです。実際には「トーヰス」と書いてあって昭和初期を感じる雰囲気のある表紙でした。

2-15 装幀:小村雪岱 『紅梅集』
四角い窓が3つ並ぶ部屋の中に、狛犬?みたいな首だけの像が台の上に乗っています。他に部屋には何も無くがらんとしていて、シュルレアリスムのようにちょっと不安を覚える作品でした。

2-33 口絵:鏑木清方 『無憂樹』
そういえばこの前サントリー美術館で観た清方ノスタルジアでも、鏑木清方と泉鏡花との関係について言及していたなと思ったら、この章には鏑木清方の作品もありました。小村雪岱と鏑木清方は泉鏡花の信奉者は集まった「九九九会」のメンバーだったそうで、(他には岡田三郎助などもいます) 会費が99円9銭だったからそういう名前だったらしいです。
この口絵は、屏風のこちら側で肩の袖を押さえる着物の女性と、屏風の裏で同じような女性(同一人物?)が灯りの下で巻物を読んでいる様子が描かれています。清方らしい繊細で清らかなイメージの作品でした。
 参考記事:
  清方/Kiyokata ノスタルジア (サントリー美術館)
  清方/Kiyokata ノスタルジア 2回目(サントリー美術館)

2-44 46 鏑木清方 「註文帖」「註文帖画譜」
泉鏡花の『註文帳』に想を得て描かれた何枚か連なった作品。これを三越で観た雪岱が感動し、清方から借り受けたそうです。しかし、返すのが惜しくなり、せめて木版画だけでも手元におきたいと考え、新小説社の社長を説得し、ついに木版画集を完成させたのだとか。清方と雪岱の関係がわかるエピソードで面白いです。 私が特に好みだったのは第6図で、淡く背景に消え入りそうな美人が描かれている作品。髪だけは濃く描かれているのに、足は幽霊みたいに消えかかっていました。妖しい雰囲気は泉鏡花の影響?w


<第3章 白と黒の美学-「雪岱調」、挿絵界に新風>
里見(さとみとん)の「多情仏心」で初めて小説の挿絵を描き、名実共に不動にしたのは邦枝完二の『おせん』の挿絵らしいです。『おせん』の成功により雪岱は「昭和の鈴木春信」と絶賛され、小説の売り上げも伸びたようです。この章では小説の挿絵などが展示されていました。

3-55 小村雪岱 「刺青のお伝」 ★こちらでほぼ同じ絵が観られます
布団の上でうつ伏せの上半身裸の美女と、背を向けたまげをした男性が描かれています。「痛いだろうけど動かないで」という小説の文章が読めて、どうやら刺青を彫っているようです。女性の真っ白な肌が色っぽく、少し緊張しているような面持ちが小説の場面を端的に現しているようでした。

3-35 小村雪岱 「おせん」 ★こちらで観られます
おせんの挿絵は鈴木春信の絵を参考にして描いたそうです。 いくつかの場面があった中で気に入ったのが、傘の絵。 大きな傘が15個くらい並んでさされている様子が描かれています。さしている人の顔は傘に隠れて見えず、傘の円形がリズミカルに並んでいるのが面白いです。また、上の方が余白を大きく取っているのも独特の雰囲気でした。


この作品のちょっと先のあたりには実際の雑誌が並んでいるコーナーがありました。何故か竹久夢二とかの作品もあったり。

3-145 小村雪岱 『サンデー毎日新作大衆文芸号』 宣伝ポスター
大きく3段にわかれたサンデー毎日の宣伝ポスターです。上段は2人の着物の女性が向き合い、(一人は背を向けています)しゃがんで手にナスや赤い植物を載せてお互いに見せている優美な絵が描かれています。中段は掲載作家と作品名の一覧、下段は大きな字で「サンデー毎日」と書かれていました。絵の2人が可憐な感じで、現在のサンデー毎日とえらくイメージが違うw 

3-106 小村雪岱 『演藝画報』表紙原画 絵番附
開いた障子から真っ青な空が見え、そこに細い月が浮かんでいます。そしてそれを振り返って見る着物の美女が描かれていました。大きく開かれた空の青が目を引く作品でした。

この辺に、先ほどご紹介した「おせん」を雪岱の挿絵を使ってストーリー紹介する映像がありました。縁側でおせんが切った爪を即座に床下で春信が集めて、家に持ち帰ってやかんで煮て爪の香りを楽しむ・・・そんな場面もありましたw 隣の住人は臭くてたまらんとやってたのも妙にリアルできもいw なお、この映像は文字が小さい割りに字幕の切り替えが早くて着いていくのが大変でした。 


3-146 小村雪岱 「青柳」 ★こちらで観られます
高い目線(2階くらい)から向かいの1階の広い和室を見下ろすような構図の絵です。畳の緑と柳の緑が映え、爽やかな印象です。畳の上には鼓と三味線が置かれていて、お稽古の途中で抜け出したのかな?とか想像を掻き立てられました。

3-149 小村雪岱 「春告鳥」 ★こちらで観られます
鶯色の着物を着た女性が地面にしゃがみこみ、振り返っている絵です。その目線の先には鳥(燕?)が描かれていて、これが恐らく春を告げる鳥でしょう。春を待つ気持ちが伝わってきそうな絵でした。

<第4章 檜舞台の立役者-名優の信頼をあつめて>
最後の章は舞台装置の仕事に関するコーナーでした。雪岱は舞台装置のデザインも手がけ、その活動範囲は歌舞伎座、東京劇場、帝国劇場、明治座、新橋演舞場と名だたる劇場に及んだようです、「一本刀土俵入り」などの演目では今でも雪岱の舞台装置が踏襲されているとのことでした。ここにはそうした舞台の原画などが沢山展示されていました。

4-2 小村雪岱 「河庄」
歌舞伎「心中天網島」の一場面です偽りの愛想尽かしを述べるシーンらしく、店の中の豪華な着物の女性と、店外にいる青と白の縞模様の着物を着た男性の後姿が描かれています。その解説を読んだせいか静かな雰囲気ながらも緊張感があるように思いました。

4-9 小村雪岱 「源氏物語 葵の巻」舞台装置原画
葵上に嫉妬した六条御息所が生霊となって現れるシーンの舞台です。寝殿造りで御簾のようなものが描かれている原画でした。隣には実際の舞台の写真もあり、この絵が活かされていたのがわかるのが面白かったです。

4-12 小村雪岱 「すみだ川」舞台装置原画
緑の築山と桜の白さが目を引く作品で上品な雰囲気でした。

4-15 製作:数馬英一 「一本刀土俵入り」舞台装置模型
雪岱の原画を基にした舞台装置の模型です。正面から見ると本当の舞台のようにも見えます。 雪岱はこの作品の舞台となる土地に実際に出向いて写生をしたらしいです。この模型の近くには他のシーンの原画もありました。ここまで徹底したから現在でも愛されているのかもと思いながら観ていました。

舞台装置のほかにも着物のコーナーもありました。そのデザインも雪岱が手がけたらしくデザイン画もありました。


最後の部屋は何故か3章の扱いのようです。美しい版画(エスタンプ・複製版画)が並んでいました。
3-167 小村雪岱 「雪兎」
大きな傘をさし、雪の道?でしゃがむ着物の美女が描かれています。手には白い兎を持っていて可愛らしかった…。

3-169 小村雪岱 「筑波」
遥か向こうに見える筑波山と、後姿の着物の女性が描かれています。その間には白い空間(雲?)があり、清清しい雰囲気の作品でした。美女の顔も観たいw


ということで、雪岱の時代ごとの作品や周囲の交流関係などもわかる濃密な内容となっていました。せっかくなら音声ガイドとかあればもっと良かったのにとも思いましたが、作品の横にかいてある解説の情報量も多かったです。(ちょっと難しめ)
後々まで参考になりそうな展示でした。

特別展の後、常設にも行ったのですが、今回は残り15分くらいしかなかったので、かなり急ぎで回る羽目にw (そのため今回は常設の感想は割愛します)
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おまけ。この日の雲はシュルレアリスムの絵にでも出てきそうな雲だったので、ついでに写真を撮ってみました。
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評価




いけばな~歴史を彩る日本の美~ 【江戸東京博物館】

昨年末に久々に江戸東京博物館に行って、「いけばな~歴史を彩る日本の美~」を観てきました。意外なことに江戸東京博物館には去年はこれしか行かなかった…。

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【展覧名】
 いけばな~歴史を彩る日本の美~

【公式サイト】
 http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2009/1123/1123.html

【会場】江戸東京博物館
【最寄】JR両国駅/大江戸線両国駅


【会期】2009年11月23日~2010年01月17日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(年末 14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
元々この展示にそんなに興味があったわけではなかったのですが、他の展示で観たポスターとパンフレットが面白そうだったので、行ってみました。年末の最終営業日に行ったせいかかなり空いていてゆっくり観ることができました。

そもそもいけばなのことを全然知らないので、これを観ればわかるかと思いましたが、あまりよくわからなかったかなw ポスターなどで想像したよりも博物展的な要素もあって、ちょっと難しいなと思いながら見ていました。 その為、自分の中で咀嚼できずにあまりメモを取らなかったので軽めのご紹介となります。

<プロローグ いけばなの源流>
プロローグではいけばなの成立について触れられていました。 元々は仏教での供花の儀式に源流があるようで、曼荼羅や鳥獣戯画などの模本、華鬘、青磁の器などがありました。

<第1章 いけばなの成立>
1章も成立についてのコーナーでした。いけばなは15世紀の室町時代の京都で発生し、16世紀に芸術となったと説明され、実際にその時代のものが多く展示されていました(一部は江戸時代後半でしたが)

「鋳銅三具足」
龍の巻きついた燭台、麒麟の香炉、龍の花瓶の3点セットです。どうやら中国でつくられたもののようですが、見応えのある細かい細工が施されていました。

「君台観 巻第四・第五」
これは座敷飾のマニュアルで、相阿弥流の系統のものなのだとか。(この展示で何とか流の違いとかも知りたかったんですけどね…。) 絵入りで描かれてわかりやすいマニュアルのようでした。

「花王以来の花伝書」 ★こちらで観られます
これも花の飾り方のマニュアルで、最古の花伝書らしいです。短く簡単な教えも書かれていたので、ポイントを押さえた実用書だったのかなと思いました。

「立花図屏風」 ★こちらで観られます
これは狩野春信の作品ではないかと言われている6曲2隻の屏風です。床の間に活けられた花と背景に画中画(掛け軸)のある曲、床の間に活けられた花の曲と交互に並んでいました。画中画と花のタッチが若干ことなっているのが面白いです。色彩も豊かで、特に白い花が華やかさがありました。

<第2章 豪華になるいけばな>
江戸時代に入ると、武家の屋敷で儀礼の飾として「いけばな」が取り入れられ、大きく豪華になっていったようです。ここではそうした風潮にあった作品が並んでいました。

「花車図屏風」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている6曲2隻の屏風です。左隻には菊、萩、すすきなどを載せた牛車のような車、右隻には杜若を載せた小さな車と、藤と牡丹を載せた車が描かれています。背景は金地で、花とあわせて非常に華やかさのある作品でした。こういう直感でわかりやすい作品が好みですw

「立花之次第九捨三瓶有[池坊専好立花図]」 ★こちらで観られます
池坊専好という人は立花の中興らしく、○代目池坊専好と何代(4代?)かいるようです。 これは全93図あるイラスト付の立花マニュアルの1つで、飾り方の手本にした本のようです。小さい字で何の花か書かれて説明されていました。飾り方も芸術的な感じですが、その鑑賞方法がわからないので詳しくは何とも…。(そういう観る観点もわかると良かったのに)

<第3章 流派の誕生といけばな大流行>
元禄の時代になると、いけばなは成人男子のたしなみとされたようで、立花よりも手軽に活けられる投げ入れ花が好まれたそうです。 ここではいけばなの模写本が並んで展示されていました。どうやら花を学ぶものの必携の書となっていたようです。また、滑稽本で茶化しているものも展示されていて、当時の盛り上がりが相当だったことがわかります。

「近世花くらべ 遠州」
ここには現代の7流派による、造花を使った江戸時代作品の再現がありました。新春から秋に向かう順番で並んでいたのですが、特に驚いたのがこの作品。枝の部分が富士山の形をしたいけばなでした。これは作り物ですが、当時はこの形に花を育てたのかな?と驚きながらみていました。

「江戸名所百人美女 するがだい」
これも今回のポスターになっている作品。「薄端」という口の広い薄手の花器に、梅を活ける美女が描かれた浮世絵です。左上には名所絵が描かれ、いけばな、美人、名所という人気の題材が1枚に収まったお得な絵のようでした。

<第4章 はなの器>
いけばなは花だけでなく、花器や道具も鑑賞の対象になったようです。特に輸入品や唐物が珍重されていたそうで、ここにもそういった作品がいくつか並んでいました。

「花留」
江戸時代までは花留は見えないようにしていたようですが、あえて見せるようになり、花留は多様化していったそうです。蟹、蛸、亀、いかり、かご、碁石?などなど様々でユニークな花留めが並んでいました。

「いけばな図屏風」
菊、すすき、桔梗などが投げ入れられた花籠と、左右には花瓶に入った立花が描かれていました。花と大和絵の優美な雰囲気が呼応する作品でした。

<エピローグ いけばなの近現代と広がり>
明治時代に入ると、武家や商家が没落し、いけばなも一時廃れたそうです。しかし、女子の情操教育として再び勢いを取り戻し、現在に至るようです。最後のエピローグでは明治、大正、昭和の歴史を駆け足で紹介していました。

「The Flowers of Japan and The Art of Floral Arrangement」
英語で本格的にいけばなを紹介した本です。建築家のジョサイア・コンドルが書いた本だということで驚きました。自然や宗教的な行事まで踏み込み、幅広い内容になっているらしく、流石です。そういう本を読んでからくればよかったw


ということで、貴重なものなんだろうなとは思っても、あまりピンと来ない展覧でした。この流派はこういう特徴があるとか、この飾り方はこういう意味があるとか、基本的なところから知りたかったのに、特に無かったのが残念。成り立ちは何となく分かったけど、どうもテーマも散漫な気がしました。ど素人にはハードルが高かったw
出品リスト(公式サイトのPDFで確認可能)を見ると、重要文化財と重要美術品が合わせて10点くらいあり、作品点数も160点もありますので、価値の分かる人が行けば面白いのかもしれません。 テーマが多岐に渡っているので,
ある程度いけばなの知識があったほうがより楽しめそうな展覧会でした。

この後、常設で沢山写真を撮ってきました。次回はそれをご紹介しようと思います。


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評価




没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画 【山種美術館】

昨年末に、山種美術館で「没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画」を観てきました。前回の速水御舟展はかなり混んでいましたが、今回は空いててゆっくり観ることが出来ました。

P1100455.jpg P1100462.jpg


【展覧名】
 没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.or.jp/exh_current.html

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】2009年12月5日(土)~2010年1月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日11時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
作品充実度は③なのは、下絵やスケッチを含めて50点程度と作品点数があまり多くないためです。前回の速水御舟展では会場に所狭しと作品が並んでいましたが、今回はスペースを大きく使って展示していました。(その分作品点数が少ないのですが…) 年末のせいかお客さんもそれほど多くなかったので、じっくり観ることができました。

この展覧会は、その名の通り、東山魁夷を中心とした展覧会ですが、東山魁夷の作品は半分もないと思います。残りはその周りの画家や「昭和の日本画」となっていて、個展というわけではありませんでした。それがちょっと残念だったかな。bunkamuraのロートレック展と同じような感じかも…。

一応、コーナーに分かれていたのでそれに沿ってご紹介します。


<第1章 東京美術学校の師と仲間>
まず、東山魁夷の生涯をごく簡単に説明すると、東京美術学校に入り、そこで川合玉堂、松岡映丘、結城素明らの指導を受け学び、帝展に入選。東京美術学校を卒業した際に東山魁夷を名乗ったそうです。また、ドイツに留学するものの父の病気で帰国しました。その後、川崎小虎の娘と結婚したのですが、しばらくの間は絵も売れず、肉親も次々と亡くなるなど、不遇の時代を過ごしたようです。そして42歳の時、日展で「道」という作品が話題となったのをきっかけに人気が出て、独特の青の色彩を中心に90歳で死ぬまで活動を続けたようです。

このコーナーでは、東京美術学校の師や仲間の作品と一緒に展示されていました。


結城素明 「春山晴靄」「夏渓浴雨」「秋嶺帰雲」「冬海雪霽」
掛け軸が4幅あり、右から春夏秋冬の順で並んでいます。いずれの絵も小さな人が描かれ、自然の雄大さが感じられます。水辺の山?や緑鮮やかな松が目を引きました。
この結城素明は先述の通り、東山魁夷の先生の一人で、東山魁夷に「自然の中に入り、心を鏡のようにして観ておいで」と教えたそうです。

川合玉堂 「竹生嶋山」
玉堂も先生の一人として紹介されていました。これは琵琶湖北部の島の神社を描いた絵です。打ち寄せる波と岩の上にある神社、背景には霞むように山のようなものが見えます。 解説によると、近景と遠景を異なる技法で描いているようで、近景は線による表現で強弱・濃淡をつけ質感を表し、遠景はぼかしの技法によって、霞の空気感を出しているそうです。特にぼかしの技法は流石でした。

東山魁夷 「白い嶺」
何故か56歳の作品。(学生時代のコーナーじゃないのかよ!w) 雲ひとつ無く落ち着いた青の空を背景に、真っ白な雪の積もった木々が並んでいます。微妙に明暗があり森らしい静かな雰囲気でした。雪のふわっとした感じがよく出ていました。

東山魁夷 「白い壁」
これも44歳の作品。全体的に青っぽい感じで、夜の白い壁の蔵が描かれています。月光が当たっているのか、壁が白く光に照らされているみたいです。しずかな夜を感じる作品でした。


<第2章 皇居新宮殿の絵画にちなんだ作品>
このコーナーは1968年に作られた皇居の新宮の内部装飾を飾った作品にちなんだコーナーです。日本画家の錚々たるメンバーが新宮のために描いた作品を、一般にも見せたいと考えた山種美術館の初代館長が、画家たちに同じ意向の作品を作ってほしいと直接頼んで描いてもらった作品が並んでいます。それだけに大作のある迫力あるコーナーでした。

東山魁夷 「波(スケッチ1):満ち来る潮のための」
波と岩場を描いたスケッチです。同じようなスケッチが8枚並んでいました。波が岩にぶつかり激しく飛沫をあげる様子が描かれています。緑がかった青い海と、水が流れ落ちる岩が実際の光景を見ているかのようでした。

東山魁夷 「満ち来る潮(小下図1)」「満ち来る潮(小下図2)」
こちらは先ほどのスケッチと同じ「満ち来る潮」のための下図です。同じ構図の絵が2枚展示されているのですが、そのうち1つは縦・横・斜めに格子状に定規で細かく線を引き、その配置やリズム感を確かめているような感じになっていました。この下図を観てから本図を観るとより楽しめます。

東山魁夷 「満ち来る潮」 ★こちらで観られます
これが先ほどのスケッチと下図の完成図です。恐らく縦は2mくらい、横は9mくらいある大作で、実際の浜が目の前に広がっているかのような迫力があります。海の岩場に波がぶつかる様子や、今まさにぶつかった波が大きく飛沫を飛ばしています。右上・左下には金粉が使われ、白波にはプラチナも使われているらしく、目に鮮やかです。 緑がかった海や岩にも所々金が使われていて、非常に装飾的な雰囲気とダイナミックさがありました。 なお、この画題は万葉集から取られているそうです。

山口蓬春 「新宮殿杉戸楓4分の1下絵」 ★こちらで観られます
完成することなく下絵で終わってしまった作品のようですが、十分見応えがあります。目の覚めるような鮮やかなオレンジのモミジが描かれています。そのモミジはスタンプのように同じ形をしていて、デフォルメされているかのようでした。背景もオレンジに染まり、装飾的な華やかさを感じました。

橋本明治 「朝陽桜」 ★こちらで観られます
これは先ほどのモミジの絵と対になっている感じでした。こちらも紋章かスタンプのように単純化された桜の花で埋め尽くされています。背景は金で、所々に花の上にも金がまぶしてあります。これはどうやら陽の光を表現しているようです。同じ形ですべて正面を向いた桜はリズム感があり、堂々とした風格を感じました。琳派っぽい装飾性があるようでした。


<第3章 昭和の日本画>
このコーナーは昭和の日本画を紹介するコーナーで、東山魁夷の作品は2点のみです。
昭和時代、官展である帝展と在野の院展が2大勢力を形成していたようですが、やがて不安定になり、日本画滅亡論まで囁かれた激動の時代に入っていったようです。そうした中、西洋のスタイルを取り入れるなど切磋琢磨していき、また、百貨店や画廊でも展覧会を開くなど大衆化にも力を入れるなどして、盛り返していったと説明されていました。ここではそうした激動の中の作品を紹介していました。

横山大観 「松竹梅のうち 松(白砂青松)」
川合玉堂 「松竹梅のうち 竹(東風)」
川端龍子 「松竹梅のうち 梅(紫昏図)」

3人で松竹梅の作品を持ち寄ったセットです。特に好みは梅で、藁葺きの小屋と梅の木が簡略化されて描かれていました。その筆遣いは大胆さと流麗な流れを感じました。

横山大観 「松竹梅のうち 梅(暗香浮動)」
川合玉堂 「松竹梅のうち 松(老松)」
川端龍子 「松竹梅のうち 竹(物語)」

これも3人で松竹梅のセットです。分担を変えて3通り作っていたようで、この展覧ではこの2セットがみられます。この中で特に好きなのは梅で、手前には梅の木か描かれ、背景には霧かモヤに包まれた山?とぼんやりと太陽も描かれています。陸と空の境界が曖昧で、暗香浮動という響きがなんとなくわかる気がしました。

川崎鈴彦 「潮霧」
全体的にモヤがかかっている感じの港町?の絵です。見おろす感じで、瓦屋根の家々の中に、ぽつんと真っ白な灯台が浮かぶように描かれています。灯台の周りは黒い影のようになり、灯台の白さや存在感を増しているようでした。また、瓦屋根の家々はキュビスムを思わせる幾何学な美しさもありました。

石川響 「房総」
澄んだ空、砂浜、水平線が描かれ開放感がある爽やかな絵です。波打ち際には馬が横向きになって頭をたれています。砂浜に残った水が鏡のように馬や空を映しているのが一際美しさを感じました。

杉山寧 「響」
大瀑布の岩で仰向けになり、右足を上げる裸婦が描かれています。裸婦の肉感的な感じや影のつき方は西洋画のように思います。また、背景の滝の垂直への流れや、三角形の岩、脚で三角形を描いてオイル裸婦など、構図はかなり計算されているそうです。生命感や躍動感を感じる一方で不思議な感じのする作品でした。

川崎春彦 「霽るる」
フォービスムのような濃い色彩で、群青の海と富士山を描いた作品です。円を描くような雲と、波の飛沫との境目が曖昧で幻想的な感じでした。力強く神秘的な雰囲気のある作品でした。

<第4章 魁夷が描く京の四季>
最後のコーナーは東山魁夷の京都をテーマにした作品が4点だけある小部屋です。京都は今描いておかないと無くなるという川端康成の言葉を聴いて、東山魁夷は京都の四季の連作に取り組んだそうです。ここにもいずれも美しい四季が揃っていました。

東山魁夷 「緑潤う」
川とその周りを描いた作品。水色の水面と濃く鮮やかな緑が落ち着いた雰囲気を出していました。 また、水面に空や木が反射して見えていて、時が止まったかのような静けさを感じました。

東山魁夷 「年暮る」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品です。しんしんと降る雪の下、軒を連ねる家々が描かれていて、雪の夜景を、微妙な水色~白の濃淡の屋根で表現しています。屋根からは幾何学的なリズムを感じ、手前で灯りがうっすら漏れている家など温かみを感じる部分もありました。


ということで、全体的に数は少ないけれども素晴らしい作品に会うことが出来ました。この量で1200円ってのは高いなとも思いますがw 


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