関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

薔薇と光の画家 アンリ・ル・シダネル展 -フランス ジェルブロワの風- 【損保ジャパン東郷青児美術館】

先週の日曜日に、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で終盤となった「薔薇と光の画家 アンリ・ル・シダネル展 -フランス ジェルブロワの風-」を観てきました。

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【展覧名】
 薔薇と光の画家 アンリ・ル・シダネル展 -フランス ジェルブロワの風-

【公式サイト】
 http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html

【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅


【会期】2012年4月14日(土)~7月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんはそこそこ入っていましたが、混んでいるというわけでもなく快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はフランスの近代画家アンリ・ル・シダネルの個展で、昨年末から2月頃まで埼玉県立近代美術館で行われていた展覧会の巡回となります。内容・章構成はほぼ同じで、少し入れ替わっている作品があるようでした。この展示は既に2回ご紹介しましたので、今回は各章の説明などは割愛して、まだご紹介していない作品と入れ替わっていると思われる作品の中で気に入ったものについて書いていこうと思います。(シダネルについての詳細は参考記事を読んで頂けると嬉しいです。)

 参考記事:
  アンリ・ル・シダネル展 (埼玉県立近代美術館)
  アンリ・ル・シダネル展 2回目(埼玉県立近代美術館)

<第1章 自画像>
最初の章は自画像のコーナーですが、ここは1点しかなく埼玉の展示と変わりはありませんでした。

<第2章 エタプル>
続いて初期にエタプルという村で描いた作品のコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「横向きの若い女性(エタプル)」
木陰に座っている横向きの女性像です。奥の方に光が当たっていて手前が暗くなっています。女性の服が白っぽい水色に見えるのは影の表現かな? 静かで理知的な雰囲気のある女性でした。

アンリ・ル・シダネル 「河口に立つ少女(エタプル)」
白の服とピンク色のスカートを履いた女性像で、背景には薄い水色の川が画面一杯に描かれています。色の取り合わせが爽やかで印象派のような明るさの作品でした。


<第3章 人物像>
3章は主に家族を描いた肖像画のコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「イヴォンヌ・ル・シダネルの肖像」
孫を描いた晩年の作品で、短い金髪に青い目をした少女が描かれています。ちょっと目力があって子供とは思えない賢そうな顔をしています。 また、長い棒状の点描のような技法で描かれていて、ゴッホの晩年の技法を想起するかな。しかし、シダネルの作品は色も淡目で穏やかな雰囲気があります。

アンリ・ル・シダネル 「カミーユ・ル・シダネル[ヴェネツィア]」
手を組んで横向きに座る女性を描いたリトグラフです。茶色の濃淡で描かれ、顔はぼんやりしています。この作品もうねりのような線が集まった表現で、神秘的なゆらめきを感じました。


<第4章 オワーズ県の小さな町々>
4章はオワーズ県のボーヴェに移り住んだ1900年頃の作品のコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「道 [ソンジョン]」
手前に枝葉を四角くカットされた木々が並び、その間をシスターのような格好の人々が歩いている様子が描かれた作品です。奥には3階建ての建物が並び、右から夕日が照りつけているような表現が暖かみを感じさせました。

アンリ・ル・シダネル 「運河 [アミアン]」
手前に川、奥に赤い屋根の建物が描かれた風景画で、右から奥にかけて白い柵が伸びています。夕方から夜にかけての時間帯らしく、家の中にはオレンジの灯りがあり、それが水面にも映っています。優しく暖かい光で観ていてホッとするような光景でした。


<第5章 取材旅行>
続いては取材旅行の旅行先で描いた作品などが並んだコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「窓辺 [モントルイユ=ベレー]」
窓辺から池を望む風景が描かれ、手前にも緑の花が飾られています。細かい点を使って描いていますが、池の情感が豊かに表現されていました。また、絵の枠に沿うように、左側と下に窓枠が描かれた構図も面白かったです。

アンリ・ル・シダネル 「サン・マルコ広場 [ヴェネツィア]」
ヴェネツィアのサン・マルコ広場を描いた作品で、ちょっと暗めの青の空と、アーチのあるピンク色の建物(ドゥカーレ宮殿?)、鐘楼、柱なども描かれ、手前には沢山の人々が行き交っています。水平・垂直の直線が多くてかっちりした構図に見えるかな。一方でそれぞれの建物の配置や色の取り合わせが面白く、洒落た感じが旅情を誘う絵となっていました。


<第6章 ブルターニュ地方>
6章は祖先発祥の地であるブルターニュ地方を描いた作品が並ぶコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「橋 [ポン=タヴェン]」
中央に奥に伸びる川、奥には石の小さな橋、左右には川岸の家々が並んでいる様子が描かれた作品です。夕闇の中、一番手前の家と右奥の家からはオレンジの灯りが漏れ、幻想的な雰囲気を出しています。また、右には紅葉した植物もあり、暗い夕暮れなのに色鮮やかにすら感じました。


<第7章 ジェルブロワ>
7章はシダネルが庭園を作り、フランスの最も美しい村の1つと言われるまでになったジェルブロワのコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「花の植木鉢3つ [ジェルブロワ]」
手前に窓に置かれた3つの植木鉢があり、そこにオレンジ~赤の花が咲いています。その背景には庭と赤い壁の建物が観えるのですが、結構抽象的でオレンジが明るく観えます。3つの植木鉢の花のオレンジと背景が、共に画面を華やいだ雰囲気にしていました。画面の下の方は緑が多めなので対比的に感じるせいかな。

アンリ・ル・シダネル 「雪 [ジェルブロワ]」
並んだ3つの椅子と、門に置かれた大きな杯が描かれた作品です。木炭で描いた素描のような感じですが、ところどころに白のパステルで雪のようなものが描かれていました。ちょっと寒そうに見える作品です。

アンリ・ル・シダネル 「教会の家、黄昏 [ジェルブロワ]」
アンリ・ル・シダネル 「教会の家、月明かり [ジェルブロワ]」
同じ場所を描いたと思われる作品が2枚並んでいました。どちらもピンク色の壁の教会と、その下の家を描いているのですが、黄昏のほうは夕方で、2階の窓からオレンジの光が煌々と漏れています。一方で、月明かりの方は、作品名の通り月明かりに照らされているようで、黄昏に比べると全体的に青みがかっているように見えました。月明かりのほうが色自体が控えめかな。こちらにも2階の灯りはあるのですが、これも抑えた表現で静けさがより強調されているように思えました。

アンリ・ル・シダネル 「春の空 [ジェルブロワ]」
大きな画面に雲がもくもくと描かれた作品です。地平線はかなり下の方で、こんもりとした緑の木?やピンク色に染まった木らしきものが並んでいます。雲は雄大で流れるような表現でした。非常に明るく爽やかな1枚です。


<第8章 食卓>
8章はシダネルの真骨頂とも言える「アンティミスト」(身近なもの、特に室内画を情感を込めて描く作風)の特徴がよく出ているコーナーです。

アンリ・ル・シダネル 「3本の薔薇 [ジェルブロワ]」
手前に小さな円卓があり、そこに置かれた赤、ピンク、黄色の3本の薔薇が描かれています。近くにはベンチがあり、奥に緑のアーチ越しに田園風景も見えるので、テラスを木が覆っているような感じかな? 手前は暗めですが所々に木漏れ日が落ちている様子も描かれています。この絵の中には誰も居ませんが、テーブルの薔薇が人の営みを感じさせました。

アンリ・ル・シダネル 「薔薇色のテーブルクロス [ヴェルサイユ]」
室内にあるピンクのテーブルクロスの円卓に、活けられた花、ティーカップ、グラス、水差し、瓶、ティーポットなどが置かれている様子を描いた作品です。こちらも画面には誰もいませんが、お茶でもしようとしているような雰囲気があります。また、巧みな陰影で右から柔らかい日差しを感じるのも見事でした。ピンク色が多く使われているせいか、幸せそうな印象も受けます。

8章の最後にはオランダのラーレンにあるシンガー美術館の案内がありました。ここは画家でコレクターだったウィリアム・シンガーJr.のコレクションを元にした美術館で、今回の展覧会にも多く出品しています。 シンガーとシダネルはどこで知り合ったかはハッキリしないそうですが、恐らくピッツバーグを訪問した際に、たまたま同じ展覧会に出品したのをきっかけに仲良くなったと考えられるそうです。その後家族ぐるみの付き合いもしていたようで、その縁で豊富なシダネルの作品コレクションを有しているようでした。


<第9章 ヴェルサイユ>
最後は晩年を過ごしたヴェルサイユのコーナーです。シダネルはヴェルサイユ宮殿のすぐ近くに住んでいたようです。

アンリ・ル・シダネル 「薔薇の花に覆われた家 [ヴェルサイユ]」 ★こちらで観られます
タイトル通り薔薇が壁を覆うように生えている建物を描いた作品です。斜めから見たような構図で、赤とピンクの薔薇が華やかです。そしてやはり建物の中からはオレンジの光が漏れていて、人の気配を感じさせました。


ということで、流石に3回目なので今回は満足度を4にしましたが、私のお気に入りの展示です。埼玉とまったく同じものかと思っていたら、まだ観ていない作品もあったのは収穫かな。今週末で終わってしまいますので、気になる方はこの土日にどうぞ。

おまけ:
今回の常設はドニのリトグラフとルオーの白黒版画が新たに追加になっているようでした。
ドニの作品はこの美術館で開催されたドニ展の際に尽力したドニの孫のクレール・ドニ氏が、展覧会の記念の日本の人々を元気づけたいという思いで寄贈してくれたそうです。こちらも1つの見所になるかと思います。
 参考記事:モーリス・ドニ -いのちの輝き、子どものいる風景- (損保ジャパン東郷青児美術館)




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評価




浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- (前期 感想後編)【太田記念美術館】

今日は前回の記事に引き続き、太田記念美術館の「浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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【展覧名】
 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H240607nekozukushi.html

【会場】太田記念美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅


【会期】
 前期:2012年06月01日(金)~2012年06月26日(火)
 後期:2012年06月30日(土)~2012年07月26日(木)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前回は1階と2階の半分くらいまでご紹介しましたが、今日は2階の残りと地下の展示の内容をご紹介します。後半は国芳の門弟以外の作品も結構ありました。

 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
  奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  月岡芳年「月百姿」展 後期 (礫川浮世絵美術館)


<第四景 猫は千両役者>
4章は猫を千両役者のように取り上げている作品が並ぶコーナーです。天保12年(1841年)に所作事という歌舞伎舞踊に猫の巧妙な動きが取り入れられたそうで、猫の絵の流行を支える要因となったそうです。ここにはそうした歌舞伎にも関係のある作品が並んでいました。

112 歌川国芳 「流行猫の戯 道行 猫柳婬月影」
擬人化された2人の猫が、紫色の歌舞伎の衣装を着た姿で描かれた作品で、これは市村座で上演された梅柳対相傘という歌舞伎を題材にしているそうです。2人とも特徴的な顔をしているので役者に似せているのかな? よく観ると着物には小判や鈴など猫を連想するモチーフが描かれていたのも面白かったです。
「流行猫の戯」は他にも2点並んでいました。また、このコーナーには106歌川国芳の「荷宝蔵壁のむだ書」もありました。


<第五景 猫の仕事・猫の遊び>
続いては猫の仕事と猫をモチーフにした玩具などが並ぶコーナーです。そもそも猫は奈良時代に中国の貿易船に乗って日本に着たのですが、その際に積荷の書物をネズミから守る益獣として連れてこられました。江戸時代でも猫の仕事といえばネズミ捕りで、特に養蚕農家では蚕を食べるネズミを退治してくれる大事な存在だったようです。また、米で出来た糊を使う羽子板屋にも必ずと言って良いほど猫が飼われていたとのことでした。
一方、江戸時代のボードゲームにも猫の駒が使われていたようで、猫グッズが流行るなど当時から猫は人気があったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

135 歌川芳員 「かひこ心得草」
美人がタスキを縛っている様子を描いた作品で、足元には3匹の子猫が仲良くしています。上部には蚕に葉っぱを上げているところも描かれていて、養蚕と猫の関係性を感じさせました。観ていて和みますが、それだけではなくこの猫たちも重要な使命があったんですね。

139 「鼠除猫」
ぎょろっと厳しい表情をした迫力ある猫が、手に鼠を捕まえて爪を立てている様子を描いた作品です。その上には、この猫は昔 弘法大師が描いた猫の写しで、ネズミ退治の大守護であると書いてあるようです(結構読めます) これは蚕を養う家向けの絵で、「売薬版画」と呼ばれるものだそうで、江戸時代に富山の薬売りが得意先におまけとして配った多色刷り版画とのことでした。効果があるのか分かりませんが、現代で言えばおまけで貰えるカードみたいなものかなw この辺には何点か売薬版画が並んでいました。

143 「猫鼠十六むさし」 ★こちらで観られます
木で出来た箱の上に、中央に小さな猫の像 幾何学的なマス目の箱の辺に16匹のネズミたちの像が置かれている作品です。これは当時ポピュラーだったゲームだそうで、駒にも細かく表情がつけられ可愛らしい雰囲気でした。どうやって遊ぶんだろう??

144-155 「花巻人形」 ★こちらで観られます
土で出来た猫の人形が10体程度ずらりと並んでいました。これらは花巻をはじめ全国で作られた人形だそうで、ちょっと作りの精度が高いとは言えませんが、様々な表情の猫たちで各地の風土を感じさせる人形でした。

122-124 月岡芳年 「猫鼠合戦」
擬人化された猫とネズミの合戦の様子を描いた数枚セットの作品です。袋に頭を突っ込んだ猫がネズミにやられていたり、ネズミがまたたびを炊き猫が酔っ払っている間にネズミたちが米を食べたりと、意外とネズミが強敵として描かれています。猫たちは間抜けで憎めないところが何とも可愛いかったです。

131 新田道純 「新田猫」
これは肉筆の掛け軸で、じっとこちらを観る簡略化された猫が描かれています。こちらもネズミ除けに効果があるとされたそうですが、丸っこくて柔和な雰囲気でした。


<第八景 猫の絵本>
続いては2階の吹き抜け側のケースの中の展示コーナーです。ここには黄表紙や合巻などに取り上げられた猫の作品が並んでいます。特に国芳と山東京伝の合作である「朧月猫の草紙」はヒットしたそうです。

218-230 山東京伝 作・歌川国芳 画 「朧月猫の草紙 初編~七編/二編~七編(袋)」
白黒の本で、擬人化された猫?や化け猫など様々な猫が描かれたページが展示されていました。どういうストーリーかはわかりませんでしたが楽しそうな雰囲気でした。

この辺には小さいコミックのような本が並んでいました。

241 ジェイムズ夫人 訳・鈴木宗三 画 「しっぺい太郎」
人身御供(生贄)を要求する化け猫を、しっぺい太郎という犬が退治するという物語を、英語に翻訳した作品です。月の下で輪になって踊る猫たちが描かれ、周りには英語でTell it not to Shippe Taroと書いてありました。この物語は化け猫ではなく化け猿(ヒヒ)だと思うのですが、ちょっとホラーな雰囲気でした。解説によると、これはちりめん本というシワ加工のある本で、欧米人向けの土産物のようです。
この辺にあった百猫画譜という作品も好みでした。


<第六景 猫の事件簿>
ここからは地下の展示室で、6章は事件を描いた絵に出てくる猫たちが並ぶコーナーです。古くは源氏物語で女三の宮と柏木の不義の発端として猫が重要な役割を担った様子が描かれたり、猫とは直接関係のない忠臣蔵に描かれたり、幕末の風刺にも猫が登場するようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

159 歌川国安 「青楼若三人 女三の宮」
立派なかんざしを沢山つけた花魁が、房のついた紐を垂らしていて、猫がそれをじっとみている様子が描かれています。花魁を女三の宮のイメージに重ね、画中には病床の柏木が女三の宮に贈った執着の歌も書かれているようです。解説を観るとなるほどとわかりますが、それを知らないと単に戯れているように見えますw 昔の絵は教養が無いと分からないですね…。

168 「道化肴市場」 ★こちらで観られます
猫がコノシロ(コハダ)を持って逃げ、それを食べている様子が描かれた作品で、周りには棒を持って追いかけてくる3人の男、橋の欄干でそれを見ている3人、慌てふためく3人、女性の姿も1人描かれています。これだけだと泥棒猫を描いた作品に思えますが、実はこれは江戸城の無血開城を風刺したものだそうで、コノシロはこの城(江戸城)で、追いかけてくるのは仙台藩・庄内藩・会津藩の3藩、欄干は土佐藩・薩摩藩・長州藩、慌てているのは公家、女性は皇女和宮を表しているそうです。よく観ると、着物の模様などが家紋や藩の特産品などとなっているようで、それを元に読解するようでした。皮肉が効いていて面白いです。


<第七景 猫のまち>
最後はおもちゃ絵に出てくる猫たちを描いた作品が並ぶコーナーです。擬人化されたものや狂言の場面を描いたものなどもありました。

190 歌川国利 「新坂猫の戯」
農村風景のような所で、擬人化された猫たちが子供の遊びに興じる様子を描いた作品です。竹馬、ブランコ、車輪転がしなど楽しそうに遊んでいます。中には滝に打たれるような奴も…w 当時の子供の風習も伝わってきそうな作品でした。

193 小林幾英 「志ん坂猫のおんせん」
これは温泉と書かれた旗の立つお風呂屋さんの中で、猫たちが温泉に入っている様子が描かれた作品です。桶を持って身体を流したり、お風呂屋さんの中の光景そのものですw 解説によると、これに似た作品は結構数多くあったそうで、鏑木清方は随筆の中で、子供の頃にこうした猫の温泉の絵に慣れ親しんだことを書いているとのことでした。可愛らしくてのんびりした雰囲気に癒される作品です。

最後は様々な職業を猫にしたものや、出初式をする猫、猫の恋愛や嫁入り、猫の花見、猫の学校など江戸~明治の風俗が伝わってくるような作品が並んでいました。


ということで、愉快でちょっとトボけた雰囲気のある猫たちが沢山出てくる展覧会でした。浮世絵好きだけでなく猫好きの人にも楽しめそうな展示です。既に後期展示となっていますが、後期も有名作・人気作が出てくるようですので、出来れば後期も行きたいと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- (前期 感想前編)【太田記念美術館】

10日ほど前の日曜日に、原宿の太田記念美術館で「浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-」を観てきました。この展示は前期・後期で大きな入れ替えがあるそうで、この時観てきたのは前期の内容となります(既に前期は終了) メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H240607nekozukushi.html

【会場】太田記念美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅


【会期】
 前期:2012年06月01日(金)~2012年06月26日(火)
 後期:2012年06月30日(土)~2012年07月26日(木)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思った以上の賑わいで、通路が狭いこともあり結構混雑した感じでした。特に2階は混み合っていて、場所によっては作品を観るのにちょっと待つくらいです。逆に地下はスペースに余裕があるのでさほど気にならない程度でした。

さて、今回の展示は、タイトルに「猫百景」や「ネコづくし」と入っているように猫を描いた浮世絵が前期後期合わせて243点も集まるという内容で、まさに猫が主役の展覧会となっています。主に歌川国芳とその門弟の描いた作品が中心(門下でないものもあります)で、猫好きで奇想の絵師だった国芳の魅力が存分に発揮された作品が多かったように思います。主題などで章分けされていましたので、詳しくは各章で気に入った作品と共にご紹介しようと思います。

 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
  奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  月岡芳年「月百姿」展 後期 (礫川浮世絵美術館)


<肉筆>
まずは座敷に上がるコーナーで、ここは作品リストの上では各章に組み込まれていますが、様々な画題の肉筆の掛け軸が並んでいました。

43 月岡雪鼎 「髪すき」
これは掛け軸で、こたつに向かって髪を結ってもらいながら長い手紙を読む女性が描かれています。その左には手紙にじゃれつく三毛猫の姿があり、ほのぼのした雰囲気です。猫らしい手の動きも面白かったw

36 月岡芳年 「歌川国芳肖像」
こちらも掛け軸で、簡素に描かれた国芳の肖像が描かれています。座って振り返るポーズで、その傍らには白い猫の姿もあり、のんびりした雰囲気が出ています。猫好きだった師匠への月岡芳年の愛情が感じられる作品でした。


<第一景 猫百変化>
まず1章は猫たちが様々に化ける様子を描いた作品のコーナーです。擬人化された猫や、猫が集まって別のものを表す作品などが並びます。

1 歌川国芳 「猫の当字 かつを」 ★こちらで観られます
これは国芳展があると高確率で目にするシリーズかも?w 猫が「かつを」という文字に見えるように集まっている様子を描いたものです。袋を被っていたり、鰹を食べていたり、喧嘩していたりと猫たちも様々な様相です。ちょっとトボけた猫たちが何とも可愛らしく、発想・構図も非常に面白い作品でした。

4 歌川芳藤 「小猫をあつめ大猫とする」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、たくさん(19匹)の猫たちが集まって振り返る三毛猫の姿になっている作品です。若干、集まり方が無理やりな感じがしないこともないw こうした何かを寄せ集めて別のものにする作品はジャンル化され「寄せ絵」と言うそうですが、師匠の国芳も「みかけはこはゐがとんだいゝ人だ」という作品のように人が集まって大きな人になる作品を残しています。そのため、この絵は猫好きで寄せ絵を得意とした師匠譲りの作品のように思いました。

この隣には猫と鈴が集まって化け猫になる5「五拾三次之内猫之怪」などもありました。

10 歌川国芳 「流行猫の曲鞠」 ★こちらで観られます
擬人化され裃を着た10人の猫の侍たちが、鞠を蹴ったり背中に乗せたりと鞠の曲芸を行なっている様子が描かれた作品です。これは曲鞠の名人である菊川国丸の実演姿を猫に見立てたそうで、何とも楽しげです。ぽんぽん蹴ってるような動きが感じられるのも面白いでかったw

17 歌川国芳 「猫の百面相 忠臣蔵」
これは擬人化された猫の肖像が7人分描かれた団扇で、忠臣蔵を演じた役者の顔に見立てて描かれています。キリッとした表情が猫っぽくなくて何か可笑しいw これは恐らく天保の改革で役者絵を禁じられた頃の作品じゃないかな? これは役者絵じゃなくて猫です!と言い張るための擬人化ではないかと。解説によると、これはシリーズもののようですが4図しか確認されていないそうです。隣にその1つが展示されていました。

26 歌川国芳 「初雪の戯遊」
3枚セットの続き絵で、右と中央の2枚には雪で作った大きな猫の像があり、その周りには着物の女性たちが裸足に素手で雪猫を作っている様子が描かれています。みんな楽しそうな表情をしていて、非常にハツラツとした印象を受けました。初雪が嬉しくて喜んでいるのかな?

この近くには白猫が集まって骸骨の模様になっている服を着た人物画30「国芳もやう 正札附現金男 野晒悟助」(★こちらで観られます)もありました。

142 牧金之助 「佐賀夜桜猫退治」
これは紙を繰り抜いて作るジオラマのような作品で、佐賀の化猫騒動に取材しているそうです。(佐賀の化猫騒動については後の章でご紹介します) 屋敷の庭に2又の猫が大勢の武者に囲まれ戦っている様子で、立体になっている為 臨場感がありました。おもちゃ絵みたいな感じで面白い仕掛けです。


<第二景 猫の一日~遊んで眠ってしかられて>
2章からは2階です。2章には猫の日常を描いた作品が並んでいました。2階は狭い通路の両側に展示品が並ぶので、特に混んでいます。

49 鈴木春信 「水仙花」
こたつに座る2人の着物の女性と、こたつの上で寝る猫を描いた作品です。左の女性はこたつの先にまで足を伸ばしているのですが、それを右の女性がくすぐっているのが微笑ましい光景です。猫はそんなことお構いなしでゴロっとしていて気持ち良さそう…。平穏な雰囲気の漂う作品でした。

65 喜多川歌麿 「針仕事」
布をたたんでいる?母親と、傍らの子供が描かれた作品で、母親が相手をしてくれないせいか、子供は鏡を持って猫に見せています。猫は自分の姿を観て威嚇する姿勢(前かがみで腰をあげるポーズ)をして警戒しているようでした。猫にはちょっと可哀想ですが、犬猫を飼うと誰もが1回はこれをやるんじゃないかなw 悪戯心を感じる作品でした。

62 歌川国芳 「七小町 雨こい小町」
前かがみで下を向き、手に持つ徳利を覗きこむ着物の女性と、その足元の2匹の猫を描いた作品です。1匹は女性にじゃれつき、もう1匹は忍び足で女性に近づいてきます。女性のポーズを含めて楽しげな雰囲気です。右上には小野小町が雨乞いの歌を詠んだところ雨が降ったという伝説を描いた画中画もありました。

72 歌川国芳 「艶姿十六女仙 豊干禅師」
手を裏返しに組んで伸びをする女性と、腰を高く上げてあくびをする虎猫が描かれた作品で、眠さがシンクロしている感じかな。そして、右上には寒山・拾得の師匠で虎を従えていたとされる豊干禅師が描かれています。豊干禅師、虎、寒山、拾得が寝ている四睡図は日本画でもよく題材にされますが、それを美人と猫に関連付けているのが面白いです。さらに賛には寅の刻(16時)に起きたという書かれているようで、虎・猫づくしの1枚でした。

58 月岡芳年 「風俗三十二相 あつたかさう 寛政年間町家後家の風俗」
月岡芳年の○○さうのシリーズの1枚で、こたつに本を置いて美女の未亡人(後家)が温まっています。そしてその上に猫が寝転がっているのですが、ちょっと変な姿勢に見えるかな。これも冬の穏やかな時間を思わせる、心まで温まりそうな作品でした。
 参考記事:東京国立博物館の案内 (2009年11月)


<第三景 猫のお化け>
続いては化け猫を描いた作品のコーナーです。猫は夜行性でふらっと出かけたり謎めいた行動をとること等から、歳を重ねた猫は人語を解す尾の分かれた猫又になると考えられてきたようです。ここにはそうした猫のお化けを描いた作品が並んでいました。

93 歌川国貞(三代歌川豊国) 「八代目市川団十郎の伊東壮太 四代目市川小団次の後室さがの方 四代目尾上梅幸の愛妾胡蝶」
これは鍋島(佐賀)の化け猫騒動を題材にした作品で、3枚続きで1枚に1人ずつ役者が描かれ、中央と右には屏風の中から猫と子供が抜け出して踊りを踊っている様子が描かれています。妖怪とは言え可愛らしく、特に今まさに絵から出てくる猫が面白いです。

今回の展示で何回か出てくる鍋島の化け猫騒動についてですが、これは佐賀藩の2代目当主である光茂が臣下を惨殺したのを機に起った騒動だそうです。臣下の母は飼っていた猫に悲しみの胸中を語り自害し、その母の血を舐めた猫が化け猫となり、城内に入り込んで光茂を毎晩苦しめたそうです。最後は忠臣の子守半左衛門によって退治されるのですが、この騒動は歌舞伎の題材にもなったそうで、藩から上演中止の申し立てがあったそうです。どこまで本当か分かりませんが、当時の絵師たちのインスピレーションにもなった様子がよく分かります。

このコーナーには85歌川国芳の「五拾三次之内 岡崎の場」もありました。


ということで、序盤から猫の可愛さ・可笑しさが表現された作品が並んでいます。後半は猫の役割のようなものを描いた作品もありましたので、次回はそれをご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




Orie Ichihashi -IMPRESSIONNISME- 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

前回ご紹介した東京駅近くのお店でランチをした後、少し歩いて銀座のポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)に行って、「Orie Ichihashi -IMPRESSIONNISME-」を観てきました。

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【展覧名】
 Orie Ichihashi -IMPRESSIONNISME-

【公式サイト】
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/detail.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2012年6月9日(土)~7月16日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(平日12時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
平日のお昼ということもあり、空いていてゆっくり観ることが出来ました。

さて、今回の展示はオルビスなどの広告やダ・ヴィンチなどの雑誌の写真で活躍されている市橋織江 氏という1978年生まれの女性写真家の個展となっています。私は知らなかったのですが今注目されているそうで、作風の特徴は淡い光と柔らかな色彩にあるそうです。そして今回の展示では絵画の「印象派」のタイトルを冠して、感じたままを表現したいという気持ちや、刻々と変わる光や空気を描いた印象派の画家のように、二度と無い瞬間を撮りたいと考えを持ったそうです。

展示作品は主にパリ市街・パリ近郊を撮った作品が並んでいました。確かに印象派に通じるような詩情溢れる作風で、淡く落ち着いた色彩が絵画的な雰囲気を出していました。フィルムで撮影されているのだとか。
オルセー美術館付近の橋、チュイルリー公園(ルーヴル美術館とオランジュリー美術館の間にある公園。ここの写真は結構ありました)、セーヌ川の畔、オペラ座付近、ルーヴル美術館、ジヴェルニーのモネの家、コンコルド広場付近、エッフェル塔などの観光名所的な所や、ふとした街角、家の中などもあり、どこかノスタルジックなものを感じました。特に夕暮れ時の写真は幻想的で、観ているだけでパリに行きたくなります。
 参考記事:
  モネとジヴェルニーの画家たち 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  モネとジヴェルニーの画家たち 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)

ということで、非常に綺麗で洒落た作品の並ぶ展示でした。絵葉書や写真集も販売していて、連れが3枚くらい絵葉書を買っていました。印象派とは何か?を知らない方でも十分に楽しめると思いますので、銀座付近に出かける機会があったらチェックしてみると良いかと思います(しかもここはいつも無料です)

この後、ブリヂストン美術館にもハシゴして再度「あなたに見せたい絵があります。」を観てきたのですが、すでに終了している上に以前詳しくご紹介したので記事は割愛します。
 参考記事:あなたに見せたい絵があります。 (ブリヂストン美術館)


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




PAUL(ポール) 【東京駅界隈のお店】

先日、平日のお昼に銀座で美術館めぐりをしてきたのですが、その前に東京駅のすぐ近くのPAUL(ポール)というお店でランチを取ってきました。

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【店名】
 PAUL 東京八重洲店

【ジャンル】
 カフェ/レストラン

【公式サイト】
 http://www.pasconet.co.jp/paul/
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13004032/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 東京駅

【近くの美術館】
 三菱一号館美術館
 出光美術館
 東京国立近代美術館フィルムセンター
 ブリヂストン美術館
  など


【この日にかかった1人の費用】
 1500円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(平日12時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
正確には11時50分くらいに行ったのですが、12時になると近くのオフィスの人たちが沢山きて人気のお店のようでした。

中はこんな感じでパンやケーキだけ買うこともできます。
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このお店は1889年にパリのパン作りの名職人がフランス北部に作ったお店の支店で、フランス風のメニューがあります。関東にも支店は何点かあるのですが、カフェのない販売だけの支店もあるようです。

まずは自慢のパン。こちらはおかわり自由です。
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いちじくとくるみが入っていてとても美味しかったです。フランス小麦100%らしいです。

この日、私はクレープジャンボン(1260円)を頼みました。ジャンボンはフランス語でハムのことです。
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先日パリに行って以来、ハムとチーズのクレープにはまっているので、これを目当てにやってきましたw 中にハムとチーズが入っていて、チーズがとろっとして非常に美味しいです。まさに本場の味でした。

連れはオムレット・コンプレ(1029円)でした。
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きのこ、ハム、チーズなど様々な具の入ったオムレツで、ふんわりしてこれも美味しいとのことでした。

ドリンクセット(+399円)も頼みました。
P1010934.jpg P1010935.jpg
私はアイスコーヒーだったのですが、予想以上に美味しくて、まろやかかつコクのある味でした。


ということで、ちょっとお値段も高めですがフランスのカフェ気分が味わえるお店でした。パンのおかわりもできるし、今後もどんどん使っていきたいお店です。ケーキも美味しそうだったので、そのうちお茶でも寄ってみようと思います。



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クラインマイスター:16世紀前半ドイツにおける小画面の版画家たち 【国立西洋美術館】

前回ご紹介したベルリン国立美術館展を観た後、西洋美術館の常設も周ったのですが、その際に版画素描室で「クラインマイスター:16世紀前半ドイツにおける小画面の版画家たち」という展示も観てきました。

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P1010653.jpg P1010654.jpg

【展覧名】
 クラインマイスター:16世紀前半ドイツにおける小画面の版画家たち

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2012klein.html

【会場】国立西洋美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらの版画素描展示室はいつもよりは人が多いように思いましたが、空いていて自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は同時開催中の「ベルリン国立美術館展」に合わせるようにドイツの版画を題材にしています。版画制作が興隆した16世紀前半のドイツには腕の良い版画家達が活躍していたそうで、その中にはハガキ大(時には切手大)の小さな銅版画を作る人達がいたそうです。今回のタイトルにもある「クライン」とはドイツ語で「小さい」の意味で、職人を意味するマイスターと合わせると何となく意味が分かります。
そのクラインマイスターの作品は17世紀初頭にはインドまで伝播するほどの人気ぶりだったそうで、小さな画面だけでなく聖書、神話、寓意、歴史、農民など様々な主題の面白さも人気の理由だったようです。今回の展示はそうした作品が並んでいましたので、詳しくは気に入った作品を通して振り返ろうと思います。なお、この美術館の常設(この部屋も含む)はルールを守れば写真撮影可能ですので、今回も撮ってきた写真を使って何点かご紹介しようと思います。
 ※掲載等に問題があったらすぐに削除しますのでお知らせください。

まず入口に謎の虫眼鏡。趣旨も分からないうちに借りたのですが、借りて正解でした。
P1010658.jpg
というのも、作品が本当に小さいので肉眼で観ていると眼精疲労になりかねませんw


[アルブレヒト・アルトドルファー 「人類の堕罪と、キリストの生涯と受難によるその救済」]
まずはクラインマイスターの先駆的存在でドイツルネサンス期の画家・版画家・建築家のアルブレヒト・アルトドルファーという人のコーナーです。この人はクラインマイスターの1世代前の作家で、トランプ大や切手大の作品も作り、クラインマイスターたちに小さな版画を作るきっかけをもたらしたと考えられるそうです。「人類の堕罪と、キリストの生涯と受難によるその救済」というシリーズが並んでいて、1枚の額に4枚も入るくらい小さいです。

左上 アルブレヒト・アルトドルファー 「マリアの誕生をヨアヒムに告げる天使」
右上 アルブレヒト・アルトドルファー 「金門におけるヨアヒムとアンナの邂逅」
左下 アルブレヒト・アルトドルファー 「マリアの宮詣で」
右下 アルブレヒト・アルトドルファー 「受胎告知」
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これらは聖母マリアの誕生物語と、イエスを受胎したことを告知されるシーンまでの4枚。こうして離れて観ると全くわからないかもw 実際近くで観ると陰影や細部の表現まで巧みで驚きます。
この後もキリストの誕生~死~復活~昇天~最後の審判まで細かい作品が並んでいました。

[ゼーバルト・ベーハム、バルテル・ベーハム]
続いてはゼーバルト・ベーハム、バルテル・ベーハムという兄弟のコーナーです。2人はニュルンベルクに生まれた版画家で、ステンドグラスや木版の下絵なども手がけていた兄弟です。宗教改革の急進的一派に加担したり盗作事件などでゼーバルトはフランクフルト、バルテルはミュンヘンを活動拠点にしていたそうで、ゼーバルトは当時最も生産的な作者であった一方、バルテルは数は少ないものの発想力豊かな作品を残したそうです。デューラーやイタリア・ルネサンスの美術を取り入れつつ多彩で斬新な主題を描き、大きな人気を博したそうです。
 参考記事:
  アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然 (国立西洋美術館)
  黙示録―デューラー/ルドン (東京藝術大学大学美術館)

ゼーバルト・ベーハム 「キリストとサマリアの女」
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キリスト達ユダヤ人と敵対するサマリアの女性に、水を飲ませて欲しいと言った場面を描いたもの。これだと女性は愛想が良さそうに観えましたが、実際にはキリストの言葉に驚いたようです。

[ゼーバルト・ベーハム 「四福音書記者」]
新約聖書の四福音書の作者たちを描いたシリーズがありました。

左上 ゼーバルト・ベーハム 「聖マタイ」
右上 ゼーバルト・ベーハム 「聖マルコ」
左下 ゼーバルト・ベーハム 「聖ルカ」
右下 ゼーバルト・ベーハム 「聖ヨハネ」
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執筆を助けた天使と共に描かれるマタイ、ライオンと共に描かれたマルコ、犠牲を意味する牡牛を従えるルカ、霊感の豊かさを象徴する鷹と共に描かれたヨハネだそうです。こんなに細かいのにちゃんとそれぞれの特徴を表現しているのは凄い…。

ゼーバルト・ベーハム 「ヨハネの黙示録による像」
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これはヨハネの黙示録に挿絵を入れたもので、左は10章(天使に書物を食べさせられている)で、右は11章(預言をまっとうした証人が獣に殺された後、神に命を授けられて復活し、天に上る。この時大地震が起きる)のエピソードのようです。 特に右はその場面が1枚に収まっているのが凄いです。

ゼーバルト・ベーハム 「ルクレティア」
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前回のご紹介したベルリン国立美術館展の出品作にもありましたが、ルクレティアを題材にした作品は頻出です。胸に短剣が突き刺さってます。

ゼーバルト・ベーハム 「トリトンとネレイス」
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神話の主題もありました。ポセイドンの息子のトリトンと海の精のカップル。筋肉隆々でネレイスも肉感的。

ゼーバルト・ベーハム 「パリスの審判」
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パリスの審判も西洋画ではお馴染みのモチーフです。ヴィーナス、アテナ、ヘラの3人の中で一番美しいのは誰か?という争いの審判役になった牧童のパリス(これだとオッサンみたいですがw)がヴィーナスに勝者の証の黄金の林檎を渡しています。パリスへの賄賂が一番刺さったのがヴィーナスだったから勝ったのではないかと思いますw

[ゼーバルト・ベーハム 「ヘラクレスの十二功業」]
こちらも神話で、ヘラクレスの十二の功業が描かれていますが、一般には十二のうちに数えられない逸話も含まれているようです。(ケンタウロスと戦うヘラクレスなど)
 参考記事:大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 感想前編(国立西洋美術館)

左上 ゼーバルト・ベーハム 「ケンタウロスと戦うヘラクレス」
右上 ゼーバルト・ベーハム 「ネメアのライオンを殺すヘラクレス」
左下 ゼーバルト・ベーハム 「ヒュドラを退治するヘラクレス」
右下 ゼーバルト・ベーハム 「トロイア人と戦うヘラクレス」
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ライオンもヒュドラも意外と小さいw トロイア人の方が強そうです。(これは通常は十二功業の後の話)

ゼーバルト・ベーハム 「ヘラクレスとカクス」
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踏まれているのはカクスというヘラクレスの牛を盗んだ火を吐く怪物だそうです。緊迫した雰囲気です。

この先には「自由七学芸」という連作の作品もありました。そして連作以外の作品も並びます。

ゼーバルト・ベーハム 「子供と三つの頭蓋骨」
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分かりづらくてすみません。3つの骸骨と左上に子供の寝ている姿が描かれています。右上には落ちきった砂時計もあり、子供もあっという間に老人になって死ぬという儚さを表しているようでした。

ゼーバルト・ベーハム 「高貴で栄光ある女たちの凱旋行進」
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これは横長の作品。これも沢山の人が描きこまれ個性豊かに思えます。凱旋車で恋人の魅力に屈して甲冑を脱ぐ司令官は、愛は争いに優るという寓意が込められているようです。

ゼーバルト・ベーハム 「旗手」
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これは傭兵を描いたものだそうです。ただでさえ小さい作品なのにこの陰影やひだの表現が半端じゃないw

[ゼーバルト・ベーハム 「農民の祝祭(12の月)」]農民の12ヶ月の様子を描いたシリーズもありました。

ゼーバルト・ベーハム 「農民の宴」
ゼーバルト・ベーハム 「農民の喧嘩」
ゼーバルト・ベーハム 「垣根の陰で」
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踊ったり喧嘩したり、キスしたりと感情豊かな農民たちが描かれています。小さい画面にこれだけ物語性を感じるのも凄い…。

この近くにはバグパイプを吹く人の作品が2点程度ありました。

ゼーバルト・ベーハム 「小さな道化」
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道化師がリボンにがんじがらめになっているのかな? このリボンは「私はお前を引き裂いて糞をひってやった」と書いてあるそうです。よく観ると巻き糞みたいなのが道化師の下にありますねw

この近くにはゴブレットや仮面を描いた作品のシリーズもありました。これも恐ろしく精密です。

バルテル・ベーハム 「ユディット」
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ゼーバルトに比べると確かに点数が少なかったバルテルの作品。ユディットも西洋絵画頻出の画題で、敵将の元に寝返ったふりをして酔わせ、首を切り落としてきた女性です。尻に敷いている敵将の身体と、手に持つ頭の位置関係がおかしいことから首が切断されてる感じを受けました。しかし、ここでのユディットは裸婦を描くための口実なのだとか。
クラインマイスターの作品にはたまにエロティックなものもあるようです。


[ゲオルグ・ペンツ]
続いては デューラーの工房で修行し、ニュルンベルクで活躍したゲオルグ・ペンツのコーナーです。ペンツも宗教改革の急進派に加担して追放された身だったそうですが、同じ年には処分を解かれ戻ったそうです。イタリアに二度訪れたことがあるそうで、その影響を示す多様な作品を残したそうです。

ゲオルグ・ペンツ 「偶像崇拝をするソロモン」
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賢帝だったソロモンが年老いて妻や妾にそそのかされて異国の偶像を崇拝している姿で、手に何かを持って座る老人みたいな像を拝んでます。これが神の怒りに触れて王国は衰退し分裂したそうです。

この人は旧約・新約の題材の作品が並んでいました。

[ハインリヒ・アルデグレーファー 「死の力」]
最後はゾーストという地を活動拠点にしたハインリヒ・アルデグレーファーのコーナーです。300点におよぶエングレービングを残し、装飾デザインを得意としたそうです。熱心なプロテスタントだったそうで、作品からもその信条が読み取れるらしく、「死の力」というシリーズでは死に連れ去られるカトリックの聖職者たちが描かれていました。

左上 ハインリヒ・アルデグレーファー 「死と教皇」
右上 ハインリヒ・アルデグレーファー 「死と枢機卿」
左下 ハインリヒ・アルデグレーファー 「死と司教」
右下 ハインリヒ・アルデグレーファー 「死と修道院長」
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王に足に接吻させ神のように振る舞う教皇、免罪符を売る枢機卿、豪華な服を着た司教、でっぷりした修道院長 というようにカトリックの聖職者を批判した内容のようです。特に左下は分かりやすいかな。どれもちょっと死神馴れ馴れしいのが面白いw


ということで、非常に細かく面白い主題の作品が並んでいました。ここまで紹介しておいて今更ですが、今回の展示は写真で観るのと実際に観るのとでは大違いな展示だと思います。ベルリン国立美術館展を観に行かれる方は、是非こちらの展示も虫眼鏡を片手に観てみると面白いと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年 【国立西洋美術館】

先日ご紹介した上野の森の展示を観た後、すぐ近くの国立西洋美術館に行って「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」を観てきました。

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【展覧名】
 ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年

【公式サイト】
 http://www.berlin2012.jp/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2012berlin.html

【会場】国立西洋美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
公開初週の土曜日に行ったのですが、雨だったにも関わらず混んでいてどこでも作品の前に人だかりができるような感じでした。

さて、今回の展覧会はドイツのベルリン国立美術館の絵画・彫刻のコレクションの中から15世紀~18世紀の作品を集めたもので、タイトル通りヨーロッパ美術の400年の歴史を俯瞰するような内容となっています。イタリア、ドイツ、オランダなどから各時代を代表するようなビッグネームの作品が並び錚々たる顔ぶれです。時代を追うように章に分かれていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<第1部 第1章 15世紀:宗教と日常生活>
14世紀~15世紀にかけてのヨーロッパはルターの宗教改革、カトリックの対抗宗教改革、イスラム世界、科学や新しい学術など 宗教的な対立があった時代だそうで、ここに展示されている「龍を退治する聖ゲオルギウス」にはその対立構造を象徴しているようです。また、一方では聖母子を身近な存在として表現するようになり、15世紀後半のイタリアでは女性の理想の美しさが追求されるようになったとのことです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

4 ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ 「聖母子と聖ヒエロニムス」 ★こちらで観られます
本を手に取り何かを書き込む幼子イエスと、それを抱く青と赤の服の聖母マリア、その左には赤い枢機卿の格好をした4~5世紀の聖ヒエロニムスが描かれた作品です。平坦な感じで色鮮やかに描かれ、特に赤が一際目に付きました。解説によると、この聖ヒエロニムスは聖書のラテン語訳を行った聖人だそうです。また、キリストが聖書に書き込んでいる様子は自らの受難を暗示しているとのことでした。

最初の入口辺りには聖母子の彫刻作品が3点並んでいました。また少し先には受胎告知など聖書を題材にした作品が並びます。
聖母子は12世紀に成立したそうで、イコンとしても機能したようですが、15世紀のフィレンツェでドナテッロやルーカ・デッラ・ロッビアらによって神聖な存在の聖母子をごく普通の母と子の姿として表されたそうです。これは宗教観・人間観そのものの転換を意味しているらしく、その後17世紀まで連綿と受け継がれていったとのことでした。

6 チーマ・ダ・コネリアーノ(本名ジョヴァンニ・バッティスタ・チーマ)と工房 「聖ルチア、マグダラのマリア、アレクサンドリアの聖カタリナ」
3人の聖人が描かれた大きめの絵画作品で、中央に殉教した聖ルチア、右に車輪の残骸を持った聖カタリナ(車輪の拷問を受けた時、奇跡で破壊されたとされる女性)、左に香油の壺を持ったマグダラのマリア(キリストの足に香油を塗ったことに由来)が描かれています。いづれも異なる時代の聖人で、ルチアとカタリナは殉教者の証である棕櫚の葉を持っています。皆バラバラの方向を向いていて、無表情な感じでした。各聖人の持ち物など、聖人の絵のルールがよく分かる作品だと思います。

14 エルコレ・デ・ロベルティ 「洗礼者ヨハネ」 ★こちらで観られます
上半身をあらわにし、磔刑のキリストがつけられた杖のようなものを持つヨハネを描いた作品です。非常にやせ細っていて、ガリガリで顔もこけている感じです。背景には街が描かれているのですが、ちょっと遠近表現に違和感があるかな。解説によると、手に持つキリスト像は最初にキリストを救世主と認めた人物であることを示し、やせ細った身体はキリストの姿を連想させるそうです。また、背景の日の出(または日の入り)は一つの時代の終わり(旧約)または始まり(新約)の転換を意味しているとのことでした。

23 バイエルン北部の彫刻家 「龍を退治する聖ゲオルギウス」
長い槍を足元のドラゴンの口に突き刺し踏みつける騎士の彫刻像です。そのポーズが何だか四天王像みたいな構図に思えるかなw これはドラゴン退治をして村の人々をキリスト教に改宗させたゲオルギウスの像らしく、ドラゴンは異教や悪を象徴しゲオルギウスは悪に対する善の勝利を示すとのことです。今は剥げてしまったようですが、昔は鎧が金銀に、ドラゴンには青と緑の彩色がされていたとのことでした。中々迫力のある像だけに当時はもっとリアルだったのかも。

この近くには同じくゲオルギウスを題材にした22ティルマン・リーメンシュナイダー「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」(★こちらで観られます)もありました。こっちはドラゴンというより悪魔っぽい気がします。


<第1部 第2章 15-16世紀:魅惑の肖像画>
続いては15~16世紀の肖像画のコーナーです。当時はイタリアの商人・銀行家がヨーロッパの経済を支配していたそうですが、次第にドイツやフランドルの商人も非常に重要な役割となっていったそうです。ここにはそうした商人や貴族などを含む肖像が並んでいました

29 ルーカス・クラーナハ(父)の工房 「マルティン・ルターの肖像」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている肖像で、この顔は教科書で観た覚えがあります。これは宗教改革の主導者マルティン・ルターを描いたもので、黒いマントに黒い帽子の姿で、背景は水色なのでくっきりとした印象を受けます。解説によると、右の方を向いているような視線は、それまでの鑑賞者を見つめている作品と比べ新しい手法だったようです。その為か物思いに耽っているように観えました。
なお、ルターはカトリックから破門されてヴァルトブルク城に匿われていた時期があるようです。また、ルターは新約聖書のドイツ語訳を制作した人物でもあります。それがドイツ語の成立にも大きく影響しているようです。

28 アルブレヒト・デューラー 「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」 ★こちらで観られます
貴族だったニュルンベルクの商人を描いた肖像画で、デューラー最後の肖像だそうです。 当時の貴族の服装でやや左向きに描かれ、かなり精密かつ写実的な感じを受けます。というのもデューラーは肖像は正確でなければならないと考えていたようです。シワや光の反射などまで丁寧に描きこまれていて厳格そうな雰囲気がありました。
 参考記事:
  アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然 (国立西洋美術館)
  黙示録―デューラー/ルドン (東京藝術大学大学美術館)


<第1部 第3章 16世紀:マニエリスムの身体>
3章は16世紀後半から末にかけてのコーナーです。ルネサンスからバロックに移行する時期にミケランジェロの技法を模倣した誇張の多い技巧的な「マニエリスム」という様式が多く生まれました。これは、長く伸びた身体や手足の長いプロポーション、様々な方向へのねじれや回転を含んだポーズなどが特徴で、イタリアで生まれた後フランスにも伝わり、その後フランドル、オランダ、ドイツにも影響を与えたそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

36 ルーカス・クラーナハ(父) 「ルクレティア」 ★こちらで観られます
黒を背景に一歩踏み出すようなポーズで自分の心臓に短剣を向けている裸婦を描いた作品です。これはローマ王の息子に暴行され自害したルクレティアの像で、貞淑の象徴とされています。こぶりな胸で透き通る布を持っているのですが、どこかエロティックな雰囲気があって貞淑という感じでも無かったような…w 解説によると、足が長くS字を描く身体表現はマニエリスムらしさがあるようでした。

この辺には彫刻作品が並び、一歩踏み出すようなポーズのアポロ像やイルカと一緒のビーナス像などもありました。部屋の中央には逆立ちする青年の像や、壺を運ぶ人物像、人を抱きかかえる像など動きを感じる作品が多かったように思います。確かに手足も長めです。


<第1部 第4章 17世紀:絵画の黄金時代>
4章は17世紀のコーナーで、ここが最大の見所となります。16世紀に覇権を握っていた国はスペインで、強大な海軍力を持ち アメリカ大陸からの金銀などを背景にヨーロッパを席巻していました。また、この頃のヨーロッパは天文学・地誌学の発見が次々と発表され、世界秩序を新たな目で捉え直すようになった時代でもあるようです。
そしてその後、スペインの後にオランダが繁栄し絵画の黄金期を迎え、世俗画や風景画などそれまで格下とされた画題も発展していきました。

このコーナーの最初の方にはロイスダールやルーベンスの風景画なども並んでいました。

53 ディエゴ・ベラスケス 「3人の音楽家」 ★こちらで観られます
中央にビウエラというギターの先祖の楽器を持って歌う人物、右にバイオリンを弾く人、左に楽器を脇に抱えてグラスを持ちこっちを見て微笑む人(子供?)、背景には猿の姿が描かれています。暗めの背景に黒い髪に黒い服の人物が描かれているのに、何故か全体的に明るく感じられました。また、いずれの人物も表情豊かで面白いです。これはベラスケス初期の作品だそうですが、黒の使い方は流石でした。

59 ヤン・ステーン 「喧嘩するカードプレイヤー」
テーブルを中心に右にナイフを持った農民、その後ろに鋤を持った人物、テーブルの左には剣を抜こうとしている貴族風の男とそれを止める女性と子供が描かれています。テーブルには記録版、テーブル下にはバックギャモン?やトランプが落ちていて、どうやらイカサマを巡って喧嘩をしているようです。お互いに怒りを顕にして緊迫した雰囲気ですが、後ろの方ではニヤニヤして観ている人も…。解説によると階級の違う人達を対比的に描いているとのことでした。

この辺には精密なヴァニタス画もありました。

63 レンブラント・ファン・レイン 「ミネルヴァ」
今回のポスターにもなっている作品で、暗闇を背景に赤いマントに月桂樹の冠の女性が描かれ、白い顔が浮かび上がるような感じです。この作品は照明の反射で光ってわかりづらかったのですが、女性の背景にメデューサの盾があるようで、これはミネルヴァを示すもののようです。緻密な明暗表現でミネルヴァは神秘的な雰囲気がありました。
それにしても明暗の表現が肝となる作品だけにライティングが残念で仕方ないです。何とか直して欲しい…。

この隣にあったレンブラント派の「黄金の兜の男」(★こちらで観られます)も陰影が見事で素晴らしい作品でした。

62 ヨハネス・フェルメール 「真珠の首飾りの少女」 ★こちらで観られます
今回の一番の目玉作品で、この絵の前は特に人だかりができていました。
真珠のネックレスのリボンをつまみ上げて壁にかかった鏡を見ている少女を描いた作品で、女性の着ている黄色い服はフェルメールの作品でよく出てくるものかな。じっと鏡を見てポーズを取る仕草は今も昔も変わらないのかもw 時間が止まったような静かな雰囲気があります。 また、少女の左の窓からは柔らかい光が差し込み、非常に巧みな光の表現で部屋全体を包んでいます。手前の椅子の鋲にまで光の反射が表現されるなど緻密かつ自然な感じでした。
解説によると椅子の上には元々リュートがあったとのことでしたが、何で変えたんだろ??

ちなみにもうすぐ都美には「真珠の耳飾りの少女」も来るし、今年はフェルメールの当たり年です。むしろここ数年かなりのペースで来ているように思います。
 参考記事:
  フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメールからのラブレター 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 2回目 (国立西洋美術館)
  フェルメール光の王国展 (フェルメール・センター銀座)


<第1部 第5章1 18世紀:啓蒙の近代へ>
続いての5章は1部と2部に分かれていました。18世紀になると人間の感覚や感性の重要性が認識され始め、理性は人間を取り巻く環境と教育によって後天的に形成されるという思想が主流となったそうです。知性と感性の揺らぎが18世紀の美術を生み出したとのことで、ここではそうした時代の作品が並んでいました。

77 ヨハン・ゲオルグ・ディル 「戴冠の聖母」
バロック~ロココ時代の彫刻作品で、天に昇り女王として戴冠する聖母マリアの姿が表されています。手を合わせ右下を観るようなポーズで、膝を曲げてその下の足は作られていません。非常に動きを感じる服のヒダや捻りから劇的な印象を受けました。解説によると昔は実際に冠も乗っていたそうですが、第二次世界大戦中に失われたそうです。

68 セバスティアーノ・リッチ 「バテシバ」
円柱の立つ建物の中、中央で腰掛けて足を伸ばし振り返り気味の女性、その周りにはお世話をする女性たちが描かれています。これは水浴びをしているところをダビデに見られ横恋慕された人妻のバテシバで、夫はダビデの計略によって激戦地に送られて戦死しました。その後ダビデとバテシバの間に生まれた子はソロモン王となります。
滑らかな肌のバテシバは賢そうな顔をしていて艷やかな雰囲気もありました。背後に白い布を開く女性がいるせいか、画面に勢いがあるようにも感じます。

この部屋の壁には大きなタペストリーがありました。(これは西洋美術館の所蔵品)


<第2部 第6章 魅惑のイタリア・ルネサンス素描>
6章は下階で、ここはルネサンス期の素描のコーナーでした。この章のはじめには素描の道具なども展示されています。

100 ルーカ・シニョレッリ 「人物を背負うふたりの裸体像」 ★こちらで観られます
肩車をしている2組の裸体の人物像の素描です。右の組はこちらを向いていて、背負っている人は若く筋肉隆々といった感じで少し身をくねらせるポーズが理想的な人体像を思わせます。上に乗っている人物は天使みたいに見えるけど女性かな?
一方左の組は背を向けていて、こちらも背筋など筋肉の動きがよく表されているように思いました。

このコーナーは人物像だけでなく建物を描いた作品もありました。描きかけのものもあります。

101 ミケランジェロ・ブオナローティ 「聖家族のための習作」 ★こちらで観られます
右半分に聖母の横顔、左下に幼子イエスが手を伸ばす様子、イエスの後ろにヨセフ(これは自画像になっているらしい)、さらに後ろに洗礼者ヨハネとキリストが描かれた素描です。顔の大きさが様々でコラージュのようだと説明されていましたが、確かにそういう雰囲気もありつつ不思議と全体的に調和して見えます。細い線を使って陰影をつけていて、ラフのようでありながら夢想の中のような感じを受けました。

80 サンドロ・ボッティチェッリ 「ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:愛の原理を説くウェルギリウス(第17歌)」
  サンドロ・ボッティチェッリ 「ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)」
 ★こちらで観られます
ダンテの神曲の中の煉獄篇をテーマにした作品です。2枚あり、右は羽の生えた獣(足は鳥)が引っ張る車に座る人物や、その周りにいる沢山の人?、不思議な生き物が描かれています。一方、左の素描は羽の生えた天使や何組かの人物像が描かれていました。いずれもかなり繊細で、動きのある表現に観えます。
解説によると、ボッティチェリはこの仕事に力を入れすぎて他の仕事が手につかず生活に影響が出るほどだったそうです。素描にもかなり気合が入っています。


<第1部 第5章2 18世紀:啓蒙の近代へ>
再び上階に戻って5章の続きです。ロココから新古典主義が主流になり、その後ロマン主義が台頭してきた頃のコーナーです。

73 ジャン=アントワーヌ・ウードン 「エビと魚のある静物」★こちらで観られます
大理石で出来た大きなメダイヨンのような彫刻です。海老と沢山の魚が折り重なるようで、豪華な食事を思わせます。 海老のゴツゴツした殻の表現が素晴らしく、面白い作品でした。美味しそうw

近くには死んだ鳥を吊るした様子を描いた作品や、タペストリー(これも西洋美術館の所蔵品)などもありました。


ということで、確かにヨーロッパの絵画の歴史を一気に観ていくような展示でした。宗教画を始め、よく題材にされるモチーフも多々あるので、この展示で西洋美術の見方なども分かるかもしれません。フェルメールの作品もあるので今後はさらに混むことも予想されます。気になる方はお早めにどうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




UP CAFE(アップカフェ) 【上野界隈のお店】

前回ご紹介した上野の森美術館に行った後、西洋美術館に行ったのですが、まだ記事の準備ができていないので先に西洋美術館の後にお茶してきた「アップカフェ」をご紹介しようと思います。

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【店名】アップカフェ
【ジャンル】

【公式サイト】
 http://www.ecute.jp/ueno/shop/525.html
 http://www.jefb.co.jp/up-cafe/
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13124318/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【近くの美術館】
 国立西洋美術館
 上野の森美術館
 東京国立博物館
 東京都美術館
 国立科学博物館
 東京文化会館
 上野動物園
  など



【この日にかかった1人の費用】
 950円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_②_3_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日17時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このお店は以前ご紹介したC's CAFEと同じく上野駅の改札の中にあるエキュートのお店の1つで、3階のちょっと分かりづらい場所にあります。駅の中にあるため非常に人の出入りが多く、私が行った時もほぼ満席となっていました。
 参考記事:C's CAFE (上野界隈のお店)

中はこんな感じ。狭くて通路を通る人にぶつかられることがしばしば…w あまり落ち着くことはできません。
P1010908.jpg
セルフサービスで先にレジで注文&会計を済ましてから席につきます。

円形のカウンター席にはipadがあります。
P1010907.jpg
検索はできるけどYahoo!すら見られず、アップサーバーというサイトしか見られないようです。投稿された上野の写真などを閲覧することができました。

同じくカウンター席の中央に羊の彫刻作品が釣り下げられていました。芸大の黒川悦史という学生の方の作品だそうです。
P1010911.jpg
羊とケーキが混ざったような感じで美味しそうですw

この日はピザトースト(400円)、ミニョンフロマージュ(220円)、水だしアイスコーヒー(330円)を頼みました。
P1010901.jpg

まずはピザトースト。
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スタンダードだけど熱々でチーズたっぷりです。具もトマトソースも多くて結構美味しかったです。

続いてミニョンフロマージュ。
P1010905.jpg
小さめでとろりとしたチーズケーキです。まあ値段なりの美味しさといった感じです。

水だしアイスコーヒー。
P1010904.jpg
こちらは苦味があるけどまろやかで、後味はすっきりしていました。これも中々の美味しかったです。


ということで、混んでて落ち着かなかったですが、洒落たお店でした。結構安いのでコストパフォーマンスは良いんじゃないかと思います。良くも悪くも駅の中にあるのが特徴なので、今後も普段から使っていこうと思います。




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評価




ルドゥーテの「バラ図譜」展 【上野の森美術館】

先週の土曜日に上野の森美術館へ行って、ルドゥーテの「バラ図譜」展を観てきました。

P1010599.jpg P1010597.jpg

【展覧名】
 ルドゥーテの「バラ図譜」展

【公式サイト】
 http://www.eventsankei.jp/redoute_rose/

【会場】上野の森美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年6月6日(水) ~ 6月25日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日12時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展覧会はフランス革命前後にマリー・アントワネットとナポレオンの妻ジョセフィーヌに仕えた宮廷画家ルドゥーテの個展となっています。まずルドゥーテ自身についてですが、現在のベルギー領サン・ユベールに生まれ、10代の後半からパリにある兄の工房で装飾画家を務めました。そしてパリの王立植物博物館で絵画技師として働き、マリー・アントワネットに植物画を教え、宮廷の収集室付素描家の称号を得ていたそうです。革命が起きた後は、マルメゾン宮殿でバラなど世界中の珍しい植物を育てていたジョセフィーヌに、その記録係として雇われたそうです。
花のラファエロ、バラのレンブラントと讃えられたルドゥーテは、博物的正確さ踏まえつつ芸術性を備えた作品を残したそうで、特にジョゼフィーヌに捧げた169枚から成る「バラ図鑑」は代表作らしく、中には現存しないバラも描かれているそうです。この展示ではその「バラ図鑑」を一挙公開していましたので、いくつか気に入った作品をご紹介しようと思います。
ちなみにルドゥーテは81歳で死ぬまでに4000枚以上の作品があるそうで、昨年もルドゥーテの展覧会が開催されていました。
 参考記事:花の画家 ルドゥーテ『美花選』展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)


<I 古代種>
まずは古代ギリシャ・ローマから栽培されてきた3つの系統のバラを描いた作品のコーナーです。基本はロサ・ガリカという系統で、これはフランス南部(古名ガリア)から西アジアにかけて分布しているそうです。どれも香りが良いそうで、ガリカは赤色、ダマスクはピンク、アルバは白を後世に伝えたそうです。

[ガリカ系]
2 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ガリカ・オフィキナーリス(アポテカリー・ローズ)」
大きな赤~ピンク色をしたバラを描いた作品です。写実的に描かれていて、スコープで観ても分からないくらい細かく精密です。うぶ毛まで描かれてる…w 色合いも写実的でありながら気品がありました。
解説によると濃い紅色の深みを黒のぼかしで捉えているとのことで、スティップル法という点描による銅版で線刻による陰影をつけているようでした。

9 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ガリカ・ウェルシコロル‘ロサ・ムンディ’」
ピンクと白の縞模様のあるバラを描いた作品です。非常に細かい縞は繊細で華やかな印象を受けます。画風はどれも同じように見えますが、花は少しずつ種類が違っているようです。素人目にはほとんど一緒に見えるものもありますが…w ルドゥーテの観察眼と描写力が卓越しているのを感じさせます。

14 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ガリカ・アガタ・プロリフェラ」
ピンクの花の中から葉っぱが飛び出してきているバラを描いた作品です。花の中から2番目の花が咲く種類だそうで、そんなバラがあるのか!と驚きましたw (この後もいくつかそういう種類がありました)

20 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ガリカ・フローレ・マルモレオ」
ピンクの花が広がるバラで、コスモスみたいに開いていて変わった形をしています。花の中心の花柱の辺りには斑点があって、ちょっとキモいw
この先にもこれもバラなの?というものが結構あって、絵だけではなくバラの種類にも驚きっぱなしです。

[ダマスク系]
31 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ダマスケーナ」
1つの枝にピンクと白の花を咲かすバラを描いた作品です。どちらも繊細な色合いで、濃淡の表現が見事です。若干、花のボリュームが多すぎて騒がしい気もしますが華やかな雰囲気がありました。

[アルバ系]
42 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・アルバ・フローレ・プレーノ」
白い花を咲かすバラを描いた作品です。白地に白い花を印刷するのは難しいそうですが、細かい線でつけた陰影や周りのつぼみなどで輪郭を浮かび上がらせているようです。葉っぱの配置なども計算しているらしく、バランスも良かったです。

白い花は細かい線での陰影の付け方が特に分かりやすいと思います。


<II ケンティフォリア系及びモス系>
続いてのコーナーはケンティフォリア系及びモス系という2つの系統で、ケンティフォリアとは100枚の花弁(はなびら)という意味だそうです。その名の通り古代種に比べると花弁の数が多く花も大きめで華やかな系統らしく、16世紀のオランダ辺りで出現したと考えられるようです。さらにそこから派生したモス系はつぼみを覆う蕚(がく、花弁の付け根の周りの緑の部分)の部分に腺毛が密集し、それが苔(モス)のように見えることから名づけられたようです。
 
[ケンティフォリア系]
45 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ケンティフォリア」 ★こちらで観られます
ピンクの花の中に赤っぽい花弁が何枚も重なっているバラを描いた作品です。包み込むような感じで、花は大きめに見えてちょっと重そうな感じです。このバラは画家のバラとも賞賛されていたものだそうで、マリー・アントワネットの肖像の中にもこのバラを持っているものがあるそうです。

この辺は大体似た感じで花弁が幾重にも密集したバラが続くのですが、47「ロサ・ケンティフォリア・シンプレックス」のようにあまり花弁がないものもありました。謎ですw

55 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ケンティフォリア・クレナータ」
沢山の花弁が重なったピンクのバラを描いたものです。花はやや小ぶりで長い茎が伸び、それがS字になっているのが優美さを出しています。解説によるとこれはルネサンス末期のマニエリスムとの関連も考えられているようでした。すらっとした印象を受けるバラで、好みでした。

[モス系]
60 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ムスコーサ・ムルティプレックス」 ★こちらで観られます
ピンク色で無数の花弁があるバラで、その点はケンティフォリア系と同様ですが、つぼみの周りの緑の部分に細かい毛のようなものが描かれた作品です。これは棘らしいですが、よくこんなに細かいものを描けるものだと驚きます(公式サイトの画像でもよく分からないほど細かいですw) こちらも優美で華やかな印象を受けるバラでした。


<III チャイナ系>
続いては18世紀半ば~19世紀初めにかけて導入された中国の四季咲き性のバラのコーナーです。4種を中心に発達した系統で、ルドゥーテの時代にはインディカ系と呼ばれていたそうです(インドを経由して入ってくるため) 四季咲き性は人工交配熱に拍車をかけたらしく、その後のバラのほとんどはチャイナ系の影響が見られるとのことでした。

[インディカ系(チャイナ系)]
65 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・インディカ」
5枚の花弁が並ぶ一重咲きの紅いバラです。先ほどの何重にも花弁があった種類に比べて凄くシンプルな感じで、同じバラとは思えないほど花弁が少なく見えます。こぶりで可愛らしい感じがありつつ、色合いが生き生きとした雰囲気をだしていました。

同じ系統でも4種類あるためか、この系統にも花弁が多いものもありました。見た目はだいぶ違うのに同じ系統というのが素人には難しいところですw

1階の最後あたりには版画の販売コーナーもありました。1枚3万円程度だったかな。


<IV オールドローズの基本種>
2階の最初はルドゥーテの時代に古代種とチャイナ系の交配で生まれた4種類の基本種のコーナーです。各系統の基本種がここに並んでいますが、現在のオールドローズと呼ばれる品種はほとんど描かれていないそうです。ここは点数も少なめでした。

[ポートランド系]
この系統は1点だけでしたがメモを取りませんでした…

[ブルボン系]
84 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・カニーナ・ブルボニアーナ(ブルボン・ローズ)」
これは現在のレユニオン島(当時のブルボン島)で見つかったバラで、この種は花が垂れ下がって下向きに咲く特徴があるらしく深いピンク~紅のバラがうつむくように描かれています。その構図もあってか全体的にすっきりした印象を受けました。また、何故か中央辺りの葉っぱが破れているのが気になりました。

[ノワゼット系]
85 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ノワゼッティアーナ(ノワゼット・ローズ)」
白っぽい花を無数に咲かすバラです。ピンクや黄色など色のとりあわせも綺麗で、桜を思わせるような華やいだ雰囲気がありました。

[ブールソー系]
こちらは3点でしたが特に気に入るものがありませんでした。


<V ワイルドローズとその派生種>
最後はワイルドローズ(野生のバラ)のコーナーです。バラは北半球に(特にアジアに多く)分布していますが、パリに住むルドゥーテはヨーロッパの野生種とその派生種を多く描いているようです。バラ図鑑169枚のうち79枚は野生のバラだそうで、中東、日本、アジア、アメリカなどのバラも描かれているそうです。

[アジア分布種(含む中東)]
90 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・ベレベリフォリア(ロサ・ペルシカ)」
まるでスミレのような感じの黄色いバラで、星型に咲いていて中央部分には茶色い花が断面図のように描かれています。また、花弁が1枚だけ下に描かれているなど、博物的・解剖的な要素もありました。

この辺もバラなの??と驚くバラが並んでいました。

100 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・カムチャティカ」
持つところが無いくらい茎に棘がびっしり生えた紅いバラです。葉っぱの緑も濃く、まさにワイルドで野趣ある花に見えます。しかし花は繊細に描かれていて、葉や茎と対照的な様子がよく捉えられているとのことでした。

[アジアからヨーロッパにかけての分布種]
ここはメモを取った作品がありませんでした。下階にあった種類に比べると地味で小ぶりな印象を受けるものが多くて…w

[ヨーロッパ分布種]
147 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 「ロサ・アルピーナ・フローレ・ワリエガート」
アルプスに咲くピンクの花のバラです。5枚だけの一重咲きで棘もなく、葉っぱの形も根元のほうが細いなど、これだけ見てもバラだとは思えない特徴となっていました。

[北アメリカ分布種]
[不明]
ここもメモを取ってません。

最後に特別出品と言うことで肉筆画が3点展示されていました。水彩のとチョークで描いたものがあったのですが、版画以上に色鮮やかで濃淡の表現がますます繊細で美しかったです。

私が見終わる13時頃には2階で、この当時に栄えた楽器であるチェンバロのコンサートもやっていました。これは演奏者が変わったりして毎日1時と3時に行われているもののようです。チェンバロは現代につくられたものですが曲は当時のものらしく、何曲かやっていました。独特の音色で宮殿にいるような感じに思えましたw


ということで、絵もさることながらバラにも詳しくなれそうな展示となっていました。もうすぐ終わってしまいますが、ご興味あるかたはコンサートの時間なども考慮していくと良いかと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に 【日本橋タカシマヤ】

前回ご紹介した日本橋タカシマヤの中のカフェでお茶した後、8階にある展示場で「シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に」を観てきました。

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【展覧名】
 シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に

【公式サイト】
 http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/event2/index.html
 http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/top/img/info_chagall.pdf(PDF)

【会場】日本橋タカシマヤ  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】日本橋駅


【会期】2012年6月7日(木)~6月25日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
あまり混んでいなかったので、自分のペースで観て周ることができました。

さて、今回はシャガールの個展ですが、シャガールは生涯に残した作品が多いだけに結構な頻度で展覧会が開かれ、正直なところあまりシャガール好きでもないので満足度はいつもより厳しめになってますw しかし、サブタイトルの通り日本初の出品となるスイスの個人所蔵品なども含まれているようで、特に1930年代以降の作品が中心となっていました。シャガール展はどうしてもリトグラフが多めですが油彩も結構ありましたので、詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。
 参考記事:
  シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛― (東京藝術大学大学美術館)
  シャガール アートポスター展 (ノエビア銀座ギャラリー)
  

まず冒頭にシャガールについて略歴が説明されていて、それによるとシャガールの元の本名はモイシェ・セガルで、モイセはモーセにちなんだ名前だそうです。しかし、ユダヤ的なニュアンスを消すために、パリに出た1911年に敬愛するロシアの彫刻家マルク・アントコリスキーにあやかってマルクと改名したしたそうです。(それでも家族や親しい人はモイセイまたはモシュカと呼んでいたようです) また、セガルの方も父親がロシア語で「闊歩した」という意味のシャガールに変えたため、モイシェ・セガルは後にマルク・シャガールとなりました。
シャガールの一家はロシアのユダヤ人で、父はニシンの卸売会社の運搬人だったのですが、かなり過酷な労働を強いられ最後はトラックに轢かれて亡くなったそうです。一方、母は肉屋の娘で、食料雑貨店と3つの貸し小屋を経営していました。教育熱心でシャガールを門戸の狭い公立学校に賄賂を送って進学させたり、画家になりたいと言えばユダヤ人の画塾を探して授業料を払ったりもしています。ユダヤ教では偶像を禁止していて、それまでユダヤ人が絵を描くことは許されない時代もあったとのことなので、この母の理解は大きいかもしれません。(むしろユダヤ人のシャガールやモディリアーニが何故 絵を描いてOKなのか知りたい所ですが、そこについては解説がなくて残念。) なお、故郷のビテブスクは「シュテットル」(東欧のユダヤ人が使うイディッシュ語で「小都市」の意味)と呼ばれるユダヤ人居住区で、そこに住む人は自由に他の地に移動できるという訳ではなかったようです。この辺の事情は難しいので理解が間違っているかもしれませんが、ユダヤ人には厳しい時代だったのでしょうね…。

最初はパリに行く前に描いたグアッシュの風景画などが並んでいました。

マルク・シャガール 「[婚約者たち]の下絵」 ★こちらで観られます(PDF)
大きな花束の前で白いドレスの女性と青い服の男性が抱き合っている作品です。これは下絵で、ちょっとぼやけていてラフな感じがします。完成作には背後に川と街並みが描かれているそうです。
解説によると、「婚約者たち」はアメリカのカーネギー賞で三等賞を受賞したそうです。後にフランスで反ユダヤ法が可決されて市民権を失いマルセイユで逮捕された際には、亡命しようとしていた先のアメリカの領事館副領事の助けを借りて、警察にカーネギー賞の賞状を見せることでアメリカへの亡命が可能となったとのことでした。芸は身を助けるとは正にこのことかな。それにしてもこの時代のユダヤ人は針のむしろですね…。

マルク・シャガール 「キリスト復活のための習作」 ★こちらで観られます(PDF)
これは1938年の「革命」という作品を元に制作したレジスタンス、復活、解放という3部作(ポンピドゥー所蔵)のうち復活のための下絵です。キリストが磔刑になっている姿が描かれ、左には赤地に沢山の人、右に街並み、下にはトーラーという旧約聖書のモーセ書を持ったラビ(ユダヤ教の司祭のような人)、右下に子を抱く母親がキリストに手を伸ばしている様子が描かれています。色の取り合わせが強く、特に赤とキリストの黄色っぽい体が対比的に見えました。解説によると、キリストが腰に巻いているのはタリトというユダヤ人の衣装らしく、キリストはユダヤ人であることを強調しているとのことでした。

そう言えばシャガールはキリスト教のモチーフも描いてますが、キリスト教では無く根底はユダヤ思想だそうです。シャガールの宗教観は詳しく知りたい所です。

マルク・シャガール 「テルトル広場」
同名の作品の構想図で、パリのモンマルトルにあるテルトル広場からサクレクール寺院を望む風景が描かれた作品です。鮮やかな赤を地に、横になる青い服の女性も描かれ、顔の横にくちばしがあって腰のあたりに緑色の顔の男性が寄り添っています。左には上下逆さの木と黄色い三日月などもあるのですが、完成作では月と木はキリストの磔刑に変更されているそうです。やはり色彩の明るさ・強さにシャガールらしさを感じました。
この辺は宗教的な作品が多かったように思います。

続いてはサーカスのコーナーで、画商のヴォラールが制作を依頼した版画集が40点程度並びます。水彩のような淡目のリトグラフで、白黒の作品もあります。雄鶏、恋人たち、ロバ(山羊?)などお馴染みのモチーフをちりばめつつ、対比的な色使いで華やかさがある一方、どこか悲哀を感じました。なお、ヴォラールはシャガールのために毎週、「冬サーカス」一座の公演の席を用意していたとのことでした。

少し進むと、面白い説明ボードがありました。シャガールの作品は宙を浮いているような作品が多いですが、これはシャガールの母語である東方ユダヤ言語「イディッシュ語」の言葉と関連があるそうです。非常に嬉しい時は「空中を舞い上がる」と表現し、猛烈な恋は「頭がねじ曲がる」というそうです。その為、シャガールの作品はイディッシュ語が絵画になったものとも言われているようです。また、シャガールはロシアのビザンティン様式のモザイクやイコンなどにも影響を受けているそうで、イコンでは金地に遠近法を無視して主たるモチーフを大きく描き、天使や聖人が宙に舞います。そして異なる時制(時代)の場面が同一画面に展開するそうで、その点もシャガールにも観られる特徴かもしれません。シャガール自身もイコンからの影響を語っていたとのことでした。

マルク・シャガール 「天蓋の下の新郎新婦」 ★こちらで観られます(PDF)
深い青地を背景に、真っ白なウェディングドレスの女性と、寄り添う黄緑色の新郎を描いた作品です。二人の上には赤い天蓋があり、周りにはチェロを持った人や簡略化された人々、動物の姿もあります。その上には三日月屋ベッドに横たわる女性など、何かの物語か人生を思わせるモチーフが並んでいました。神秘的な雰囲気があり、解説によるとシャガールのユダヤ人としての面が出ているとのことでした。

マルク・シャガール 「緑のロバと新郎新婦」
寄り添う新郎新婦と、背景に故郷ヴィテブスクの街と思われる風景、2人の上には赤い天蓋、優しさや生命の無垢の象徴のロバ、その後ろに燭台を持つオレンジの髪の女性、右には真っ逆さまになって落ちていくような(浮いてる?)パレットを持ったシャガールらしき人物が描かれています。これもお馴染みのモチーフが集まった感じですが、背景が青いこともあり、どこか悲しい雰囲気があるようにも思いました。

この近くにはダヴィデを描いた作品もありました。

マルク・シャガール 「窓辺の母と子」
黄色い壁の部屋で、赤い服の女性が赤ん坊にお乳をあげている様子が描かれています。左上には月の浮かぶ夜の街の景色、周りには花束などもあります。西洋画で母子と言えば聖母子を連想しますが、これについての詳細は不明でした。黄色い画面のせいか幸せな雰囲気があるように観えました。

この近くにはロシア革命を題材にした作品もありました。シャガールはちょうどロシアに帰っていた時に第一次世界大戦が勃発して足止めを食らって留まり、1917年のロシア革命を体験しました。政治に興味が無かったシャガールですが、革命によってユダヤ人への差別的な政策が撤廃されたことに熱狂したそうで、その後ロシアで美術学校の運営に関わったりもしています。しかしそれも束の間のことでロシアではまたユダヤ人排斥の流れになっていき、シャガールはパリに戻りました。(そのパリでもやがて先程の亡命の顛末となるので、本当に苦労してます)

マルク・シャガール 「画家の夢」 ★こちらで観られます(PDF)
沢山の人々の頭上に、花束を持った男女やキリストの磔刑を描く画家(自画像?)などが描かれ、他にも天使、山羊、街並、三日月などお馴染みのモチーフが並びます。全体的に色は柔らかく幸せな雰囲気が漂っているように思いました。93歳の頃の作品だそうで、若い時とはちょっと違う感じも受けます。

この辺には故郷のヴィテブスクを描いた作品もありました。シャガールは行くチャンスがあったにも関わらず、故郷には結局一度も戻らなかったそうです。変貌した街を見ることなく、心のなかの故郷を大切に守ったとのことでした。

少し進むとシャガールの逸話が並ぶコーナーもありました。特に優しい人柄ではなかったそうですが、生きる意味を発見し、絵画という使命を遂行している感じだったそうです。内気で恥ずかしがり屋で孤独とも説明されていました。また、毎週ルーヴルに通って、プッサン、ティチアーノ、ゴーギャン、ゴッホ(この辺はルーヴルに無いような??)に惹かれていたそうで、逆に印象主義や自然主義はくたばれ!と言っていたようです。そしてマティスとはライバルで交流もあったそうです。

マルク・シャガール 「ロバの横顔の中のカップル」 ★こちらで観られます(PDF)
画面を黄色、オレンジ、緑の3つの色に分割して、中央にロバの横顔、その顔の中に寄り添うカップルが描かれています。左上の黄色の中には故郷ヴィテブスクの街並みと三日月、右上のオレンジの中には花束、下の緑の部分は男女の胴体となっています。目に鮮やかでざっくりとした分割が斬新な雰囲気でした。
解説によると1976年頃からこうした色面の分割がよく使われているそうです。サーカスの舞台の照明にヒントを得たのではないかとのことでした。キュビスムに影響を受けていた初期の作品にもこうした作品はあるそうです。


と言うことで、シャガールのルーツ、特にユダヤ人としての側面が伝わってくるような展示でした。日本初公開の作品もあるのも良かったかな。会期が短いのでシャガールがお好きな方はお早めにどうぞ。

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