関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

印象派を超えて-点描の画家たち (感想後編)【国立新美術館】

今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の「印象派を超えて-点描の画家たち」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


  前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に
 印象派を超えて-点描の画家たち
 ゴッホ、スーラからモンドリアンまで

【公式サイト】
 http://km2013.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/km2013/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室1E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】2013年10月4日(金)~12月23日(月・祝)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では新印象主義の誕生までご紹介しましたが、後半はその後の展開についてのコーナーとなっていました。


<3 ゴッホと分割主義>
ゴッホがパリに出た1886年には第8回印象派展とアンデパンダン展にスーラたちの作品が出品され、彼らの作品を間近で観たゴッホは翌年の1887年前半に分割主義を試みた作品を何点か集中して描いていたようです。また、同じ年にはシニャックとの共同制作を通じてその教えを受けたとも考えられるようです。しかし、忍耐力と冷静さを要するこの技法は大胆で素早い筆触を好んだゴッホの資質とは根本的に相容れることはなかったらしく、分割主義は補色や色彩のコントラストといったゴッホがオランダ時代から研究していた理論の実践という意味での刺激といったところで、ゴッホはスーラを認めながらもそれに従う気は全くなかったとも述べていたようです。ここにはそうしたゴッホの作品や、平面で出来た大胆な色彩表現によって綜合主義を築いたゴーギャン、シニャックに促されて登場したフォービズムの画家たちの作品などが並んでいました。

38 フィンセント・ファン・ゴッホ 「レストランの内部」 ★こちらで観られます
これは花束の乗ったテーブルが並ぶレストランの店内を描いた作品で、床や壁、花などに点描が施されているのがよく分かります。特に壁は赤と緑の補色で表されていて、その効果で強い色合いとなっています。スーラたちに比べると素早く点々が置かれているといった感じに見えるかな。確かに点描を試していながらも、そのまま真似ているわけではないのが伺える作品でした。

41 フィンセント・ファン・ゴッホ 「種まく人」 ★こちらで観られます
これはミレーの1850年の「種まく人」に基づく作品で、ゴッホは「種まく人」の改作を30点ほど描いているようです。中央に燦々と輝く太陽があり、やや右上に種まく人が描かれているのですが、手前の畑は青とオレンジの棒状のタッチが並ぶ大胆な表現となっています。奥の太陽や黄金に光る畑は大きめの点で表されるなど、対象によって表現が異なっているのが面白く、色合いが強烈で生命感に溢れていました。本家のミレーとはまた違った魅力ある作品です。
 参考記事:
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
  山梨県立美術館の常設 (山梨旅行)

この少し先にはゴッホの自画像(★こちらで観られます)もありました。また、キャンバスの両面に描かれたゴーギャンの作品なども並んでいます。

50 モーリス・ド・ヴラマンク 「小麦畑と赤い屋根の家」
ヴラマンクはフォーヴィスムの画家で、日本語で野獣派とも呼ばれる強烈な色彩が特徴のグループです。これは手前に小麦畑、奥に家々が立ち並ぶ様子が描かれ、ゴッホよりもさらに大胆で太く長い筆触で描かれています。特に麦は物凄い厚みで、抽象画のようにすら見えるかなw 赤・黄色・緑などが使われ、力強く激しい色合いです。一方で建物の幾何学的な感じはセザンヌからの影響を感じさせました。

この隣にはドランの作品もありましたこれも原色による激しい色合いで、分割主義がどんどん派生・進化していくのが見て取れます。


<4 ベルギーとオランダの分割主義>
続いてはベルギーとオランダにおける分割主義のコーナーで、ここは日本では馴染みの薄い画家の作品が並んでいました。ベルギーの新しい美術の振興を目指していた20人会は、フランス以外の国で最も早くスーラの分割主義を受容したようで、スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」はパリで発表された翌年の1887年には早くも20人会で展示されたそうです。20人会のメンバーもそれに影響を受けたらしく、中でもテオ・ファン・レイセルベルヘは忠実に末永くそれを継承した画家と言えるようです。その後、1890年の20人会の展覧会では4分の1を分割主義の作品が占めるなど、ベルギーにおいて分割主義は相当な熱狂ぶりだったようです。(この流れがルミニスムなどに繋がっていきます)

一方、オランダには20人会唯一のオランダ人メンバーであるトーロップによって分割主義が伝えられたようですが、象徴主義が盛んなオランダではベルギーほど分割主義は高まらなかったようです。分割主義を使った作品にも精神的で深遠な内面を感じさせる象徴主義的な側面があったようですが、アムステルダム・ルミニスム(光輝主義)を代表するレオ・ヘステルなどは色彩の鮮やかさを力強いタッチで追求したそうです。なお、今回の展覧会はクレラー=ミュラー美術館の収蔵品が多く展示されていますが、クレラー=ミュラー美術館の創設者ヘレーネ・クレラー=ミュラーの相談役だったブレマーも分割主義を追求したようで、ここにはそうした作品も含め、ベルギーとオランダの分割主義の作品が並んでいました。

 参考記事
  エミール・クラウスとベルギーの印象派 (東京ステーションギャラリー)
  アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)
  ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)


この章の最初にはトーロップによる水彩作品が並んでいました。暗めで分割主義という感じではなく象徴主義的で神秘的な作風です。また、その後はヨハン・トルン・プリッカーという画家のパステルの作品が並んでいます。こちらは色の棒を並べた作風で分割主義的な感じです。さらに、再びトーロップのチョークによる作品もあり、これは長い線が並ぶ分割的な作風へと変貌していました。 …とは言え、特に私に刺さるものは無かったので、これらの作品はメモはあまり取らず…w

52 テオ・ファン・レイセルベルヘ 「満潮のペール=キリディ」
これは20人会の中心的メンバーによる作品で、ブルターニュ半島の海辺の岩場が描かれています。非常に細かい点描で表され、岩に光が当たる様子などは緑とオレンジを組み合わせて表現しています。夕日を浴びる穏やかな雰囲気で、スーラからの影響が強く感じられました。

この辺はスーラからの直接の影響を感じる作品が並んでいました。

53 テオ・ファン・レイセルベルヘ 「《7月の朝》あるいは《果樹園》あるいは《庭園に集う家族》」 ★こちらで観られます
これは果樹園の木の下にテーブルと椅子を持ち出し、そこで何か手作業(編み物?)をしている2人の女性や、帽子を持ってくつろいでいる女性、奥にも横向きで立っている女性や木の影にも1人隠れているようです。パッと見てスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を思い起こす光景で、穏やかな雰囲気です。点描によって影は水色や紫で表されるなど、その表現方法も含めてスーラを踏襲しているようでした。

69 ヤン・トーロップ 「秋」
森の木の下の女性を描いた作品で、黄色や黄土色が使われたかなり大きめの点描となっています。大きくてモザイクのようですらあり、やや抽象的にも見えるかな。解説によると、この絵を描いた頃にモンドリアンと知り合ったそうで、大ぶりの筆触の点描はモンドリアンに大きな影響を与えたようです(それについては次の章で取り上げられています) 幾何学的な要素も感じられる作品でした。…それにしてもトーロップも結構作風が変わっているようです。さっき観たのと全然違うと思いながら見ていました。

84 ヤン・ファイルブリーフ 「積み藁のある風景」
85 ヨハン・アールツ 「砂丘の農家」
2人の画家が同じ場所から同じ家を描いた作品が並んで展示されていました。2人とも大きさも同じで一緒に描いたと考えられるようで、どちらも細かめの点描で描かれています。しかし、その絵から受ける印象は全く異なり、ヤン・ファイルブリーフは青い点が多いためか落ち着いて沈んだ雰囲気である一方、ヨハン・アールツは黄色・緑・オレンジが多いためか光が当たったような明るい色合いとなっています。どちらも良い絵ですが、同じ点描でもこうも違うのかと驚きました。この比較展示は中々面白い趣向です。

82 ヘンドリクス・ペトルス・ブレマー  「ランタンのある静物」
この画家がヘレーネ・クレラー=ミュラーに助言した人物で、自らも点描を手がけるほどだったらしく、この作品で初めて分割主義を用いて描いたようです。机の上にあるランタン、開いた本、積み重なった本などが描かれていて、特に背景は黄色と緑の対照的な色合いの点描が目立ちます。全体的に重厚で静かな感じを受け、分割主義への深い理解が伺えました。

この先にはオランダ画家の作品が並んでいました。象徴主義に分割主義を取り入れたというよりはナビ派っぽい感じがしたかな。

91 レオ・ヘステル 「モントフォールト近くの風景」
畑と空を描いた作品で、空は黄色、水色、ピンクなど太いタッチで描かれかなり大胆な印象を受けます。どこかゴッホに似たものを感じると思ったら、この画家の叔父はゴッホと共に制作したこともあったらしく、その叔父からゴッホの物の見方について聞いていたようです。また、この画家はルミニスムを代表する画家らしく、この近くにはかなり作風が異なる作品が4点展示されていました。確かにルミニスムっぽい作品もあれば象徴主義のような作品もあるなど、試行錯誤の様子が伺えました。


<5 モンドリアン―究極の帰結>
最後はオランダの抽象画家モンドリアンのコーナーです。モンドリアンは1908年にトーロップと出会い、分割主義の影響を受けたそうで、スライテルスやへステルらと共にアムステルダム・ルミニスムを頂点へと導きました。モンドリアンの色彩分割は科学的な光学理論を反映したものではなく、象徴主義的な文脈を強くとどめスーラの分割主義とは直接結びつくものではなかったようですが、線や色彩に対する考えには類似したものがあるようです。
その後、モンドリアンは1920年頃から白い地に黒い直線、赤、青、黄色といった3原色の限られた要素で画面を構成した作品を描きました。これは色彩を純色に分割しそのコントラストと調和を探求したスーラの試みの究極の帰結とも位置づけられるようで、ここにはモンドリアンの様々な時期の作品が並んでいました。

94 ピート・モンドリアン 「突堤の見えるドムブルフの浜辺」
これはまだモンドリアンが具象的なものを描いていた時期の作品で、海岸と砂丘が描かれています。かなり単純化されているものの、空には紫が点描のように打たれ分割主義からの影響を感じさせました。

この隣にはブリヂストン美術館所蔵の「砂丘」もありました。こちらはまだ具象性もあるもののかなり抽象画に近い点描です。

96 ピート・モンドリアン 「コンポジション No.II」 ★こちらで観られます
これは黒枠で区切られたたくさんの四角が並ぶ作品です。解説によると、これは水に写った木々や農場をキュビスム風に描いているとのことですが、どう見ても抽象画っぽく、見た瞬間はクレーの作品かと思いました。黒い区切りと色面を使いキュビスムから抽象画へと進めている段階なのかな。段々とよく知られるモンドリアンっぽくなってきた感じがします。

100 ピート・モンドリアン 「赤と黄と青のあるコンポジション」 ★こちらで観られます
これは黒枠に白地の大きな正方形と、同様の小さめの正方形(青、黄、赤、白)が並んでいる抽象画です。モンドリアンというとまず思い浮かぶのはこの作風かな。曲線を廃し、垂直・水平にしていったようで、色も4つしかなく分割主義をとことん突き詰めるとこういう結論になるようです。と、モンドリアンが新印象主義とそこまで深く繋がっているというのを知らなかったので、この帰結については意外でした。

最後にクレラー=ミュラー美術館の案内の映像(6分)を流していました。


ということで、中盤は見どころが多かったように思いますが、後半はちょっと別物といった感じだったかなw あまり知らないオランダの新印象主義などを知ることが出来たのは収穫ですが、若干地味な感じもしました。とは言え、近現代の美術史を知る機会でもあるので、これから美術に詳しくなりたい人にお勧めの展示です。


おまけ:
クレラー=ミュラー美術館のゴッホと言えば真っ先に「夜のカフェテラス」を思い浮かべますが、流石に来ていませんでしたw 


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




印象派を超えて-点描の画家たち (感想前編)【国立新美術館】

10日ほど前の土曜日に国立新美術館で「クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に 印象派を超えて―点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」を観てきました。点数も多く見どころが多かったので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に
 印象派を超えて-点描の画家たち
 ゴッホ、スーラからモンドリアンまで

【公式サイト】
 http://km2013.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/km2013/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室1E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅


【会期】2013年10月4日(金)~12月23日(月・祝)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まだ始まったばかりの時に行った為か、意外と空いていて自分のペースで鑑賞することができました。とは言え、大型展示は会期が進むほどに混んでくるものですので、今後は混むことも予想されます。足を運ばれる予定の方はお早めに観に行かれることをお勧めします。

さて、今回の展示は主に印象派以降の「点描」をテーマに、オランダのクレラー=ミュラー美術館の所蔵作品がその中心となっています。現在では新印象主義と呼ばれるスーラは、それまでの印象派が感覚的な筆触分割(パレットで色を混ぜずに画面に色を並べて筆のタッチを活かす表現)に飽きたらず、科学的な知識をもとに独自の点描技法を開拓しました。そして色彩を純色の小さな点に分解して描くスーラの点描技法は「分割主義」と呼ばれ、ヨーロッパ各地に瞬く間に広まって行きました。オランダからパリに出たゴッホも新印象主義に大きな着想を得た画家の1人で、今回の展覧会でもその影響が伺える作品が展示されています。展覧会は時代や地域などによって5つの章から成る構成となっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品を通してご紹介していこうと思います。


<1 印象派の筆触>
まずは新印象主義の前の印象派の時代のコーナーです。モネ、シスレー、ピサロらは点やコンマ状の細かいタッチで覆われた明るい色調の絵画を発表し、その筆跡を粗く残した画面とスケッチのような風合いは、滑らかな画肌で完成作を仕上げるという当時の模範からは大きく逸脱していました。彼らはパレットから黒を駆逐して純色に近い絵の具の断片を並べていき、この小さな点の集合は視覚混同の原理によって網膜上で混ざり合い、臨場感溢れた鮮やかな光の表現を実現しました。これは筆触分割と呼ばれる技法で、この後の新印象主義の発展へと繋がっていきます。ここにはそうした印象派の作品が並んでいました。

2 クロード・モネ 「サン=ジェルマンの森の中で」
紅葉した木々が並ぶ木のトンネルを描いた作品で、奥のほうが明るくなっています。手前の地面はやや高い位置となっているかな。様々な方向に筆跡が伸びているのが分かり、落ち葉や木々の葉っぱが色鮮やかに表現されています。全体的にぼんやりしていますが、緑、黄色、赤といった色の点の交わりが効果的に感じられました。

7 アルフレッド・シスレー 「モレのポプラ並木」
これは川沿いの背の高いポプラ並木を描いた作品で、その木の下には3人位の人の姿もあります。並木には左から木が当たり、影との対比でより強く光が感じられます。影も黒ではなく深い緑色などで表されていて、印象派らしい光の表現となっていました。のんびりした光景の作品です。

この近くにはピサロの作品などもありました。


<2 スーラとシニャック―分割主義の誕生と展開>
印象派のまとめ役で後に新印象主義の技法も取り入れたピサロは、仲間たちの反対を押し切り1886年の最後の印象派展にスーラとシニャックの作品を出品させ、その際にスーラの大作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が発表されました。スーラはドラクロワなどの過去の巨匠の絵画から学ぶだけでなく、最新の光学理論書を読み漁り色彩の研究に没頭していたようで、並置された色彩が交じり合って見える視覚混合や、お互いの色を引き立て合う補色の組み合わせ、色彩のコントラストやグラデーションの効果などを念頭に、小さな純色で画面を埋めていきました。そしてこの手法は「分割主義」と呼ばれ、批評家のフェネオンによって「新印象主義」と名付けられました。分割主義を熱心に学んだシニャックは1899年に「ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義まで」を刊行し、分割主義を理論的に体系づけたようで、やがてこの本は広く読み継がれ抽象絵画の創設にも大きな役割を果たしたようです。
スーラが31歳の若さで夭折するとシニャックは哀しみを癒やすように南仏へ向かい、この地の明るい陽光に触れて緻密な点描から色彩のコントラストを活かした大きなタッチへと画風を変えていきました。点描による視覚混合に代わり、明るい色彩の調和を目指したシニャックの試みは後にフォービズムの誕生も促したようです。ここにはそうした新印象主義の画家たちの作品が並んでいました。

18 ポール・シニャック 「ダイニングルーム 作品152」 ★こちらで観られます
瓶や壺が置かれた白いクロスの円卓と、そこでお茶かコーヒーを飲む女性(奥さん)と、葉巻を持って座っている初老の男性(夫)が描かれ、2人の間には立って給仕しているメイドの姿もあります。点描で描かれていて、点が小さいのでパッと観た時にスーラの作品かと思いましたが、スーラを真似して描いたシニャックの初期の代表作のようです。夫と妻はお互いに見向きもせず、置物のようにじっとしているように見えるかな。窓から差し込む光や影なども点描で表現され、オレンジと緑の点が隣り合っているなど、補色に近い色の組み合わせで表現しているようでした。これはかなり見応えのある作品で、点が見えなくなるくらい離れて観るとまた違って見えるのも面白かったです。

12 ジョルジュ・スーラ 「入江の一角、オンフルール港」
これは港に泊まる黒い船を描いた作品で、画面上部には横から突き出す船のマストらしきものも描かれていて、大胆な印象を受けます。どうもスーラらしくないと思ったら、この絵を描いているうちに船がいなくなってしまい未完に終わったようで、まだ下塗りの状態のようです。マストは青色になっていて、ここから色の組み合わせを考えて点描を施すらしくで、製作工程を伺わせる作品となっていました。これはこれで観た甲斐がある興味深い作品です。

14 ジョルジュ・スーラ 「グラヴリーヌの水路、海を臨む」 ★こちらで観られます
水路にヨットが何艘か浮かんでいる光景を描いた作品で、点描によって表現されています。水色、紫、緑など薄めの色合いが使われていて、繊細な色彩表現はスーラならではだと思います。解説によると、スーラは寒色と暖色を並べると静けさが生まれると考えていたらしく、この画面にも静けさが満ちていました。
ちなみにスーラはこの作品を描いた少し後に亡くなってしまったそうです。生きていれば絵画の歴史も変わっていたのかもしれません…。

21 ポール・シニャック 「マルセイユ港の入口」
港の入口に船が浮かんでいる様子が描かれた作品で、中心の奥に太陽があるのか夕日のようにグラデーションとなっています。まるでタイル画のように大きな点描となっているのが特徴で、青、ピンク、紫が多く、シニャックならではの色と表現となっています。幻想的でどこか郷愁を誘う雰囲気でした。

この近くには松岡美術館の所蔵品などもありました。たまに国内の作品も展示されています。また、少し先にはスーラとシニャックの白黒の素描作品もありました。白黒でも2人の作品と分かる特徴があるのが面白いです。

28 アンリ=エドモン・クロス 「サン・トロヴァーゾ橋(ヴェニス)」
これも大きめの点描で、ヴェネツィアの運河とその両岸の家や木々が描かれた作品です。ピンクや緑など色合いが強く、明るく軽やかな印象を受けます。解説によると、エドモン・クロスは南仏に居を構えたことがきっかけで、同じ南仏を拠点としたシニャックと親交を深め、分割主義の理論を学んだそうです。その為かシニャックとよく似た画風であるように思えました。

この近くには印象派のまとめ役でありながらスーラたちの技法を取り入れたピサロの作品などもありました。

31 マクシミリアン・リュス 「鋳鉄工場」
これは工場の中を描いた作品で、大きな容器とそれを持ち上げる人々、手前には鋳型に鉄を流し込む人など、鋳鉄工場の労働の様子が点描で表現されています。溶けた鉄が発する光なども点描で表現され、ピンクと水色が多用されているかな。上から鎖を引っ張る人と鉄を入れる人の姿勢から動きが感じられ、力強い印象を受けました。解説によると、この画家は政治に関わっていたらしく、こうした労働者の問題を取り上げた作品を描いていたようです。

続いてはナビ派のドニの作品が並んでいました。ドニは1891年頃に点描を試みていたようです。

33 モーリス・ドニ 「病院での夕暮れの祈り」
これは小さめの作品で、教会(病院内の教会?)の中で並んで祈る沢山のシスターたちが描かれています。点描というよりは色面による表現と言った感じですが、ドニは絵画は「ある一定の秩序のもとに集められた色彩による平面」であると言っていたそうで、色彩の分割や光の輝きの追求は分割主義の本質と言えるようです。画面上部の蝋燭の光が明るく、全体的に神秘的な雰囲気がありました。

近くには上野の西洋美術館の所蔵のドニなども並んでいました。2章の最後には映像コーナーがあり、分割主義や補色などの説明をしていました。


ということで、今日はこの辺にしておこうと思います。前半はシニャックやスーラの作品に特に目を見張るものがありました。後半はその後の分割主義の展開が分かる内容となっていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。


   → 後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




ターナー展 (感想後編)【東京都美術館】

今日は前回の記事に引き続き、東京都美術館の「ターナー展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


  前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master

【公式サイト】
 http://www.turner2013-14.jp/
 http://www.tobikan.jp/museum/2013/2013_tuner.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】2013年10月8日(火)~ 12月18日(水) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では初期からの作品をご紹介してきましたが、後編は主に1820年代以降の作品が並ぶコーナーです。


<第5章 英国における新たな平和>
1815年にナポレオン戦争が終わると、戦争の勝利や英雄を記念する計画が相次いだそうで、ターナーも国王キング・ジョージ4世からトラファルガーの海戦を主題とする大作を依頼されたそうです。また、1820年代はそれまでのターナーの業績が集大成された時期でもあるようで、水彩画を原画とする版画集を次々と世に送り出し、その質の高さから同時代の文人から書籍の特装版の挿絵制作を求められることもあったようです。さらに、ターナーは有力なパトロンを何人か得て、その1人のエグリモント伯爵に招かれて滞在したペットワースハウスでグワッシュによる見事な水彩の連作を描いたそうです。ここにはそうしたナポレオン戦争後の時代の作品が並んでいました。

52 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「[トルファルガーの海戦]のための第2スケッチ」
これは国王キング・ジョージ4世の依頼で描かれた作品のための下絵で、完成作とほぼ同じ大きさとなっているようです。海戦と銘打っている割に闘っているシーンではなく、海で漂流している兵士たちが描かれていて、悲壮な感じがします。解説によると、戦勝を謳歌するのではなく、危機や混乱、犠牲を印象づけているようで、完成作の評価は芳しくなかったようです。さらに軍艦の形が不正確であるという指摘などもあり、後に宮殿から取り外されるという憂き目にあったようです。…確かにこれは勝利を祝っているというよりは戦争の悲惨さを描いているように見えるかな。期待されていたものと方向が違ったのではw 何故こうした絵を描いたのかは分かりませんが、これ以降 王室からの依頼は無かったようです。

60 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ペットワース・ハウス:[オールド・ライブラリー]でテーブルに向かう男」
これは52歳頃にペットワース・ハウスで描いた作品で、この作品の他にも屋敷のあちこちで描いた小さめのスケッチが並んでいます。客間や寝室など、自由気ままに出入りしていたようで、簡素ながらも当時の生活がよく伝わる描写となっていました。

この先には詩集の挿絵などもありました。


<第6章 色彩と雰囲気をめぐる実験>
続いてはターナーの製作過程を考察するコーナーです。ターナーは現在では「カラー・ビギニング」と呼ばれる色彩の面や帯を配置して描いた一連の習作を残しているそうで、これらは1810年以降にアトリエで実験的に制作されたようです。こうした作品からはターナーの製作過程の秘密が垣間見られるそうで、ここにはそうした「カラー・ビギニング」が並んでいました。

70 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「にわか雨」
青い空に白い雲、茶~黄色の地面がぼんやりと色の交わりだけで描かれた作品です。にわか雨の大気の感じは出ていますが、抽象画のようにも見えます。解説によると、これは本作の前に色の効果などを実験しているのではないかとのことで、この辺にはこうした下塗りのようにも見える作品が並んでいました。確かにこれらは制作のための実験そのものと言った感じで、ターナーが作品を描く前にあれこれと検討していたのが伺えるようでした。

このコーナーには3つの海を1枚の絵で表現した作品もありました。これも抽象画のようです。(ロスコみたいなw)


<第7章 ヨーロッパ大陸への旅行>
続いてはフランスやドイツの風景を描いた作品のコーナーです。英国とフランスの戦争が終わりヨーロッパに平和が訪れると、英仏海峡の航路や主要河川に蒸気船が導入され、都市間には鉄道が発達するなど、交通の便が良くなり海外旅行がブームとなったようです。そして画家たちは旅先の名勝の風景を描くようになり、ターナーもイタリア、フランスのノルマンディーやブルターニュ、スイスのアルプス地方やルツェルン湖、ドイツのライン地方などに繰り返し訪れ風景を描いたようです。ここにはそうしたイギリス以外の国を描いた作品が並んでいました。

78 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ルーアンの帆船」
川辺を描いた作品で、中央に小型の帆船、手前に小さなボート?が描かれています。背景はぼんやりしていて、霧がかかったようにかなり薄めに見える建物はルーアン大聖堂のようです。解説によると、これは以前はイタリアの風景かと思われていたようですが、ターナーは実際にはフランスの方が頻繁に行っていたようです。大気の表現などは後の時代のフランスの画家たちに共通するものが感じられました。

この近くにはアルプスを描いた作品などもありました。

91 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ハイデルベルク」
これは42歳頃に描いた大型の作品で、ドイツのライン地方谷間にある城郭と宴の様子が描かれています。抽象画のように見えるほど光りに包まれ、筆致もかなり大胆です。解説によると、これは歴史画のようで、英国王の長女にまつわる悲劇があり実際に訪れた時はにはすでに廃墟となっていたそうです。その為かどこか幻想的な雰囲気もありました。

この先にはスイスの湖を描いた作品などもありました。ターナーはクローム・イエローを好んで使っていたため「カレー・マニア」とも揶揄されていたのだとかw 確かにターナーは黄色のイメージですがカレーとは…w


<第8章 ヴェネツィア>
8章からは上階の展示となります。ターナーはヴェネツィアに3度訪れているそうですが、最初に訪れてから実際に絵に描くまで14年もかかって、1833年にようやく初めての作品を描いたようです。最も多くの作品を描いたのは最後に訪れた1840年らしく、その際には17点の油彩を残したようです。ここにはそうしたヴェネツィアの街を描いた作品が並んでいました。

93 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ヴェネツィア、嘆きの橋」 ★こちらで観られます
これはドゥカーレ宮殿と囚人が収監される牢獄の間にかかる橋が描かれた作品で、手前には水路をゆくゴンドラの人々の姿が描かれています。空は青くて全体的に明るく、爽やかな雰囲気にすら見えますが、右手の牢獄の辺りは若干暗めに描かれて対照的な効果を出しているようです。とは言え、ヴェネツィアの街の美しさがよく伝わり、平和な日常を思わせる作品でした。

この先にはヴェネツィアの街を描いたスケッチなどもありました。


<第9章 後期の海景画>
続いては海を描いた作品のコーナーです。ターナーは初めて油彩を発表して以来 海の風景を描き続けていたそうで、1830年代・1840年代には南イングランドのサネット島を定期的に訪れて大波や変化する光を観察し、この主題への関心を深めていったそうです。しかし当時の評論家は、ターナーの大胆で表現力豊かな絵の具の扱いと曖昧な描写を「石鹸の泡と水漆喰のようだ」と批判したそうです。中にはまるでターナーがラッパ状に顔料を込めてキャンバスに発射して描いているかのように読者に思わせる批評家まで現れたようで、決して当時から評価されていたわけではなさそうです。ここにはそう批判されるのも分かるような気がする後期の海景画が並んでいました。

このコーナーの最初には先ほどの「カラー・ビギニング」のような作品もあり、若干当時の人の気持も分かるような…w

101 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「海の惨事(別名「難破した女囚船アンピトリテ号、強風の中で見捨てられた女性と子どもたち」)」
これは大画面の作品で、囚人を乗せた船が難破している様子が描かれています。荒れ狂う海と空はその間が曖昧で、船は三角形の構図で描かれています。人々は苦しんでいるようで、緊迫した場面となっています。飛び散る絵の具も力強く感じさせる1つの要素で、劇的な印象を受けました。解説によると、この作品は未完成で終わっているようで、イギリス人船長の無能を描いていると受け取ることもできるので、体制への批判に繋がりかねないと危惧して避けたのではないかとのことでした。また、ロンドンでも展示されたフランスの画家テオドール・ジェリコーの作品にヒントを得ていた可能性もあるようでした。

108 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「荒れた海とイルカ」
こちらも未完の作品で、海とも空とも分からない うねりのようなものが描かれています。近現代の抽象画にしか見えず、具象的なものは見当たりません。 恐らくこの後に様々な物が描かれるはずだったようですが、飛沫のように絵の具が塗り重ねられていて、重苦しく力強い印象を受けました。なお、60歳を過ぎたターナーは荒れ狂う海を描くために船のマストに自身を括りつけて、嵐を何時間も観察していたというエピソードがあるそうです。…画家の鑑ですね。


<第10章 晩年の作品>
最後は晩年の作品のコーナーです。晩年は曖昧さが増していき、冷やかしや嘲笑にさらされることもあったようですが、批評家のラスキンはターナーを擁護し、「近代画家録」でターナー後期の作品を取り上げ、西洋風景画の伝統の頂点としてターナーを位置づけたそうです。また、ターナーは晩年に以前の作品の見直しも試みていたそうで、「研鑽の書」の為に考案した構図を再び取り上げ理想化した牧歌的な光景を描いたそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

113,114 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「戦争、流刑者とカサ貝」「平和-水葬」 ★こちらで観られます
これは対になるように並んだ2枚の作品で、「戦争、流刑者とカサ貝」のほうは赤みがかった水辺と夕陽が描かれ、水辺には腕を組む流刑の身となったナポレオンの姿があります。ナポレオンは水辺でカサ貝を見ているようですが、何とも寂しげで流刑の悲哀を感じます。 一方の「平和-水葬」は海の上で煙を吐く黒い船が描かれていて、全体的にはぼんやりとした感じです。解説によると、これは洋上でコレラに倒れた友人の画家デイヴィット・ウィルキーの水葬の場面を描いているようで、こちらも寂しげで哀しみに包まれているような雰囲気がありました。また、手前にマガモが小さく描かれているのですが、これはマガモ(マラード)とターナーのミドルネーム(マロード)をかけているのではないかとのことでした。

この近くには研鑽の書に基づく作品もありました。

112 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「湖に沈む夕陽」 ★こちらで観られます
これは空と湖が一体化しているような風景を描いた作品で、左上の辺りに夕日らしきものが見えます。その色合いから郷愁を誘われるのですが、これもモネの晩年か抽象画を思わせるほどに曖昧な描写となっていて、未完成なのかもしれません。これは発表されることはなかったようですが、ターナーはこれで完成と考えていたという説もあるそうです。その真相は私には分かりませんが、色の持つ効果と空気感はよく表れているように思いました。


ということで、ターナーの世界を堪能することができました。これだけの作品を日本で観られる機会は滅多にないと思いますので、ターナー好きな人は必見です。製作過程を知ることができたのも収穫でした。



 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




ターナー展 (感想前編)【東京都美術館】

最近忙しくてご紹介が遅くなりましたが、2週間ほど前に上野の東京都美術館で「東京都美術館」を観てきました。充実の内容でメモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1130295.jpg

【展覧名】
 ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master

【公式サイト】
 http://www.turner2013-14.jp/
 http://www.tobikan.jp/museum/2013/2013_tuner.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2013年10月8日(火)~ 12月18日(水) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
祝日に行ったらだいぶ混雑していて、入場制限は無かったもののどこでも列ができている感じでした。

さて、今回の展示は英国絵画の巨匠、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの個展となります。ターナーは1775年に理髪店の息子として生まれ、10代で英国各地の風景や旧跡を描く地誌的水彩画家として出発しました。24歳でロイヤル・アカデミーの準会員、26歳で正会員になるなど異例の出世を遂げ、風景表現の可能性を探求し幻想的で詩情に満ちた作風からロマン主義を代表する画家の1人と称されるそうです。その後1851年に76歳でなくなり、遺言により2万点以上を国家に寄贈したそうで、現在でもロンドンのテート美術館のターナー専用展示棟のクロアギャラリーに収蔵されているようです。今回はそうしたコレクションから30点の油彩と、水彩やスケッチなど合わせて110点もの作品が展示されていました。構成は10章から成り、時系列的かつジャンル分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 初期>
まずは初期のコーナーです。ターナーは14歳でロイヤル・アカデミーの美術学校に入学を許されて正統派の美術教育を受けました。当時は歴史画が絵画の分野の中で最も位が高いとされていた時代でしたが、ターナーは風景画をより高尚なものに高めるべく「ピクチャレスク」(絵になる風景)を求め、各地を旅して制作していたようです。また、伝統的に英国で好まれてきた水彩画の革新に取り組んでいたそうで、油彩はそれより後の1790年代半ば以降から手がけるようになったそうです。ここにはそうした若かりし頃の作品が並んでいました。

1 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(W.ホウル(子)による版画) 「ターナーの自画像」
これは小さめの版画で、24歳頃のターナーの油彩の自画像が版画化されたものです。こちらをまっすぐ見る若く精悍な男性で、自信がありそうな凛々しい雰囲気で描かれています。結構なイケメンなのですが、解説によると実際はこんなに格好良かったわけではないようで、赤ら顔のかぎ鼻だったとされているようです。…うーん、ちょっと理想化されてるのかな?w 野心家だったみたいだし、何となく人柄も伝わってきます。

4 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「パンテオン座、オックスフォード・ストリート、火事の翌朝」
これは17歳の頃の作品で、立派な劇場の前で大勢の野次馬が集まっていたり、建物に水をかけている人達が描かれています。タイトル通りこれは火事の翌朝の光景らしく、廃墟のように壊れた建物がリアルな感じを出しています。解説によると、ターナーは崩れていく建物にピクチャレスクの性質を観たようで、こうした変わった主題を選んだようです。全体的に騒然とした雰囲気があり、これを17歳で描いたというのはただ驚くばかりでした。
この近くには若い頃の水彩作品が並んでいました。風景や男性裸体像など、いずれも精緻な筆で写実的に描かれ、非凡な才能が感じられました。

10 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「月光、ミルバンクより眺めた習作」
これは油彩で、川とそこに浮かぶ船が描かれ、地平線の近くには明るく輝く月ともう1つの明るい星が描かれています。画面全体が薄暗いので満月が一層に輝いて見え、幻想的なほどに美しい光景です。解説によると、この絵は油彩を初めて手がけた年の翌年の作品で、今のテート美術館がある場所辺りで描かれたものだそうです。静かで詩情ある風景となっていました。


<第2章 「崇高」の追求>
ターナーの風景に対する取り組みに重要な影響を与えたのは「崇高」の概念だそうで、これは思想家のエドマン・ハーグの「崇高と美の観念の起源」(1756年)という著書によって広まった考えのようです。これは見る者に畏怖を抱かせるような途方も無いものに美を見出す考えのようで、美術では雷雨や時化など自然の驚異を描くことによって表されました。そして崇高な風景を目指したターナーは1797年に英国の湖水地方を訪れ、巨大なスケール感と独特の気象を伝えるために新たな表現を生み出したようです。また、1802年には英仏戦争の休戦によって初めて訪れたアルプスの荘厳な風景を目にし、それはターナーの円熟の大きなきっかけになったようです。ここにはそうした崇高な自然を描いた作品が並んでいました。

18 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨」 ★こちらで観られます
手前に湖、奥に山があり、そこから虹が掛かっている様子が描かれた作品です。手前は暗く、虹が輝いて見える神秘的な光景で、ジェイムズ・トムソンの詩「春」の数行を添えられ「堂々たる儚い弓が/壮大にそびえ立ち ありとあらゆる色彩が姿をあらわす」と締めくくられているそうです。解説によると、これは23歳頃にロイヤル・アカデミー展に出品したもので、まるで詩を視覚化したようですが詩を元にしたのではなく、実際に見て描いているようです。詩は風景画が思考や感情に訴えることを示すために添えたようで、まさに「崇高」という言葉が相応しい画面とマッチしていました。

26 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「グリゾン州の雪崩」 ★こちらで観られます
これは鉛色の空の下、雪崩が家や木をなぎ倒して行く様子を描いた作品です。厚塗りされた雪は迫り来る感じで、擦ってぼかすことで雪煙を表現しています。家はバキバキに潰されていて緊張感があり、まさに自然の驚異を目の当たりにした感じです。解説によると、当時はこうした主題の際には通常は画面に人を描いていた(小さく描かれた人が驚いていることで自然の大きさを強調するため)ようですが、あえてここでは描かずにより恐ろしく危険に見せているようです。また、この作品を描く少し前にスイスで雪崩の事故があったそうで、それがこの作品の構想にも繋がっているのではないかと推測されるようでした。美しいというよりは畏怖の方が強く感じられる作品でした。

この近くには大型の歴史画も2点ありました。歴史画に風景を入れることで、歴史画よりも劣る分野とされていた風景画の地位向上に努めていたようです。


<第3章 戦時下の牧歌的風景>
続いては牧歌的な風景を描いた作品のコーナーです。ターナーは自らの地位を向上させ過去の巨匠に並ぶために努力していたようで、その為に描いたのが牧歌的な風景だったようです。1803年にはフランスとの戦争が再開されていたようですが、絵の中では穏やかな光景が広がり世相とは対照的だったようです。また、1805年にはロンドン西部の小村アイズルワースに家を借りて田園風景の絵に専念したそうですが、それは当時のアカデミーの範疇ではなかったらしく、画壇で議論になったようです。さらにこの頃、自身の版画集「研鑽の書」の刊行に着手し、風景を6種に分類して紹介するなど風景画が独立した一分野であり知的で多様な感情を表現できるものだと示したそうです。

37 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」 ★こちらで観られます
これは荒れた海の上に帆船の軍艦が並んでいる様子が描かれたかなり大きな絵で、手前には小舟に乗った人たちの姿もあります。解説によると、これはデンマーク海軍(ナポレオンの支配下に入るだろうと英国に恐れられていた)を下し、その軍艦をポーツマスに持ち帰ってきたところらしく、英国の国旗の下にはデンマークの国旗も掲げられ、デンマークが降伏したことを伝えているようです。ターナーは実際にこの場面を見ていたらしく、当事者ならではの臨場感をもって描かれています。荒波の力強い雰囲気や、堂々たる軍艦など全体的に劇的な雰囲気があり、ターナーはこうした英国海軍の戦力を誇示した作品を描いていたようでした。

この章の最初の方には「研鑽の書」のための原画やスケッチブックなどもありました。こうした牧歌的風景を描くことによってクロード・ロランと並ぶ風景画家となるという目標があったようです。

43 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に」
これは王太子(後の国王キング・ジョージ4世)の庇護を受けようと、王太子の誕生日にちなんで野外祝賀会の様子を描いた作品です。背景に広々とした野や森があり、その間にテムズ川が流れています。そして丘の上では貴族たちが大勢集まって宴に興じているようで、全体的に黄色~赤っぽく染まっていることもあって優美で神話の中のような雰囲気がありました。

この辺で下階は終わりで、続いて中階です。


<第4章 イタリア>
4章はイタリアを描いた作品が並ぶコーナーです。イタリアは当時のグランド・ツアー(上流貴族の子弟たちの留学)の最終目的地だったそうで、芸術文化の試金石とされていたようです。ターナーは1819年に初めてイタリアに訪れ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマ、ナポリと半島を南下し、7ヶ月で23冊ものスケッチブックを用いて描きとめました。そして、この旅の前年に出版された詩人バイロンの叙事詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」に大きな影響を受けていたらしく、そこには崩れ行く古代の遺跡と自然の魅惑的な美しさが理想化されて表現されていたようです。 その後、1828年の2度めのイタリア旅行の際にはローマにアトリエを構えて油彩画に取り組んだようです。ここにはそうしたイタリアを描いた作品が並んでいました。
 参考記事:巨匠たちの英国水彩画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)

49 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ」 ★こちらで観られます
これは回廊からローマを見下ろす風景を描いた作品で、サン・ピエトロ広場の光景のようです。手前には首を傾げている男性が描かれていて、これはルネサンス期の巨匠ラファエロらしく、ラファエロの聖母子なども画中画として描かれています。解説によると、この作品を描いた年はラファエロの没後300年だったそうで、ターナーは自分はそれを継ぐものだと考えていたのではないかとのことです。広々とした光景と回廊の近景の取り合わせが面白く、全体的に明るい雰囲気の作品でした。ターナーにとってライバルはクロード・ロランやラファエロといった過去の巨匠だったのですね。
 参考記事:
  ラファエロ 感想前編(国立西洋美術館)
  ラファエロ 感想後編(国立西洋美術館)
  
50 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「レグルス」 ★こちらで観られます
これは古代ローマの将軍レグルスの物語を題材にした作品です(リスト上は4章だけど5章の作品かも?) レグルスは捕虜になって まぶたを切り落とされ、陽光によって失明したという人物で、ここにはまばゆい光に包まれた港の船や街が描かれています。奥から非常に強い光が感じられ、これによって失明してしまったようです。解説によると、劇的な光の表現は強烈すぎて当時は賛否両論となったようです。光を描くといえば後の印象派が思い浮かびますが、こちらも光そのものが主題となっているような感じを受けました。

この近くにはヴェネツィアの嘆きの橋や、ローマのコロッセオ、ナポリなどを描いた作品もありました。また、先日ご紹介した漱石展で観た「金枝」に似た作品(「チャイルド・ハロルドの巡礼」★こちらで観られます)もありました。
 参考記事:夏目漱石の美術世界展 感想前編(東京藝術大学大学美術館)


ということで、今日はこの辺までにしておきます。ターナーの作品は何度も目にしたことがありますが、ここまで充実した内容だとは予想できず驚きでした。初期から順を追って構成されているのでターナーをよく知る機会でもあると思います。後半にも驚きの作品が多々ありましたので、次回は最後までご紹介する予定です。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




原六郎コレクションの名品 【ハラミュージアムアーク】

10日ほど前の休日に、日帰りで群馬県の伊香保温泉に行ってきました。その際にグリーン牧場に併設されているハラミュージアムアークで、「原六郎コレクションの名品」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれているようで、私が観たのは後期の内容となっていました。

(今回はデジカメのメモリーを忘れるという痛恨のミスをしたのでスマフォで撮っています)
2013-10-12 14.55.53

2013-10-12 15.02.01 2013-10-12 15.02.18

【展覧名】
 原六郎コレクションの名品

【公式サイト】
 http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html

【会場】ハラミュージアムアーク
【最寄】渋川駅


【会期】
 前期 2013/09/07(土)~10/09(水)
 後期 2013/10/11(金)~11/20(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
さて、この美術館は伊香保温泉からほど近いグリーン牧場の隣にある美術館で、品川にあるハラミュージアムの別館とも言えるところです。3年ほど前に行った時には冬季休館中で入ることができなかったのですが、今回は事前にしっかり調べてから行きましたw
 参考記事:
  伊香保温泉の写真
  伊香保グリーン牧場の写真
  群馬ガラス工芸美術館の案内

展示は現代美術の常設が3部屋と、觀海庵という部屋で「原六郎コレクションの名品」が開催されていて、その他に野外の常設作品がありました。簡単にですが各部屋ごとの様子をダイジェスト的ご紹介していこうと思います。


<現代美術ギャラリーA>
この部屋は入った瞬間に非常に驚かされました。中央に巨大なバルーン人形(マックス・ストリッヒャー氏の「sleepig giants(silenus)」)があり、若干浮いているような感じで仰向けで斜め上を向いています。これは意味は分かりませんでしたが、子供のようにも見えるかな? 若干不気味な感じもしますw それ以外にも やなぎみわ氏のエスカレーターとその両脇に並ぶ赤い服の女性たちを撮った作品や、米田知子 氏の歴史上の著名人が使っていたメガネを撮った写真シリーズ、佐藤時啓 氏の長時間露光で撮った風景作品などもありました。


<現代美術ギャラリーB>
続いてのB室はミランダ・ジュライ氏の「廊下」という作品が展示されていました。これは通路状の作品で、狭い道に様々なメッセージや簡易な絵があり、それを見ながら進んで行きます。(日本語版と英語版がある) この廊下が人生そのものを表しているかのようなメッセージかと思えば、ナンセンスな感じもして独特の面白さがありました。言葉と通路というロケーションの組み合わせが絶妙です。


<現代美術ギャラリーC>
こちらは何人かの作品が並ぶコーナーで、フランチェスカ・ウッドマンやトレイシー・エミンの写真作品、加藤泉のちょっと怖い3人の人物像(宇宙人みたいな…w)などがある部屋です。奥には草間彌生のミラールームという、部屋中が黄色地に黒の水玉だらけの部屋もあり、その部屋の中央には鏡に囲まれたカボチャのオブジェ(穴から覗きこんで鑑賞する)もありました。ずっといたらおかしくなりそうなくらい水玉だらけですw ここは特にインパクトがありました。


<屋外>
ギャラリーA~Cを観た後、屋外の作品も見て回りました(オラファー・エリアソンの作品は逆側にあるので、ギャラリーより先に見てました)

オラファー・エリアソン 「Sunspase for Shibukawa」
2013-10-12 14.57.41
こちらは金属製の家みたいな作品。実際に中に入ることができ、内部の壁には太陽の光で虹が出るようです。…と、私が観たときは残念ながら曇っていて見えませんでしたが、観測所のような作品でした。

小野節子 「夢」
2013-10-12 15.25.22
何ともメルヘンチックな雰囲気の作品。金属のキラキラした感じがよく似合います。

アンディ・ウォーホル「キャンベルズ トマトスープ」
2013-10-12 15.26.56
野原に現れた巨大なトマトスープの缶! これは先日ご紹介したアンディ・ウォーホルの代表作のバリエーションかな。これは写真で観るより大きめでした。
 参考記事:アメリカン・ポップ・アート展 感想後編(国立新美術館)


<觀海庵>
続いては今回のコレクション展が行われている觀海庵です。

3~5 杉本博司 「South Pacific Ocean」「Ionian Sea」「Black Sea」
これらは白黒の写真で、いずれも水面を撮ったものです。タイトルを観ると世界の様々な場所を写しているようですが、見分けはつきませんw むしろ水平線と水面だけで抽象画のようにすら見えてくるのが面白いです。いずれも静かで神秘的な雰囲気を湛えていました。
 参考記事:メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅  感想後編(東京都美術館) 

近くの入口にはアニッシュ・カプーアの黒い半円形の作品がありました。
 参考記事:番外編 金沢21世紀美術館の常設 (2012年02月)

8 狩野探幽 「蛤蜊観音図」
水の流れの上で大きな蛤に乗った観音が描かれた作品です。背景には月のようなものが描かれていて光背かな? 蛤は蜃気楼を出すという言い伝えがあり、文宗帝が好物の蛤を食べようとしたら観音が現れたという伝説もこの絵のモチーフと考えられるようです。波や翻る衣が軽やかで、雅な雰囲気がありました。

15 円山応挙 「淀川両岸図巻」
これは淀川の両岸を描いた16mもの長い巻物です。川に浮かぶ舟や建物など写実的で超緻密に描かれていて、途中で上下逆さになっているところもあります。観たままを描く写生の姿勢が伺えるとともに、その卓越した技術が見事でした。

12 「縄暖簾図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、すだれを上げる着物の女性と白黒の猫?、左には御簾が垂れ下がっている様子が描かれています。これは源氏物語の「若菜上」の女三宮と柏木の出会いのシーンと結びつけられると考えられるそうで、簾が絵の中心になっているように見えます。規則的な垂直の線や御簾の無数の水平線など構成も幾何学的なのも面白かったです。

この隣には抽象絵画が展示されていました。この大胆な組み合わせの妙も独特で良かったです。

14 「青磁下蕪花瓶」
これは透き通るような薄い青の陶器で、どこから見ても均整の取れた形をしています。胴が太いのですが、首の辺りが細く優美な雰囲気があります。これは国宝の指定を受けているらしく、その色合い・形 いずれも私のような素人でも分かる気品で、非常に素晴らしい作品でした。


ということで、様々な作品を楽しむことができました。特に青磁の花瓶とアンディ・ウォーホルのトマト缶は観に行った価値があったと思います。ここは冬季に休業したりするので、もし足を運ばれる場合は事前に予定を確認しておくことをお勧めします。


おまけ:
この美術館の隣には洒落たカフェもあります。
2013-10-12 14.55.27
今回はちょっと前にお昼を食べたので行きませんでしたが、いずれまた行ってみたいと思います。この後はグリーン牧場で羊に餌をあげたりして遊んできましたが、以前もご紹介したので今回は割愛致します。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




映画「ダイアナ」(ネタバレあり)

先日、公開されたばかりの映画「ダイアナ」を観てきました。

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【作品名】
 ダイアナ

【公式サイト】
 http://diana.gaga.ne.jp/

【時間】
 1時間50分程度

【ストーリー】
 退屈_1_②_3_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_③_4_5_名作

【感想】
夜の回で観たのですが、結構お客さんが入っていました。

さて、この映画は1997年に事故で亡くなった英国のダイアナ元皇太子妃の最後の数年を映画化したものです。普段は映画のストーリーなどは伏せて感想を書いていますが、この映画は内容が希薄なので、ここから先はネタバレを含んだ感想になってしまいます。

まず、紹介などでは半生を描いたかのようになっているものもありましたが、ほんの数年しかありません。彼女の生い立ちや皇太子妃時代の話は全くなく、別居後の新しい恋人との恋愛が主なテーマとなっています。 …というかそれしかありませんw パキスタン人の彼氏とイチャイチャ→喧嘩→仲直り→イチャイチャ このループを3回くらい繰り返しつつ、2人には数々の障害が…みたいな流れです。 何故ダイアナは死んだのか、彼女と王室はどういう関係だったのか?など当時は陰謀説まで流れたほどでしたが、そんなのは一切出てきません。そういうサスペンスやドキュメンタリー的なものを求めると完全に方向性が違うので、退屈する人もいそうです。ダイアナの苦悩(というか彼氏と結婚したいというラブストーリー)が話の9割だったと思います。たまにどんな功績があったかを話に混ぜ込むくらいかな。セレブな女性の恋物語という域を出ないのは残念でした。

一方、ダイアナ役のナオミ・ワッツは本物みたいな雰囲気で、見応えがありました。着ているものなども本物をよく研究していそうな感じです。 見どころの大半はこの女優のなりきりぶりだと思います。 多くの人に愛されているようで孤独を感じているというのがよく表れていました。


ということで、わざわざ映画館で観るほどのものではなかったかなとw 女優さんは良かったのですが、そもそもの話が退屈でした。とは言え、私は男だからそう感じるだけで、女性はこういうのが好きな方もいると思いますので、好みの問題かもしれません。お洒落な雰囲気のラブストーリーが観たい方向けです。




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評価




カイユボット展ー都市の印象派 (感想後編)【ブリヂストン美術館】

今日は前回の記事に引き続き、ブリヂストン美術館の「カイユボット展ー都市の印象派」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

  前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 カイユボット展ー都市の印象派

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・日本橋駅・都営浅草線宝町駅

【会期】2013年10月10日(木)~12月29日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編では人物や室内画が主でしたが、後半は風景画や静物画が並んでいました。

<第3章 近代都市パリの風景>
1853年にナポレオン3世がパリを含むセーヌ県知事に任命したジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン男爵は、狭い路地に建物が密集していたパリを一気に近代化させたそうで、カイユボットはこの都市改造で変貌著しい街を敏感に感じ取り描いていったようです。ここにはそうした変化の時代を感じさせるパリの風景を描いた作品が並んでいました。

21 ギュスターヴ・カイユボット 「ヨーロッパ橋」 ★こちらで観られます
これは鉄で出来たヨーロッパ橋の路上の風景を描いた作品で、斜め格子に組まれた主構を背景に欄干で頬杖をついている労働者風の男と、その脇の犬、向こうからはシルクハットの紳士と日傘をさしたドレスの女性が歩いてきます。また、奥の方には白い蒸気が上がっていて、これはサンラザール駅の汽車の蒸気のようです。非常に奥行きが感じられる構図で、対角線を意識したのは浮世絵に影響を受けたのではないかとのことです。また、沈んだ労働者と裕福なブルジョワ風の2人という組み合わせも時代を感じさせて面白かったです。1枚でこれだけ色々な要素が自然に描かれているとは…。これはかなり気に入る作品でした。

この近くには労働者を描いた習作や、ヴァリエーションとも言える作品なども並んでいました。

24 ギュスターヴ・カイユボット 「パリの通り、雨」
これはカイユボットの中でも有名な作品の習作で、完成作に比べると若干ラフ(完成作より印象派的な感じとも言えるかも)で描かれています。広い通りに傘をさした紳士と女性がこちらに向かってくる様子が描かれ、背景には新しくなったパリの街が描かれています。傘をさしているものの雨は実際には描かれておらず、解説によるとカイユボットは雨の大気ではなく人々の孤独や隔たりを表したかったのではないかとのことです。とは言え、洗練された街の雰囲気がよく出ていて、習作でも十分に楽しめました。この作品の完成作は大好きなので、久々にこれを観られたのは嬉しいです。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 オランジュリー美術館とマルモッタン美術館

32 ギュスターヴ・カイユボット 「見下ろした大通り」
これは自宅から見下ろした通りを描いた作品で、ほぼ真上から見下ろすという斬新な構図で描かれています。歩道を行き交う人々や街路樹、道の馬車などが描かれ、窓から外の様子を観た時の光景がそのまま広がっているようでした。解説によると、こうした構図は後に写真家たちがこぞって取り入れたそうで、画家たちも写真の構図を取り入れるなどお互いに複雑に影響しあっていったようです。カイユボットには写真も撮る弟のマルシャルがいたので、お互いに影響しあうことがあったのかも? カイユボットはこうした構図の面白さが1つの特徴だと思います。

この近くには印象派展のカタログなどもありました。カイユボットは第2回以降、印象派展の開催に尽力しましたが第6回と第8回(最後)には出品せず、距離を置くようになったようです。その背景にはドガとの対立や印象派展の中の不協和音があったようです。


<第4章 イエール、ノルマンディー、プティ・ジュヌヴィリエ>
続いてはパリから離れた別荘付近の風景を描いた作品のコーナーです。カイユボットはパリ南東にあるイエールに夏の別荘を持っていたそうで、そこには広大なイギリス庭園があったようです。また、1880年代にはイエール川での舟遊びの趣味が高じてレガッタ競争に参加するために夏季をノルマンディーで過ごすようになりました。さらに、印象派展での活動に一区切りついた頃にはかつてモネが制作の地としたアルジャントゥイユの対岸にあたるプティ・ジュヌヴィリエに移住し、舟遊びやガーデニングに興じながら木の向くままに風景を描いたようです。カイユボットは初期には写実的で遠近感に重きを置いていましたが、この地ではモネの教えに導かれるように明るい色彩かつ荒く活気ある筆致で描かれているそうで、ここにはそうした作品が並んでいました。

35 ギュスターヴ・カイユボット 「ペリソワール」
これはオールを持って1人乗りのカヌー(ペリソワール)に乗り、こちらに向かってくる帽子の人物が描かれた作品で、周りにも同様のカヌーがいくつか描かれています。軽やかで明るいタッチで、水面にはオールが映り込み、波紋によってスイスイ進んでいる感じがします。緑の水に黄色い帽子など対比的な色使いのためか強い光が当たった感じが爽やかで、筆致はこれまでの作品よりも大胆に感じられました。
この隣にはシルクハットを被ってボートを漕ぐ人を正面から描いた作品もありました。「ペリソワール」もそうですが、船上からの光景という構図も面白いです。
 参考記事:ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション 感想前編(国立新美術館)
  (この展示では「スキフ(一人乗りカヌー)」というタイトルで展示されていました)

この近くにはイエールの自宅の菜園を描いたものもありました。今でもこの地に残っていて公園になっているようです。

49 ギュスターヴ・カイユボット 「ジュヌヴィリエの平野、黄色い畑」
これは区分けされた平原が広がっている風景を描いたもので、その色も黄色、オレンジ、緑といったように分かれています。奥には木々が並ぶ様子も描かれていて、平穏な雰囲気です。これは取り立てて面白い作品というわけでは無かったのですが、これまでと違って筆がかなり大胆で色合いも明るくなっているので、作風が一変したように感じられました。恐らくこれがモネからの影響じゃないかな。

44 ギュスターヴ・カイユボット 「サン=クレールからエトルタへの道を行くマグロワール親父」
これは坂道を登る帽子をかぶった青い服の男性を描いた作品です。男性はちょうど木陰に入っていて、日の当たる所に比べてだいぶ暗めに描かれているので、日向の陽光の強さが一層明るく感じられます。背景には海も見えていて爽やかな雰囲気がありました。
この作品の隣には同じ男性が林の中で横になっている作品もあり、この男性はこの地の庭師とのことです。そちらは奇妙な等身で描かれていて、それはそれで気になりましたw

この先の部屋にはマルシャルによるパリの写真が並んでいました。また、作品の描かれた場所の地図を見たり、タブレットで作品の解説を読んだりすることもできます。

53 ギュスターヴ・カイユボット 「セーヌのプティ・ブラ、アルジャントゥイユ近く」
これは川と木々を描いた作品で、これまでの画風から一転して大胆な点描(分割法)による技法が使われています。色も軽やかで、景色が水面に反射し移ろう感じがよく出ています。これも画風の変化に驚く作品でした。

58 ギュスターヴ・カイユボット 「セーヌ川に係留されたボート」
これは川に係留された船を描いた作品で、いずれも帆船らしく長いマストが立っています。そのいくつもの垂直の線がリズムを生んでいるように思えると共に、こちらも大胆なタッチで軽やかさがありました。川のゆらめきまでも感じられる作品です。

なお、プティ・ジュヌヴィリエは帆船の聖地だったらしく、カイユボット兄弟は舟遊びが大好きだったそうです。ギュスターヴ・カイユボットは船の設計をするほどのめり込んでいたようで、そうした写真も他の部屋に展示されていました。


この近くにはブリヂストン美術館の常設作品であるモネのアルジャントゥイユの地を描いた作品もならんでいました


<第5章 静物画>
続いては静物のコーナーです。カイユボットの静物は現代画家としての視点が見られるそうで、肉や果物は散策者が通りすがりに(店先で)目にした光景のように表されているそうです。また、花の静物を描くようになったのは1880年代前半で、この時期にプティ・ジュヌヴィリエでガーデニングに没頭していたらしく、その関心を見て取れるようです。ここにはそうした数点の静物画が並んでいました。

59 ギュスターヴ・カイユボット 「鶏と猟鳥の陳列」
これは吊るされた鳥や並べられた鳥などが描かれた作品で、背景は黒となっています。結構粗めの筆使いで描かれ、確かにお肉屋さんに並んだ鳥といった感じに見えるかな。解説によると、これらは「ジビエ」と呼ばれる狩りで捕らえた鳥獣らしく、こうした狩りの獲物を描いた静物は西洋絵画では昔からある主題です。とは言え、この整然とした感じは新しい表現に思えました。

61 ギュスターヴ・カイユボット 「キンレンカ」
これは薄いピンク~紫を背景に、明るい緑の葉と朱色の花のキンレンカが描かれた作品です。その色合いが鮮やかで、対比的な感じとなっています。背景も燃え立つような色で、可憐かつ装飾的な感じがありました。

この隣にはヒナギクを描いた4枚セットの作品もありました。


<第6章 マルシャル・カイユボットの写真>
最後は弟のマルシャルが撮ったアルジャントゥイユの川辺の写真などが並んでいました。マルシャルの写真も今回の展示を盛り上げる1つの要素と言えそうです。


その先はブリヂストン美術館の常設作品のコーナーで、古代のコレクションを含めると今回は3部屋だけとなっていました。


ということで、元々好きな画家だったこともあり非常に満足できる内容となっていました。特に室内画と風景画には独特の魅力があると思います。貴重な機会なので図録も買ってきました^^ 今季お勧めの展示です。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




カイユボット展ー都市の印象派 (感想前編)【ブリヂストン美術館】

前回ご紹介したお店で休憩する前に、京橋のブリヂストン美術館で、「カイユボット展ー都市の印象派」を観てきました。充実の内容でメモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

P1130278.jpg

【展覧名】
 カイユボット展ー都市の印象派

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・日本橋駅・都営浅草線宝町駅


【会期】2013年10月10日(木)~12月29日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
結構お客さんが多く入っていましたが、自分のペースで観るのに支障がない程度でした。
さて、今回の展示はモネ、ルノワール、ピサロ、シスレーら印象派の仲間の作品を購入することで彼らを経済的に支えたばかりでなく、自ら印象派展にも参加した画家でもあるギュスターヴ・カイユボットのアジア初の個展です。カイユボットは1848年に繊維業を営む裕福な事業家の息子としてパリに生まれ、パリ8区の邸宅で青春時代を送りました。法律学校で学んだ後、1872年頃に19世紀後半を代表する肖像画家レオン・ボナのアトリエに出入りするようになり、1873年にはパリの官立美術学校エコール・デ・ボザールに入学したそうです。そして間もなく(恐らくはボナの友人だったドガを通じ)絵画の改革を志す若い画家たちと知り合います。1874年に最初の印象派展が開かれると、カイユボットはモネやルノワールをはじめとした印象派の画家と交友を持ち、第2回以降(6回と8回以外)の印象派展に参加し、彼らを支援しながら自らも制作を行いました。晩年(40代)は印象派展から離れて制作していたようですが、1894年の没後に遺言書により印象派の画家たちの作品の一部はフランスの国家に寄贈され、今ではオルセー美術館のコレクションとなっているようです。近年ではカイユボットが見直され注目が集まっているそうで、印象派でありながら古典的な表現手法を重視した当時のアカデミズムの自然主義的表現に通じる作風となっているようです。展覧会は題材ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品を通じてご紹介しようと思います。


<第1章 自画像>
まずは自画像のコーナーです。カイユボットは都市風景と室内画を得意とし、パリ近郊の自然も描いていましたが、自画像はわずか5点しか確認されていないそうです。ここにはそのうち3点が並び、それぞれ違った時代の姿となっていました。

1 ギュスターヴ・カイユボット 「夏帽子の自画像」
これは青い帯のある麦わら帽子をかぶって口ひげをたくわえた自画像で、まだ若々しい姿となっています。優しい目でこちらを見ていて微笑んでいるように見えます。背景は緑で白い服を着ているせいか、明るく爽やかな印象を受け、写実的な感じの画風でした。

2 ギュスターヴ・カイユボット 「自画像」
これは1880年代(40代はじめ)の頃の自画像で、この頃はすでに印象派の活動に一区切りつけていたようです。横向きでこちらを振り返り、短めの髪の赤っぽい顔で鋭い目をしているように見えます。そのタッチは印象派風かな。表情のせいかやや硬い感じがあるように思えました。
この隣にも40代の自画像がありました。カイユボットは45歳という若さで亡くなったのですが、かなり老けて見えました。ちなみにカイユボットは父の遺産で印象派の作品を購入していたのだとか。こんなに良い絵が描けるパトロンって凄いw


<第2章 室内、肖像画>
続いては室内画と肖像画のコーナーです。カイユボットは1860年に父マルシャルがパリの8区のミロメニル通りの高級住宅地に新築した邸宅に住み、この邸宅を舞台にした多くの室内画と肖像画を描いています。この時代、「家族」の形態が次第に小さくなっていったらしく、プライベートな空間に重きをおく考えが生まれたそうです。これは18世紀の思想家に端を発したそうで、カイユボットの絵画はこれを具現化したものと言えるらしく、新しい時代を生きる家族の様子を彷彿とさせるそうです。カイユボットはお金持ちのためか注文で肖像などを描くことはなかったようですが、やがて近しい友人の肖像も描かれるようになったらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。

5 ギュスターヴ・カイユボット 「昼食」
これは様々なガラス器が置かれた円卓に向かって食事をする弟ルネと母が描かれた作品です。その隣には料理を出す執事の姿があり、窓からは明るい光が差し込んでいて3人とも逆光となっています。つるつるのテーブルにも光が反射するなど緻密でアカデミックな感じもするかな。弟と母は目を合わせずに食べていて、その関係性を思わせます。また、視点も面白く手前はカイユボットが自分の皿を上から観たような構図になっているのですが、奥は斜め上から観た感じがして見事です。印象派にしては結構シャープな雰囲気があり、それが1つの魅力となっているようでした。

7 ギュスターヴ・カイユボット 「マルシャル・カイユボット夫人の肖像」
これは椅子に座り縫い物をしている母を描いた肖像画です。何故か喪服を着て沈んだ表情を浮かべているのですが、これは先ほどの弟が26歳で急死した頃の姿だそうです。周りは赤いカーテンや豪華な装飾があり、右から光が差し込んでいる感じを受けました。心情や光の表現などがよく現れている作品です。

この隣には本を読む叔父を描いた作品もありました。また、カイユボットを撮った写真が並び、先ほどの若いころの自画像と同様に優しい目をしていました。これらの写真はもう1人の弟マルシャルが撮ったものらしく、この展覧会の至る所に展示されています。マルシャルは官立高等音楽院出身の音楽家で、フォーレ、ショーソン、ドビュッシーらとも交流があったそうです。写真は1891年から撮りはじめたようで、その腕前も見事で当時の様子がわかる写真も多々展示されています。 マルシャルは兄のギュスターヴと共に行動して芸術的慣性をお互い認め合っていたのだとか。ちなみにギュスターヴ・カイユボットには異母兄弟の兄(聖職者)もいたようです。

16 ギュスターヴ・カイユボット 「アンリ・コルディエ」
これはカイユボットの友人である東洋学者が書斎で執筆している様子を描いた作品で、机にもたれ掛かるような感じでやや横向きの姿で描かれています。やけに机が高く背景の本棚に対して斜めに机が置かれているなど、ちょっと不自然な感じがします。解説によると、これは面白さを出すために意図的にこうした構図にしているようで、確かにそれが記憶に残りました。画風は印象派らしい感じもしますが、どこかきっちりしたアカデミックな感じも受けました。

この近くには最近ブリヂストン美術館の収蔵品になった「ピアノを弾く若い男」もありました。これは第2回印象派展にも出品された作品で、弟のマルシャルがモデルとなっています。この部屋の中央にはそこに描かれたピアノと似たピアノが置かれていました。

14 ギュスターヴ・カイユボット 「室内-窓辺の女性」
窓辺に立ち外を眺める黒い服の女性と、その脇のソファに座って新聞を読む男性が描かれた作品です。窓は明るくレースのカーテンは装飾的な雰囲気を出していて、そこから見える向かいの建物にも人の姿があります。室内の2人はお互いにまったく関心がないようで、どことなく倦怠感があるかな。2人の関係性が何となく伝わってくるようでした。

13 ギュスターヴ・カイユボット 「室内-読む女性」
椅子に座って横向きで新聞を読む女性と奥のソファで横たわって本を読む男性が描かれた作品です。女性はちょっとつまらなそうな顔をしているかな。一方、男性の方は小人ではないかというくらい小さく描かれていて、遠近感と大小の感覚に違和感を感じます。解説によると、この人物は印象派の画家と親交があった編集者らしく、当時の都市の生活を垣間見た感じがしました。

この辺にはブリヂストン美術館のルノワールなどのコレクションもありました。また、弟のマルシャルが撮った室内の写真などもあります。そして部屋の最後に何故か静岡県立美術館のピサロの作品があったのですが、これはカイユボットがコレクションしていた作品の1つのようです。カイユボットが印象派から買った作品は70点ほどあったらしく、その中にはルノワールのムーラン・ド・ラ・ギャレットやドガのエトワールなどもあったのだとか。
 参考記事:
  ドガ展 (横浜美術館)
  番外編 フランス旅行 オルセー美術館とセーヌ川

ということで、心待ちにしていた展示だけに感激もひとしおといった感じでした。カイユボットは点数もあまり多くないだけに国内で見られるのは非常に貴重な機会(何しろ本格的な個展は初めて)なので、見逃せない展示だと思います。後半も素晴らしい作品が並んでいましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。


   → 後編はこちら


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評価




コッレベレート 【京橋界隈のお店】

前回ご紹介した展示を観る前に、京橋に新しく出来た東京スクエアガーデンの地下にあるコッレベレートというお店で軽くご飯を食べてきました。

P1130279_20131020005141d1d.jpg

【店名】
 コッレベレート

【ジャンル】
 カフェ&バー

【公式サイト】
 http://www.vinvino-to.jp/collebereto/
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13154979/dtlrvwlst/5289306/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 京橋駅、宝町駅、銀座一丁目駅

【近くの美術館】
 ブリヂストン美術館
 東京国立近代美術館フィルムセンター
 INAXギャラリー
 ポーラミュージアムアネックス
 

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
丁度席が埋まるくらいでしたが、特に待つことはなくすんなり入れました。

さて、このお店はワインなども楽しめるイタリアンのカフェ&バーで、最近(2013年)に出来た東京スクエアガーデンの中にあり、京橋の駅から直結された便利な場所です。恐らくお酒を楽しむ人が多いのだと思いますが、私はカフェとして利用してきました。

お店の雰囲気はこんな感じ。テーブル席、カウンター席、テラス席があり、立ち飲みスペースもあるそうです。(私はテーブル席にしました)
P1130287_20131020005125502.jpg
出来たばかりということもあり綺麗で洒落た雰囲気です。フィレンツェにも同じ名前のお店があるのだとか。

この日は、「豚とじゃがいもの白いラグー ローズマリー風味のスパゲティ コーヒーor紅茶付」(1050円)を頼みました。

こちらがパスタ。
P1130286.jpg
確かにローズマリーが入っていて良い香りがしました。豚も旨みがあり、パスタの塩梅やじゃがいもとともに美味しかったです。

飲み物はアイスコーヒーにしました。
P1130282.jpg
こちらも期待通りの美味しさで、苦味とコクがありました。

連れはフランボワーズ風味のティラミス(520円)を頼んでいました。
P1130288.jpg
こちらはやや酸味がありティラミスというよりはフランボワーズの感じが出てたかな。見た目も洒落ていて爽やかでした。

こちらはピーチのジュース(520円)
P1130284.jpg
濃厚な味で美味しかったそうです。


ということで、非常に便利な場所に良いお店が出来ました。ここはカフェメニューだけでなくレストランメニューも気になるものがあったので、いずれまた利用したいと思います。この辺は美術館やギャラリーも多いので、美術館めぐりの合間にも良さそうです。





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評価




selfish ; yuko sugimoto 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

先日の土曜日に、京橋~銀座のポーラミュージアム アネックス(POLA MUSEUM ANNEX)で「selfish ; yuko sugimoto」を観てきました。

P1130291.jpg

【展覧名】
 selfish ; yuko sugimoto

【公式サイト】
 http://www.po-holdings.co.jp/csr/culture/annex/index.html
 http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2013年10月4日(金)~11月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回の展覧会は雑誌や広告、化粧品のパッケージなどで活躍されていたイラストレーター・杉本祐子 氏の個展となっています。杉本祐子 氏は森村泰昌 氏の「女優」シリーズの撮影チームのメイクアシスタントなどをつとめた後、1995年頃からイラストレーターとなったそうで、雑誌『VOCE』の巻頭コラムのイラストをきっかけにブレイクしたそうです。残念ながら2011年に若くして他界してしまったようですが、特に女性の間では有名なアーティストで、ポップで洒落た作風で今でも多くのファンがいるようです。

展覧会は未発表の原画などが並んでいて、特にそれぞれのタイトルなどはなかったのでメモは取りませんでしたが、少ない線と色で簡潔かつ豊かに表現された女性像が数十点並んでいます。いずれもメイクをしたり着飾ってポーズをとったりと、非常に女性的で女性の憧れを絵にしたようなお洒落な雰囲気があります。一言で言えば女子力が超高い絵ですw ぱっちりした目の女の子たちが愛らしくもクールで、作者のファッションへの関心なども伝わってきました。

ということで、男よりも女性に刺さりそうな展覧会でした。私の連れもファンだったらしく、図録も買っていました(図録には展覧会に無かった作品も載っています) 会期は短めですので、お好きな方は是非どうぞ。ここは無料で観ることができます。


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「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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■2009/10/28
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  → 絵画
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