関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

映画「ワンチャンス」(ややネタバレあり)

今日は帰りが遅かったので軽めの記事です。日付が変わって昨日となりましたが、映画「ワンチャンス」を観てきました。

【作品名】
 ワンチャンス

【公式サイト】
 http://onechance.gaga.ne.jp/
 (ネタバレが多いので要注意)

【時間】
 1時間40分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_④_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_4_⑤_名作

【感想】
特に混雑しているわけでもなく快適に鑑賞することができました。他の映画でお客さんが多い時期なので、映画館自体はいつもより混んでいたかな。

さて、この映画は実話を元にした物語で、オペラ歌手を目指すやや冴えない男が主人公となっています。私はその結末だけは知っていたのですが、どのような人物かなどは全然知らなかったので楽しみにしていました。 しかし思ってた以上に冴えない感じが出ていて、何度となく主人公の性格にやきもきしながら観ていましたw それでも「プラダを着た悪魔」などを手がけてきたデイヴィッド・フランケル監督の作品ということもあり、笑いあり、共感あり、感動ありで、テンポよく話が進んでいき、ラストは特に感動的な盛り上がりとなっていました。(wikipediaなどで実際の人物を調べると、若干の脚色が入っているようです) 

この映画の面白いところはやはり歌で、そのレッスンを含めてあちこちでオペラの有名曲が使われています。どの歌も聞き覚えがあるようなものなので馴染みやすいです。そしてこれらの歌は主演のジェームズ・コーデンが実際に歌っているとのことで、それも非常に驚きです。役者も凄い…。 また、舞台となった町並みや周りの人々も面白く、特に周囲の人々は個性的かつ温かみのある人ばかりで、それも物語を盛り上げる要素となっていました。特に奥さんと元上司の支えが印象的です。


ということで、分かりやすくて感動できる面白い作品となっていました。それほど話題になっていない為か、1日の上映回数も少ないのが残念ですが、今季お勧めの映画です。



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評価




オランジュ・ブルー 【葉山界隈のお店】

前回ご紹介した葉山しおさい公園を見学した後、すぐ隣にある神奈川県立近代美術館 葉山館のレストラン「オランジュ・ブルー」でランチを取りました。

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【店名】
 オランジュ・ブルー

【ジャンル】
 レストラン

【公式サイト】
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp/public/Restaurant.do
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 逗子駅(バスで20分程度)

【近くの美術館】
 神奈川県立近代美術館 葉山館


【この日にかかった1人の費用】
 1500円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(祝日13時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
非常に混んでいて待ち時間は30分以上でした。(その間に公園を観てきたのですが、遅れると並び直しになるようです。)  美術館自体はそんなに混んでなかったので、このレストラン自体が人気なのかも?

中はこんな感じ。席が少なく通路も狭いので結構ぶつかられます。
P1150063.jpg
店員が椅子にぶつかっても知らん顔なのは如何なものか…w

景色は非常によくて、テラス席もあるようでした。
P1150058.jpg

この日、私はシーフードカレー(1500円)にしました。

まずはスープ。
P1150054.jpg
これはあまり記憶にないので普通だったかな。

こちらがシーフードカレー。
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思っていた以上に本格的で、海老・ホタテ・ムール貝などが入っていました。辛くはなくマイルドな味で、美味しかったです。

デザートは何種類か選べたのでベリー系のデザートにしました。
P1150061.jpg
こちらは甘さ控えめで、香りも味も普通かな。

食後のドリンクはコーヒーにしました。
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コクがあり酸味・苦味は軽めでした。これは結構好み。


ということで、良い景色を眺めながら食事を楽しむことができました。とは言え、混んでいるのと狭いのが難点かな。平日など人の少なそうな日のほうが良いかもしれません。


おまけ:
勿論、この後に美術館も観てきましたが、今回はその後の予定もあったのでメモを取らずに観てきました。
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この日観た内容は「柳瀬正夢 1900-1945 時代の光と影を描く」という展示で、ロシア的な作風でプロレタリア運動に傾倒した画家の展覧会でした。(すでに終了しています)
 参考リンク:柳瀬正夢 1900-1945 時代の光と影を描く
 会期:2014年2月11日~2014年3月23日

また、ここには常設展示は無いのですが、図書室が結構好みの本があったので予定を忘れて楽しんできましたw


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評価




【葉山しおさい公園】の写真

10日ほど前の土曜日に、三浦半島の葉山に観光に行ってきました。まずは葉山御用邸付属邸跡地が公園となった葉山しおさい公園を観てきました。

P1150049.jpg

【公式サイト】
 http://www.town.hayama.lg.jp/4/siosai.html

【施設名】
 葉山しおさい公園

【最寄】
 JR逗子駅(バスで20分程度)



土曜の昼過ぎに行ったのですが、空いていてのんびりと散策出来ました。

ここは元々、天皇家の御用邸の付属庭園だったそうで、そんなに広くはないのですがこんな感じの日本庭園があります。
P1150050.jpg

角度違い。茶室もありお茶を頂くこともできるようでした。
P1150052.jpg

池には鯉の他に、近くの海から来た鳥の姿もありました。
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なお、最初の写真は葉山しおさい博物館で、特に詳しくメモは取らなかったのですが、生物学者でもあった昭和天皇から下賜された標本や、目の前の相模湾に住む生き物の標本などが展示されていました。また、この辺りは三ヶ岡遺跡という古墳時代から平安時代にかけての集落もあったらしく、その関連の品もありました。
 公式サイト:葉山しおさい博物館

博物館を見終わった後は隣接の神奈川県立近代美術館葉山館に向かいました。その途中、この頃はカワズザクラも咲いていました。
P1150037.jpg

こちらは梅。丁度満開となっていました。
P1150040.jpg

ということで、博物館も入れて30~40分くらいあれば十分な程の小さな公園でした。この隣には神奈川県立近代美術館葉山館があるので、もし訪れる機会があったら両方ハシゴするのが良いかと思います。意外と海洋生物の標本は見ていて面白いしw


おまけ:
この日の目的は美術館と海でした。葉山しおさい公園と葉山館の間からは海を望むことができます。
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美術館の脇の道を下って行くと浜辺にも行けます。
P1150028.jpg

まだ寒い時期のせいか波が高い!w 
P1150032.jpg
それでも多くのサーファーがサーフィンをしているので、それを見ているだけでものんびりと過ごせました。




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評価




ラファエル前派展 (感想後編)【森アーツセンターギャラリー】

忙しくて少し間が空きました。今日は前回に続いて森アーツセンターギャラリーの「ラファエル前派展」についてです。前編ではその活動の成り立ちなどにも触れていますので、前編を読んでいない方は先に読んで頂けると嬉しいです。


  → 前編はこちら


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【展覧名】
 ラファエル前派展

【公式サイト】
 http://prb2014.jp/
 http://www.roppongihills.com/events/2014/01/macg_raphael_exhibition/

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅

【会期】2014年1月25日(土)~4月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時範頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
後編も引き続き


<4.近代生活>
ラファエル前派が結成された1848年は社会改革を求める労働者階級によるチャーティスト運動が最後の盛り上がりを見せていたそうで、ラファエル前派初期の作品にもこうした反抗的・反体制的なエネルギーが見られるようです。当時、産業革命によって経済が発達するとともに貧富の差が拡大し社会の亀裂や矛盾が明らかになったそうで、ラファエル前派は風俗画に倫理性を持ち込み、売春や貧困といった挑発的な主題を通して批評性を与えようと試みていたようです。彼らの作品は堕落した人間の生き方と救済の必要性を説くと共に、義務と自助努力の重要性を訴え、しばしば近代の寓話の形態をとったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

45 ロバート・ブレイスウェイト・マーティノウ 「我が家で過ごす最後の日」
これは貴族の屋敷の中を描いた作品で、グラスを片手に乾杯するようなポーズの陽気な父親と、肩を抱かれた息子、その脇には心配そうな顔の母親と女の子、窓際には老夫婦が真剣そうに話をしている様子が描かれています。調度品などは重厚かつ緻密に質感豊かに表現されていて、題材と共にフランドル絵画を彷彿としました。窓の外の紅葉した木々まで鮮やかに表現されています。 解説によると、これは一見楽しげに見えるものの、左下にある馬の絵や家具に貼られた競売用の札、テーブルにはアパートの広告があり、博打で破産して追い出されることを示しているようです。よく観ると右奥では何かを取り外している人の姿などもあるので、まさに全て失ったのかもしれません。消えそうな暖炉の火は財産の喪失を表しているとのことでした。寓意的で享楽への戒めのようですが、1枚に様々な意味が込められていて面白かったです。

41 ウィリアム・ホルマン・ハント 「良心の目覚め」 ★こちらで観られます
これはピアノに向かって座る男性が女性の腰を掴んでいる所が描かれた作品です。女性は立ち上がって外を見ていて、背景の鏡にはその外の光景が映っています。女性の指には3つ指輪があるのですが薬指だけはなく、これは男性の愛人であることを示しているようです。また、周りは派手な色の絨毯や調度品などに囲まれていてケバケバしい男の皮相的な愛を表しているそうで、机の下では小鳥を弄ぶ猫もいて鋭く見上げているのも暗喩的です。一方、女性はそんな状況から目を覚ましたらしく、明るい表情には希望が感じられます。ピアノの楽譜には過去の純真を歌う曲が書かれているそうで、男の歌声で目を覚ましたようです。解説によると、当時は愛人や娼婦に身を落とす女性が社会問題になっていたそうで、これはかなりストレートにそれ表現して批判しているそうです。一見して享楽的な感じはしますが、意味深で要素が多いのが面白いです。これもまた様々な意味が込められた作品でした。


<5.詩的の絵画>
続いては詩を題材にした絵画のコーナーです。ロセッティは1850年代半ばには油彩作品を展覧会に出品するのをやめて、初期ラファエル前派の自然主義からも離れダンテの詩やアーサー王の伝説を題材に濃厚な彩色で中世風の水彩を制作するようになったようです。そのモデルとなったのはエリザベス・シダルで、彼女はロセッティの恋人にしてミューズであり、後に妻となりました。彼女自身も絵を描いていたそうで、ロセッティの影響を受けつつも画家としての個性を発揮しました。 また、同じ頃バーン=ジョーンズとウィリアム・モリスはロセッティの元に集まり、やはり中世趣味の濃い絵画を試みていたそうで、後に家具やステンドグラス、壁紙などの装飾芸術に活動を広げていきました。ここにはそうした作品が並んでいました。

52 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「アーサー王の墓」
これはアーサー王の物語を題材にした作品で、アーサー王の墓の横で膝をついている妻ヴィネヴィアと、墓に手をついて前のめりになってヴィネヴィアに口づけを迫る騎士ランスロットが描かれています。周りには失楽園の物語にも出てくる林檎の木があり、王がいなくなって早速迫っている様子を人間の堕落と絡めているようです。水彩とは思えないほどの濃い色彩で描かれ、物語というよりは生々しい人間ドラマといった感じに見えました。

この近くにはシダルの作品もありました。確かにロセッティに似ていて思った以上に画家としての腕も良かったようです。

54,55 エドワード・バーン=ジョーンズ 「クララ・フォン・ボルク1560年」「シドニア・フォン・ボルク1560年」
これは魔女裁判を題材にしたゴシック小説が出典で、2枚対になるように並んでいました。クララ・フォン・ボルクは策略の餌食になった女性で、白い小鳩を手の中に入れて足元の黒猫から守る様子が描かれています。可憐で気高い印象を受け、清純そうな雰囲気です。一方、シドニアは黒い蛇が絡まるような柄のドレスを着た魔女で、頭は蜘蛛の巣のような装飾を施し、横向きでちらっと流し目しているような姿で描かれています。妖艶さと不気味さがあり、クララとは対照的な印象を受けました。解説によると、クララはバーン=ジョーンズの妻がモデルで、シドニアはロセッティの元愛人がモデルなのだとか。


<6.美>
続いては「美」そのものについての題材です。1860年代に入る頃からラファエル前派は表現形式を模索し始めたそうで、それまでの文学的な主題や自然、社会、宗教などから離れ、絵画制作の純粋に美的な可能性を探ろうとしたそうです。まずミレイが1850年代頃から明確な主題を持たない作品を試み、ロセッティも1859年から油彩に復帰し装飾性豊かな女性の胸像を濃厚な色彩で描いたようです。そこでは16世紀ヴェネツィア派の絵画が意識されるものの、物語性を廃し色彩や形式の美を追求する「芸術のための芸術」を目指す唯美主義の潮流に接近していったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。


60 ジョン・エヴァレット・ミレイ 「安息の谷間[疲れた者の安らぎの場]」
これは夕暮れの中で墓掘りしているシスターが描かれた作品です。その脇にもシスターが休んでいてドクロのついた十字架を持っています。意味ありげなモチーフですがストーリーは無いようで、唯美主義的な作品のようです。夕暮れが美しく、墓掘りの音だけが聞こえてきそうな静かな雰囲気でした。自然の情景も美しいです。

62 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「アウレリア(ファツィオの恋人)」
これは髪を編む若い女性を描いた作品で、モデルは当時の恋人ファニー(先ほどの魔女のモデル)だそうです。ブラシや香水瓶があり、鏡に向かっているようで、これはルーヴルでティツィアーノらヴェネツィア派の画家の鏡に映る自分に見とれる肉感的な女性像を見て感銘を受けて描かれたものだそうです。他に物語もなく正に唯美的な作品で、女性の目線が鏡を見ている時の感じがよく出ているのが印象的でした。

64 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「ベアタ・ベアトリクス」 ★こちらで観られます
目をつぶり恍惚の表情を浮かべる女性を描いたもので、これはダンテ(神曲で有名なダンテ。ロセッティは名前が同じこともあって敬愛していた)の恋人ベアトリーチェのようです。背景にはフィレンツェの橋とダンテ、その目線の先には愛の化身が描かれ、日時計が3時の方向を指している様子も描かれています。また、ベアトリーチェの手元にはケシの花をくわえ頭に光輪がある赤い鳥も描かれていて、ケシから連想されるようにこれはベアトリーチェの死を描いたもののようです。解説によると、このケシはロセッティの妻シダルがアヘンの過剰摂取で亡くなったことも表しているようです。つまり妻の死をベアトリーチェに重ねて描いたと言えるのかもしれません。 全体的に柔らかい光が彼女を包み、神秘的な感じがあるものの、儚い美しさでどこか悲しげな作品でした。

68 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「プロセルピナ」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、ザクロ(あの世の果実)を持つローマ神話の女神プロセルピナが描かれていて、プロセルピナはザクロを食べてしまったため、冥界と地上を交互に生きることになった女神です。この絵のモデルはウィリアム・モリスの妻のジェインで、ロセッティはシダルの死後に彼女と親密になったようです。囚われの女神と彼女の境遇を重ねたとのことで、ちょっとロセッティには女性問題の香りが…w 緑の衣を着てこちらをチラリと見ている顔は何となく哀しげで、色鮮やかで美しく気品ある姿となっていました。


<7.象徴主義>
最後は象徴主義の先駆けとなったことを示すコーナーです。ロセッティに深く傾倒していたバーン=ジョーンズは1870年代頃から円熟期を迎え、ヨーロッパ大陸に起こった象徴主義に大きな影響を与えたようです。絵の登場人物は感情を表すこと無く幾重にも塗り重ねられた不透明な絵の具の層の中で謎めいて描かれました。近代社会に背を向けてひたすら理想化された過去のヴィジョンを描き続けたバーン=ジョーンズはヴィクトリア朝時代の物質至上主義に対向する別の世界観を示していたとも言えるようで、ここにはそうした象徴主義的な作品が並んでいました。

72 エドワード・バーン=ジョーンズ 「[愛]に導かれる巡礼」 ★こちらで観られます
チョーサーが中世の詩を翻案した薔薇物語の1場面が描かれた作品で、愛の神に矢を射られた詩人がある特定の薔薇と恋するという話のようです。薔薇を求めて愛の女神に導かれる黒いフード姿の詩人が描かれ、詩人の周りには薔薇の刺があり女神には羽がはえています。写実的で色はやや暗めですが、落ち着いた気品がありました。大画面の作品なので見栄えがします。

71 エドワード・バーン=ジョーンズ 「夕暮れの静けさ」
館を背景に赤い手すりに手を置く女性が描かれた作品で、やや斜めを向いていてどことなくモナ・リザを彷彿とします。無表情で神秘的な女性像かな。確かに象徴主義的な作品に思えました。


ということで非常に満足度の高い展示でした。ラファエル前派は元々好みということもありますが、これだけ素晴らしい作品を日本で見られる機会は中々ないと思います。今季お勧めの展示です。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




ラファエル前派展 (感想前編)【森アーツセンターギャラリー】

少し前のことですが、六本木ヒルズの中にある森アーツセンターギャラリーで「ラファエル前派展」を観てきました。充実の内容でメモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1140976.jpg

【展覧名】
 ラファエル前派展

【公式サイト】
 http://prb2014.jp/
 http://www.roppongihills.com/events/2014/01/macg_raphael_exhibition/

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅


【会期】2014年1月25日(土)~4月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
結構混んでいましたが思ったほどではなく、帰る頃には空いてきていました。ただし、同時に森美術館でアンディ・ウォーホル展をやっていることもあり、地上階のチケット売り場はかなりの混雑ぶりでしたので、中に入るまでは時間がかかるかもしれません。余裕を持ったスケジュールをお勧めします。

さて、今回の展示はイギリスが誇る近代絵画の一派「ラファエル前派」についての展示です。2008年のミレイ展、2013年~2014年のターナー展に続くテート・ギャラリーと朝日新聞の共催展らしく、ミレイ展でも出品されていた作品も結構含まれています。 ラファエル前派は1848年にロンドンのロイヤル・アカデミーで学ぶダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの3人が中心となり、そのすぐ後にウィリアム・マイケル・ロセッティ、ジェームズ・コリンソン、フレデリック・ジョージ・スティーヴンス、トーマス・ウールナーの4人が加わって結成された集団で、「ラファエル前派兄弟団」というのが本来の名前です。その名の由来はルネサンス期の画家ラファエロ・サンティ以降、彼の理想化された作風を目指そうとしてきたアカデミックな画壇に対し、それ以前の純粋で素朴な初期ルネサンス絵画に立ち戻るという意味が込められています。彼らの急進性は批判されることもありメンバーもやがて個別の道を選ぶなど長続きはしません(5年程度)でしたが、批評家のジョン・ラスキンの支持と影響を受け、それまでにない革新を生み出していきました。今回はそうした彼らの作品や、第2世代とも言えるバーン=ジョーンズらの作品まで題材ごとに並んでいましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  ラファエロ 感想前編(国立西洋美術館)
  ラファエロ 感想後編(国立西洋美術館)
  ターナー展 感想前編(東京都美術館)
  ターナー展 感想後編(東京都美術館)


<1.歴史>
まずは歴史画のコーナーです。歴史画はヨーロッパのアカデミーで17世紀以来最も重要なジャンルとされてきました。それらは主に権力や宗教と結びついていたわけですが、ラファエル前派は従来の聖書などの物語(歴史)ではなく、シェイクスピアやアーサー王の伝説を題材にしていたそうです。アカデミーの理想化された古典的な裸婦や、規範的な美徳、軍功、王家の功績などの慣例からはかけ離れていて、写実性と個性豊かな人物像を特徴としていたようです。そして服装や背景は史実に即して本物らしさを追求し、仲間内を登場人物のモデルとして緻密に描き上げるなど、真実味ある作品に仕立てていきました。その為、批判を受けることもありましたが、ヴィクトリア朝時代の新興富裕層の心を掴み、彼らの名前は次第に広まっていきました

10 アーサー・ヒューズ 「聖アグネス祭前夜」
この画家はラファエル前派ではありませんが影響を受けたいたそうで、ここには窓状の枠に3つの場面が描かれています。左から右へと物語が進んでいるらしく、左は背を向けて建物の壁に向かっている男性、中央はベッドに横たわる女性とその脇で片膝を付いて起こす男性が描かれています。女性は驚きつつも真摯な眼差しで、左の場面ではその男女が手を取り合って部屋から抜け出す様子が描かれていました。解説によると、これはジョン・キーツの詩の物語を題材にしたもので、仇同士の家の男女が愛しあっていて、女性は儀式をして寝ると未来の夫の夢を見るというのを信じてやってみたら、その男性が迎えに来たというシーンのようです。暗く静かな月光が照らし、女性のドラマ性のある表情や寄り添う2人のロマンチックな雰囲気など、叙情的な作品でした。

5 ジョン・エヴァレット・ミレイ 「マリアナ」
これはシェイクスピアの「尺には尺を」の悲劇の女性マリアナを描いた作品で、深い青の服を着て腰に手を当てて立っている姿で描かれています。その顔は悲しげで、それまでテーブルで刺繍をしていたようです。窓の聖人のステンドグラスや腰のベルトなど、非常に緻密に描き込まれていて色合いも鮮やかです。優美で気品がある一方で哀愁が漂い、萎れた葉など彼女の気持ちを表すモチーフなども印象的でした。

6 ジョン・エヴァレット・ミレイ 「オフィーリア」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっていて、世界的にも有名な作品です。これもシェイクスピアの「ハムレット」を題材としていて、あまりの悲劇に錯乱して川に溺れ、沈んでいくオフィーリアの姿が描かれています。目と口を開けて手を水面に出す様子が真に迫る感じで、周りの植物は緻密で1つ1つが何の植物かが分かるほどに正確に描かれているようです。また、その植物にもそれぞれ寓意が込められているなど、細部にまで考え抜かれた構成となっています。モデルについても後にロセッティの妻となるシダルをバスタブに入れて写生するなどの徹底ぶりで、まさに写実的で真実味がありながらもどこか幻想的な雰囲気の作風となっていました。

7 ジョン・エヴァレット・ミレイ 「釈放令、1746年」
これはイングランドに敗れて牢獄に入れられていたスコットランド兵が、牢獄から釈放されて妻と抱擁を交わしているシーンを描いた作品です。男に寄りかかる犬もいて感動の再開シーンとなっています。しかしこれはただ喜んでいるという単純なものではなく、妻は子供を抱えて無表情で、その右手は男性の後ろを通って看守に釈放令を手渡しているのが分かります。その為、家族の絆というテーマと共に、夫のために釈放令を持ってきた女性の強さが引き立っているように感じられ、無表情なのが凛々しく英雄的ですらあるように思いました。こちらも写真のように緻密でリアルでありながらドラマ性のある作品でした。

ちなみに上記3点は以前の文化村のミレイ展にも来たものと同じものです。いずれも再び観ることができて大満足です。


<2.宗教>
続いては宗教画のコーナーです。19世紀前半の英国ではプロテスタント系の英国国教会の中から教会の権威や儀式を重んじるオックスフォード運動が起こるなど、キリスト教信仰のあり方に対する関心が高まっていたそうです。そのような背景のもと、ラファエル前派はあまり省みられなくなっていた中世キリスト教絵画の図像や形式を復活させ、人物や場面を写実的に描くことにより近代的かつ独創的な宗教絵画を生み出していきました。聖書を人間ドラマの宝庫とみなし、神の教えというより文学的・詩的な意味を求めたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

18 ジョン・エヴァレット・ミレイ 「両親の家のキリスト(「大工の仕事場」)」
これは大工の作業台の前で小さな男の子が掌に釘を刺してしまい血を流している様子と、それを見て跪いて寄り添い心配する母親や周りの老父や子供などが描かれた作品です。一見すると人間的かつ写実的な感じに描かれていますが、これは聖家族を描いたものらしく母親はマリア、老父は養父ヨゼフ、水を運ぶ子供は洗礼者ヨハネのようです。聖家族は理想化して描かれるべきものであった時代に、リアルな大工一家として描いているため、当時は酷評されたそうです。ラファエロ以降の美術界に真っ向から挑戦するような革新的な題材の作品と言えそうでした。

21 フォード・マドックス・ブラウン 「ペテロの足を洗うキリスト」 ★こちらで観られます
これは跪いて弟子のペテロの足を洗うキリストが描かれた作品です。その後ろには白いテーブルがあり、他の弟子たちがその様子を伺っていて最後の晩餐の少し前のシーンのようです。ペテロは手を組んでじっとキリストをみつめて緊張した面持ちとなっていて、背後のヨハネは静かにそれを見守っています。他にも頭を抱えるような弟子や、寄り添い合っている弟子などがいるのですが、一番左にいるユダは身をかがめて怪訝そうな表情をしているようでした。それぞれの心理描写が巧みなのが面白く、人間ドラマ的な側面があるように思えました。解説によると、元々キリストは半裸で描かれていたそうですがそれが非難されてアラブ風の衣をまとうよう修正したそうです。昔の宗教画はルールばかりですからね…。

20 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「見よ、我は主のはしためなり(受胎告知)」 ★こちらで観られます
これは白いベッドに座る白い衣の女性と、その脇に立って白百合を渡す白い衣の人物が描かれた作品です。これは天使ガブリエルから聖母マリアへの受胎告知の場面らしいのですが、ガブリエルには翼がなく、マリアは恐れ慄いているように見えるなどどちらも普通の人間のように描かれています。背景には青い布、手前には赤い布が描かれ、青は天、赤はキリストの受難、白はマリアの純血を表しているそうです。その色使いやテーマなどが実に大胆で、これも革新的な作品に思えました。なお、この作品は不自然な奥行きの表現や色使いについて批判されたそうです。頭上の金の輪も元々は無かったそうで、以前はより人間的だったのかも??


<3.風景>
続いては風景画のコーナーです。ラファエル前派は自然を描く時、著しい独創性を発揮したそうで、美術批評家のジョン・ラスキンの「自然に忠実たれ」という言葉に基いて自然界を精緻に写しとる斬新な手法を編み出したそうです。ラファエル前派の自然の見方は概ねパノラマ的な景観を避け、近くと遠くを1つのまとまりとして捉えて全ての要素を均等かつ正確に描いたそうです。1839年に写真技法が完成した後も風景を精緻に描こうとする意欲は失われず、却って細やかな描写が試みられたそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

30 トマス・セドン 「謀略の丘から望むエルサレムとヨシャファトの谷」
この画家はラファエル前派兄弟団より年上のハントの友人の画家で、ハントと共に聖地エルサレムを訪れたことがあるそうです。この絵では谷を見下ろすような構図で、山の斜面に家々や城壁があり手前には木陰で眠るアラブ風の人と羊達の姿も描かれています。遠くにはモスクやオリーブ山(ゲッセマネ)も見えているようで、細やかな筆致で赤茶けて乾燥した空気まで感じられるようでした。

36 ウィリアム・ダイス 「ペグウェル・ベイ、ケント州-1858年10月5日の思い出」 ★こちらで観られます
これはラファエル前派より年上で彼らに影響を与えた画家によるもので、海岸と海辺の崖の辺りが描かれた作品です。手前には貝殻を拾っている女性たちが描かれていて、これは画家の家族らしく、奥の方には後ろ姿の男性の姿がありこれは画家自身のようです。画家の目線の先には当時 地球に最接近していたドナーティ彗星が描かれていて、うっすらと箒星のような感じとなっていました。これもラファエル前派のような精緻で写真のように細かい作風で岩肌の質感などが見事ですが、やや抑えた落ち着いた色合いとなっていて、のんびりした雰囲気がありました。


ということで、今日はこの辺までにしようと思います。初っ端からオフィーリアが展示されているなど美術ファン必見と言える内容で、私自身もラファエル前派が好きなのでかなりの満足感がありました。後半にも面白い作品が多々ありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




「六本木アートナイト2014」の予告

今年も、短期間で終わってしまう、アートイベントイベントの時期となりました。記事を書く頃には終わっていそうなので、「六本木アートナイト」とについて、今年も予めご紹介しておこうと思います。
 参考記事:
  「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
  「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
  ※今年は「アートフェア東京」は既に終わってしまいました。例年より早かったので私自身も気づいたらもう終わっていたという痛恨の極み


【展覧名】
 六本木アートナイト2014

【公式サイト】
 http://www.roppongiartnight.com/

【会場】
 六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
 国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース

【最寄】
 千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】
  2013年4月19日(土)10:00 ~ 4月20日(日)18:00
  コアタイム 4月19日(土)18:17【日没】 ~ 4 月20 日(日)5:03【日の出】


こちらは六本木の街全体が現代アートの展示場のようになる一種のお祭りで、街のあちこちにインスタレーションが置かれたり、パフォーマンスがあったりします(毎年内容は変わります) 今年もディレクターは日比野克彦 氏が務めるようで、『動け、カラダ!』をテーマに参加型作品やパレードなども予定されているようです。例年だと3月末頃のまだ寒い時期にやっていたのですが、今年は4月ということでまだ詳細も出ていないようです。例年だと深夜でも面白いイベントのスケジュールが組まれていたりするので、これからの公式ページでの発表が楽しみです。 特に楽しみなのはパレードの類かな。ゲリラ的な作品も驚きがあって面白いです。

 参考記事:
 「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
  六本木アートナイト2010 (前編)
  六本木アートナイト2010 (後編)
  六本木アートナイト2012 (前編)
  六本木アートナイト2012 (後編)
  六本木アートナイト2013 (前編)
  六本木アートナイト2013 (後編)
   ※2011年は東日本大震災で中止
  


ということで、今年は例年より1ヶ月くらい遅い日程となったようです。今まで寒くて夜は撤退していたのでこれはかなり嬉しいw 東京近郊の人にはまだ1ヶ月あるという感じですが、関東以外からちょうど東京に遊びに来るという方は、この機会を狙って計画してみるというのも面白いかもしれません。一度は体験してみたいイベントです。


おまけ
今年は私自身も見逃してしまいましたが、毎年この時期は国際フォーラムでアートフェア東京も開催されています。こちらは逆にいつもより2週間くらい早かった…w
 参考記事:
  アートフェア東京2009 (東京国際フォーラム)
  アートフェア東京2010 (東京国際フォーラム)
  アートフェア東京2011 (東京国際フォーラム)
  アートフェア東京2012 (東京国際フォーラム)
  アートフェア東京2013 (東京国際フォーラム)


ついでに今年も桜の季節が近いので、今までご紹介した桜の写真の記事をご紹介。
 参考記事:
  飛鳥山公園の桜 2012
  飛鳥山公園の桜 2011
  飛鳥山公園の桜 (東京都北区)
  砧公園の桜
  一足早い桜満開

 


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評価




日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 (感想後編)【東京都美術館】

今日は前回に続き、東京都美術館の日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』についてです。前編では混み具合や初期メンバーの作品などもご紹介していますので、前編を読んでいない方はそちらからお読み頂けると嬉しいです。

P1150019.jpg


 前編はこちら


【展覧名】
 日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』

【公式サイト】
 http://www.nichibisai.jp/nihonga/about/index.html
 http://www.tobikan.jp/exhibition/h25_inten.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】
  [前期] 2014年01月25日(土)~02月25日(火)
  [後期] 2014年03月01日(土)~04月01日(火)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
1~2章は日本美術院の成り立ちについてでしたが、3章以降は題材ごとに章分けされていました。


<第4章 花。鳥。そして命を見つめて>
4章は花鳥を描いた作品が並ぶコーナーです。この辺りから作品自体が大きく、大作揃いとなっています。

57 小茂田青樹 「虫魚画巻」
これは6図からなる絵巻で、前期後期で3図ずつの展示となっていました。それぞれ金魚、蛾、鰻の3つが描かれた図で、特に好みは蛾の「灯による虫」でした。ガラスの窓越しに金色に輝く月が見えていて、窓にはバッタやカナブン、蛙など沢山の小さな生き物がくっついています。いずれも明るく光っているような感じで、羽ばたきが止まったような蛾とともに写実的ながらも現実を超えた雰囲気となっていました。幻想的で妖しく静かな作品です。

56 前田青邨 「芥子図屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、金地を背景に右隻には真っ白な花を咲かせた芥子、左隻にはまだ蕾の芥子(2輪だけ赤い花が咲いている)が描かれています。金地に黄緑の葉っぱが目に鮮やかで、尾形光琳の燕子花図屏風から影響を受けているようですが、この絵ではかなり緻密に描き込まれていて葉脈まで見えるほどです。真っ直ぐな茎と水平に並ぶ花や蕾が印象的で、若干かっちりした構図に思えました。


<第5章 風景の中で>
続いては風景画のコーナーです。ここの解釈は結構広くて、心の中の風景を描いた作品などもありました。

64 今村紫紅 「熱国之巻(熱国之夕)」 ★こちらで観られます
これは今村紫紅がゴーギャンのタヒチ時代のような新たな画境を目指し、バンコクやシンガポール、ラングーン、カルカッタなどに行った際に観た光景から着想を得て、架空の熱国を描いたものだそうです。大きな川や赤~黄に染まる砂漠、椰子の木、赤い屋根の家々などが描かれ、全体的に金砂子がまかれています。その光景は異国情緒がありつつ手法は日本的なところがあるのが面白いです。色合いが強く、単純化された様式と相まって琳派のようでもありゴーギャンのようでもあり、どれでもないようにも思えるのも面白さを感じました。

67 速水御舟 「比叡山」 ★こちらで観られます
これは三角形の比叡山が青々と描かれた作品で、山の端が白くなっているため光り輝いているかのように見えます。解説によると、速水御舟はこの頃 岸田劉生の細密描写に影響を受けていたようで、この絵も豊かな描写によって表されています。また、この頃は群青中毒にかかっていたとのことで、この絵でも青の濃淡が静かな雰囲気を湛えていました。

68 近藤浩一路 「十三夜」
これは墨の濃淡で描かれた掛け軸で、仏塔を背景にそこに向かう現代の道が描かれています。道には3人の子供らしき姿があり、街灯がぼんやりと光っています。また、空には★の形の星が散りばめられていて、幻想的かつノスタルジックな雰囲気です。解説によると、近藤浩一路は西洋画を学んでいたそうで、「光と影の魔術師」や「外光水墨派」と呼ばれていたそうです。そのあだ名の通り濃淡の使い方が巧みな作品でした。

83 小田野尚之 「くつおと」
今は廃駅となっている上野の博物館動物園駅の瓦づくりの駅舎を描いた作品で、階段を下から登ってくる2人の姿も描かれています。階段からは光が霧のように上がってきていて、2人は逆光となっているので強い光を感じます。また、周りの壁は風化した感じで固そうな質感があり、ひんやりした空気や足音までも聞こえそうな作品となっていました。

71 岩橋英遠 「道産子追憶之巻」
これは29mにもなる長い作品で、北海道の四季の移ろいを1日の光景に合わせて描いてます。まだ暗い時間は冬眠する熊や飛び立つフクロウが描かれ、その後は雪の木々の間から登る太陽、雪原と山、枯れた木々から花咲く木々への移ろい、虹のさす広い田んぼ、無数のトンボが飛び交う夕暮れの田んぼ、藁を干している?壁のようになった束、最後は再び冬となって部屋の中でストーブで温まる人々などが描かれていました。いずれも北海道の自然の豊かさと厳しさが感じられ、人々の営みには温かみが感じられました。


<第6章 幻想の世界>
続いての6章は上階で、心の中の幻想を描いた作品が並んでいました。心の中を描く際には平面化や変形、誇張などの工夫が重ねられたらしく、ここにもそうした作品が並んでいます。

95 守屋多々志 「無明」
これは4曲1隻の屏風で、暗い中で石の階段を下る尼が描かれています。周りはパターン化されて紫に染まる竹林や、梅、左上には月が浮かんでいます。月の辺りなどにはチェック柄の線があり、紫の色調を変えて画面が分割されているのが目を引きました。絵の構成が面白く、幻想的な雰囲気がありました。

98 宮北千織 「うたたね」
これはソファの上で横なって寝ている女性を描いた作品です。布やソファのレースなどが淡くぼんやりした色で描かれ、赤、オレンジ、青、緑といった色彩がオディロン・ルドンのような神秘性を持たせていました。静かで象徴的な作品に思えます。


<第7章 人のすがた>
最後は人物を描いたコーナーです。

109 片岡球子 「面構(歌川国芳)」
これは筆を持って座る歌川国芳を描いた作品で、片岡球子の「面構え」シリーズの1つです。その隣には浮世絵風の美人が描かれ、その絵を描き上げた際に国芳がじっと出来栄えを見ている様子が表されているようです。顔は誇張されているのが独特で、やや面長に見えるかな。解説によると、片岡球子は国芳の権力にも屈しなかった自由な心意気に感銘を受け、彼女にとっての神様のような存在と言っていたそうです。

111 平山郁夫 「日本美術院血脈図」 ★こちらで観られます
これは馬に乗って右手を上げる白い衣の岡倉天心を描いた作品で、背景には紅白の幕を垂らした日本美術院、周りには横山大観、下村観山、菱田春草ら創立メンバー、一番手前の辺りには安田靫彦や小林古径、前田青邨らの姿があります。他はぼんやりした感じになっていますが、これまでの日本美術院の先輩たちへの敬意が強く感じられ、特に彼らを導く岡倉天心は神々しいまでの雰囲気でした。


ということで、日本美術院の名品を観ることができました。結構観たことがない作品が多かったのが嬉しいです。時代も画風も様々でそれぞれの個性を観るような感じかな。明治以降の新しい日本美術の粋が楽しめました。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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評価




日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 (感想前編)【東京都美術館】

この前の日曜日に上野の東京都美術館で日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、2回に分けてご紹介しようと思います。なお、この展示は前期・後期で作品がほぼ全て入れ替わる(場面替えのもある)そうで、私が観たのは後期の内容でした。

P1150020.jpg


【展覧名】
 日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』

【公式サイト】
 http://www.nichibisai.jp/nihonga/about/index.html
 http://www.tobikan.jp/exhibition/h25_inten.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】
  [前期] 2014年01月25日(土)~02月25日(火)
  [後期] 2014年03月01日(土)~04月01日(火)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は横山大観や下村観山らが再興させた日本美術院の再興100周年を記念した展示で、前後期合わせて120点の傑作を集めた内容となっています。この展示を含めて上野では3つの日本美術の展示をやっていたので「日本美術の祭典」と銘打っていたのですが、残りはこの展示のみです。
 参考記事:
  クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美 (東京国立博物館 平成館)
  「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」(東京国立博物館 平成館)

前述の通り前期・後期でほぼすべて入れ替えがあったのですが、時代やテーマは様々で、主にモチーフによって章わけされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。


<第1章 名作で辿る日本美術院の歩み>
まずは日本美術院についてのコーナーで、ハイライト的な作品が並んでいます。日本美術院は明治31年(1898年)に谷中に創設された団体で、東京美術学校の校長を追われた岡倉天心と共に、それに順じた橋本雅邦、横山大観、下村観山、菱田春草ら創設者26名によって始まりました。岡倉天心は大学院に相当するような研究機関を目指していたので、「院」と名づけたそうで、展覧会を積極的に開催するなど当初は活発に活動していました。しかし次第に経営が行き詰まり困窮すると活動の場を茨城県の五浦に移し、さらにその後に主要メンバーが海外留学に行くなどして日本美術院の活動は一旦途絶え、岡倉天心も亡くなってしまいます。 しかし大正3年(1914年)に岡倉天心の1周忌を期に横山大観らによって院の再結成が進められ「再興日本美術院」として新たなスタートを切りました。そしてその活動は戦中の2回の中断があったものの現在にも続き、毎年9月にこの東京都美術館で開催されているそうです。ここには日本美術院以前の作品も含め、初期のメンバーの作品が展示されていました。
 参考記事:
  生誕140年記念 下村観山展 感想前編(横浜美術館)
  横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想前編(横浜美術館)
  再興院展100年記念 速水御舟-日本美術院の精鋭たち-(山種美術館)
  五浦六角堂再建記念 五浦と岡倉天心の遺産展 (日本橋タカシマヤ)

2 狩野芳崖 「悲母観音」 ★こちらで観られます
これは狩野芳崖の絶作で、最も有名な傑作でもあります。狩野芳崖は院の設立の10年前に亡くなっていますが、その精神は院の橋本雅邦や横山大観らに継承されていきました。この絵には印を組んで空に浮かぶような観音菩薩が描かれ、右手の瓶からは水を一筋垂らし、その下には円に囲まれた幼子の姿があります。精緻で日本画の伝統を感じる一方、墨の線ではなく色を重ねあわせる西洋絵画の技法を使っているそうです。伝統と革新の表現で慈愛に溢れた作品となっていました。

7 横山大観 「屈原」
中国風の着物を着て、蘭の花を持った髭の長い男性を描いた作品です。かなり大画面で、前から強い風が吹いているらしく髭や蘭、周りの草花もなびいています。解説によると、これは第1回院展の出品作で、中国の戦国時代の詩人である屈原を描いたものらしく、屈原は国政の要職についていたものの同僚の妬みによって左遷された人物だそうです。これは当時の岡倉天心と重なる境遇であり、高潔の象徴である蘭を持って嵐に立ち向かうような険しい表情をしています。向かい風の強さと毅然とした屈原の強さの両方を感じさせる迫力ある作品でした。

4 橋本雅邦 「龍虎図屏風」 ★こちらで観られます
これは第4回内国勧業博覧会に出品された6曲1双の屏風で、右隻には雲間と海から現れた2頭の龍、左隻には竹林の2頭の虎が描かれています。稲光が走り、図案化された波が渦巻き、風が強く吹いているなど、周りは嵐のようで写実とデフォルメが入り混じったような表現となっています。その為、龍も虎も迫力があり、動的な背景と相まって勢いが感じられました。険しい顔も印象的です。
ちなみに川合玉堂はこの作品を観て橋本雅邦への弟子入りを決意したという話を聞いたことがあります。
 参考記事:生誕140年記念 川合玉堂 (山種美術館)

15 小倉遊亀 「コーちゃんの休日」
これは浴衣を着てサマーデッキに持たれている女性を描いた作品で、頭の上で手を組み、足も組んだポーズをしています。背景は真っ赤で、色合いやポーズからマティスからの強い影響が伺え、浴衣や縞柄などにもこだわってモチーフを選んでいたそうです。解説によると、この女性は当時の人気歌手だったそうで、その仕草の癖などもしっかり表現されているとモデル自身が語っていたようです。華やかで大胆な作品でした。

この辺には前田青邨や奥村土牛の作品などもありました。


<第2章 院展再興の時代-大正期の名作>
続いては大正時代のコーナーです。1914年に横山大観、下村観山、木村武山、小杉未醒らが中心となって再興された再興日本美術展は、当時 硬直化と権威化が著しくなっていた文展に対して自由を尊重する理想を掲げ、日本画だけではなく洋画や彫刻部門を持つ総合美術団体として再出発しました。その時、日本美術院三則を定めたらしく、その内容は
 ・日本芸術の樹立のため
 ・教師なし先輩あり、教習なし研究あり
 ・邦画と洋画を分割せず、日本彫刻と西洋彫刻とを分けず
といったものだったようです。ここにはその精神にまつわる品などが並んでいました。

27 小杉未醒 「山幸彦」
木の周りに立つ剣を持った男性と、壺を持つ女性が描かれた作品で、男性は勾玉を身につけていて、これは日本神話の海幸山幸の話の山幸彦の姿のようです。かなり大きな作品なのですが、ややぼんやりした象徴的な雰囲気があり、シャヴァンヌ的な感じがしてその影響が伺えます。また、やや平面的かつ装飾的な感じもあって面白いです。解説によると未醒がフランスから持ち帰った「片ぼかし」、の技法は大観ら日本画家たちのも影響を与えたとのことでした。

この辺は倉田白羊や萬鉄五郎などの洋画もありました。

32 平櫛田中 「禾山笑」
これは臨済宗の僧侶である禾山(かざん)の人物彫刻で椅子に座って体が反り返るほどに大きな口を開けて笑っている姿で表されています。椅子の手すりに捕まって体を支えているほどの反り返りで、見ているだけで豪快な笑いに吸い込まれそうですw 生き生きとしてその人柄が伺えました。

この他にも中原悌二郎の彫刻もありました。


<第3章 歴史をつなぐ、信仰を尊ぶ>
3章は中階で、ここからはテーマ別に章分けされています。まずは歴史画で、歴史画は明治中期ころに日本画・洋画問わずに隆盛したジャンルだったそうで、天心の理想主義の1つに掲げられていたそうです。芸術とはそこに同時代の思想や精神が反映されていなければならないという考えだったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

38 安田靫彦 「項羽」
これは金色の鎧兜で剣を持つ中国の有名な武将 項羽を描いたもので、その胸には虞美人がもたれ掛かって泣いているようです。背景には万里の長城があり、金色の兜と鎧はパターン化されていて日本画というよりはクリムトのような装飾性を感じます。項羽は周囲を劉邦の軍に囲まれながらも険しく毅然とした雰囲気で、威厳が感じられます。解説によると、万里の長城は明末のものだそうで、それを知った時代考証に厳しい安田靫彦は研究が足りなかったと自戒していたそうです。

52 伊藤髟耳 「空点」
これは平等院の雲中供養仏を描いた作品で、長い帯を使って舞う様子や音楽を奏でている仏の姿も描かれています。中央は明るく円を囲むような配置となっていて、外に行くに従って曖昧になりぼんやりしています。それが何とも神秘的で、動きと静けさが同居しているような感じを受けました。
 参考記事:天上の舞 飛天の美 感想前編(サントリー美術館)

ということで、今日はこの辺までにしておこうと思います。後半も見どころがありましたので、次回も引き続きご紹介していこうと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




シャヴァンヌ展 (感想後編)【Bunkamuraザ・ミュージアム】

忙しくて少し間が空きました。今日は前回に続き、Bunkamuraザ・ミュージアムの「シャヴァンヌ展」についてです。前編では混み具合や初期の作品などもご紹介していますので、前編を読んでいない方はそちらからお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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【展覧名】
 シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_chavannes/index.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_chavannes.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅

【会期】2014/1/2(木)~3/9(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では壁画を作り始めた時期までご紹介しましたが、後編では晩年までと日本との関わりについて書いていこうと思います。


<第3章 アルカディアの創造 リヨン美術館の壁画装飾へ 1870~80年代>
1870~71年普仏戦争と それに続くパリ・コミューンによってパリは壊滅的な打撃を受けたそうで、廃墟と化した光景を前にして切実に平和を希求したシャヴァンヌのアルカディアは、伝統を離れ自らの独創によって より深くより豊かに発展を遂げていきました。そしてシャヴァンヌは1870~80年代に壁画装飾を次々に制作し、フランスを代表する壁画家となっていくと同時に、「貧しき漁夫」などのタブロー画(キャンバスなどの壁画以外の媒体)の重要作を生み出していったそうです。そしてギリシア・ローマの伝統的な図像から離れ時代を先取りしたことにより、自らの理念や感情を独自の形態によって表現する象徴主義の先駆者として印象派以降の前衛画家たちに大きな影響を与えました。ここには全盛期の作品が並んでいました。

35 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」
水辺に集まった古代神話風の服装の女性(女神)たちを描いた作品で、ギリシア風の小さな建物の周りの女性や琴を奏でながら飛んでくる女性など、建築、音楽、歴史、彫刻、絵画など様々な芸術の擬人象やミューズたちを表しているようです。全体的に夕焼けのような感じで、神話的かつ牧歌的な風景かな。解説によると、これはリヨン美術館の壁画の縮小版らしく、最高傑作の1つと言えるようです。まさしくアルカディアのような優美な雰囲気の作品となっていました。

近くにはリヨン美術館の壁画の写真などがありました。

36 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「古代の光景」
こちらもリヨン美術館の壁画を元にした作品で、海を背景に岩場のような所に佇む人々が描かれています。休んでいたり寝ていたり動物と向き合っていたり、それぞれバラバラで、右上にはパルテノン神殿のようなものがあり女神らしき女性と男性が向き合っています。解説によると、この作品は古典的で秩序づけられた構図とのことですが、人々はお互い関心がないのがシュールな雰囲気に見えました。明るく穏やかな光景が現実離れしているようにも見えるかな。この辺がシャヴァンヌ独自の世界と言えそうです。

30 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「海辺の乙女たち」 ★こちらで観られます
これは個人的に制作していた作品で、海辺にいる古代風の布をまとった半裸の女性が3人描かれています。背を向けて髪を絞っている女性は恐らく海から生まれたヴィーナスで、その脇で横たわる2人の女性はお互いに見向きもしていません。解説によると、これは伝統的な配置であるものの、人物は平面的に描かれ、物語性がないそうです。また、これを発表した時は賛否両論だったそうで、図らずとも象徴主義の先駆けとなったそうです。いずれも優美で気だるい雰囲気のある女性で、これも超現実的な作風に思えました。

この辺には壁画の習作などもありました。少し先には35分の映像もありました。


<第4章 アルカディアの広がり パリ市庁舎の装飾と日本への影響 1890年代>
シャヴァンヌは1891年に国民美術協会の会長に就任した一方で、ルーアン美術館やパリ市庁舎、パンテオン、アメリカンボストン公共図書館などの壁画装飾の依頼に応えて制作し、名実ともに画壇のトップとなっていきました。シャヴァンヌの名声はフランスの枠を超えて広がり、各国から依頼や来訪を受けることとなり1893年には日本から黒田清輝が助言を求めてシャヴァンヌに会っていたそうです。黒田清輝のシャヴァンヌの傾倒は帰国後の日本で広まり、豊かな成果をもたらしたようです。 こうして画壇の頂点となり遠く日本にまで影響を与えたほどの画家でしたが、1898年に74歳で亡くなったそうです。ここにはそうした晩年までの作品と日本の作品などが展示されていました。

38 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「羊飼いの歌」 ★こちらで観られます
これは岩場に3人の女性がいて、奥には笛を吹く羊飼いの姿が描かれた作品です。解説によるとこれは詩人テオクリトスの「牧歌」の光景を思わせるとのことで、先ほどの「古代の光景」の構図に由来して描かれているそうです。ここでも3人の女性はお互いに目を合わせず物思いに耽っているような感じにも見えます。アルカディア的なのんびりした感じと、詩的な雰囲気が表れている作品でした。

この辺には静物や風景画の小品などもあり、ベルト・モリゾらしき女性の肖像もありました。

44 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「冬(習作)」
これはパリ・コミューンで焼失したパリ市庁舎の再建の際に作られた壁画の習作で、対をなす「夏」と「冬」のうちの「冬」の習作となります。雪原で焚き火をする人、木を引っ張り倒す人、薪を抱えて運ぶ人などの姿があり、空はピンクがかった穏やかな光景です。 垂直の木々が厳格な構図で労働の苛酷さを伝えているようですが、やはりどこかアルカディア的なものを感じるかな。解説によると、この作品では印象派から影響を受けて季節や時刻、気候の状況を描き出そうと現地で実際の風景を描き留めた可能性があるとのことでした。

45 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「慈愛(習作)」 ★こちらで観られます
これはパリ市庁舎の天井画の周りの装飾で、パリの美徳を描いたものです。冬の雪の中、半裸で抱き合う母子とそれに手を差し伸べている白い頭巾と青い衣の女性が描かれています。少ない色数で単純化されていて、平面的な表現かな。タイトルの意図が分かりやすく表されていました。解説によると、ピカソはこうしたシャヴァンヌの作品に影響を受けて模写したそうで、青の時代に似た部分もあるようでした。

最後には黒田清輝の「昔語り」の習作もありました。よくよく考えると前編でご紹介したホメロスと若い聴衆のモチーフは「昔語り」の元になっているのかも??
 参考記事:黒田清輝と京都 (東京国立博物館 本館18室)


ということで、日本では観られなかった作品ばかりで貴重な機会となっていました。象徴主義や日本近代洋画への影響を考えると是非押さえておきたい展示です。美術好きの方向けの展示だと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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評価




シャヴァンヌ展 (感想前編)【Bunkamuraザ・ミュージアム】

もう3週間ほど前になりましたが、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで「シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1140516.jpg

【展覧名】
 シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_chavannes/index.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_chavannes.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅


【会期】2014/1/2(木)~3/9(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
それほど混むこともなく自分のペースでゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示は19世紀フランスを代表する壁画家で日本近代洋画の確立に多大な影響を与えた画家シャヴァンヌの全体像を示す日本で初めての機会となっています。シャヴァンヌは私邸の食堂に描いた壁画を皮切りに、アミアン・ピカルディ美術館の壁画装飾、クロード・ヴィニョン邸、パンテリオン、リヨン美術館、パリ市庁舎などフランスの主要建造物の記念碑的な壁画装飾を手がけ、19世紀後半に壁画家として活躍しました。そうした壁画の中ではウェルギリウスの「牧歌」や「農耕詩」を反芻し、自然と人間の調和するアルカディア(理想郷)を描き続けたそうです。そしてギリシア・ローマの古代神話を範としながら独自の解釈をし、自らのアルカディアを創出したシャヴァンヌの独創的な世界は、1880年代以降の象徴主義の流れで高い評価を得るようになり、シャヴァンヌはフランス象徴主義の先駆者として位置づけられているそうです。
展覧会は時代順に章が分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。


<第1章 最初の壁画装飾と初期作品 1850年代>
まずは初期のコーナーです。ピュヴィス・ド・シャヴァンヌは1824年にリヨンで生まれ、22歳の時にイタリアを旅して画家になる決意をしました。そして2年後にこの地を再訪すると、ジョットやピエロ・デラ・フランチェスカなど初期ルネサンス期の壁画に感銘を受けたようです。一方、パリでアリ・シェフェールやドラクロワ、トマ・クチュールなどに(短期間ですが)師事し、1848年に会計検査院の壁画装飾を完成させました。テオドール・シャセリオーに心酔していく1854~55年には私邸の食堂の為に初めての壁画装飾を制作し、その1つを再制作した「狩りからの帰還」で1859年のサロン入選(9年ぶり)すると、美術批評家のテオフィル・ゴーティエから注文を受けました。そして続く1860年代は壁画装飾を手がけていくようになるのですが、この章では1850年代の作品が並んでいました。

8 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「自画像」
これは33歳頃の自画像で、横向きで右半分は背景の闇に溶けこむような感じで描かれています。全体的に暗い色合いのせいか、顔も神経質そうに見えるかなw 解説によると、彼の家族が言うには1850年代にアトリエを共有したギュスターヴ・リカールという画家の様式に倣って描かれているとのことでした。

1 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「アレゴリー」 ★こちらで観られます
これは最初期の作品で、三人の人物が寄り集まって立っている様子が描かれています。この3人は、左は豪華なネックレスを触って建築素描を持っているブルネレスキ、中央はフードを被った質素な聖フランチェスコ、右は神曲を書いたダンテと言われているようです。写実的なようでもありながら理想化されている感じもあり、画力の高さが伺えます。確かにルネサンスから影響を受けているのも分かるかな。解説によると、この時代は文化的な英雄をこうして一堂に会して描くことがしばしば行われたそうです。ちょっとバラバラで不思議な感じがするけど、そういうのが流行ったのですね。

3-6 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「奇跡の漁り(習作)」「ルツとボアズ(習作)」「葡萄酒造り(習作)」「放蕩息子の帰還(習作)」
これは私邸の食堂の壁画のための油彩習作で、4点並んでいてそれぞれが四季に対応しているようです。(ここには冬が無く、代わりに放蕩息子の帰還が入っているようでした) 特に気に入ったのは春の「奇跡の漁り」で、これはキリストの指示に従ってペトロが網を下ろすと大量の魚が掛かったという奇跡の話を題材にしたもので、輪郭が太くまだ下絵っぽい感じの粗い仕上がりとなっています。しかし人々が三角形の構図で配置されているなど、絵としての作りに面白みがありました。


<第2章 公共建築への壁画装飾へ アミアン・ピカルディ美術館 1860年代>
続いては1860年代の壁画を手がけ始めた頃のコーナーです。シャヴァンヌは1861年のサロンに「平和(コンコルディア)」と「戦争(ベルム)」を出品すると、歴史画部門で第2席を獲得し、「平和」は国家買い上げの栄誉となりました。また、対となる「労働」と「休息」が共にピカルディ美術館に設置され、これが初の公的な仕事となり、その後20年以上続くアミアン・ピカルディ美術館の壁画装飾は壮大なシャヴァンヌ・ギャラリーを形成していくこととなります。
シャヴァンヌは古代ローマの詩人ウェルギリウスの「牧歌」「農耕詩」に歌われていたアルカディア(理想郷)を描き、古典主義の作風を成熟させて極端な遠近法を避け、建築と調和するフレスコのようなつや消しの色調で 壁画装飾の美学を貫いているそうです。また、1860年代末からは後の印象派の画家たちとも親交し次第に明るい色彩も放つようになっていきました。この章にはそうした名が売れるきっかけとなった作品などが並んでいました。

D3 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「平和」
これは先述の「平和」の下絵素描で、木の周りで裸の男女がのんびりしている様子が描かれています。酒をついだり果物を持っていたり、連続するように人物が配置されているのが面白いです。それぞれのポーズは動的で、体は肉感的に表現されているのは確かに古典を彷彿としました。

12 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「労働」
これは壁画の習作作品で、川辺の木の脇に座って語る老人(ホメロス)とそれを聴く若い人々、老人の背後には鎌を持った女性、手前には手作業をしている男性の姿もあります。皆 半裸で神話のような感じで、木には楽器がかかっていて平和な雰囲気です。隣に並んだ別の習作と比べると変更されているようで、持っているものやポーズが変わっていた他、柔らかい感じになっていました。また、作品の周りは装飾的な枠があり、これは建築と絵の橋渡しとも言えるそうです。そうした表現のせいか、これまで観たものよりも理想的な雰囲気が強まっているように見えるかな。解説によると、シャヴァンヌはより多くの人が見られるように壁画の縮小版を作っていたそうで、この展示でも何点かそういうものがありました。

続いてはクロード・ヴィニョン邸の壁画装飾などで、クロード・ヴィニョンは小説家・批評家・彫刻家として同時代に活躍していた女性で、1866年に建築された邸宅に、幻想、警戒、瞑想、歴史の4点の壁画が設置されたそうです。

18 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「瞑想」
これは壁画の1年後に描かれた再作成バージョンで、森のなかで白い衣の女性が右手を額に当てて悩んでいるようなメランコリックなポーズをしています。解説によると、ヴィニョン邸の壁画に比べると背景の深い森の装飾性が押さえられ、自然主義的となっているそうです。また、人物も古典性が弱められ同時代的な姿となっているとのことで、擬人像に見えないようにしているそうです。とは言え、私にには神秘的かつ象徴的な雰囲気に見えました。

この辺には他にも巨大な「幻想」別バージョンの「警戒」などもありました。


ということで、今日はこの辺までにしておこうと思います。私の中ではシャヴァンヌというと「貧しき漁夫」のイメージだったので、これほどまでに壁画の作品が中心だったのかというのが意外でした。 この後も参考になる内容となっていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。

  → 後編はこちら


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