関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展(感想前編)【国立科学博物館】

日付が変わって昨日となりますが、日曜日の午後に国立科学博物館に行って、マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展 を観てきました。情報量の多い展示となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 マチュピチュ「発見」100年
 インカ帝国展

【公式サイト】
 http://www.tbs.co.jp/inkaten/
 http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2011/inka/index.html

【会場】国立科学博物館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年3月10日(土)~6月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいて、チケットを買うのに5分程度、中に入るのに20分程度の入場規制がありました。中もほとんどの場所で人だかりができて全然進まないような感じです。展示品も小さいものが多いのでケースに張り付く人が多く中々作品が観られなくて苦労しましたw やはり土日が一番混んでいるようで、公式サイトには今後の混雑予想のページもあります。また、公式ツイッターでは刻々とその時の込み具合を呟いているようですので、混雑にぶつかりたくない方は予めチェックしておくことをお勧めします。
 参考リンク:
  混雑予想のページ
  TBSインカ帝国展のツイッター

さて、今回は誰もが知っている南米のインカ帝国をテーマにした展示です。インカというと古代文明のようなイメージもあるかと思いますが、インカは15世紀前半にアンデス高地に起こり、16世紀前半に南北4000kmに広がる領土を築いた、意外と最近の国です。インカ帝国は1000万人もの様々な民族から成る帝国でしたが、馬はおろか鉄や車輪、文字すら無かったようです。そんな国がどうしてたった100年で広大な領土と高度な文明を持ったのか?という疑問も湧きますが、展示はそれを解決してくれるような内容となっていました。様々な観点からインカを展示していましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。


<プロローグ>
まずはプロローグの章です。最初にインカの前にあった南米の文明の年表があります。インカはシカンの少し後に起こったことなどが分かります。
 参考記事:
  特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想前編(国立科学博物館)
  特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想後編(国立科学博物館)

少し進むと、壁に簡素なタッチの絵が代わる代わる映される演出がされています。これはフェリペ・グァマン・ポマ・デ・アセラという16~17世紀の先住民によって書かれた「新しい記録と良き統治」という著作にある絵だそうで、この書はインディオ側の視点で歴史書だそうです。インカ時代の情報やスペインによる征服の後の厳しい状況なども克明に記され、挿絵も鮮やかにそれを伝えるようで、今でもアンデス史の最も重要な資料の1つとされているとのことでした。

ここにはアルカパの毛と木綿で作った市松模様の軍用の服や、座る所が凹んだ玉座などがあり、インカの地図と特産品の説明ボードなどもありました。


<第1章 帝国の始まりとその本質>
1章は帝国の成り立ちのコーナーです。インカは元々ペルー南部の都市クスコを中心に起こり発展した国ですが、その起源と初期の歴史ははっきりしていないようです。自分たちの国を「タワンティンスーユ」と呼び、これは支配していた4つの地域のことを指すようです。また、クスコはケチュア語でヘソを意味し、クスコの街は聖獣であるピューマの形をしているらしく、地図を観ると確かにそういう形に見えます。
インカの人々は太陽信仰をしていたのは有名ですが、クスコの太陽神殿には歴代の王のミイラが祀られていて、彼らは太陽神インティの息子であると考えられていたようです。インカの王は歴代12~13代とされるようですがはっきりしているのは最後の5人で、死後も人々に崇拝されたそうです。
また、男と女、右手と左手といったように「2つで1つ」のものが美しく安定していると考えていたらしく、工芸品などの遺物のみならずクスコの街作りもその思想に影響を受けているようでした。

ここには儀式に使われる「アリバロ」という大小の壺や、ケロという儀式用のコップなどがありました。ケロは2つセットで使うものらしく、この後も何度も出てきます。ここのケロは側面に幾何学的で原色を使った鮮やかな文様があるもの、人の顔の形のケロやジャガーの顔の形のケロ、戦いの様子や儀礼の様子を描いたものなどもありました。

その次はアクリャという美しく賢い穢れなき処女たちが織った布製ベルトや腰巻などが展示されています。アクリャはこうした王族用の織物を作ったり酒を作って過ごしたらしく、一般の者がアクリャと関係を持つと、アクリャともども処刑されたそうです。 また、ヤナコーナという男性版の集団もいたとのことでした。

この辺には他に銅製の小型の人物像や儀礼に使われた星型のお盆、水入れ、土器、星型の頭の棍棒などもありました。この後も星型の棍棒は何度も出てきます。

この部屋の中央にはポスターにもなっている赤い鶏冠のある人物像が展示されていました。実際に観ると結構小さい像で、銀の薄い板をハンダ付けしたものに羽飾りをつけているようです。これは子供を生贄にするカパコチャの儀式の供物の1つらしく、インカに生贄の文化があったことがわかります。カパコチャは山の神々に子供を捧げる代わりに地鎮と豊饒の恵みを得るために行われるのですが、何故子供を生贄にするかというと、それが彼らにとって最も清らかで大切なものだからです。インカやアンデスでは相手に何かを貰ったら相応のお返しをするという考え方があり、最も大切なものを差し出すことで神からの恵みを受けると考えていたようです。(この互恵関係の考え方は支配に関するコーナーでも重要な前提条件となっています)

その近くにはセリとワカというものに対する信仰のコーナーもありました。セリというのは太陽神殿を中心に伸びる41本の想像上の線のことで、その線上にはインカの聖なる場所(奇岩、珍しい地形、洞窟、泉)などがあり、それらをワカと呼ぶようです。セリの線は1つのパナカという王族たちが面倒を観て、決められた日にそれぞれのワカで儀礼を行ったようです。また、セリは直線だけではなく地形にそって曲線になることもあるとのことでした。

その先はインカの芸術と工芸のコーナーでした。ケロ(コップ)やアリバロ(壺)に幾何学模様の文様が付けられているものが多く、これは多様性のある大帝国のなかで自分たちの威光を知らせるためのもので、均質な様式となっているとのことでした。
また、工芸でも特に織物は重要らしく、アルカパやビクーニャなどの毛を使ってクンビという布を織っていたようです。ここにはコカの袋やチュニックが並び、赤地に格子や八芒星といった幾何学的なモチーフが織られていました。この八芒星はチュキバンバ地域の伝統を示すものだそうです。
少し行くと石製の金属加工道具やトゥミという儀礼用のナイフ等もあります。

続いては農耕のコーナーです。インカの段々畑の再現模型があり、石造りの壁に突起のような階段が付けられていました。インカにとってトウモロコシは儀礼にも使われる重要なものらしく、ここにはトウモロコシ酒の容器やじゃがいもを象った壺などもありました。

さらに隣は建築技術のコーナーです。インカは石造りの建築物が中心ですが、それらは白い花崗岩で出来ているようで、採掘した花崗岩を硬い石で叩いて加工していたようです。ここには石を加工するための石や投石用の石などもありました。

その次はインカの日常についてのコーナーです。インカの人々はアイユという共同体の単位で暮らしていたそうです。また、インカでは土地を 国の土地、神の土地、民の土地の3つに分けていたそうで、インカの納税は国と神の土地への労働奉仕の形をとったようです。そしてそこで収穫されたものは軍隊や行事にあてられられました。また、ミタという輪番労働奉仕の制度もあり、それによって石造建築なども行われたようです。ミタを率いた首長には贈り物、労働者にはトウモロコシ酒がふんだんに振舞われるなど待遇は悪くなかったみたいです。(これも互恵の概念の為かな?と思ったけど、実際の所はわかりません)
ここにはインカ王から送られたチュニック(最も価値ある贈り物の1つ)やコカ用の袋などが展示されていました。袋にはアルカパかリャマのような生き物が幾何学的に織り込まれているのが面白いです。 なお、コカの葉はインカでは儀式にも使われるものだったようで、この後にもコカの袋が何度か出てきます。

インカの日常のコーナーの奥には遺跡から出てきた3つの頭蓋骨も展示されていました。3つのうち左の頭蓋骨の左側頭部には四角い穴があり、隣には同じ大きさの骨片が置かれています。これは植物性の樹脂で穴を塞ぐ外科手術の跡のようです。インカでは頭蓋骨の外科手術もやっていたらしく、中には治療後にしばらく生きて回復していった人物の頭蓋骨もあるそうです。中世頃にそうした技術を独自に持っていたことに驚きました。


<第2章 帝国の統治>
続いてはインカ帝国の支配方法・統治についてのコーナーです。インカが支配に採用したのは古くからの互恵制度だったらしく、征服した地の指導者にふんだんに贈り物をしました。被支配者側はそれを拒否できないのですが、互恵なのであまりに多く貰うと負債となります。その為、負債を負った被支配者は服従という形でお返しをしました。
また、インカ帝国は地域によって政治体系を変えていたらしく、官僚制をとった所もあれば直接統治していたところもあるようです。

この章の最初には木製のケロがあり、これで支配側と被支配者が乾杯をしたようです。これは、従う限りは贈り物と平和を与えるが裏切ったら死ぬということを暗に示す乾杯のようでした。

続いてはローマの道よりも長いと言われたインカ道を走る、チェスキという飛脚みたいな人々についてです。彼らはリレー方式で1日280kmも移動することができたらしく、伝達を素早く届けたり、宅配便のようなこともしていたようです。これによってインカの支配者たちは常に情報を把握し、統治に役立てたそうです。
また、インカ道は述べ40000kmも整備され、道沿いには物資の貯蔵地や宿泊施設が設けられたそうです。ますます江戸時代の街道や飛脚みたいな感じかな?

その次はミトマク(ミティマエス)という人口移動の制度についてです。これは軍事、経済、特産物の栽培など様々な目的で行われた制度で、例えば従順な民族を反抗的な地域の警察にするなどの政策が行われたようです。これを国家創設の中心の1つにまで発展させたようですが、長期間(永住も)の移動は当然、反発も大きかったようです。日本の江戸時代で言えばお国替えみたいなものかな。

その後は沢山の縄を束ねたキープというものが展示されたコーナーです。キープはチェスキたちが運んだものの1つで、結び目の位置や大小によって10進法の数字を表しています。もの凄い本数のキープもあって読解は大変そうでしたが、文字を持たないインカの伝達手段はこのロープの結び目であるようです。結び方も数字によって違っているので私には何が何だか分かりませんでしたw

その次はインカの鉱石のコーナーでした。アステカは金、銀、銅、すずなどが豊富に採れるため高度で多様な金属精錬技術が発達したそうです。ここには鉱石運搬用の籠や石製ハンマー、鉱石のサンプルなどがありました。


ということで、まだ2章の途中でちょっと中途半端なところですが。ちょうど半分くらいのところまできましたので今日はここまでにします。次回は目玉とも言えるミイラのコーナーなども含む2章途中から最後までのコーナーをご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事

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