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マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展(感想後編)【国立科学博物館】

今日は前回の記事に引き続き、国立科学博物館の「マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら


P1010573.jpg

【展覧名】
 マチュピチュ「発見」100年
 インカ帝国展

【公式サイト】
 http://www.tbs.co.jp/inkaten/
 http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2011/inka/index.html

【会場】国立科学博物館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】2012年3月10日(土)~6月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では2章の帝国の統治の仕組みまでご紹介しましたが、今回はその続きからです。

<第2章 帝国の統治>
2章の中盤にはインカに征服されたチャチャポヤに関するコーナーがありました。チャチャポヤとは「雲の上の人々」という意味だそうで、農耕・木材・美しい鳥の羽などを目当てにインカの侵攻を受けたようです。チャチャポヤはインカに頑強に抵抗したそうですが、結局はインカ軍によって征服され、征服後は大きな移住政策を受けるなど厳しい干渉を受けたようです。その為、チャチャポヤの文化にもインカの要素が加わっていったらしくここにはそれを思わせる品が並んでいます。

まず、チャチャポヤのコンドル湖から出てきたミイラが並んでいました。コンドル湖の遺跡は1996年に偶然発見されたそうで、断崖に墓地がありそこから200体以上のミイラの包が回収されたようです。元々、チャチャポヤは骨になった遺体をファルドという布に包んでいたようですが、インカの支配によってミイラを作るようになったそうです。埋葬という最も重要な伝統習慣までも変わるほど、激しい変化がもたらされたとのことでした。

ミイラは5体あり、そのうち4体は布から出た状態で展示されています。しゃがんで口を抑えるようなポーズで、ちょっと苦しみを訴えているような感じに見えました。結構、表情まで分かるような気がします。 成人男性などのミイラですが、小人のように小さくて驚きました。
また、その後ろの一角にはミイラをCTスキャンした様子の映像もありました。こちらも膝を折って包まれているのが分かります。

ミイラの近くにはチャチャポヤの土器もあり、側面には蛇やネコ科の動物、人間などが描かれています。インカの品と似ているようでちょっと違った感じも受けました。
土器の他には小さなコカの袋なども並んでいました。


チャチャポヤのコーナーの次はチムー王国との戦争についてのコーナーです。15世紀初頭、ペルー北部の海岸地域はチムー王国が支配していたそうで、肥沃な農地、漁場、貴重品、腕の良い職人などを誇る先進国家だったようです。特にシカンから受け継いだ治金技術は、その後のインカの様々な黄金製品を生み出していくことになります。インカは1470年頃にはチムーを征服して覇権を確立したそうで、この地の職人たちをクスコや地方行政センターに移動させたそうです。
 参考記事:
  特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想前編(国立科学博物館)
  特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想後編(国立科学博物館)

ここには人の頭の形の壺や、動植物が文様化されたものが描かれたアリバロ(壺)、星型の頭をつける棍棒、投石用の紐、ヘルメット、太鼓などが展示されています。インカの戦争は弓矢も無く結構シンプルだったようで、遠距離戦は石を投げて近距離になったら棍棒で戦ったようです。
近くには木で作られたチムーの埋葬所の模型(当時の品)も展示されています。塀に囲まれた中、沢山の人々の人形があり、中央には貝殻を使って作られた白いミイラの姿がありました。ちょっと呪術的な雰囲気があって当時の様子が伝わってくるようでした。

他にはチムーの織物や銀製の容器、金合金の大きな頭飾りや器がありました。頭飾りは人物の顔とドラゴン?が象られていて結構迫力があります。


<第3章 滅びるインカ、よみがえるインカ>
続いて3章はスペインによって征服されるインカについてのコーナーです。この章の冒頭にはスペインとの戦争の絵をアニメーション仕立てにした映像が流れています。

インカは16世紀に入ると勢力が拡大していたものの、社会内部に矛盾が生じ征服した民族が再び反乱を起こすなど反発は根強かったようです。11代の王ワイナ・カパックの時代になると、それまでインカの中心だったクスコの町から北部のエクアドルに支配の重点を移したようで、インカは2つの中心があるかのようになっていきました。そしてワイナ・カパックが死ぬと、エクアドルとクスコの2人の王子が熾烈な王位継承権争いを起こし、内戦状態に突入しました。結局勝ったのはエクアドル側のアタワルパで、クスコに向けて進軍していったのですが、その途中で海の向こうから見知らぬ風貌の人間がやってきたという知らせを受けてペルー北部に引き返していったようです。

そしてついに1532年11月15日にフランシスコ・ピサロら160人のスペイン人がアタワルパのいるカハマルカに到着します。修道士のバルベルデがキリスト教の受容とスペイン王への臣従を説得しにインカ王に接見したのですが、王は渡された聖書を宙に投げ出したそうです(字の無い文化なので理解していないのかも…) それを修道士は神への冒涜ととらえ、合図を送ると共にスペイン軍による大砲の攻撃が始まります。大砲など見たことがないインカ人たちはパニックになり、何千人も将棋倒しになって死んだそうです。そして王も捕虜となって、わずか160人にあっという間に制圧されました。

その後ピサロは王の身代金として莫大な金銀を要求したそうで、王の号令によって国中の財宝が集められ、その場で溶解され延べ棒となりました(勿体無い!) さらにピサロは陰謀罪を捏造して1533年にインカ王は処刑されます。これは実際には絞首刑だったようですが、植民地時代のインカでは首を切られたと伝えられ、歴史書にもそうした記載があるようです。それにしてもピサロは最悪な征服者です…・

ここにはインカ王アタワルパが断首されるシーンを描いたヨーロッパ風の絵のレプリカがあり、剣で切られ首が飛ばされているところが克明に描かれていました。当地では、この首が地中で成長していて、体が戻る時にインカも戻ると信じられたそうです。また、聖母マリアが指から出す砂でインディオたちを攻撃する絵もありました。これはインディオ側の人間が描いたものかな?? 聖母マリアが侵略者たちを守ったという奇跡を描いているようでした。


アタワルパの死後、ピサロはワイナ・カパックの子のマンコ・インカを傀儡として即位させましたが、マンコ・インカは暴虐に怒りを爆発させて蜂起し、一時はスペイン人を包囲して追い詰めたようです。しかし結局は失敗に終わり、アンデスの密林にあるビルカバンバに撤退していきました。そしてこのビルカバンバではその後4代30年に渡って王権が存続し、スペインに抵抗し続けましたが、1572年に最後の王トゥパク・アマル1世が捕まり、クスコで処刑されました。

ここには油彩のトゥパク・アマル1世の肖像があり、白いチュニックを着て斧を持った姿をしていました。また、少し進むと スペイン統治時代にキリスト教の祭礼に参加するインカの貴族たちが描かれた絵や、ペルーで使われたバロック様式の銀製の十字架もありました。他にも十字架を持って王冠を被り胸に太陽のペンダントをぶら下げるインカの首長の肖像などもあり、インカがキリスト教を受容したことがわかります。これらの絵や十字架の背景としては、スペインに忠誠を誓った人々はむしろ特権を与えられていたそうで、スペイン貴族並の待遇を得たことがあるようです。一般の人達は鉱山での強制労働を強いられたようですが、貴族は免除され王家ごとにまとまり強い影響力を保持したそうです。また、キリスト教の祭礼の際にはかつては王だけが許された装飾品なども身に着けていたようです。 私はスペイン人が来てすぐに滅んだものだと思っていたので、これは意外でした。

その後、インカは貴族のみならず一般市民たちにも理想化・神格化されていったようで、白人の搾取に対して立ち上がり反乱を起こした人物はトゥパク・アマル2世を名乗るなど彼らの心にはインカが残っていたようです。


<第4章 マチュピチュへの旅>
最後の章は空中都市とも呼ばれる山の頂上の町マチュピチュについてです。マチュピチュとはケチャ語で老いた峰を意味するそうで、9代インカ王パチャクティがこの地域を苦闘の末に征服したのを記念して作ったとされています。実はクスコよりも1000m近く標高が低い2400m位だそうで、過ごしやすいので王の離宮だったとも考えられるようです。

そして今から100年前にエール大学の歴史学者ハイラム・ビンガムが地元の農民の案内でこの地に到達し、「発見」となったようです。ここはスペイン人に荒らされることもなく、インカ時代の姿を残していた(崩落や倒壊したままになっている所もあった)とのことでした。

ここには鏡や服をとめるピン、棍棒の頭、人や動物の形の小さな像、土器の壺、皿などが並んでいました。また、部屋の一角にはインカ帝国時代のマチュピチュの再現もあり、町の様子がよく分かります。思っていたよりも大きな遺跡のようです。


ここら辺で展示は一旦終わったような感じですが、まだ観る所があります。通路にはインカの服作りのコーナーがあり、綿花、リャマ、アルカパ(高級)、ビクーニャ(最高級)などの素材に触ることもできます。また、壁にはマチュピチュやコンドル湖の墓地の写真などもありました。

そして通路を抜けると大きな部屋が3Dシアターになっていました。3D眼鏡を借りて観る映像で、マチュピチュを鳥瞰するような視点で観たりします。最初は全然3Dじゃない!と思ったのですが、それは単なる前フリで、本編に入ると結構しっかりした3Dで綺麗な映像でした。これは予想以上のクオリティです。

最後に第二会場に進むとキープ(文字の代わりに結び目で数字を伝えるもの)の体験コーナーがありました。実は身近な所では琉球王国でも似たような藁算という文化があったらしく、それも紹介されています。 また、インカの主な作物の模型もあり、トウモロコシ、唐辛子、インゲン、ジャガイモ、オカ、ユカ、コカなどが展示されていました。

展示を抜けた後のショップも大盛況でした。300円でピンズのガチャガチャもできますw


ということで、恐ろしく混んでいましたが情報量の多い展示となっていました。征服していた者たちがさらに酷い征服を受けるという陰惨な面もあったように思います。残念ながら黄金の遺物はあまりありませんでしたが、ミイラなど貴重な品を観ることができました。もうすぐ終わってしまいますのでインカ文明が好きな方は是非どうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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