関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

KATAGAMI Style ― 世界が恋した日本のデザイン 【三菱一号館美術館】

もう2週間前のことですが、前回ご紹介した展示を観た後、歩いて三菱一号館美術館へ行って最終日直前の「KATAGAMI Style ― 世界が恋した日本のデザイン」を観てきました。こちらの展示は既に終了していますが、京都・三重にも巡回するようですのでご紹介しておこうと思います。(最近、終わりそうな展示を優先して観ているので終わってからの紹介が続いてすみません^^;)

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【展覧名】
KATAGAMI Style ― 世界が恋した日本のデザイン

【公式サイト】
 http://katagami.exhn.jp/

【会場】三菱一号館美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅


【会期】2012年4月6日(金)~ 5月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
最終日1日前に行ったこともあり、入場するのに30分待ちという盛況ぶりでした。ここは中も狭い所があるので非常に混雑感がありました。
メモを取っていると邪魔になるので今回はメモが少なめですが、章ごとに簡単に振り返ろうと思います。


<第1章 型紙の世界 -日本における型紙の歴史とその展開> ★こちらで観られます
まず最初は江戸時代の素襖(すおう)などの男性用の着物や、型染め、鮮やかな紅型(びんがた)という琉球で考案された型染の着物などが並んでいました。少し進むと、雛形(ひいなかた)という今で言えばファッションカタログのような本や、型紙の見本もあり江戸時代のファッション事情を知ることができます。

そして次の部屋からが型紙についてです。型紙はパターン化された模様を細かく繰り抜き、所々に糸で補強したもので、繊維の上に敷いて繰り抜いた所に染料を塗って模様を出すためのものです。 型紙は江戸中期以降に伊勢で独占的に製産されたそうで、美濃紙を3枚接着し、6セット一緒にして彫刻刀で彫って作るようです。いずれもミリ単位の仕事ぶりは驚嘆します。型紙には絵画のような繊細さ・奔放さが感じられ、幾何学的だったりデフォルメだったりと、その意匠の洒脱さも素晴らしい品が並んでいました。特に単純化された草花の衣装は優美で洗練されていました。

型紙は近代に大量に海外に流出したそうで、シーボルトが本国に持ち帰った型紙なども並んでいました。また、歌川国貞や国吉によって描かれた型紙を使って作られた着物を着た美人画などもあり、当時の風情が伝わってくるようでした。


<第2章 型紙とアーツ・アンド・クラフツ -英米圏における型紙受容の諸展開> ★こちらで観られます
続いては型紙が英米に与えた影響についてのコーナーです。1862年のロンドン万国博覧会で展示された日本の造形は、英国の装飾芸術や産業芸術に新しいデザインの風を送り込んだそうです。
ここには日本の造形を模した品が並び、日本風だけれどイギリス製の型紙や日本趣味の型紙が展示されていました。草花や鳥といったモチーフなども日本的かな。日本を紹介した本や、リバティ百貨店で販売された型紙のカタログ、アーツ・アンド・クラフツ運動の旗手であるウィリアム・モリスによる型紙などもあり、当時の熱狂ぶりが伝わります。

 参考記事:
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (目黒区美術館)
  ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン展 (うらわ美術館)
  ウィリアム・ド・モーガン 艶と色彩 -19世紀 タイル・アートの巨匠-(パナソニック電工汐留ミュージアム)
  生活と芸術 アーツ&クラフツ展 ウイリアム・モリスから民芸まで(東京都美術館)

次の大部屋ではアーツ・アンド・クラフツの型紙やテキスタイルが展示されていて、日本的な作品がありました。ジャポニスムを強く発信したリバティー社やシルヴァースタジオの作品が並びます。また、スコットランドのチャールズ・レニー・マッキントッシュの椅子や家具、設計図などもあり、これはちょっと意外でした。マッキントッシュも日本美が好きで、格子のような幾何学に曲線を組み入れるところが日本的なようです。

英国の後にはアメリカのコーナーもありました。アメリカではフィラデルフィア万博の頃に英国の運動が伝わったそうです。ここにはルイス・コンフォート・ティファニーの華美な箱を始め、むしろアール・ヌーヴォーっぽいランプなどもありました。


<第3章 型紙とアール・ヌーヴォー -仏語圏における型紙受容の諸展開> ★こちらで観られます
次はフランスへの影響のコーナーです。フランスはアール・ヌーヴォーを始め印象派、ナビ派などジャポニスムから影響を受けた芸術が結構あります。まずは以前ドニ展で観たドニの「家族の肖像」や、アール・ヌーヴォーの生みの親のジークフリート・ビング(サミュエル・ビング)の著書「芸術の日本」の仏語、英語、独語の3ヶ国語の本が並んでいました。少し進むとドニの列車をモチーフにした型紙の下絵があり、線路が植物のようになっているのが面白かったです。また、壁にはミュシャのポスターが並び、ブリュネット、サラ・ベルナール、夢想、ジョブ(巻きタバコ用紙の)、舞踏(四芸術のうちダンス)など人気作が展示されていました。

 参考記事:
  モーリス・ドニ -いのちの輝き、子どものいる風景- (損保ジャパン東郷青児美術館)
  世紀末、美のかたち (府中市美術館)
  アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 (松屋銀座)
  アルフォンス・ミュシャ展 (三鷹市美術ギャラリー)
  オルセー美術館展 パリのアール・ヌーヴォー (世田谷美術館)


大部屋の次はナンシー派の家具が並ぶコーナーです。ここには寄木のテーブルや、ガレ、ドーム兄弟のランプ、マジョレルの飾り棚などアール・ヌーヴォーの代表的な作家の作品が並び、日本の型紙も一緒に展示されていました。ドーム兄弟とガレの花器は特に日本からの影響が感じられます。また、その次の部屋はラリックのコーナーで、チョーカーや花器が数点並んでいました。日本の型紙に似たデザインのものもあり、これは参考になりました。さらに次の部屋はフランスのテキスタイルと型紙の関わりについても紹介されていました。

 参考記事:
  群馬ガラス工芸美術館の案内
  エミール・ガレの生きた時代 (目黒区美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編(国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編(国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想前編(国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想後編(国立新美術館)
  ラリック家の女神たち (箱根ラリック美術館)
  箱根ラリック美術館 館内の案内

フランスの次はベルギーのコーナーです。ここにもアール・ヌーヴォー的な作品が並び、アドルフ・クレスパンという人のポスターはミュシャを彷彿とさせます。日本風の美術が(若干変容しているようにも思いますが)ベルギーまで到達したことを伺わせました。


<第4章 型紙とユーゲントシュティール -独語圏における型紙受容の諸展開> ★こちらで観られます
下界の4章はドイツ語圏への影響のコーナーです。ユーゲントシュティールというのはドイツ語で「若者の様式」という意味で、アール・ヌーヴォーのことを指すようです。ここには日本の型紙を紹介した本が展示され、やはりここにも伝わっていた様子がわかります。
他にもアール・ヌーヴォー的な銀の食器や、日本のものかと錯覚するような布地、型紙、陶器の食器やティーセットなどもありました。日本の型紙のデザインを陶器にも応用したそうで、マイセンでも使われたのだとか。
 参考記事:マイセン磁器の300年 壮大なる創造と進化 (サントリー美術館)

その後はオランダのコーナーで、オランダは江戸時代も付き合いがあったのでヨーロッパで最も早く型紙がもたらされ、先程挙げたシーボルトのコレクションなどを有しています。一方で植民地のインドネシアから持ち込まれたパティックからの影響も受けたようで、両者の特徴を感じさせる品が並びます。レースやテーブルクロスなど草花を単純化・装飾したものがあり、サイドボードや椅子などにも型紙の影響を見て取れました。

その後はオーストリアのコーナーで、第14回分離派展のポスターや、今でもウィーンでテキスタイルの製造を行なっているバックハウゼン社が制作した日本風の型紙、椅子、食器などがありました。日本の型紙は見本としてデザイナーに参考にされていたそうです。ここはアール・ヌーヴォーというよりはむしろ分離派っぽい雰囲気だったように思います。
 参考記事:ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)


<第5章 現代に受け継がれる"KATAGAMI"デザイン> ★こちらで観られます
最後は現代のコーナーです。ジャポニスムの収束後、型紙は芸術の表舞台から消えたように見えましたが、20世紀を生き残り近年になって復活の様相を呈しているようです。
ここには英国のブリントンズ・カーペット社のコレクションが並び、ブリントンズは2007年に「Katagami」というカーペットシリーズも出しているそうです。世界中のホテルなどでも使われているらしく、シックで落ち着きがある一方で洒落た雰囲気のある模様でした。他にもテーブルや椅子、テキスタイルなどに囲まれる小部屋などもあり雰囲気が味わえました。


ということで、日本の型紙が外国で高く評価していたというのが分かる内容でした。ヨーロッパにおけるジャポニスムの歴史をざっと観る感じですが、型紙というひと味変わった切り口で観ると、また違った面白さがありました。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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評価




コメント
No title
これは行ってみたいと思っていました。確かこの三菱の建物も復元されたものですよね。
2012/06/13(水) 15:25 | URL | min #-[ 編集]
Re: No title
>minさん
コメント頂きましてありがとうございます。

こちらは終わってしまいましたが、人気の展示となっていました。
おっしゃるとおり、この建物は明治期にジョサイア・コンドルが建てたものを再建したものです。
http://21stcenturyxxxman.blog40.fc2.com/blog-entry-164.html

東京駅を設計した辰野金吾の先生でもあったので、よく似てますね。
2012/06/14(木) 00:15 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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