関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に 【日本橋タカシマヤ】

前回ご紹介した日本橋タカシマヤの中のカフェでお茶した後、8階にある展示場で「シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に」を観てきました。

P1010583.jpg

【展覧名】
 シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に

【公式サイト】
 http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/event2/index.html
 http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/top/img/info_chagall.pdf(PDF)

【会場】日本橋タカシマヤ  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】日本橋駅


【会期】2012年6月7日(木)~6月25日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
あまり混んでいなかったので、自分のペースで観て周ることができました。

さて、今回はシャガールの個展ですが、シャガールは生涯に残した作品が多いだけに結構な頻度で展覧会が開かれ、正直なところあまりシャガール好きでもないので満足度はいつもより厳しめになってますw しかし、サブタイトルの通り日本初の出品となるスイスの個人所蔵品なども含まれているようで、特に1930年代以降の作品が中心となっていました。シャガール展はどうしてもリトグラフが多めですが油彩も結構ありましたので、詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。
 参考記事:
  シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛― (東京藝術大学大学美術館)
  シャガール アートポスター展 (ノエビア銀座ギャラリー)
  

まず冒頭にシャガールについて略歴が説明されていて、それによるとシャガールの元の本名はモイシェ・セガルで、モイセはモーセにちなんだ名前だそうです。しかし、ユダヤ的なニュアンスを消すために、パリに出た1911年に敬愛するロシアの彫刻家マルク・アントコリスキーにあやかってマルクと改名したしたそうです。(それでも家族や親しい人はモイセイまたはモシュカと呼んでいたようです) また、セガルの方も父親がロシア語で「闊歩した」という意味のシャガールに変えたため、モイシェ・セガルは後にマルク・シャガールとなりました。
シャガールの一家はロシアのユダヤ人で、父はニシンの卸売会社の運搬人だったのですが、かなり過酷な労働を強いられ最後はトラックに轢かれて亡くなったそうです。一方、母は肉屋の娘で、食料雑貨店と3つの貸し小屋を経営していました。教育熱心でシャガールを門戸の狭い公立学校に賄賂を送って進学させたり、画家になりたいと言えばユダヤ人の画塾を探して授業料を払ったりもしています。ユダヤ教では偶像を禁止していて、それまでユダヤ人が絵を描くことは許されない時代もあったとのことなので、この母の理解は大きいかもしれません。(むしろユダヤ人のシャガールやモディリアーニが何故 絵を描いてOKなのか知りたい所ですが、そこについては解説がなくて残念。) なお、故郷のビテブスクは「シュテットル」(東欧のユダヤ人が使うイディッシュ語で「小都市」の意味)と呼ばれるユダヤ人居住区で、そこに住む人は自由に他の地に移動できるという訳ではなかったようです。この辺の事情は難しいので理解が間違っているかもしれませんが、ユダヤ人には厳しい時代だったのでしょうね…。

最初はパリに行く前に描いたグアッシュの風景画などが並んでいました。

マルク・シャガール 「[婚約者たち]の下絵」 ★こちらで観られます(PDF)
大きな花束の前で白いドレスの女性と青い服の男性が抱き合っている作品です。これは下絵で、ちょっとぼやけていてラフな感じがします。完成作には背後に川と街並みが描かれているそうです。
解説によると、「婚約者たち」はアメリカのカーネギー賞で三等賞を受賞したそうです。後にフランスで反ユダヤ法が可決されて市民権を失いマルセイユで逮捕された際には、亡命しようとしていた先のアメリカの領事館副領事の助けを借りて、警察にカーネギー賞の賞状を見せることでアメリカへの亡命が可能となったとのことでした。芸は身を助けるとは正にこのことかな。それにしてもこの時代のユダヤ人は針のむしろですね…。

マルク・シャガール 「キリスト復活のための習作」 ★こちらで観られます(PDF)
これは1938年の「革命」という作品を元に制作したレジスタンス、復活、解放という3部作(ポンピドゥー所蔵)のうち復活のための下絵です。キリストが磔刑になっている姿が描かれ、左には赤地に沢山の人、右に街並み、下にはトーラーという旧約聖書のモーセ書を持ったラビ(ユダヤ教の司祭のような人)、右下に子を抱く母親がキリストに手を伸ばしている様子が描かれています。色の取り合わせが強く、特に赤とキリストの黄色っぽい体が対比的に見えました。解説によると、キリストが腰に巻いているのはタリトというユダヤ人の衣装らしく、キリストはユダヤ人であることを強調しているとのことでした。

そう言えばシャガールはキリスト教のモチーフも描いてますが、キリスト教では無く根底はユダヤ思想だそうです。シャガールの宗教観は詳しく知りたい所です。

マルク・シャガール 「テルトル広場」
同名の作品の構想図で、パリのモンマルトルにあるテルトル広場からサクレクール寺院を望む風景が描かれた作品です。鮮やかな赤を地に、横になる青い服の女性も描かれ、顔の横にくちばしがあって腰のあたりに緑色の顔の男性が寄り添っています。左には上下逆さの木と黄色い三日月などもあるのですが、完成作では月と木はキリストの磔刑に変更されているそうです。やはり色彩の明るさ・強さにシャガールらしさを感じました。
この辺は宗教的な作品が多かったように思います。

続いてはサーカスのコーナーで、画商のヴォラールが制作を依頼した版画集が40点程度並びます。水彩のような淡目のリトグラフで、白黒の作品もあります。雄鶏、恋人たち、ロバ(山羊?)などお馴染みのモチーフをちりばめつつ、対比的な色使いで華やかさがある一方、どこか悲哀を感じました。なお、ヴォラールはシャガールのために毎週、「冬サーカス」一座の公演の席を用意していたとのことでした。

少し進むと、面白い説明ボードがありました。シャガールの作品は宙を浮いているような作品が多いですが、これはシャガールの母語である東方ユダヤ言語「イディッシュ語」の言葉と関連があるそうです。非常に嬉しい時は「空中を舞い上がる」と表現し、猛烈な恋は「頭がねじ曲がる」というそうです。その為、シャガールの作品はイディッシュ語が絵画になったものとも言われているようです。また、シャガールはロシアのビザンティン様式のモザイクやイコンなどにも影響を受けているそうで、イコンでは金地に遠近法を無視して主たるモチーフを大きく描き、天使や聖人が宙に舞います。そして異なる時制(時代)の場面が同一画面に展開するそうで、その点もシャガールにも観られる特徴かもしれません。シャガール自身もイコンからの影響を語っていたとのことでした。

マルク・シャガール 「天蓋の下の新郎新婦」 ★こちらで観られます(PDF)
深い青地を背景に、真っ白なウェディングドレスの女性と、寄り添う黄緑色の新郎を描いた作品です。二人の上には赤い天蓋があり、周りにはチェロを持った人や簡略化された人々、動物の姿もあります。その上には三日月屋ベッドに横たわる女性など、何かの物語か人生を思わせるモチーフが並んでいました。神秘的な雰囲気があり、解説によるとシャガールのユダヤ人としての面が出ているとのことでした。

マルク・シャガール 「緑のロバと新郎新婦」
寄り添う新郎新婦と、背景に故郷ヴィテブスクの街と思われる風景、2人の上には赤い天蓋、優しさや生命の無垢の象徴のロバ、その後ろに燭台を持つオレンジの髪の女性、右には真っ逆さまになって落ちていくような(浮いてる?)パレットを持ったシャガールらしき人物が描かれています。これもお馴染みのモチーフが集まった感じですが、背景が青いこともあり、どこか悲しい雰囲気があるようにも思いました。

この近くにはダヴィデを描いた作品もありました。

マルク・シャガール 「窓辺の母と子」
黄色い壁の部屋で、赤い服の女性が赤ん坊にお乳をあげている様子が描かれています。左上には月の浮かぶ夜の街の景色、周りには花束などもあります。西洋画で母子と言えば聖母子を連想しますが、これについての詳細は不明でした。黄色い画面のせいか幸せな雰囲気があるように観えました。

この近くにはロシア革命を題材にした作品もありました。シャガールはちょうどロシアに帰っていた時に第一次世界大戦が勃発して足止めを食らって留まり、1917年のロシア革命を体験しました。政治に興味が無かったシャガールですが、革命によってユダヤ人への差別的な政策が撤廃されたことに熱狂したそうで、その後ロシアで美術学校の運営に関わったりもしています。しかしそれも束の間のことでロシアではまたユダヤ人排斥の流れになっていき、シャガールはパリに戻りました。(そのパリでもやがて先程の亡命の顛末となるので、本当に苦労してます)

マルク・シャガール 「画家の夢」 ★こちらで観られます(PDF)
沢山の人々の頭上に、花束を持った男女やキリストの磔刑を描く画家(自画像?)などが描かれ、他にも天使、山羊、街並、三日月などお馴染みのモチーフが並びます。全体的に色は柔らかく幸せな雰囲気が漂っているように思いました。93歳の頃の作品だそうで、若い時とはちょっと違う感じも受けます。

この辺には故郷のヴィテブスクを描いた作品もありました。シャガールは行くチャンスがあったにも関わらず、故郷には結局一度も戻らなかったそうです。変貌した街を見ることなく、心のなかの故郷を大切に守ったとのことでした。

少し進むとシャガールの逸話が並ぶコーナーもありました。特に優しい人柄ではなかったそうですが、生きる意味を発見し、絵画という使命を遂行している感じだったそうです。内気で恥ずかしがり屋で孤独とも説明されていました。また、毎週ルーヴルに通って、プッサン、ティチアーノ、ゴーギャン、ゴッホ(この辺はルーヴルに無いような??)に惹かれていたそうで、逆に印象主義や自然主義はくたばれ!と言っていたようです。そしてマティスとはライバルで交流もあったそうです。

マルク・シャガール 「ロバの横顔の中のカップル」 ★こちらで観られます(PDF)
画面を黄色、オレンジ、緑の3つの色に分割して、中央にロバの横顔、その顔の中に寄り添うカップルが描かれています。左上の黄色の中には故郷ヴィテブスクの街並みと三日月、右上のオレンジの中には花束、下の緑の部分は男女の胴体となっています。目に鮮やかでざっくりとした分割が斬新な雰囲気でした。
解説によると1976年頃からこうした色面の分割がよく使われているそうです。サーカスの舞台の照明にヒントを得たのではないかとのことでした。キュビスムに影響を受けていた初期の作品にもこうした作品はあるそうです。


と言うことで、シャガールのルーツ、特にユダヤ人としての側面が伝わってくるような展示でした。日本初公開の作品もあるのも良かったかな。会期が短いのでシャガールがお好きな方はお早めにどうぞ。

 参照記事:★この記事を参照している記事


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