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大英博物館 古代エジプト展 (感想前編)【森アーツセンターギャラリー】

前回ご紹介したカフェでお茶した後、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーに行って、「大英博物館 古代エジプト展」を観てきました。非常に情報量の多い展示となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1020526.jpg


【展覧名】
 大英博物館 古代エジプト展

【公式サイト】
 http://egypt2012.jp/
 http://www.roppongihills.com/events/2012/07/macg_egypt2012.html

【会場】森アーツセンターギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅

【会期】2012年7月7日(土)~9月17日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が行ったのは初日で、小雨~大雨となる悪天候の日でしたが混んでいて展示物によっては人だかりができる程度でした。しかし思ったほどの混み具合でもなく18時を過ぎると普通に空いていたので、遅い時間帯を狙って観るといいかもしれません。なお、今回は会場内にはロッカーがありませんでしたので、大きな荷物は地上階のロッカーに預けておくのが無難だと思います。

さて、今回の展示は大英博物館の誇る古代エジプトのコレクションを集めた展示で、特に「死者の書」と呼ばれる古代エジプト人の宗教観がよく分かる書物をテーマにした内容となっています。2011年に大英博物館で開催されたものの巡回らしく、全長37mの死者の書を大英博物館以外で展示するのは初の機会となっているようです。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 古代エジプトの死生観>
まずは古代エジプト人の死生観についてのコーナーです。古代エジブト人は人間の生死を自然の営みと同じく繰り返すものと考えていたようで、その為人間も来世で再生・復活すると信じていたそうです。復活を迎えるために死者は保存料、包帯、装飾品によって特別な処理を施して墓に埋葬され、食料、飲み水、衣類などと共に呪術的な品々や文書が供えられました。中でも重要とされたのが今回のテーマの「死者の書」で、これは死後の世界のガイドブックと言える存在で、元来は「日の中に出ていくための書」と呼ばれたそうです。
また、古代エジプトでは人間は「バー」と「カー」と呼ばれる2つの魂(精霊)を持つと考えられていたようで、バーは人の頭と腕を持つ鳥の姿、カーは両腕を挙げた姿をしています。バーは日中は肉体を離れて自由に行動し、夜に戻ってミイラと一体になるそうで、死者が死後も生き続けるにはバーが死者の肉体と再び合体することが重要とされたようです。一方、カーは死後は墓場で供物を受け取り生命力を維持する役割があると考えられたようです。

[永遠の生命を求めて]
死者の再生・復活に特に重要な神と考えられていたのは、太陽神ラーと冥界の王となったオシリス神でした。オシリスは元は豊穣の神でありエジプトの最初の王だったのですが、弟のセトの裏切りによって殺され、バラバラにされたそうです。しかし妻で妹のイシスによってオシリスはミイラにされ、後に復活しました。オシリスは死者の世界で支配者となり、イシスはオシリスの復活とともにホルスを身ごもったそうで、後にホルスはセトと戦い父の仇を討ったそうです。エジプトでミイラが作られていたのは、このオシリス復活神話にあやかっていた為のようで、様々な品でオシリスやラーがモチーフとなっていました。

1 「オシリス神像」 ★こちらで観られます
緑色の肌で、羽のついた白く長い帽子をかぶった男性神の像です。肌が緑なのは植物の色で生命の豊穣と復活を意味しているそうで、手には王杖と穀竿を握っていたと説明されていましたが、これには王杖と穀竿は見当たりませんでした。この像の中には死者の書が入っていたらしく、細かい文様が施され鮮やかな色合いでした。

この辺は太陽神やオシリス、ホルス?などが描かれた供養碑などもありました。ホルスは頭が隼なのですが、ラーも隼の頭なので顔が似ていて私は混同している可能性が高いですw 頭の上に丸い太陽を乗せているのはラーかな??
ちなみに幼い神ホルスは母イシスと共にキリスト教美術に影響を与え、聖母子像の原型になっていきました。
 参考記事:ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち (国立新美術館)

[呪文の変遷]
死者の書は死者を守護するための呪文の集大成で、200種類以上の章(呪文)があるそうですが、その呪文は古王国時代(B.C.2686年~B.C.2181年)から歴史が続いているようです。古王国時代はピラミッドの墓室の内壁に記された「ピラミッドテキスト」と呼ばれる呪文で、王が神に生まれ変わるためのものだったようです。その後の中王国時代(B.C.2025年~B.C.1750年)になると、呪文は棺に書かれた「コフィンテキスト」となり、復活の願いは庶民にも広がっていったそうです。そして第2中間期(B.C.1750年~B.C.1550年)に死者の書が現れ、第2中間期末頃には体系化していきました。死者の書の呪文の多くはコフィンテキスに起源を持っているようですが、全く新しいものもあるそうです。
また、新王国時代(B.C.1550年~B.C.1070年)の初めからは長方形の棺に代わって人型棺(ひとがたかん。人の形をした棺)が使われたそうで、これによって小さく丸めやすいパピルス(繊維のような紙)に書かれた死者の書が広がっていきました。
 参考リンク:古代エジプトの歴史

5 「死者の書が描かれたミイラの覆い布」
今から3500年前のミイラを覆っていた布で、1.5m四方くらいの布製の死者の書です。文字や褐色の肌の人物たちが描かれ、4段になっています。みんな右向きをしていて、これは右から読むことを示しているようです。解説によると、上から順に
 ・変身の呪文
 ・息をする呪文
 ・冥界の門を開ける呪文
 ・ミイラを墓に運ぶ場面
が描かれているようでした。結構ボロボロになっていますが絵や文字がしっかり見え、これぞエジプト!という平面的で呪術めいた雰囲気がありました。

4 「セニの外棺に記された『コフィン・テキスト(棺柩碑文)』-死者の書の前身」
大きな棺で、コフィンテキストと呼ばれる碑文が描かれたものです。特に棺の中に文字や人々、動物など様々なものが描かれていて、これが死者の書の前身だそうです。底面までびっしりと描かれていて驚きました。
ただ、この品はやや高めの所に展示してあるので背が高くないと中は覗けないかも??

この辺には人形(ひとがた)の棺もあり、こちらも中までびっしり文字が書かれていました。


<第2章 冥界の旅>
続いては死者の書に書かれている内容についてのコーナーです(2章の後半は3章の後にあります。) 古代エジプトでは権力者が死ぬとミイラにされ、埋葬の際には「口開けの儀式」というものが行われたようです。手斧(ちょうな)というもので口を開けることで供物を食べたり呪文を唱えられるようになるそうで、体の他の部分に触ることで五感も取り戻すことができるとされたそうです。また、死者が復活・再生へと旅する冥界は現世に近いものと考えられたらしく、墓には日常の品々が供えられました。冥界では様々な難関が待ち受けているのですが、中でも最大の難関は冥界の王オシリスの審判で、その判決に寄って死者が永遠の命に値するかが決まったそうです。ここにはそうした冥界の旅にまつわる品が並んでいました。

[旅立ちの儀式]
死者の書にはミイラ作りへの言及はあまりないそうですが、復活を成し遂げたオシリス神の体と同じ状態にすることを目的としたそうで、オシリスを再生し保存したアヌビス神も葬送の場面によく登場するそうです。

10 「フウネフェルの『死者の書』:口開けの儀式」 ★こちらで観られます
これは死者の書で、パピルスに彩色され口開けの儀式の様子が描かれています。直立する仮面をかぶったミイラと、それを背後で支えるジャッカルの頭をしたアヌビス(の格好をした神官)、その周りには家族や神官たちが祈りを捧げています。神官の1人は手斧(ちょうな)という大工道具をミイラの口の前に出していて、これで口を開けて呪文が唱えられるようにします。また、この絵は2段構成となっていて、下の段には牛の心臓を捧げる様子なども描かれていました。こちらも色鮮やかで事細かに描かれ当時の儀式の様子がよく伝わって来ました。
少し進むと手斧もあり、木と金属で出来ているけど斧っぽさはあまりないような…w

[使者とのつながり]
死者が冥界に入った後でも家族は日常的に死者と接触できたそうで、埋葬、葬送、墓を定期的に訪れ供物を捧げる といったことは家族の役割とされていたようです。死者は生きている者に対して、助けにもなれば害にもなると考えられていたらしく、死者の扱いは生きている者に大きな影響を与えたようです。

14 「役人の供養像」
頭にエジプトらしい頭巾のようなものをかぶった人物の半身像です。これは供養の為の像らしく、食物や必需品が捧げられたそうです。その際には死者の精霊カーも像の中に宿っていると考えられていたとのことでした。
それにしても、死んでからも食料を捧げるってかなり大変なのでは…。よっぽど裕福だったのでしょうか??

[旅への装い]
先述のように死者は守護の力をもつ副葬品で守られていたようで、ここにはそうした品が並びます。

18 「ミイラマスク」 ★こちらで観られます
見開いた大きな目で、青と金のシマシマ模様の髪をした、いかにもミイラのマスク!といった感じの金のマスクです。後頭部には人の顔の鳥などが描かれていて、これは精霊バーのようです。また、頭の上にも文様があり、これは死者を守る呪文のようでした。全体的に黄金に光っていて非常に見栄えがするのですが、マスクが金なのは錆びることがなく神々の象徴とされていたためのようです。また、これは何枚も重ねた布を石膏で固めて作っているとのことでした。これは今回の展覧会でも見所の1つだと思います。

この先には石やガラスでできた小さな護符が並んでいました。また、カノポスという臓器を入れる4つの容器もあり、それぞれアヌビスやラー(ホルスかも)などの顔がついていました。さらに少し進むと人々が帆船の帆を広げている船の模型もあり、かなり精巧に作られていました。

32-34 「紅玉髄とガラスの首飾り」「ビーズの首飾り」「トカゲ形護符の金製ネックレス」
金やガラス、紅玉髄(べにぎょくずい、またはカーネリアンという赤い鉱物)などで作ったネックレスです。特に面白かったのはトカゲ形護符で、これは小さなトカゲが沢山連なったネックレスとなっていました。トカゲは尻尾を失っても生えてくるので、再生の象徴だったそうです。金で出来ているのも錆びない永遠の象徴とのことでした。

16-17 「神官イレトホルイルウの人形棺」「神官イレトホルイルウのミイラ」 ★こちらで観られます
人形(ひとがた)棺と金のマスクをかぶったミイラのセットです。この人物は神官だったそうで、CTスキャンによって中年男性だったことや護符が包帯の内側にあることも分かっているそうです。棺には沢山の文様がありました。これもかなり目をひく品です。

[冥界の風景]
門、丘、洞窟などは冥界の地形で、超自然的な力を持ち、死者が何らかの挑戦を受ける通過儀礼の象徴だったそうです。死者はそこで試練を乗り越えて旅しなければならず、死者の書はそれに必要な知識を提供するものだったようです。

36 「ネブセニィの『使者の書』:聖なる場所に宿る霊を知る呪文」
パピルスにびっしりと象形文字が描かれ、窓のような感じのところに神の姿が3人ずつ描かれています。アトゥム、セベク、ハトホルといった名前があるとのことで、その霊を知る呪文なのかな?

この先には休憩スペースがあり、グリーンフィールドパピルスの主要場面の解説がありました。実物を観る前に予習することができます。


ということで、前半から情報の多い内容となっていました。一部に複製品もありますが、棺やマスクなど貴重な品が多く、テーマ的にも面白い展示です。後半には今回の目玉である「グリーンフィールド・パピルス」もありましたので、次回はそれを含めてご紹介しようと思います。



  → 後編はこちら




 参照記事:★この記事を参照している記事


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評価




コメント
No title
私も見に行きましたが、ブログを拝見し、すごくいい復習になりました!
ありがとうございました!
2012/08/09(木) 22:43 | URL | eco #-[ 編集]
Re: No title
>ecoさん
コメント頂きましてありがとうございます。
こちらの展示はエジプト人の死生観がよく分かる面白い展示ですよね。
参考にして頂いて嬉しいです^^
2012/08/10(金) 00:14 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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「大英博物館 古代エジプト展」

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