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大英博物館 古代エジプト展 (感想後編)【森アーツセンターギャラリー】

今日は前回の記事に引き続き、森アーツセンターギャラリーの「大英博物館 古代エジプト展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


P1020519.jpg

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 大英博物館 古代エジプト展

【公式サイト】
 http://egypt2012.jp/
 http://www.roppongihills.com/events/2012/07/macg_egypt2012.html

【会場】森アーツセンターギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】2012年7月7日(土)~9月17日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では2章の前半部までご紹介しましたが、後編では今回の見所である「グリーンフィールド・パピルス」を含む後半の内容をご紹介します。


<第3章 世界最長の『死者の書』《グリーンフィールド・パピルス》> ★こちらで観られます
3章は全長37mにも及び100以上の章を持つ世界最長の死者の書「グリーンフィールド・パピルス」についてのコーナーです。この死者の書の所有者はネシタネベトイシェルウという女性神官で、彼女は当時テーベを中心にエジプトを支配していたアメン大司祭の娘だそうです。この死者の書が作られる少し前の第18~19王朝の時代では、死者の書は一般的に男性のために作られていたそうですが、これが作られた第2中間期の第21王朝時代になると、位の高い女性が自分用に持つようになっていたそうです。
断簡のように区切られたグリーンフィールド・パピルスが部屋をぐるりと取り囲むように展示されている風景はまさに圧巻で、それだけでも必見の内容と言えます。最初の方は破けていたり変色しているのですが、これはパピルスを巻いた際に最初のほうが外側にくるため劣化しやすかったためのようです。しかし、それ以外のところは保存状態もよく、死者が旅する様子がよく分かりました。

最初に黒髪のネシタネベトイシェルウがオシリス神を礼拝している様子(★こちらで観られます)から始まり、葬送行列、口開けの儀式、太陽神礼拝と続きます。絵は思った以上にシャープな印象で細かく描かれていました。

少し進むと、人の顔を持った鳥の姿の精霊「バー」を連れたネシタネベトイシェルウが太陽神ラーと対面している様子や、蛇を退治する太陽神、布をかぶって目だけ出す謎の人物(神?)、スカラベの頭を持つケプリ神(太陽神と同一視されることもある神)など変わった姿の神々が続きます。また、死者の書はその名の通り文字が多く、様々な呪文が書かれているのですが、黒文字の中に時折 赤文字があるのが気になりました。特に解説がないので理由は分かりませんが、ここがテストに出るんでしょうか?w

少し進んで場面21・場面22にはワニや蛇や待ち受ける試練(★こちらで観られます)があり、死者はこれを呪文で退治します。ワニは振り返るような姿をして、蛇は標本のような姿で描かれていました。

その後には沢山の鳥人間(バー)達や、足のある蛇やワニ、羊、鳥などが描かれ、これは呪文で変身しているシーンのようです。ワニだけやけにリアルな感じがします。

場面45~49には冥界の門が描かれているのですが、四角く幾何学的な形をしていて意外と小さな門でした。門と言うよりはエレベーターの扉みたいな感じに見えます。死者はこうした門を沢山通って行くそうです。

その先には隼の頭をした太陽神ラーと、トキの頭をした知恵と書記の神トトが描かれています。小舟に巨大な隼の頭だけ乗ったラーはちょっと異様だけど可愛いw ラーとトトはこの後も何度も出てきます。

場面58は捕獲網から逃れるシーンが描かれています。3人の神々が地引網のようなものを引いていて、ここにはこの網から逃れる呪文が書かれているようです。何故 網に引っ掛けられるかは謎ですが、ちょっと面白いw

そしていよいよ場面63は最大の関門であるオシリス神の審判のシーンです。(★こちらで観られます) ここではオシリス神の前で42項目の罪を否定して潔白を証明する必要があり、天秤を使って判決が下されます。天秤の片方には真理や正義を司るマアト女神の小像が載せてられ、もう一方には死者(ネシタネベトイシェルウ)の心臓が載せてられます。心臓といっても容器のようなものに入っているように見えるかな。 この天秤が釣り合うとイアルの野という楽園で再生が叶うのですが、釣り合わないと天秤の前にいる怪物アメミトに心臓を食べられ2番目の死を迎えます。アヌビス神が計り、天秤の傍らにはトキの頭のトト神が計量を記録しているようでした。厳粛な雰囲気のある緊張のシーンです。
ちなみに42項目の罪は最後に書かれているのですが、こんな感じです。(写真は会場外の入口付近の壁に書いてあったものです)
P1020532.jpg
公式サイトには全項目載っています。
 参考リンク:オシリス審判 審判の否定告白42カ条

同じ内容の罪が多くて、嘘をつく・騙す・悪口・暴力あたりが頻出しているようです。中には「自分の心臓を食べなかったこと」というのもあるのですが、これは悲嘆にくれなかったことという意味のようです。これらを全部クリアするのは不可能なので、乗り越えるにはやはり呪文が必要となりますw(それについては後述します)

審判の後は楽園イアルの野に向かうシーンとなり、ヌウト女神に供物を捧げる様子や、先ほどの布を被った謎の人物などが現れます。天秤で計っているシーンももう1回でてきました。

そしてついにイアルの野にたどり着きます。(★こちらで観られます) イアルの野では雌牛を使って畑を耕している様子などが描かれ、前世と同じように肥沃な土地で永遠の生命を授かるそうです。しかしここで疑問が…。というのも、せっかく永遠の生命を貰っても、神官であろうと神の命令があれば農作業などをしないといけないらしく、それはむしろ前世より大変なのでは??と思ってしまいます。これについても対策があるようで後のコーナーで紹介されていました。

この「グリーンフィールド・パピルス」にはさらに続きがあり、場面87には天地創造の神話が描かれています。(★こちらで観られます)通常、死者の書ではほとんど描かれていないらしく、「グリーンフィールド・パピルス」はこのシーンが有名なようです。
両手をあげる大気の神シュウが、その上の大きな女神ヌウト(天空の神)を支えていて、その足元に大地の神ゲブが横たわっている様子が描かれていて、これはいつも離れることがないほど仲が良かったゲブとヌウトをシュウが引き離した為、天地が分かれたのを表しているようでした。巨大なヌウトが一際目を引きました。

最後の場面90~92には42カ条の否定告白が書かれていました。


<第2章 冥界の旅2>
「グリーンフィールド・パピルス」の後、再度2章となります。ここには冥界の旅にまつわる品が並びます。

[セネトゲーム]
ここには冥界の旅の過程を象徴するゲームに関する品が展示されていました。セネトとは通過という意味を持つそうで、30マスの盤上を2人で駒を進めて遊ぶ双六的なゲームのようです。3000年にもわたって親しまれたのだとか。

41 「動物の風刺パピルス」
人間のように振る舞う猫やハイエナ、動物のままのアヒルや山羊などが描かれたパピルスです。左の方にはライオンとガゼルがセネトゲームに興じる姿もあり、ライオンが勝ち誇ったような顔で駒を進めているのが面白いです。古代エジブトの風刺画は動物を人間になぞらえているものが多いらしく、解説ではエジプト版の鳥獣戯画と言っていましたが、確かにそんな感じでした。
絵の前には木製のゲーム盤と駒もありました。どういうルールかはパッと観ただけでは分かりません。

[守護と呪文の力]
続いては死後に出会う危険に対処する呪文や、心臓を守る護符・呪文、木棺などが展示されていました。

45 「供物台」
これは供物を載せる台に空気と水を与える呪文が刻まれた品です。うっすらと2人の人物が刻まれ文字が描かれていました。台にまで呪文を書くとは驚きです。

この辺には「ホルアアウシェブの人形棺と女性のミイラ」という品もありました。

[審判]
ここはオシリス神の審判についてのコーナーです。現実には42の罪悪は誰でも心当たりがあったはずなので、オシリス神の審判の際には心臓が自分を裏切って不利な証言をしないように言い聞かせる呪文があったそうです。罪を否定して無かったことにして、心臓に沈黙せよと命じることで神々から悪事を隠し通せると考えたようですが、それが前提の宗教だと、誰も正しく生きようと思わなくなるのでは??という疑問も湧きますw
ここには天秤やマアト女神のペンダント、マアトの小像、心臓の護符、呪文を刻んだ大きなスカラベ形の護符などがあり審判に備えているようでした。

60 「パセンホルの人形棺」
これは大きな人形(ひとがた)棺で、びっしりと装飾文様が描かれています。胸のあたりには審判のシーンがあり、計量するアヌビス、死者の手を引くトト、死者と向き合うオシリスなどが描かれていました。また、解説によると周りは否定告白の呪文で埋め尽くされているようです。

[来世の楽園]
イアルの野は審判をくぐり抜けた者だけがたどり着く楽園で、緑が茂り 実り豊かで 水を湛えるナイルのイメージだそうです。来世でも畑を耕すなど労働が必要とされたようですが、シャブティと呼ばれる身代わり小像を副葬しておくと、その労働を免れるとされたそうです。…試練の末に辿り着いた楽園は永遠の労働でしたというオチではキツイですもんねw ここにはそうした楽園に関する品が並んでいました。

63 「テントアメニィイの『死者の書』:イアルの野」
牛を引いて畑を耕したり、刈り入れて脱穀している様子を描いたパピルスです。平和そうでのんびりした雰囲気がありますが、あの世では神の命令があれば王でもこうした作業に従事しなければならないようで楽園なのかなこれは?w 
ちなみにイアルとは植物のイグサのことだそうです。

64-65 「ヘヌウトメヒトのシャブティ」「ヘヌウトメヒトのシャブティボックス」
彩色された木彫りの人形が沢山あり、それが箱のなかに収まっています。ミニチュアの道具などもあって、どうやらこの人形が楽園で死者の代わりに仕事をやってくれるようです。最初は副葬するのは1体だったようですが、後に増えてファラオは700体も収めたようです。中国の俑みたいなものかな? 死んだらシャブティを入れてもらわないと、あの世で大変ですからね。


<第4章 『死者の書』をめぐる研究>
最後は死者の書にまつわる研究のコーナーです。死者の書以外にも様々な葬送文書が作られたそうで、『アムドゥアト書』や『洞窟の書』というものもあったらしく、新王国時代の王墓の壁に刻まれたそうです。『アムドゥアト書』は太陽神の夜の12時間の旅を解説したもので、第21~22王朝では死者の書と対にされたそうです。

[様々なパピルス文書]
169-170 「パシェブムウトウブケトの『アムドゥアト書』」
右端に小さな壺(心臓)を持つ女性が描かれ、蛇などに姿を変えた神々に礼拝している様子が描かれています。これは死者の書の呪文を象徴しているようです。ストーリーは違えど死者の書に似た感じを受けました。
この辺にあった洞窟の書にも、スカラベやアヌビスっぽいものが描かれていて、やはり死者の書と似た雰囲気でした。

[死者の書を記す]
最後は死者の書の制作に関するコーナーです。パピルスはB.C.3000年頃に作られたそうで、2~3mある多年草のパピルス草から作られます。茎を薄くスライスしたものを重ね互いに圧着して作るようです。また、パピルスに字を書く書記についても紹介されていました。

174 「ペスシュウペルの書記像」
これは書記の彫像で、賢そうな顔をしています。当時の書記は知的階級だったそうで、能力があれば誰でもなれたようですが、昼も夜も勉強していたようです。この展覧会にあった品を思い出すだけでも大変そうな仕事ですね。
この辺には木製のパレットなどもありました。

最後には約6分の映像があり、エジプト人の死生観をおさらいできました。

会場を出るとショップがあります。こちらも充実の内容で、200円のガチャガチャもありました。
P1020529.jpg P1020527.jpg


ということで、かなり見応えのある内容となっていました。貴重な品々だけでなく、複雑なエジプトの宗教観が分かりやすく解説されているのも魅力ではないかと思います。これは小中学生の夏の自由研究にもなるかも?w この夏にはもう1つ大きなエジプト展があるので、2つ合わせて観ておきたいところです。

おまけ:
金曜日の22:15~23:30はナイトミュージアムだそうで、特別な音響演出や演奏なども楽しめるそうです。
 参考リンク:大英博物館 古代エジプト展 ナイトミュージアム

追記:
後日、上野の森のツタンカーメン展にも行って来ました。シャブティやカノポスが多く出ていますので、先に六本木を観て死生観を知っておいた方が、上野の展示も理解しやすいかと思います。
 参考記事:
  エジプト考古学博物館所蔵 ツタンカーメン展 感想前編(上野の森美術館)
  エジプト考古学博物館所蔵 ツタンカーメン展 感想後編(上野の森美術館)



 参照記事:★この記事を参照している記事


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