関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

三井版 日本美術デザイン大辞展 【三井記念美術館】

先週の日曜日に、三越前の三井記念美術館で「三井版 日本美術デザイン大辞展」を観てきました。

P1020946.jpg

【展覧名】
 美術の遊びとこころⅤ 三井版 日本美術デザイン大辞展

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅


【会期】2012/06/30(土)~2012/08/26(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外にも非常に空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は「美術の遊びとこころ」という三井記念美術館が行なっている古美術の入門編的な展示シリーズの5回目となっています。日本美術には様々な用語があり、初心者には難しく思えるものですが、この展示ではよく出てくる日本美術の用語を実際の品を観ながら学べるという趣旨となっていました。だいたいは「あ」から50音順に用語が並んでいて、(展示スペースの関係などでたまに場所が違います)主に三井記念美術館の所蔵品だったと思います。詳しくは気に入った作品と共に用語ごとにご紹介しようと思います。
なお、50音順でどういう用語に関して取り上げているかは公式サイトの作品リストで確認できます。

 参考リンク:作品リスト(PDF)


[あしでえ/葦手絵]
漢字や仮名文字を岩や樹木、鳥、水草などの風景に隠すように描いた絵画を指します。葦の葉に似せて書いた書体から「葦手絵」と呼ばれるようになったそうです。

2 田中親美(模写) 「平家納経 法華経 分別功徳品第十七 ( 模本)」
これは巻物で、大正時代に模写した平家納経の写本です。金箔が散らされた料紙の上に、法華経が書かれ、その右に色紙サイズの絵が描かれています。蓮の花の咲く水辺で平安貴族風の男女4人がそれを眺めていて、意匠化され小さな四角の箔が散らされた様子は絢爛豪華かつ雅な雰囲気があります。解説によると、この絵の男性の左下には「加」と「奈」の文字を岩の輪郭として描いているとのことでしたが、なかなかそうは読めませんでしたw また、岩に止まる水鳥を「と」と「る」にしているようですが、これも見つからず…。 遊び心を感じる趣向ですが、これに気づくには相当に詩歌や教養が必要そうでした。

ここには蒔絵の葦手絵(★こちらで観られます)もありました。こちらは何とか分かりますw


[うろこもん/鱗文]
これは三角形を組み合わせた連続した文様のことで、魚や蛇の鱗の形に似ているので、近世以降に「鱗形」とも呼ばれるようになったそうです。その歴史は古く、古墳や埴輪の文様にも使われていたそうで、能や歌舞伎においては怨霊や鬼、蛇の化身(道成寺の清姫など)の衣装に使われるようです。また、一方では魔除けの意味もあるとのことでした。

8 仁清 「色絵鱗文茶碗」 ★こちらで観られます
黒地の茶碗で、側面に金・白・赤の三角が帯になって並んでいます。黒の中に帯があると引き締まって見え、その色合いと模様のためか、凛とした雰囲気があるように思いました。

少し進んで次の部屋に入ると[絵手本]として北斎漫画などが並んでいました。


[おおつえ/大津絵]
大津絵はその名の通り近江国の大津に関連があり、彼の地でお土産物として売られていた絵画です。その場で素早く描いていたそうで、初めは仏画だったようですが後に戯画が増え、「鬼の念仏」など決まった題材が描かれるようになったそうです。

17 河鍋暁斎 「浮世絵大津之連中図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、大津絵に出てくる簡略的な鬼や座頭、奴(やっこ)などと共に右下に美しい男女が描かれています。美女が美男の髪をといているようで、その視線の先に三味線を弾く鬼、合いの手を入れる座頭、鏡を観る後ろ姿の奴がいるという感じです。 男女は繊細に描かれているのですが、それと対照的に鬼たちはさらっと描いたような感じで、それが大津絵風の描き方のようでした。豪放で陽気な雰囲気があり、パロディ的な面白さがありました。


[うんりゅう/雲龍]
雲龍は雲に乗って天に登る龍を描いた画題です。龍の角は鹿、頭はラクダ、爪は鷹といったように実在の動物の各部を組み合わせているようです。
ここは展示スペースの関係で1作品だけ展示順が後回しになっていました。

13 狩野探幽 「雲龍図(附:探幽書状)」 ★こちらで観られます
これは水墨画で、雲間から首と爪をのぞかせる龍を描いた作品です。太い輪郭で描かれ、画面のあちこちに墨が撒き散らされているような感じで迫力があります。また、怒ったような顔をしていて、下の波が大きく跳ねている様子も圧巻でした。これは今回の見所の1つだと思います。


[げちょう/牙彫]
牙彫とは主に象牙を彫って作った彫刻のことです。

30 竹内実雅 「牙彫田舎家人物置物」
これは茅葺き家とその周りの木々や沢山の人々などが彫られた牙彫です。1本の象牙で出来ているとのことですが、家の中の人、格子の窓、水車、天秤を持つ人など、神業とも言える精密な仕事ぶりにただただ驚嘆するばかりでした。これはスコープで観るとさらに凄さが分かると思います。

31 安藤緑山 「染象牙果菜置物」 ★こちらで観られます
これは牙彫に着色して作ったミカン、ナス、いちじく、柿、仏手柑などの彫刻です。特にミカンは本物と間違えても不思議ではないほど写実的に作られていて、これも仕事ぶりに驚きでした。それぞれモチーフごとに質感も違うのに、それも見事使い分けて再現しています。

この辺は[こしらえ](刀剣を腰につけるための外装飾)や、[歳寒三友](さいかんさんゆう:冬に友とすべき3つの植物 松竹梅のこと。松は冬でも緑、竹は寒さでもまっすぐ、梅は早春に花をつける)に関する品などが並んでいました。


[すやりがすみ/すやり霞]
すやり霞とは遠近感や山の高さを表す横長の雲のようなもので、絵巻では転換や時間の経過を表す時にも使われるようです。素槍というすっきりした槍のような形をしていることからすやり霞と呼ばれるようです。

42 亀岡規礼 「酒呑童子絵巻」 ★こちらで観られます
これは人一倍大きな酒呑童子が赤い血?の入った盃を持ち、周りにはお付きの女性や鬼たち、向かいには源頼光とその四天王などが描かれた物語の絵巻です。宴会の様子らしく扇子を持った男性が踊っているのを見ているようです。周囲には水色の雲のような素槍霞が立ち込め、幻想的な雰囲気を演出していました。

この近くには[鍾馗]のコーナーがあり円山応挙の鍾馗図が展示されていました。また[青海波(せいがいは)]などは様々な所で観るので参考になりそうです。

この部屋にあったボードには工芸品の名前の付け方について書かれていました。例えば「色絵鱗紋茶碗」という名前では、まず「色絵」という造形や技法・装飾技法がきて、次に「鱗紋」という文様、最後に「茶碗」という器形・用途となっているようです。ルールは機関や組織によって変わるそうですが、興味深い解説でした。


[そとぐま/外隈]
外隈は描かれているモチーフの外側をぼかすことによってモチーフを浮き立たす技法です。

46 円山応挙 「富士図」
これは雪の積もった白い富士とその周りの空が描かれた作品で、富士はぼんやり霞がかったような感じで外隈の技法が使われています。筆線を用いず稜線を外側から形作っているとのことで、周りの薄い空色によって山の形が浮き立つように表現されていました。非常に情感があり雄大な雰囲気があります。応挙は狩野探幽の外隈を意識しているとのことでした。

この近くには漆を何重に塗り重ねたものを彫り込んだ[彫漆(ちょしつ)]、中国の[饕餮文(とうてつもん)]の銅器、鯉が滝を登ると龍になるという[登竜門]の文様の青磁の花入れ、漆に金色の梨地を撒いた[梨子地]の硯箱、料紙に貼る金箔・銀箔を細長く切った[野毛]と粉末の[砂子] などが並んでいました。


[ふきぬきやたい/吹抜屋台]
吹抜屋台とは絵画の技法で、建物の屋根や天井の描写を省略して室内の人物などの様子を俯瞰するように描く表現です。大和絵の邸宅のシーンでよく観られます。

64 醍醐冬基 「源氏物語画帖」 ★こちらで観られます
吹抜屋台で描かれた邸宅の中で平安貴族風の男女が話している様子が描かれた大和絵です。源氏物語のワンシーンらしく、どの帖か分かりませんでしたが雅で繊細な印象を受けました。


[ねつけ/根付]
根付は印籠や袋、煙草入れなどにつけられた小さな装飾品で、現代のストラップのようなものです。

60 「子犬根付・枇杷に鼠根付・猿に蟹根付」
ここには3つの根付がありました。
仔犬の根付は2匹の犬が寄り添い、前足をかけて仲睦まじい様子でした。これは微笑ましくて可愛い^^
ビワとそれと同じくらい小さなネズミの根付はネズミの毛まで細かく表現されています。この細かさは高い技術を感じます。
猿と蟹の根付は、伏せて頭を押さえる仕草の猿と 上からのしかかる蟹となっていて、猿蟹合戦を思わせます。これも相当細かい表現で遊び心を感じました。

この小部屋には他に、刀の[鍔(つば)]や、麦をイメージする何本も筋状の線が描かれた[麦藁手(むぎわらで)]文様の茶碗などがありました。


[たがそで/誰が袖]
誰が袖は人は描かれず、物干しに掛けられた色鮮やかな衣が並ぶという趣向の画題です。古今和歌集の歌に詠まれたのが語源のようです。

47 「誰が袖図屏風」 ★こちらで観られます
金地を背景に緑の竿に掛けられた小袖が描かれたもので、誰が袖の典型的な作品だと思います。華やかな雰囲気があるものの、誰もいないので静けさを感じます。当時の人はこれを観て、どんな人がこれを着ているのだろうか?と想像を掻き立てられたのではないかな。

この辺には[溌墨(はつぼく)]という輪郭を用いず墨をそそいで形象を表現する技法で描かれた橋本雅邦の作品もありました。溌墨は中国 唐時代では前衛的な技法だったようで、それまでの中国画では輪郭線を重視していたようです。

少し進むと[三所物(みところもの)]のコーナーがあり、刀剣の金具のうち、目貫、小柄(こづか)、笄(こうがい)をそのように呼ぶようでした。


[もっこつほう/没骨法]
没骨はモチーフを描く際に輪郭線(骨法)で形態を象らず、墨や絵の具を面的に広げて、その濃淡で立体感や質感を表現する技法です。中国で生まれ専ら花鳥画に用いられたそうです。

76 円山応挙 「水仙図」
これは水仙が1本、横長に描かれた掛け軸です。薄っすらとした濃淡で表現され、曲線が優美な雰囲気でした。

この辺には[名物裂(めいぶつぎれ)]という中国や東南アジアの布を本にしたものや、[滅金(めっき)]を施したキジの置物、[焼締め]という釉薬を施さない技法で作られた水指、[瓔珞(ようらく)]という金銀宝石で出来た飾りのついた厨子、[楽焼]という轆轤(ろくろ)をつかわず手びねりで作った茶碗などがありました。楽焼は黒楽、赤楽、青楽、白楽と色ごとに並んでいます。


[るすもんよう/留守文様]
留守文様は工芸の意匠で、古典文学や故事、逸話、和歌、謡曲にちなんだ主題を表す場合に使われ、その登場人物の姿を全く描かず背景や持ち物だけ描いて、人物の存在を暗示するそうです。

89 「菊水蒔絵高坏」
これは3つの猫足のついた円形の皿のような杯で、全体を梨子地で覆い、流水と菊の模様が金銀の蒔絵で描かれています。これは菊慈童という不老長寿を得た人物(周の王に仕えた侍童)の物語を題材にしているそうで、優美な雰囲気がありました。しかし素人目には物語を描いているとは分からず、これに気づくにはかなりの教養が必要なのでは…w この作品の上には菊慈童を描いた蒔絵の絵もありました。


ということで、知っているようで知らなかった用語などもあり、これはかなり参考になりました。日本美術は歴史が古く種類も富んでいるので鑑賞するにはある程度の知識が必要な時もありますが、この展覧会を観ておけば頻出の用語はおさえられると思います。美術に興味がある初心者の方には特にお勧めです。出品されている作品自体も面白かったです。


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