関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち 【ホテルオークラ アスコットホール】

前回ご紹介した泉屋博古館分館の展示を観た後、ホテルオークラのアスコットホールで「東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち」を観てきました。

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【展覧名】
 東日本大震災復興支援チャリティーイベント"アートで心をつなぐ"
 第18回 秘蔵の名品アートコレクション展
 東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち

【公式サイト】
 http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/special/art2012/

【会場】ホテルオークラ アスコットホール
【最寄】六本木一丁目/溜池山王/神谷町


【会期】2012年8月3日(金)~8月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
行く時間が遅めだったこともあってか、空いていてゆっくり観ることができました。

さて、この展示は毎年この時期恒例のアスコットホールでのチャリティー展です。毎年テーマを変えて開催されていますが、今年は「東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち」ということで、現在の東京藝術大学の歴代の教員と卒業生ら45人の作品84点が並ぶ内容で、日本画・洋画ともに見応えのある作品が並んでいました。特に章分けはありませんでしたが、気に入った作品を通してその様子をご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  文化勲章受章作家の競演 日本絵画の巨匠たち (ホテルオークラ アスコットホール)
  第15回秘蔵の名品アートコレクション展 ~日蘭通商400周年記念 栄光のオランダ絵画展~ (ホテルオークラ アスコットホール)


まず最初は洋画のコーナーでした。

和田英作 「少女 新聞を読む」
規則的な模様のついたマットを敷いて、そこに寝っ転がって新聞を読んでいる浴衣姿の女性を描いた作品です。淡く明るい色彩は師匠の黒田清輝の画風を思い起こさせるかな。隣には団扇があり、日差しは柔らかめですが夏っぽい雰囲気に思いました。

近くには岡田三郎助の「ムートンの夕暮れ」やラファエル・コランの「花月(フロレアル)」もありました。藝大美術館の所蔵品が半分くらいあるようです。

藤島武二 「池畔納涼」 ★こちらで観られます
これは大きめの作品で、池の畔のベンチに腰掛ける団扇を持った白い着物の女性と、その傍らで立って本を読む青い着物に赤帯の女性が描かれています。周りは夕暮れのようで、柔らかいオレンジに染まっていて、夏の情緒を感じさせました。こちらも黒田清輝の外光派の特徴が見られるようでした。
 参考記事:尼門跡寺院の世界 皇女たちの信仰と御所文化 と 芸大コレクション展 春の名品選 (東京藝術大学大学美術館)

この辺りには岡田三郎助の「支那絹の前」や黒田清輝の「婦人像(厨房)」(★こちらで観られます)、黒田清輝が模写したレンブラントの自画像、和田英作が模写したミレーの「落ち穂拾い」などもありました。
 参考記事:
  高島屋史料館所蔵名品展 (泉屋博古館 分館)
  藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)
  コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選― (東京藝術大学大学美術館)

梅原龍三郎 「裸婦」
赤い布地とカーペットを背景に、ソファに腰掛け足を組む裸婦が描かれた作品です。全体的に簡略化され、ルノワールやマティスを彷彿とします。色が強く力強い印象を受けました。

この近くには安井曾太郎による男子裸体・裸婦の素描なども並んでいました。

青木繁 「旧約聖書物語挿絵 1.光りあれ」
手前に暗い海が描かれ、水平線の中央辺りに太陽のような十字の光、右上には三日月が描かれた作品です。非常に神々しい雰囲気の光景で、旧約聖書の天地創造のシーンを表しているようでした。
ここには同様に旧約聖書(中村吉蔵本案の旧約聖書物語)の8点の挿絵があり、モーセやダビデ、ソロモン、ネブカドネザルなどを描いた場面もありました。
 参考記事:没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術 (ブリヂストン美術館)

続いては日本画のコーナーです。

横山大観 「村童観猿翁」 ★こちらで観られます
黒い牛の上で赤い着物を着た猿が芸をしている様子を描いた作品です。その周りには11人の着物の子供たちがいて、それを見ているようです。子供たちの後ろには帽子をかぶった男性が座り、この人が猿回しの翁のようでした。皆、中央の猿に目線を向けていて、楽しそうに見えます。また、手前の木々は濃く、奥はぼんやりするなど遠近感を感じました。解説によるとこれは大観の卒業制作らしく、子供たちは同期の画家の幼顔をイメージしたそうで、翁は橋本先生(橋本雅邦)をイメージしたとのことでした。
大観は富士を描いた作品もありました。

下村観山 「山寺の春」
これは2幅対の掛け軸で、右幅は見下ろすような視点で山の斜面に咲く桜の樹と、樹の下の何かの碑のようなもの??が描かれています。一方、左幅には山の斜面を登る着物の女性が描かれ、その斜面は2幅で繋がるようになっているのが面白いです。色は柔らかめで静かな雰囲気ですが、対比的な所があるように思いました。解説によると、土佐派の研究の成果が伺えるとのことでした。

観山は他にもう1点あり、近くには菱田春草3点、川合玉堂の屏風1点などもありました。

東山魁夷 「悠紀地方風俗歌屏風」
6曲1双の大きな屏風で、右隻は桜が咲く山や岩の連なる海が描かれ、左隻は紅葉した山の斜面や雪の積もる湖畔の山々が描かれています。背景には金と青で雲がたなびく様子が描かれているので大和絵風に見えましたが、単純化されすっきりした感じが独特でした。東山魁夷にこういう作品があるとは興味深いです。

この隣には高山辰雄による同じサイズの屏風がありました。こちらも一見すると大和絵的ですが、工場などが描かれていて一風変わった雰囲気でした。

加山又造 「富嶽」
雪の積もった白い富士山の山頂付近を描いた作品です。深い青を背景にそびえる姿は雄大で、神聖さすら感じる美しさです。山の斜面には細かい筋がついていて起伏を表現しているように見え、さらによく観ると実際に絵の具が盛り上がっているのが分かりました。色の対比が鮮やかに見えるためか、澄んだ空気まで伝わって来るようでした。

杉山寧 「野」
ススキの野の中で遊ぶ子供たちを描いた作品で、雀を掌で抱く子や、周りを見ている子供など、ちょっと佇んでいるような感じも受けます。風が強いのかススキはなびき、右から左への流れを感じます。また、高い位置に水平線があり、向こうには丸い月が浮かんでいました。どこか神秘的な雰囲気がありつつ、1つ1つのススキは緻密に描かれ、毛先までも表現されているのは驚きでした。

この辺には松岡映丘の「千草の丘」もありました。これは非常に見応えのある作品です。また、少し行くと加山又造の「原始時代」という半抽象画のような作品や、平山郁夫の作品などもありました。
 参考記事:生誕130年 松岡映丘-日本の雅-やまと絵復興のトップランナー (練馬区立美術館)


小林古径 「花」
桜の木の下にござを敷き、うつ伏せで頬杖をついて寝転がる髪の長い少年を描いた作品です。少年と言っても白い肌で女性のような色気があるかな。鮮やかな緑の色面のござや隣に置かれた赤い衣など 大和絵的な色合いが鮮やかで、華やかな雰囲気がありつつ幻想的な光景に観えました。

古径は数点あり、前田青邨の作品などもありました。

吉岡堅二 「群鶏」
非常に前衛的なタッチで描かれた5羽の鶏の図です。胴を白と黒の長い三角形を並べて描いていて、強烈な縞模様をしています。どうやら西洋絵画のキュビスムの手法を取り入れているようで、日本画とも西洋画とも言えないような斬新さがありました。
隣には岩橋英遠の抽象画のような作品もありました。歴程美術協会に関連する作家のコーナーなのかな?
 参考記事:「日本画」の前衛 1938-1949 (東京国立近代美術館)

最後の部屋は再び洋画のコーナーで、まずは肖像画が並んでいました。

野間仁根 「自画像」
帽子をかぶった自画像で、鼻が長く目の中が黒くなっていて、モディリアーニや新古典主義の頃のピカソを彷彿とするかな。陰影が濃く、ちょっとシュールな感じも受けます。(むしろ埴輪のような気も…) インパクトがあって面白い自画像でした。

駒井哲郎 「自画像」
版画家として有名な駒井哲郎の自画像です。暗い背景に溶けこむような黒い服の男性の顔が、対角線上に伸びるような感じで描かれています。やけにひょろ長く頭が大きく見え、顔は青白いので、見ていて不安になってきましたw 何か悩みでもあったのでしょうか… これも目を引く自画像でした。

この辺には萬鉄五郎の自画像もありました。その後の萬鉄五郎の作風とはちょっと違って見えるかな。また、中村研一の作品も3点ほどありました。

佐伯祐三 「自画像」 ★こちらで観られます
佐伯祐三の東京美術学校を卒業した頃の自画像です。赤茶色の髪に口髭をたくわえチラッとこちらを見ていて、今の時代の感覚でも結構なイケメンですw その後の佐伯の画風とだいぶ違っていてちょっとルノワール風な穏やかな雰囲気に思えました。 これだけ見ると意志の強い自信家のように見えますが…。
この隣には1年後の自画像もあり、これとはだいぶ画風が変わっていて、セザンヌ風な感じに見えました。(これも晩年の佐伯っぽさはあまり感じない) 卒業が1923年、ヴラマンクに会って酷評されるのが1924年なので、この辺から晩年にかけて一気に画風が変わっていったのが伺える2点でした。

岡鹿之助 「燈台」
丘の上に建つ燈台と、その周りの草原や奥の海と空を描いた作品です。燈台の脇には白い三角の旗がたなびき目を引きます。点描のようなざらついた質感で、アンリ・ルソーのような素朴な雰囲気があるかな。人っ子一人いない画面は静かで、幻想的にすら思えます。そして幾何学的な要素も合わさっているのが面白かったです。

岡鹿之助は自画像もありました。また、近くには牛島憲之の自画像や心象風景のような作品もあります。

小磯良平 「裁縫女」
ミシンに向かって作業する袖なしの服(と言うより下着のような)の女性を描いた作品です。装飾的で長い布を縫っているようで、手先をじっと見ているものの、顔はどこか優しい雰囲気です。また、女性の背景には白い布があり、その辺りが明るく見えるのも面白い構図でした。解説によると、日常を捉える手法は対欧中に観たフェルメールの影響とのことでした。
小磯良平はもう1点ありました。

荻須高徳 「ポスターを貼られた家」
ややうらぶれた雰囲気のパリ?の家を描いた作品です。壁には剥がれかかったポスターや黒ずんだ染みがあり、それが独特の味わいとなっています。仲間の佐伯の作風に似ていて、かなり好みの作品でした。

林武 「椿」
単純化された赤い椿が描かれた作品です。よく観ると大胆に厚塗りされていて、暗めの色彩から重厚な印象を受けます。特に花や左上の辺りに絵の具が盛り上がっているので、ボリューム感があるように思いました。

この辺には藤田嗣治(レオナール・フジタ)の作品も2点ありました。


ということで、今年も楽しむことができました。パンフレットも500円と安いので買ってきました。若干、前回ご紹介した泉屋博古館分館の展示と被っている気がしますので、もし行くのであれば両方行ったほうがより楽しいかもしれません。藝大の名品も観られるので興味のある方は是非どうぞ。


おまけ:
実は毎年この時期この近くで某アパレルのファミリーセールが開催されていて、毎年ちょうど良い感じにハシゴしています。 今年も荷物一杯でこの展示に行ったのですが、ここはクロークがしっかりしているのが嬉しいw


 参照記事:★この記事を参照している記事


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