関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

江戸の判じ絵 ~再び これを判じてごろうじろ~ 【たばこと塩の博物館】

この前の土曜日に、渋谷のたばこと塩の博物館で「江戸の判じ絵 ~再び これを判じてごろうじろ~」を観てきました。

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【展覧名】
 江戸の判じ絵 ~再び これを判じてごろうじろ~

【公式サイト】
 http://www.jti.co.jp/Culture/museum/exhibition/2012/1209sep/index.html

【会場】たばこと塩の博物館
【最寄】渋谷駅


【会期】2012年9月15日(土)~2012年11月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいるというほどでもないですが予想以上に多くのお客さんで賑わっていて、たまに人だかりができている作品もありました。判じ絵はじっくり推理しながら観るので中々進まないようです。

さて、今回の展示は「判じ絵」という 絵を観てそこから推理して答えを導くなぞなぞのような作品をテーマにした内容となっています。判じ絵はもともとは言葉遊びの一種で、近世以降に流行を繰り返し次第に形が整えられていったらしく、音節に分解しバラバラになった音を任意に再結合するなどして 異なる意味の単語を作り出したりします。例えば「象(ぞう)」の絵と「金太郎(きんたろう)」の上半身の絵を合わせて「雑巾(ぞう+きん)」と読むなど駄洒落のような言葉遊びです。

展覧会のタイトルに「再び」とあるのは1999年に同じテーマで展覧会を実施し好評を得ていたそうで、それをきっかけに判じ絵の認知度も上がったそうです。私は以前の展示は観ていませんが、今回の展示だけでも十分楽しめましたので、簡単に会場の雰囲気をご紹介しようと思います。なお、作品リストは無いようでしたのでメモを頼りに書いています。たまに抜け落ちている所もありますがご容赦のほどを…。
 参考記事:
  おもちゃ絵の世界 ~見る・作る・遊ぶ・学ぶ~ (紙の博物館)
  描かれた不思議 トリック&ユーモア展 エッシャー、マグリット、国芳から現代まで (横須賀美術館)


会場に入る前の入口あたりに大きなタッチパネルのタブレットのような機器が2台置かれていました。これは展覧会の中にもある判じ絵をクイズ形式で出題するゲームが入っていて、中々のクオリティでした。これを本格的にアプリにしたら人気出そう…w 中に入ると壁際にぐるりと作品が並び、部屋の中央に展示ケースが置かれている感じです。私はまず時計回りに壁際の作品を観て、それから中央の作品を観ました。

まずは判じ絵の歴史についての解説がありました。判じ絵はいつ頃から存在していたのか不明のようですが、平安後期から連綿と行われていた言葉遊びが応用されていると考えられるようです。近世に至り古典文学と関係の深い高尚な遊びに、様々な俗的要素が加味され、庶民遊戯の要素も加わり やがて判じ絵になっていったようです。最初に元禄期の本などがあり、これは観ても意味がよく分かりませんでした。

その後、1795年の山東京伝が自分の「京屋」の周知用に作成した引札を判じ絵で作らせて大評判となったそうです。また、黄表紙に判じ物が登場し、浮世絵にも応用が見られるようになるなど判じ絵は広がっていきます。これは庶民にも判じ絵を解読できる程度の素養が広がっていたことも示すようでした。

「謎つくし」
これはいくつかの絵が並んだ作品で、その1つには 青い花の上に牛若丸が乗り、後光が差しているという一見奇妙な絵がありました。これは「葵の上」「光る」「源氏」で光源氏葵の上を指すようです。絵は奇妙ですが確かに一定の教養がないとこれは解読が難しいかも…。 かくいう私もこれを観ても判じることはできませんでしたw

解説によると判じ絵にはいくつかパターンがあるようで、
・同音異義語を使った表現。例:子供に服を「着せる」と「キセル」
・鳴き声や音を連想させるもの。
・洒落を使ったもの。例:茶を点てるガマガエル → 茶釜
・音を一部抜いたもの。例:桜(さくら)の中央部分が消された絵 → 皿
・逆さ読みにするもの。例:上下逆さに描かれた猫 → 「こね」
・絵の隣に濁点/半濁音がついているもの。 例:猿の絵の隣に「゛」 → ザル
・擬人化。 例:頭が菜っ葉の人物が尻から屁を出している → 菜屁 → 鍋
などの表現が紹介されていました。これを手がかりに読みといていくことになります。ちゃんと解答や解説もセットになっているのが非常に分かりやすいです。

歌川国貞 「役者判じ物」
頭巾をかぶった役者の絵の上に団扇があり、手綱?、輪、上半分の馬(むま)、上半分の蘭の花、人物の掛け軸(相見)、曽我兄弟の紋(十)、半分の鷺(ろ)が描かれています。これを合わせると沢村宗十郎(さ輪むら 相十ろ)となるそうですが、現代人の私には解答どころかヒントすら読み解くことができませんw かなり難解ですが、無理やりな感じがちょっと面白かったです。
この辺りにはこうした役者の名前の判じ物がありいずれも難解でした。私は海老が描かれていた市川海老蔵だけはかろうじて分かったくらいですw また、もはや象形文字の1種かと思えるほど沢山の絵が並んだ「流行道化拳判じ物」という作品などもありました。
なお、これが出てきたらこう読むというパターンもあるようで、天狗が出たら魔(ま)と読むパターンなどは展覧会を通して何度も見かけました。

この辺りにあった解説によると、こうした判じ絵の流行の背景には天保の改革による出版規制があるようで、歌舞伎や遊女を題材にした作品を規制したことによって、取るに足らないものを画題にした判じ絵へと繋がっていったようでした。

歌川重宣 「いろは四十八字判じ物」
これは井戸、櫓(ろ)、歯、荷物、帆といったものが並び、それぞれを繋げるといろはにほ…となる作品です。たまに描かれているものが昔の読み方だったりしますが、何を意味しているか分かると案外読み解くことができます。特に面白いのは相撲取りが転がっているものが「負け」となっていて、「うゐのおくやま けふこえて」の「まけ」を表している荒業でした。音節を自在に扱っていてユーモアも感じられました。

「見立十二支」
これは作者を忘れましたが十二支を表すものが描かれた作品で、「む」の字を持ち上げる天狗(魔)でむま=馬や、10個の「ら」の字が並んで虎といった感じでシュールですw こうした物尽しの作品では右上にそれが何の判じ絵か分かるようにそれに関連したものが描かれるそうで、この場合は十二支の盤が描かれていました。解くのも難しいですが、発想がぶっ飛んでる絵が多くて面白いです。

歌川重宣 「江戸名所判じ絵」
これは江戸の町を表すものが描かれた作品で、赤い羽根で赤羽とかは結構簡単に分かりましたが、城から小判を撒いている様子が白金だったりするのは中々難しくて、シロガネーゼもびっくりの金持ちぶりですw 他にも頭が「あ」の擬人が「さ」と書かれた屁をしているシュールな絵があり、これは「あ」がした「さ」の屁が「くさい」で浅草と読むようでした。無理やりすぎで他に無かったのかとツッコミを入れたくなること請け合いですw ちなみに浅草は他の作品でも朝比奈三郎が屁で臭いとか、屁の臭さとワンセットにされていました。なんだか浅草が不憫です。

「東海道五十三次判じ物」
これは東海道五十三次を判じ物にしたもので、今回のポスターにもなっている絵も描かれています。歯と上下逆さになった猫で「箱根」だったり、尻に絵を貼って江尻、戸に刀の柄が刺さっている戸塚などは判別できました。こちらもユーモアセンスのある作品でした。

この近くには国尽くしなどもありました。どうも「へ」が来ると屁をしていることが多いようで、こんなに放屁をしている人の絵を一気に見たのは初めてですw

歌川重宣 「勝手道具判じ物」 ★こちらで観られます
これは先程に例として挙げた茶とガマ→茶釜や、象と上半分の金太郎→雑巾、中央が消えた桜→皿、猿に「゛」→ザル などが描かれた作品です。いずれも台所用品を描いた判じ物らしく、他には田んぼにいる鷲→タワシ といったものもありました。判じ絵のルールが一挙に見られるので、読み解きの練習になりそうな作品でした。

歌川重宣 「青物づくし判じ物」
これは野菜を判じる作品で、現在と同じ名前の野菜が多いので比較的容易に読み解くことができるようです。 塔に息を吹いている様子→フキノトウ、碁盤に棒を突き立てる様子→ゴボウ、木を売っている→キュウリ、台の上の狐→台と鳴き声のコンで大根、妊娠中の女性に「゛」→人参 など、確かに他に比べると読みやすいかな? 読み解くには柔らかい思考と根気が必要に感じましたが面白かったです。

この隣には果物の判じ絵がありました。鈴が5つで林檎(リンという音が5個)はすぐに分かって嬉しいw また、その先には魚の判じ物があり、戸に錠が掛かって「゛」が付いてドジョウ、足に「゛」でアジなどは何とか判じることができました。答えを観るとなるほどと思うのですが、なかなか難しいです。

さらに先には呉服の判じ物もあったのですが。これはそもそもの単語を知らないので無理でした。同様に武者、力士、流行物、浄瑠璃、狂言、噺家などの判じ絵は、当時の人物・出来事をよっぽど知らない限り判読は難解で、たまに未判別となっている作品もありました。人物名は先程の役者の名前のように無理矢理な力技が多い気がします。若い牛で牛若くらいしか分からなかった…w

他には草花、虫、獣の判じ物があり、これらは比較的わかりました。頬に王将で鳳凰とか笑えます。

「焼場方角附」
これは安政地震で火災被害に遭った場所を判じ絵にしたもので、ちょっと不謹慎な気もします。多くの瓦版や絵が地震で混乱する中で検閲を受けずに出回ったそうで、これもその1つのようです。子供と石と川→小石川、将棋の駒に肩→駒形、亀と井戸→亀戸といった感じで江戸の各所が描かれ、若干ストレートな感じに思えました。

この辺で壁際は終わりで続いて部屋の中央のガラスケースの中の作品を見ました。江戸の町を判じ絵にした双六のような作品、京都の名所を判じ絵にした作品などがあり、難易度高めです。また、判じ絵で新年の挨拶状を書いたものがあり、絵がずらずらと並んでいて驚きました。
さらに判じ絵は実用にも使われていたようで、字が読めない人向けの判じ絵のお経の本がありました。まるで象形文字のような感じで、これを覚えるならひらがなを覚えた方が早いだろ!とツッコミを入れたくなります。これは東北の南部地方の品のようで、2つくらい並んでいました。


ということで、江戸時代のなぞなぞに挑むような展示で楽しめました。無理やりその単語を表そうとするシュールな絵だったり、屁が頻発するような卑近な図柄が笑いを誘いました。もうすぐ終わってしまいますが、渋谷に行く機会があったら覗いてみると楽しいと思います。しかも入場料は100円と激安です。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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