関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

琳派芸術II 【出光美術館】

先週の日曜日に、有楽町の出光美術館で「琳派芸術II」を観てきました。この展示は前期・後期に期間が分かれていて、この日観たのは前期の内容でした。

P1060569.jpg

【展覧名】
 琳派芸術II

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅


【会期】2012年10月27日(土)~ 12月16日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構入っていましたが、屏風など大きめの作品が多いため、混雑感はなくゆっくり自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は江戸時代の俵屋宗達~尾形光琳に連なる「琳派」の展示です。タイトルにIIと入っているのは、2011年にパートIがあったためで、ちょうど東日本大震災の頃に開催されていたため途中で閉幕となってしまったという経緯があります。この展示ではその時の作品も多く展示されているので仕切りなおしといった感じもしますが、再現展示というわけではなく新しい構成とテーマでリニューアルしたようです。特に酒井抱一に関する作品が多めで、5つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
 参考記事:
  琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)
  琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (出光美術館)
  琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 2回目(出光美術館)
  酒井抱一と江戸琳派の全貌 感想前編(千葉市美術館)
  酒井抱一と江戸琳派の全貌 感想後編(千葉市美術館)


<I. 金と銀の世界>
まずは酒井抱一の作品が並ぶコーナーです。酒井抱一は私淑する(実際に教えを受けたのではなく、手本とすること)尾形光琳を強く意識した作品を制作していて、抱一が描いた風神雷神図屏風や八つ橋図屏風は尾形光琳の代表作に学びながら独自の工夫を加えているようです。また、抱一は伝統から1歩踏み出し新たな表現を試みたらしく、屏風に銀地を用いたのは抱一の創造性を示すそうです。ここにはそうした光琳から学んだものや抱一ならではの銀地の作品が並んでいました。

1 酒井抱一 「風神雷神図屏風」 ★こちらで観られます
超有名な題材の2曲1双の金屏風で、俵屋宗達の作品を模写した尾形光琳の作品をさらに酒井抱一が模写したものです。右に風袋を持つ風神が描かれ、左に円形の太鼓に囲まれた白っぽい肌の雷神が描かれています。色はくっきりしていて、表情はあまり怖くなく、親しみやすい感じです。この作品の隣には宗達と光琳の作品の写真もあり、その違いを観ることが出来ました。宗達の雷神は太鼓の一部が絵の枠外に出る感じで、広い空間を暗示させている一方、光琳の作品ではスッキリと枠に収められ雷神と風神はお互いに目を合わす感じです。そして抱一の作品では雷神をやや上に、風神をやや下に配置させ、恐ろしさや威厳を抑えているそうです。比べてみると確かに配置が違っているのがよく分かります。こうして違いを観ると三者三様で個性が出ていて面白かったです。
 参考記事:本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)

近くには酒井抱一「夏秋草図屏風草稿」がありました。これは光琳の風神雷神図屏風の裏面に描かれていた「夏秋草図屏風」の草稿で、本作に似ていました。

5 酒井抱一 「紅白梅図屏風」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている6曲1双の銀屏風で、右にはジグザグの幹の紅梅が描かれ、左には弧を描くような幹の白梅が描かれています。お互いが向き合って対になるような感じで、銀地のためか落ち着いた雰囲気でどこか神秘的な感じに観えました。特に白梅は優美な印象を受けます。 解説によると、顔料付着の劣化具合などから元は裏絵だったのではないかと考えられるとのことでした。

この近くには八曲一双で両面に絵が描かれた小さな屏風「四季花鳥図屏風(裏・波濤図屏風)」もありました。

7 酒井抱一 「八ツ橋図屏風」
6曲1双の金地の屏風で、8枚の板で出来た橋とその周りに沢山の杜若(燕子花 かきつばた)が咲いている様子を描いた作品です。橋の上は茶色や緑の滲みを使った「たらしこみ」の技法で表現され渋い味わいな一方、単純化された杜若は平面的で色が明るめに感じました。これは伊勢物語の東下りが題材なのですが、尾形光琳の同名の作品を元に模写したもので、光琳の作品に比べると杜若の密集具合がすっきりして、色が鮮やかです。解説によると絹の上に金箔を貼り付け、その上から金泥を刷いているらしく、マチエールを駆使して金の輝きをより重厚にしているようです。私は光琳の作品の方が好きですが、こちらもオリジナル要素があって楽しめました。
 参考記事:
  KORIN展 国宝「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」  (根津美術館)
  国宝 燕子花図屏風 2011 (根津美術館)
  国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開 (根津美術館)


<II.草花図の伝統>
続いては草花を描いた作品が並ぶコーナーです。草花図は俵屋宗達以来 琳派の絵師が最も得意とした画題の1つで、ここには抱一をはじめ俵屋宗達の時代からの草花図が並んでいました。

8 酒井抱一 「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、右から1扇ごとに1ヶ月ずつ、1~12月の各月を象徴するような光景が描かれた作品です。いずれも花の色が鮮やかで曲線に優美さを感じ、葉っぱや木の幹などに使われた「「たらしこみ」からは風合いと琳派らしさを感じます。私が好きなのは7月と8月で、7月は大きなヒマワリとそれに絡みつく青い朝顔が描かれていて、生命力を感じさせます。また、8月は大きく浮かぶ月を背景にススキと桔梗が描かれ、ススキには松虫?がとまっていて風流な雰囲気でした。その季節の空気まで伝わってきそうな場面ばかりで好みの作品です。

この近くには9 鈴木其一「秋草図屏風」や俵屋宗達/烏丸光広「西行物語絵巻」などもあり、所々に尾形光琳の兄弟の尾形乾山の皿なども展示されていました。

10 [伊年]印 「四季草花図屏風」
これは「伊年」の印が捺された金屏風で、6曲1双のうち右隻です。伊年というのは俵屋宗達の工房で使われた印章で、寛永年間(1624~44)初期頃からの草花図には宗達の署名が無く、代わりにこの印章が用いられたそうで、輪郭線を引かない没骨法で柔らかく描くという特徴があるそうです。この作品にもその特徴の技法が使われ、画面をこれでもかと赤やピンクの花と葉っぱが覆っています。ちょっとぎっしり詰まりすぎていてやりすぎな感じもしますが、豪華な雰囲気がありました。

12 喜多川相説「四季草花図貼付屏風」
6曲1双のうち左隻で、俵屋宗達、俵屋宗雪の跡を継いで俵屋工房を率いた喜多川相説の作品です。1扇ごとに素地を背景に花々が描かれていて、軽やかで花の美しさが色鮮やかに表現されています。そのすっきりとした背景のためか風流な雰囲気に思いました。解説によると、この頃になると新しい試みがあったようで、金箔の地ではなく紙の素地を採用し、葉茎に水墨の落ち着いた調子を用いて、花びらに明るい色彩を生かしていたそうです。また、抱一もこの技法に影響を受けているらしく、先ほどの「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」でもこうした表現が使われていました。

次の部屋には3章の近くに尾形乾山の小さな角皿がずらりと並んでいました。20客のうち16客展示されているようです。


<III.江戸琳派の先駆者>
続いては酒井抱一以前に江戸で活躍した琳派のコーナーです。抱一以前に江戸で琳派様式を試みた絵師に立林何げい [かげい](18世紀半ば)や俵屋宗理(18世紀半ばから後半)といった絵師がいるそうです。特に俵屋宗理は洒脱で瀟洒な造形性を持ち、抱一が大成する江戸琳派様式の先駆けといえる存在だったようで、葛飾北斎が2代目宗理を名乗ったこともあったように確かな技術を持った腕のたつ絵師だったようです。その事歴などはほとんど不明で謎が多いようですが、俵屋宗理を知ることで抱一のルーツの一端が明らかになるそうで、ここには俵屋宗理と立林何げいの作品が並んでいました。

20 俵屋宗理 「柿図扇面」 ★こちらで観られます
扇に3つの赤い柿が描かれた作品です。その枝は大きく湾曲していて、葉っぱにはたらしこみの技法が使われています。柿は細長く、熟れた色合いにどこか温かみを感じました。解説によると、後に抱一も柿をテーマにした作品を積極的に描きましたが、そもそもは何げいや宗理が柿を主題に描くようになったそうです。確かにルーツの1つなのかもしれません。

25 立林何げい 「玉蜀黍に朝顔図」
立林何げいは尾形乾山の弟子で、乾山譲りのおおらかで素朴な画風の絵師です。これは掛け軸で、斜めに伸びるトウモロコシとその周りに咲く朝顔が描かれていて、輪郭線を用いない没骨法やたらしこみが使われているなど琳派らしい雰囲気があります。葉っぱが伸びやかな雰囲気で好みの作品でした。

この先には抱一が琳派の画風で描き始めた頃の「燕子花図屏風」もありました。


<IV. 俳諧・機知・闇>
続いては俳諧や機知性に富む題材、暗闇の表現に関するコーナーです。新興都市だった江戸では進取の気性を好む美意識が形成されたようで、ここに芽生えた琳派の絵画も新奇な画題や意表をつく趣向を積極的に取り入れた傾向が見られるそうです。俳諧性や機知性、闇を照らす繊細な光の表現に傾倒する画題も多いらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。

31 酒井抱一 「月夜楓図」 ★こちらで観られます
大きな月を背景に手前に楓が描かれた作品で、普通なら赤く紅葉しているところを描くと思うのですが、これは墨の濃淡のみで表現されています。しかし、葉っぱの色が繊細に描き分けられていて、夜の闇でも葉が色づいている具合が伺えるようでした。

この近くには抱一の「糸桜・萩図」もありました。これには画中の短冊に抱一自身の俳句が書かれています。

32 鈴木其一 「暁桜・夜桜図」
これは2幅対の掛け軸で、右幅は朝日を浴びる桜が柔らかい色彩で描かれ、もやがたちこめている感じがでています。一方、左幅は夜霧が漂う中で月光に照らされた桜が墨の濃淡で描かれ、幻想的な雰囲気です。同じ桜を題材にした両幅ですが、非常に対照的で受ける印象が全く違うのが面白かったです。


<V. 抱一門下の逸材>
最後は抱一の弟子のコーナーです。抱一の門下には数多くの弟子が育ったようですが、中でも逸材として知られるのは鈴木其一で、18歳で内弟子となり明快な色彩と構図、機知的な趣向が特徴となっているようです。ここには鈴木其一の作品が並んでいました。

38 鈴木其一 「藤花図」
しなだれる青い藤の花を描いた作品で、蔓や葉っぱは水墨のように黒の濃淡で描かれ、うねうねした感じです。画面には黒く変色してしまった細かい銀砂子が散らされていて、当時は今以上に神秘的な雰囲気だったのではないかと伺わせました。

43 鈴木其一 「四季花木図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の小さめの屏風で、右隻には梅、牡丹、たんぽぽ、杜若などが描かれ春夏の草花となっています。一方、左隻は楓、白菊、桔梗など秋冬の草花が描かれていました。この絵の画風にはちょっと中国風なニュアンスがあるように感じられ、抱一ともまた違った雰囲気があるように思います。うねりをみせる木や茎がちょっと異様な生命感を感じさせました。


ということで、以前の内容と似た部分もありながら別物となっていました。作品の良さもさることながら、抱一を中心としてその前後の流れを観られたのも琳派好きとしては嬉しいところです。後期には入れ替えがあるようなので、可能であれば後期も観に行こうかと考えています。

 参照記事:★この記事を参照している記事


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