関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

チョコレート展 (感想後編)【国立科学博物館】

今日は前回の記事に引き続き、国立科学博物館の「チョコレート展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 チョコレート展

【公式サイト】
 http://event.yomiuri.co.jp/chocolate/index.html
 http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2012/choco/index.html

【会場】国立科学博物館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】
 2012年11月3日(土・祝)~2013年2月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編ではカカオについてとチョコレートの歴史についてご紹介しましたが、後半はチョコレートが出来るまでと、チョコレートをよく知るためのコーナーです。

<チョコレートができるまで>
この章はチョコレートの製造工程を体験できるコーナーで、まるで自分がカカオ豆になったように工場の中を進むという趣向となっていました。

まずはカカオを作る道具類が並んでいました。映像でカカオの収穫の様子も流しています。
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カカオは年に2回取れるそうで、収穫が多く良質なカカオが取れる時期をメインクロップ、収穫が落ち小ぶりな時期をミッドクロップと呼ぶようです。

収穫されたカカオは実を割り、果肉ごと取り出して1週間ほど発酵されます。この発酵の善し悪しがチョコレートの風味を決定するらしく、バナナの葉で包むような方法と木の箱に入れてバナナの葉で覆う方法があるようです。発酵してくるとアルコールに分解され、お酒のような良い香りになるそうです。さらにそのアルコールを栄養源とする酢酸菌が働きだすと、50度以上も熱を発することもあるのだとか。

発酵が終わると今度は輸出中にカビが生えないよう、1週間ほど乾燥させるのですが、天候が変りやすい熱帯地域では中々大変なようで、シートをかけたり機械で乾燥させることもあるそうです。しかし天日で乾燥させるのが一番だそうです。

こうして生産されたカカオは買い付け業者によって等級をつけられ出荷されます。多くのカカオ農家の収入はカカオに依存しているため、病気や天候不順で打撃を受けやすいようです。そのため、品種改良を行ったり、ナッツやコショウなどを混植させて収入の安定化を図る取り組みも進められているとのことでした。
ちなみに世界で最もカカオを輸出している国はコートジボワールの1,079,273トン(※)で、ついでガーナ、インドネシアと続きます。一方、最も輸入しているのはオランダで、805,516トン(※)も輸入したようです。日本は47,818トンなので、オランダは桁違いに輸入していることが分かります。(というか意外と日本は少ない) また、日本は輸出世界一のコートジボワールからの輸入は少なくて、ほとんどガーナに依存しているようでした。
 ※いずれも2010年/10月~2011年/9月の1年間

この先は工場を再現したようなコーナーになっています。
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まずカカオが工場に着くと豆と異物をより分ける工程を行い、その次に「風選(ふうせん ウィノーイング)という風で実と皮を分ける工程となります。ここには実際に風が出てくるセットと映像があり、風圧で皮を飛ばす様子が説明されていました。

そしてその次が「焙炒(ばいしょう ロースティング)」という工程で、こんな感じで再現されています。
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これはカカオニブの5~6%の水分を120~160度の熱風で炒る作業で、1~2%に減らすそうです。これによって殺菌も行っているようです。

この後、磨砕(まさい グライディング)という工程があり、ロールで脂肪分をすり潰します。これによってココアバターの中にカカオ粒子が分散しているようなドロドロの状態になるそうです。ここではローラーに挟まれる体験ができ、実際の機械も展示されていました。

ここからココアとチョコレートの工程が2つに分かれるのですが、まずはカカオの工程。ココアはチョコレートと同じくカカオ豆から出来ているのですが、カカオマスは脂肪分が多すぎて飲みやすくないため、「バタープレス」という機械で「圧搾(プレッシング)」を行います。これによって円盤状のかたまりのココアケーキと脂肪のココアバターに分けられるようです。ここには大きなボタンを押すとココアケーキが出てくる様子が映される体験機がありました。

これがココアケーキ。これをさらに粉砕し、冷却するとココアの粉末(ココアパウダー)になります。
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なお、前編でご紹介したオランダのバンホーテンはカカオマスに炭酸カリウムなどのアルカリ塩を加えるとまろやかで飲みやすくなるのを発見し、ぞれは今でもココアを作る際に行われているようです。
このココアケーキはココアになりますが、先ほどの圧搾で出来たもう一方のココアバターはこの後のチョコレート製造の原料として使われます。


続いてはチョコレートの製造工程です。摩砕(グライディング)の工程の後、カカオマス、砂糖、ココア・バター、乳製品、バニラと共に混ぜ合わせる「混合(ミキシング)」という工程に入ります。チョコレートの種類や用途によって混ぜるものや豆のフレンドが変わるそうで、味に大きく影響する工程のようです。

混合された生地はまだざらつきがあるらしく、続いて「微粒化(リファイニング)」という滑らかにするための工程に進みます。ロールにかけると0.01~0.3ミリの大きさに調整できるようですが、この粒の大きさは国によって好みが異なるようで、日本では欧米よりも細かいものが好まれるそうです。

続いては「精錬(コンチング)」という香りと風味を出す工程です。微粒化されたチョコレートはまだバサバサしているのですが、この工程で粘り気が出てくるようです。練っているうちに熱も出てペースト状になり、そこにココアバターを加えて更に混ぜ合わせると滑らかなチョコレートになるそうです。映像でその様子を流していたのですが、最初は固体だったものがトロトロになって行く様子がよく分かりました。このコンチングの温度と時間はメーカーによって異なるらしく、溶けた時に滑らかな口当たりになるために重要な工程のようでした。

これは展示され稼働していたコンチングの機械。もうトロトロになっていました。この機械の近くにいくとチョコレートの匂いがしましたw
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これはコンチングの工程が発明された当時のコンチェ(コンチングの機械)に近い動きをするとのことでした。

続いては「調温(テンパリング)」という工程です。温度を調整してココアバターを安定した結晶にするための工程のようで、これによってパリっとした食感や口どけ、指で触っても溶けなくなる 等の効果が出るようです。しかしココアバターは気まぐれな性質で、融点が異なる6種類もの結晶があるそうで、その中でも「Ⅴ型」という融点が33度の安定した結晶にする必要があります。

これはそのテンパリングを体験する機械。50度→25度→30度という3つのゾーンに分かれていて、中はちょっとずつ温度が違っていました。
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温度が3つに分かれているのは、Ⅴ型の結晶を作るためで、まず50度前後に加熱してすべての結晶を溶かし、続いて25~26度に冷却して融点が27度のⅣ型の結晶にします。そして最後に30~31度にあげてⅣ型より融点の高い(Ⅵ型よりは融点が低い)結晶を作るとのことでした。温度を上げて下げて上げるという複雑な温度調整で手間がかかりますw

チョコレートが出来ると、最後は型に入れる「充填」を行い「冷却」し、「型抜き」をして「検査・包装」されます。
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そしてようやく完成! ここまで一体どれだけの工程があったのか…。チョコレートってめちゃくちゃデリケートで手が掛かる食べ物なんですね。


<チョコレート・プロムナード~チョコレートをもっと知ろう>
続いてはチョコレートについてよく知るためのコーナーです。

通路にこのような機械が3つありました。これは前に立つと円形の部分に自分の顔が映る仕掛けです。
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私も自分の顔を映して記念撮影しましたが、掲載は自重しておきますw 展示の後にあるショップでは自分の顔を写したパッケージを実際に作るサービス(有料)もありました。これは面白いお土産になりそうです。

少し進むと古くなって白く変色しているチョコレートが展示されていました。これは「ブルーム」という現象で、食べても害はないようですが口当たりや風味は失われているそうです。これにはいくつか原因があるのですが、一度溶けたのを冷やしすことで起きる「ファットブルーム」や、水滴がついてそこに砂糖が溶け 水分が蒸発して砂糖が残る「シュガーブルーム」などが紹介されていました。
ちなみにチョコレートの口どけの良さはココアバターの融点にあるようで、人肌くらいの35度になると完全に液体となるようです。これだけ人間の体温に近い温度で溶ける天然の脂質は他にないそうですが、パーム油やシアバターを代用脂として使うことも許可されているようです。この代用脂で融点を変え、日本では高温多湿の夏は高めの融点、低温乾燥の冬は低い融点に調整しているとのことでした。

さらにカカオと健康についての説明もあり、フラボノイドという抗酸化能力が高いポリフェノールや、テオブロミンという高血圧予防剤・血管拡張剤・利尿剤にも使われる成分などが紹介されていました。活性酸素を消去したり悪玉コレステロールの酸化を抑制するので動脈硬化の予防や血圧降下が期待できるようです。また、ココアも脳の老化や脳卒中、認知症のような疾患に良い影響がある可能性があるのだとか。意外な効果があるんですね。

続いては欧米のチョコレートのヴィンテージコレクションのコーナー。20世紀前半に欧米で発売されたケースが展示されていました。
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ちょっとレトロなデザインがなんとも良い感じ。他にもポスターなど時代を感じさせるものが並んでいます。

続いてはチョコレートの種類のコーナー。上から順にビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートです。
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ビターはカカオマスが40%以上だそうで、乳製品がほとんど入っていないので苦味があるのが特徴です。恐らく一番よく食べられているのはミルクチョコレートで、これには乳製品が使われています。最後のホワイトチョコレートはカカオマスを使っていないのですが、砂糖や乳製品とともにココアバターが使われているのでれっきとしたチョコレートの仲間です。

この隣にはチョコレート菓子のコーナーもありました。チョコレートの重量が20~60%を占めるものをチョコレート菓子と呼ぶそうで、ナッツを入れたものやビスケットを使ったもの、キャンディーや砂糖で包んだもの(M&Mに見えた)、ウエハースで挟んだものが展示されていました。ウエハースで挟んだものがビックリマンチョコに見えて仕方ないw

その後は「ショコラティエ」というチョコレートを使ったお菓子を作る職人のコーナーでした。まるで宝石のようなチョコレートが並んでいます。
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映像で作っている様子を流していましたが、予想以上に手間がかかる工程を鮮やかな手さばきで迅速に作っていました。沢山の種類と特徴があるようでとても覚えきれませんw

出口付近には「ピエスモンテ」という飴細工を積み上げて作る装飾菓子が展示されていました。これはチョコレートで作ったパンダ(トントン)のピエスモンテ。
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毛並みまで再現されていて食べるのがもったいないw

こちらはシーラカンスのピエスモンテ。何故こんなグロいのを作ったw
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他にも忠犬ハチ公やトリケラトプス、ティラノサウルスなども展示されていました。いずれも精巧にできていて、ショコラティエたちの技量に驚かされました。


<チョコレートの未来>
最後はチョコレートの未来についてで、ここは解説ボードのみでした。ここまで観てきた通り、チョコレートの原料はカカオですが、いまカカオの産地である熱帯雨林は失われつつあるそうで、カカオの生産を拡大すれば森林の減少にも繋がりかねないそうです。また、カカオ農家の貧困の問題もあるそうで、これに対して「世界カカオ財団」などは栽培や加工の指導を行ったり熱帯雨林の生態系保護に努めているそうです。
一方、遺伝子工学の革新によってチョコレートの品種改良もはじまっていて、ポリフェノールの健康効果を追求することに関心が高まっているようです。そして、これからもずっとチョコレートを楽しむためには持続可能なチョコレート作りを進めることが大切であると締めくくっていました。

グッズショップの部屋に行く途中の廊下にはチョコレートの豆知識がありました。「チョコレートを食べると太る」…とは限らないという話や、「チョコレートを食べると鼻血が出る」…わけではないという話が紹介されています。

そしてグッズ発売では自分の顔のパッケージを作るコーナーの他に、ブランドチョコレートなども販売していて大盛況となっていました。ここは満員電車なみの混雑ですw 会計もあまりに長い列だったので私は諦めました。


ということで、チョコレートの魅力を詰め込んだような展示でした。チョコレート大好きな私も知らなかったことが多かったので、非常に参考になりました。体験型の展示は分かりやすく記憶にも残ると思います。既に人気の展示ですが今後はさらに混みそうですので、これから行く方は早めに行った方が良さそうです(展覧会は会期末になると混む傾向があります。) チョコレート好きの方にお勧めの展示でした。


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