関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描 【国立西洋美術館】

先日の土曜日に上野の国立西洋美術館で「手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描」を観てきました。

P1070674.jpg

【展覧名】
 手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/rodin2012.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年11月3日(土・祝)~2013年1月27日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
それほどお客さんも多いわけではなく快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は誰もが知っている大彫刻家オーギュスト・ロダンとその弟子エミール=アントワーヌ・ブールデルについての展示です。この2人はいずれも近代を代表する彫刻家だけにしっかりと押さえておきたいと常々思っていましたが、今回は国立西洋美術館が誇るコレクションを中心に、テーマや制作当初のエピソードを交えながら紹介するという内容となっていました。しかも今回の展示は常設作品が多いためかルールを守れば撮影可能となっていましたので、いくつか撮ってきた写真と共に各章ごとに気に入った作品と共にご紹介できればと思います。


<第1章 古代やルネサンス彫刻の探求と成果>
まずは古代やルネサンス彫刻からの影響についてのコーナーです。19世紀後半のフランスでは彫刻家として成功するためには古代彫刻を範とし、アカデミーに従った作品を作ることが必要とされていたそうですが、ロダンは国立美術学校の受験に失敗し進学を断念していたそうです。しかし、ルーヴル美術館やイタリア旅行で触れたルネサンス/バロック期の彫刻から学び取ろうとしたそうで、ロダンは初めての3ヶ月のイタリア旅行の後にミケランジェロに影響を受けたポーズや筋肉表現の作品を生んだそうです。
一方、後にロダンの弟子になるブールデルは国立美術学校入学のコンクールで2等を取るなど優秀な成績を収めたようですが、アカデミーのシステムを嫌って飛び出したそうです。そんなブールデルも美術学校時代には古代やルネサンスの彫刻を繰り返し素描にしているようで、ロダンほど直接的に自分の作品に取り入れたわけではないようですが、そこから得た均衡の取れた構成が彫刻家としての出発点となっているそうです。ここにはそうした古代からの影響が見て取れる作品が並んでいました。

オーギュスト・ロダン 「青銅時代」
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こちらはイタリア旅行から帰ってすぐに作られたものらしく、腰をひねる様子は古代からの伝統的なポーズだそうです。私には苦悩の表情とポーズのように見えたのですが、以前は「敗北者」と題されたこともあったそうです。しかしロダンは人間の起源を表す「青銅時代」と名付け普遍的な意味を持たせたのだとか。

オーギュスト・ロダン 「説教する洗礼者ヨハネ」
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これは筋肉ムキムキで手足が非常に長く見えるのですが、腕の位置などは解剖学的には正確ではないそうです。しかし威厳に満ちていて話しけてくるような雰囲気でした。解説によると、これはイタリアの農夫がモデルなのだとか。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「瀕死のケンタウロス」
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首が異常に折れ曲がった半人半馬のケンタウロスの像です。結構無理矢理なポーズだと思ったのですが、これはパリのシャンゼリゼ劇場のフレスコ画を立体にしたもののようで、正方形に収まるように作られているとのことでした。この苦悶の表情が真に迫っています。

この辺には西洋美術館の入口にある「弓をひくヘラクレス」の習作もありました。


<第2章 肖像・頭部彫刻>
続いては肖像と頭部像のコーナーです。身近なモデルの協力を得やすいことから、彫刻家の出発点が肖像というのは珍しくないそうで、ロダンとブールデルも数多くの肖像作品を残しているようです。ロダンは肖像・頭部像に多様性を見出しモデルの内面を表す作品を残したそうで、ブールデルはロダンの肖像を通じてモデルをそのまま写しとるのではなく、誇張し翻訳することで写実以上の真実を得ることができると理解していたそうです。
また、ブールデルは初期には出身地の名士の肖像で生活を助けられていたそうで、その後も評価の高い作品を産み出し、晩年にはアトリエで放置され半分崩れかかった状態の像を利用するなど偶然を取り入れた技法の作品も作ったそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

オーギュスト・ロダン 「アンリ・ロシュフォールの胸像」
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この人は政治家でジャーナリストでもあった人物で、ロダンとも交流があった人です。髪型やおでこが大きく胸の辺りが荒々しい感じで、厳格そうな雰囲気がありました。解説によると、この作品は一度発表された後に手直しされたらしく、こちらは手直し後のバージョンだそうです。手直し前より前頭部が強調されて知的な表情となっているのだとか。

この辺には画家のシャヴァンヌの胸像などもありました。

オーギュスト・ロダン 「ヴィクトル・ユゴー」
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こちらは「レ・ミゼラブル(ああ無情)」などで有名な小説家の胸像です。ちょっと気難しそうな顔に見えるかなw ユゴーはロダンより前にも胸像のモデルとなったことがあったそうで、長時間のポーズを嫌い制作に際しては特別にポーズを取らないことを条件にOKしたそうです。

オーギュスト・ロダン 「花子の頭部」
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いかにも日本人っぽい顔をしている日本人女性の頭部像です。このモデルは太田ひさという女優だそうで、マルセイユの劇場でロダンの目にとまったそうです。若干怖い顔をしているのは演じた役に応じたためのようです。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「首のあるアポロンの頭部」
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こちらが半分崩れかかっていた像を使って作られた作品。私には風化した遺跡の像みたいに見えました。師のロダンもこうした技法を用いていたそうですが、面白い発想です。


<第3章 人体の動勢表現>
ロダンの代表作「地獄の門」は注文変更によって死ぬまで石膏像のままアトリエに置かれたそうですが、その制作に際して様々な派生作品を生んだらしく、身体を大きく動かす像など人体表現の実験の場となったそうです。一方、ブールデルはロダンの身近でその仕事を観ていたひとりで、ロダンから直接影響を受けた作品を残していますが、後に均衡のとれた構成や様式の統一性へと向かったそうです。ロダンは「粘土をこねて形成する人」であり、断片から全体を作りあげていく彫刻家であるのに対して、ブールデルは「建築家」で、全体の構造から細部を決めていく彫刻家だったそうで、こちらにはその違いを感じさせる作品が並んでいました。


オーギュスト・ロダン 「永遠の青春」
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男女の劇的な愛のシーンを表現したこの作品は、当初は「地獄の門」に組み込まれる予定だったそうです。(恐らく絶望とかけ離れているので組み込まれなかったのかな?) のけぞり手を伸ばす姿勢は躍動感があり、動きを感じさせました。

オーギュスト・ロダン 「私は美しい」
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こちらは「地獄の門」に登場する「おちる男」と「うずくまる女」を組み合わせた作品です。近くに「うずくまる女」も単体で展示されていたのですが、こうして組み合わさると完全に違う作品に見えました。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「絶望の手」
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こちらはロダンからの影響が伺える作品。手だけなのに言い知れぬ絶望感が伝わってきます。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「横たわるセレネ」
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こちらは観たことが無かったのですが、こちらの美術館では半世紀ぶりの公開となるそうです。これまでの劇的な雰囲気から一転して優美で流麗な雰囲気があるように思えました。解説によるとこれは友人の奥さんをモデルにしているのだとか。


<第5章 素描と版画>
続いては素描と版画についてのコーナーです。(4章より5章が先)ロダン美術館には8000点、ブールデル美術館には7000点の素描が残されているそうで、ブールデルは教え子たちに彫刻家であることと同時に素描家であることが必須であると指導していたほどだったそうです。また、ブールデルはロダンの素描について、「修正や後悔、躊躇の跡がほとんど無い。ここでは精神が完全に理解した時にしか手は動き始めることはない。時には手は思考が開かれたと同時に動き始めるのだ」と語っていたそうです。
また、銅版画についてはロダンはイギリス旅行の際にアルフォンス・ルグロから学んだそうで、数は少ないようですが版画家ロダンの技量を物語っているとのことで、ここにはそうした作品が並んでいました。

オーギュスト・ロダン 「ヴィクトル・ユゴー」
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先ほど彫刻でも出てきたユゴー。彫刻制作の際に素描を重ねたとのことだったので、これもその1つかな?(さっきの彫刻の1年前の作品) 意外と簡潔な部分もありますが、よく雰囲気が伝わってきて、多面的に描かれているようでした。


<第4章 記念碑制作>
最後は記念碑のコーナーです。19世紀フランスでは街の整備が進められる中で大型の記念碑の注文が盛んに行われていたそうで、ロダンとブールデルも注文を受けて公共彫刻を制作し、社会的な地歩を築いたそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「わが子を捧げる聖母」
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こちらは「アルザスの聖母」とも呼ばれる本作品がアルザス地方にあるそうで、それはなんと6mにも及ぶ大作となっているそうです。幼子イエスのポーズがその後の磔刑を暗示しているような…。これを観た画家のドニは絶賛して、「この聖母はあらゆる時代の宗教美術の傑作である」と言ったとのことでした。

オーギュスト・ロダン 「考える人」
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右のは美術館の庭に展示されているものです。ロダンで一番有名な作品かな? こちらは地獄の門の上に配置されているものの派生作品で、「神曲」「地獄篇」の作者であるダンテを表すものでしたが、後に「詩人」となり、さらに普遍的な「考える人」へとタイトルが変わっていったそうです。考える人は地獄について考えていると思うと、中々意味深です。

この辺には地獄の門の第三構想のマケットもありました。

おまけで外にある彫刻の写真も少々。

オーギュスト・ロダン 「地獄の門」
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これが地獄の門! よく観ると確かに今回の展示にあった像なども組み込まれています。これは今回の展示で観る楽しみが増えました。

オーギュスト・ロダン 「カレーの市民」
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こちらはロダンの初の記念碑彫刻で、カレーでイギリスの攻撃から街を守った6人の英雄を主題としています。依頼したカレー市は英雄の1人を際立たせたかったようですが、6人全員が等しい高さで、しかも悩んでいるような感じで英雄とは程遠い出来栄えとなっています。台座などでも発注者と意見が合わずに設置に12年もかかったそうですが、私はこの作品はかなり好きです。

ということで、普段よく見ている作品も多かったですが、制作背景なども知ることが出来て非常に参考になりました。この他にも素晴らしい作品は多く、2人の違いも分かりやすく紹介されているので、彫刻好きの方にお勧めの展示です。


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