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書聖 王羲之 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

先週の土曜日に、上野の東京国立博物館 平成館で、日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」

【公式サイト】
 http://o-gishi.jp/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1569

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2013年1月22日(火)~3月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
入場規制はなかったものの、非常に混んでいて自分のペースで見るのは困難でした。特に最初の方はガラスケースの前にずっと人だかりができていて、全然前に進めない感じです。(おかげで最後の方は閉館時間が近づいて早足で見るハメになりましたw) これからお出かけされる方は、時間に十分な余裕を持って行くことをお勧めします。

さて、今回は書聖とも讃えられる歴史的な能書である王羲之(おうぎし)についての展示となっています。王羲之(303年~361年?異説あり)は貴族の息子として生まれ、中国3世紀の東晋時代に活躍した人物で、従来の書法を飛躍的に高め芸術へと昇華させました。生前から高い評価を得ていたそうで、王羲之の書は歴代の皇帝にも愛されたようです。特に、唐の太宗皇帝は全国に散在する王羲之の書を収集し、宮中に秘蔵すると共に精巧な複製を作らせ家臣に下賜したほどだったそうです。しかし王羲之の最高傑作の蘭亭序は太宗皇帝の陵墓に副葬され、その他の真筆も戦乱などで失われてしまったらしく、現在では真筆は1つも残っていないようです。その為、現在では唐の宮廷で作られた精巧な複製が王羲之の字姿を類推する上で最も信頼おける資料となっているらしく、今回の展示ではそうした模本や拓本が並んでいました。(模本や拓本も貴重) 展示は前半が王羲之についてのコーナーで、後半は王羲之の後世への影響といった感じで分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。


<序章 王羲之の資料>
まず最初に王羲之の資料のコーナーがありました。書聖と崇められる王羲之が活躍した頃は草書、行書、楷書など新しい書体が変遷し、精良な文房諸具が出現し始めた頃だったそうで、書体はまだその字姿を変える余地が十分に残されていたそうです。前述したように現在は真筆が残っておらず、伝わっているのは唐時代の精巧な模本と、宋時代の拓本(法帖)などで、ここには王羲之の逸話を描いた最古の写本や晩年の手紙の拓本が並んでいました。

2 「世説新書巻第六残巻-規箴・捷悟-」
こちらは王羲之の逸話が書かれた作品です。王羲之が死んだ友人の悪口を言っているのをたしなめられたというエピソードが書かれているそうで、意外と器が小さい人物なのかも…w この先にはもっと駄目なエピソードもあるので、今思えばこの程度の話は軽いジャブみたいなものでしたw

1 王羲之 「十七帖-上野本-」
こちらは晩年の手紙29通を収めた拓本です。流麗な文字が並んでいるのですが、その中に平仮名の「や」「は」「ち」「ゐ」などに見える文字があるのがちょっと驚きでした。ちなみに拓本は文字を木や石に刻し、その上に紙を乗せ墨で文字を写したものだそうで、模本に比べて拓本は大量に制作することができたようです。しかし、拓本は翻刻を重ねるごとに本来の字姿からは遠ざかっていったのだとか。


<第1章 王羲之の書の実像>
続いての1章は王羲之以前の書体の変遷や、王羲之の唐時代の模本、宋時代の拓本などが並ぶコーナーです。篆書(てんしょ)は紀元前3世紀、隷書(れいしょ)は紀元前2世紀に公式の書体として完成したそうで、さらに早く書くために草書や行書が派生したそうです。やがて後漢時代の頃には流麗な草書も出現して、人々は美しい草書に没頭していき、だんだんと凝ったものになり、早く書くためのものだったはずが「忙しくて草書を書く暇がない」と言った人まで現れるようになるなど、草書を上手く書こうと時間をかけていたようです。この章はそうした書体の変遷から紹介されていました。

9 「急就章?」
結構曲線の多い字体で書かれたもので、これは前漢時代に作られた文字学習の教科書の冒頭部分が刻まれているようです。隷書や草書、行書の発展過程を示しているとのことでした。

この近くには石碑に刻まれた文字の拓本などもありました。そしてその後は王羲之の学んだ書についてのコーナーです。王羲之は若い頃に多くの能書を排出した衛夫人と叔父の王よく に書の手ほどきを受けたそうで、古典は三国時代の魏の鍾よう の楷書と後漢時代の張芝の草書を学んだそうです。王羲之は「張芝には敵わないが、張芝と同じくらい猛練習すれば遅れは取らない」と言っていたそうで、ここにはその張芝と鍾ようの作品も並んでいました。

14 張芝 「八月帖(玉煙堂帖)」
黒い紙に黄色で書かれた作品で、何が書いてあるかは読めませんが流麗な文字となっています。これは確かに素人目にも美しく感じられて、王羲之が褒めるだけのことはありました。

この隣には鍾ようの作品もありました。王羲之は鍾ようの楷書には比肩しうると言っていたそうです。また、少し先には叔父の王よく の作品や同時代の他の能書の肉筆資料なども並んでいました。

その後は王羲之の楷書についての小コーナーです。王羲之の書で残っているものの多くは日常の些細なことを書いた草行書で、楷書は少ないそうです。また、王羲之の書は40代の頃に大いに進歩したと考えられるそうで、格段に進歩を遂げたのは49歳の頃とのことでした。

19 王羲之 「心太平本黄庭経-宇野本-」
こちらは養生法を書いた道家の教典です。きっちりとしてスッキリした字体で細かく書かれ、読みやすい綺麗な字が並んでいます。この後に出てくる草書や行書と比べると優等生的な雰囲気がありました。

続いては王羲之の草書・行書の小コーナーです。

24 王羲之 「十七帖-王文治本-」
29通の手紙が納められた作品で、「十七日先書」で始まることから十七帖と呼ばれるそうです。中身は友人や親類の消息、薬の効能、贈り物のお礼など日常の些細なことが書かれているそうで、美しい文字が流れるように並んでいます。こちらも平仮名のように崩された字があり、すらすらっと書かれた感じがしました。
それにしても、この後もプライベートの些細なことを書いた手紙は多いのですが、字が上手いが為に後世までそれを晒される続けるというのはちょっと気の毒かも…w

この近くには子供時代のエピドートがありました。王羲之は人前に出ると言葉がつかえて思うように話せない引っ込み思案な子供だったようです。

26 王著(編) 「淳化閣帖-材官本-」
こちらも王羲之の草書の作品なのですが、その文字の横に楷書の赤字が小さく添えられているのが特徴的です。これは1521年に明の宋昌が読みづらい字に楷書を添えたものだそうで、随所に赤字が添えられています。 …と言うか、ほとんどに赤字が入っているようなw やはり昔の人でも達筆は読みづらいものもあったのかもしれません。

この隣には「死罪」の書き出しで「死罪」で終わる、謎の手紙の 25王著(編)「淳化閣帖-夾雪本-」などもありました。

27 王著(編) 「淳化閣帖-呉廷旧蔵-」
こちらは相手の病気を気遣っている内容の手紙です。やはり文字は美しいのですが、中身の訳が面白く、最後に「私は相変わらず疲れています」と、ネガティブなことが書かれていますw この後に並んでいる作品にも同じようにいつも体調不良を訴えているものが多いので、本当に悪かったのかもしれませんが、ちょっと人間味があって面白く思いました。
他にも、息子の1人がまだ結婚していないとか、そんな内容の手紙が続きます。字が上手いとこんな内容の手紙も崇められてしまうのですねw

32 華夏(編) 「真賞斎帖-火前本-」
こちらは結構大きく太い字で書かれた手紙で、名帖と評されたそうですが、原版は倭寇の乱で消失したそうです。こちらも流麗に書かれていますが、字が太くてダイナミックな印象を受けました。

この隣には睡眠や食事もできないと体調不良の愚痴が書かれた33「二王帖選」などもありました。毎回のように愚痴が書かれていますw また、この辺りには3分半の映像があり、唐時代の職人がどのように王羲之の書を写したかを説明していました。先に細い輪郭を書いて、中を墨で埋めていくようなやり方だったようで、何本もの線を集積して筆の動きや勢いも再現できるようでした。

60 原跡=王羲之 「行穣帖」 ★こちらで観られます
こちらは唐の職人が写した模本で、沢山の朱印が押され、多くの学者や権力者が鑑賞したことを示しているようです。王羲之の字は2行15文字だけで、「貴方は領内の作柄を視察に行かれました。そのうち9人が帰り、貴方の指示を伝えてきました。そのように決めて良いかどうかということですが、概ねそのようにして良いでしょう」という意味のことが書かれているそうです。 …こんな大仰な朱印が押されているので何かの詩かと思ったら、普通の手紙ですねw 結構太い字で書かれているのですが、バランスや流れが独特な感じを受けました。 この書の後には明時代の董其昌や陳継儒、呉廷といった人たちの奥書があり、その感動を書いているとのことでした。

64 原跡=王羲之 「王羲之尺牘 大報帖」 ★こちらで観られます
こちらは世界初公開の新発見の模本で、恐らく唐時代のものと考えられるそうです。文字の太い所と細い所に差があり、強弱を感じます。こちらの手紙にも私は日々疲れていますと書かれていて、このフレーズにも王羲之っぽさを感じてきましたw

この近くには乾隆帝が編纂したコレクションなどもありました。

この部屋の奥の方にはまたエピソードがありました。ある武人が娘の婿探しにと王氏の元に使いをやった際、子息たちはみんな取り澄ましていたそうですが、1人だけ東側の寝台の上に腹を丸出しにして寝そべって食事をしている奴がいたそうです。その報告を受けた武人は何を思ってか、その男を娘の婿にすると言ったそうで、その駄目そうな息子がまさしく王羲之でしたw この故事は「東床担腹」として広く伝わり、今でも中国では娘の婿を意味するそうです。うーん…、知れば知るほど「書聖」のイメージとのギャップが凄くて驚きますが、ちょっと憎めない奴です王羲之。


ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。正直、書はあまり興味がないジャンルなので見ても違いが分かるか不安でしたが、書体の歴史についてのコーナーなどもあり参考になりました。2章にはさらなる目玉作品もありましたので、次回はそれをご紹介していこうと思います。


   → 後編はこちら



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