関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ラファエロ (感想前編)【国立西洋美術館】

前回ご紹介した国立西洋美術館の常設を観る前に、特別展の「ラファエロ」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1090082.jpg


【展覧名】
 ラファエロ

【公式サイト】
 http://raffaello2013.com/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/raffaello2013.html

【会場】ラファエロ
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2013年3月2日(土)~6月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
開催2日目に行ったのですが、既に混雑していてあちこちで人だかりや列を作っていました。私が行った時は入場制限はありませんでしたが、今後はさらに混むと思います。ご興味ある方はお早めにどうぞ。

さて、今回の展示はその名の通りルネサンスの巨匠ラファエロの作品が23点も集まる展覧会で、日本で初のラファエロ展となっています。ルネサンスは苦手な私でもラファエロは別格に大好きなので、この展示を心待ちにしていました。ラファエロは非常に多くの画家たちにインスピレーションを与えた人物ですが、後世の画家で「画家・彫刻家・建築家列伝」を書いたヴァザーリは「ラファエロという人物には、優しさ、勤勉さ、美しさ、謙虚さ、品の良さを通して魂のあらゆる美点が光が輝いている」と評したそうです。展覧会ではその足跡を辿り、後世への影響まで分かる内容となっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 画家への一歩>
まずは生い立ちや影響を受けた画家の作品と共に、ラファエロの初期作品を辿るコーナーです。ラファエロは1483年にウルビーノの画家で詩人のジョヴァンニ・サンティの子として産まれました。父の工房は繁盛していたようですが、8歳の時に母を亡くし、11歳の時には父も亡くなってしまいました。ラファエロの画家としての基礎は父の工房の画家に学んだという説が有力のようですが、諸説あり実際のところはよく分かっていないようです。画家としてのラファエロの名が初めて現れるのは1500年12月10日に制作された祭壇画で、トレンティーノの聖ニコラウス教会の「父なる神、聖母マリア」「天使」を制作した時のようです。これには父の作品に観られるのと同じ技法が用いられている一方、ペルジーノ(ヴァザーリの著書ではラファエロの師匠とされている)からの影響も色濃く観られるようで、ペルジーノからの影響はこの後一層顕著になっていくそうです。また、ラファエロはピントリッキオらに協力して働き腕を磨いていったそうで、ラファエロは急速に成長を遂げ、より大きな舞台を夢見るようになったそうです。ここにはそうした初期のウルビーノの時代の作品が並んでいました。

1 ラファエロ・サンティオ 「自画像」 ★こちらで観られます
こちらは後の時代の作品ですが、最初に展示されていました。20代始めの頃の自画像で、黒ベレー帽に栗色の髪のラファエロがこちらを振り返っています。中々のイケメンで、優しげな顔立ちで知的な雰囲気があります。解説によると、見た目通り慎ましく穏やかな性格で、一様に皆に褒め称えられる人物だったそうです。また、これはウルビーノの時代の後のフィレンツェ時代に、故郷に帰った際 家族かウルビーノ公爵の為に描いたと考えられるとのことでした。どこか気品のある柔らかい印象を受けました。

2 ジョヴァンニ・サンティ 「死せるキリストと天使たち」
こちらはラファエロの父の作品で、血を流すキリストと、両脇で支える羽の生えた天使が描かれています。柔らかな雰囲気や色の明るさはラファエロと共通したものを感じるかな。解説によると、この父はフランドルの画家との共同制作を通じて色彩技術に影響を受けていたそうで、フランドルとイタリア絵画が調和しているとのことでした。
なお、父はウルビーノ公に仕えた宮廷画家で、教養高く文才にも恵まれていたそうです。この父のコネクションはラファエロにも非常に有利に働いたのだとか。

3 ペルジーノ(本名:ピエトロ・ヴァンヌッチ) 「聖ユスティナ」
こちらはラファエロの父が「神のような画家」と讃えていたペルジーノの作品です。赤と緑の衣の女性(聖ユスティナ)が手を合わせて上を見ている様子が描かれていて、優美で色鮮やかな作風です。初期のラファエロはペルジーノを正確に模写していたそうで、現在でもどちらの作品か意見の別れるものもあるほどだそうです。その為か、この絵にもラファエロとの共通点があるように思えました。ラファエロのルーツを知る上で参考になる作品です。

6-8 ラファエロ・サンティオ 「父なる神、聖母マリア」「天使」
これは17歳の頃、初めて世にラファエロの名前が出た祭壇画の一部で、中央に赤い衣で王冠を手に持つ父なる神、周りの4人の天使?、その左に王冠を持つマリアの姿が描かれています。17歳で描いたとはとても思えないほど気品に満ち溢れていて、その才能に改めて驚嘆します。また、その隣にあった「天使」も清楚な雰囲気で、非常に優美で生き生きした姿でした。

この近くには短い間だけど共同制作したピントリッキオの作品もありました。

10 ラファエロ・サンティオ 「若い男の肖像」
これは赤い帽子をかぶった人物の肖像です。長い髪でやや微笑みながらこちらを見ていて、背景には風景が描かれています。ぱっと観て自画像か?と思ったのですが詳細はわかりませんでした。優しそうで男性とは思えないほどの優美さがあり、知的な雰囲気でした。

9 ラファエロ・サンティオ 「聖セバスティアヌス」
こちらは20歳前後の頃の作品の中でも評価が高い作品で、手に矢を持つ聖セバスティアヌスが描かれ、赤い服を着て胸には金色の装飾が施されています。解説によるとこの装飾の細密な描写にはピントリッキオからの影響があるそうで、構図はペルジーノに学んだものだそうです。また、手に持っている矢は聖セバスティアヌスが処刑された際にどの矢も急所に当たらなかったという奇跡にちなんだ持ち物(アトリビュート)だそうです。全体的に落ち着いた雰囲気の人物で、神々しさが表されているように思いました。また、背景には空が描かれ、明暗表現なども見事でした。


<第2章 フィレンツェのラファエロ-レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとの出会い>
続いてはフィレンツェ時代のコーナーです。ラファエロは1504年にウルビーノの宮廷の実力者にフィレンツェ共和国の行政長官宛の紹介状を書いてもらい、フィレンツェに進出を果たしました。この頃のフィレンツェではレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティが政庁舎の壁画の注文を受けて下絵を制作していたそうで、ラファエロは2人の芸術から大きな刺激を受けました。そして、レオナルド・ダ・ヴィンチからは動き溢れる構図と陰影法、モナリザに観られる肖像画の優雅なポーズなどを学び、ミケランジェロからは男性裸体像の動きや短縮法、姿勢のヴァリエーションを学んで自分の作品に応用したようです。ラファエロはこの2人以外にも過去の芸術家や同時代のフラ・バルトロメオらの作品にも積極的学んだようですが、むやみに学ぶのではなく、自らの目的に合うものを選び、変容させることも厭わなかったようです。
ラファエロのフィレンツェ時代は主に上流貴族の注文による肖像画と聖母子像を多く制作したそうで、ウルビーノやペルージャにも足を運び、その地にも作品が残されているそうです。ここにはそうした時代の作品が展示されていました。

18 ラファエロ・サンティオ 「無口な女(ラ・ムータ)」 ★こちらで観られます
これは手を組んで座る女性の肖像で、誰しもがそのポーズを見てモナ・リザを彷彿とするんじゃないかな。口を結んでいるので無口な女と呼ばれるそうで、若干硬い表情に見えます。質素な感じの服を着ているのですが、指にはルビーとサファイアの指輪をつけていて、ルビーは15世紀、サファイアはその後の時代の流行を反映しているようでした。モデルは不明のようで、ちょっと威圧されそうな雰囲気の女性像でしたw

この近くにはウルビーノ公の妃の肖像もありました。

21 ラファエロ・サンティオ 「聖家族と仔羊」
仔羊に跨る裸の赤ん坊のキリストと、その傍らで膝をついて支えるマリア、その後ろには杖をつく養父ヨセフの姿があります。3人の配置が三角形を描くような感じで、背景には岩山や建物のある風景が広がっています。解説によると、この仔羊は犠牲の象徴らしく、その後のキリストの受難を示唆しているようです。その為かヨセフは不安そうな顔をしているように見えました。また、キリストと仔羊を組み合わせる構図はレオナルド・ダ・ヴィンチによって試みられたそうで、この作品もダ・ヴィンチの作品の何らかを参考にしているのではないかとのことでした。

この近くにはフラ・バルトロメオの作品もありました。どことなくラファエロに通じる優美さを感じます。また、ラファエロがペルージャから依頼されて描いた祭壇画などもあり、見どころとなっていました。

16 ラファエロ・サンティオ 「大公の聖母」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、黒を背景に、青と赤の衣のマリアが裸の赤ん坊のキリストを抱いている姿が描かれています。マリアは慈悲溢れる表情をしていて、キリストは柔らかい肉体表現で描かれしっかりと母につかまっている様子です。陰影も柔らかく緻密で、気品ある作風となっていました。解説によると、この作品のタイトルの大公とは後のトスカーナ大公(ハプスブルク家に連なる家系の人物)のことで、18世紀に亡命先に持っていくほどこの絵を大切にしていたそうで、いつも寝室に飾っていたことから名付けられたそうです。また、背景が黒一色になっているのは後世に塗りつぶされたためらしく、元々は窓が描かれていたことが調査で分かったそうです。その頃既に剥落していたようですが、ちょっと残念なエピソードです。

この近くにはこの作品のための素描も展示されていました。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにします。日本にいながらこれだけの質・量のラファエロを観る機会は今までなかったので、非常に貴重な機会となっています。たまに美術に興味があるならこれだけは絶対に観ておけ!という展示がありますが、これはまさにそのレベルの内容です。 間違いなく今季必見の展示ですので、できるかぎり足を運ぶことをお勧めします。いい作品は前半が多かったですが、後半にも見どころがありましたので、次回は残りの展示をご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


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