関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

オディロン・ルドン ―夢の起源― (感想前編)【損保ジャパン東郷青児美術館】

前回ご紹介したカフェでお茶する前に、損保ジャパン東郷青児美術館で「オディロン・ルドン ―夢の起源―」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1100353.jpg

【展覧名】
 オディロン・ルドン ―夢の起源―

【公式サイト】
 http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html

【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅


【会期】2013年4月20日(土)~6月23日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
初日で雨が降っていたこともあってか、意外と空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示はフランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドンの個展となっています。日本では1985年以降、ルドン展はよく行われてきたようですが、その大半は国内で圧倒的な質・量を誇る岐阜県美術館のルドンコレクションに大きく依存しているようです。しかし今回の展示ではそれに加えてルドンの出身地であるボルドーにあるボルドー美術館からの出品作もあり、形成期から色彩の時代まで様々な作品が展示されていました。時代ごとに章が分かれていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
  ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)


<第1部:幻想のふるさとボルドー - 夢と自然の発見>
まずはボルドーでの青春期についてのコーナーです。ルドンは1840年にフランスのボルドーで生まれ、15歳で最初の絵の師匠であるスタニスラス・ゴランに学んだそうです。また、植物学者のクラヴォーにロマン主義的な情熱と自然科学の情熱を教えられたようで、クラヴォーから学んだ知識見識は後々までルドンに影響を与えています。20代になると国立美術学校建築科を受験しましたが失敗し、さらに25歳の時にはパリでのアカデミックな画家修業にも挫折したようです。そうして、ルドンが故郷に戻った際、たまたまボルドーにいた放浪の版画家ブレスダンに師事し、小画面の版画作品にロマンティックな空想を繰り広げるブレスダンの芸術世界にも強い影響を受けました。また、ルドンは当初は歴史的な風景画家を目指していたそうで、ルドン家のぶどう園(ペイルルバート)があったメドック地域やピレネー、ブルターニュなどで写生を行なっていたそうです。ここにはそうした若い時期の作品が並んでいました。

1 スタニスラス・ゴラン 「アブデルカデルのボルドー出航」
この絵は帆船の後姿を描いたカラーリトグラフで、港に集まる多くの人々も描かれています。これはルドンの最初の師匠の作品で、淡い水彩のような色合いが幻想的です。解説によると、この画家は今では忘れ去られていますが当時はかなり評価が高かったそうで、この絵ではアルジェリアのフランス植民地化に抵抗した人物の物語の一場面を描いているとのことでした。リトグラフなので何とも言えませんが、色合いにルドンに通じるものがあるかも??

この辺にはゴランの作品は何点かあったのですが、他の作品はルドンとはちょっと違う方向性に思えました。また、他にはボルドーの風景を描いたリトグラフ(別の作者の作品)などもありました。

11 ロドルフ・ブレスダン 「善きサマリア人」
これは帰郷後に師事したブレスダンの作品で、キリストの語った善きサマリア人の説話を題材にした白黒のリトグラフです。中央にラクダと、その下に倒れている男が描かれ、その傍らには助けているターバンの人物が描かれています。周りは鬱蒼とした木々や植物が描かれ、よく観ると鳥や猿の姿もあり、繊細かつ緻密な明暗で表現されていました。緻密というよりは猛烈に細かいと言った方が良いかもw 写実性があるのにどことなく妖しげで幻想的な作品でした。

この辺はブレスダンの作品が並んでいました。いずれも超細密で、骸骨(死神)が描かれていたり、寓話を主題にした作品が並んでいます。こうした空想的なところはルドンに通じるものを感じます
 参考記事:19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)

17 オディロン・ルドン 「浅瀬(小さな騎馬兵のいる)」
これは以前もご紹介したことがありましたが、改めてご紹介します(この後も結構以前ご紹介したものが多いですが、一応書いておきます)
こちらはルドン25歳ころの作品で、切り立った岸壁と手前で馬に乗っている騎士たちが描かれています。師匠のブレスダンと同じく緻密で、渦巻く雲に流れを感じます。解説によると、フランスの「ローランの歌」を想起させるそうで、この物語はルドンのお気に入りだったようです。また、雲などはブレスダン風に描かれているものの、それらに比べて騎士が小さいのはブレスダン以上にロマン主義の美意識を表しているとのことでした。

この辺は若い頃の版画が並んでいました。また、少し進むと植物学者のクラヴォーに関するコーナーとなっています。クラヴォーは大変な読書家で、ボードレールやエドガー・アラン・ポーなどの現代文学や、ヒンズーの詩、スピノザ哲学など多くの蔵書を持っていたようで、それらはルドンに影響を与えて行きました。また、ルドンがダーウィンの種の起源を知ったのもクラヴォーからだったようで、後にこれらに関した作品も製作しています。それだけ多くの影響を与えたクラヴォーですが、1890年に首吊り自殺をしてしまったようで、その翌年にルドンは版画集を彼に捧げたそうです(後のコーナーで出てきます) ここにはクラヴォーによる植物の素描があり、図鑑や理科の教科書にあるような正確さで種子や雄しべ・雌しべなどの拡大図が並んでいました。かなり精緻で、よくよく考えるとルドンの作品に出てくるモチーフを想起させました。これだけ影響が多いので、クラヴォーはルドンの精神的な師匠と言える存在だったのかも。

26 オディロン・ルドン 「樹(樹のある風景の中の二人の人物)」
これは大きな2本の樹と2人の男女が描かれた素描です。木炭で描かれていて、空気感が伝わってくるようなぼんやりした感じがカミーユ・コローに通じるものがあるなと思ったら、実際にルドンは1864年にバルビゾン村でコローに助言を受けていたそうです。その際に、「想像に富むイメージの隣に自然に直接取材した事物を置くように」と言われたらしく、ルドンは生涯これを守ったようです。そう言われてみると確かにその言葉に沿った作品が多いので、これはルドンにとって相当大事な出来事だったのだろうと推測できました。

この近くには子供の頃に育った辺りの風景素描もありました。

[「作者のためのエチュード」(色彩による風景画習作)]
ルドンは当初、黒の画家として知られていましたが、その頃にも色彩による風景画小品を制作していたようで、これを「作者のためのエチュード」(エチュード=習作)と呼んで大事に手元に置いていたようです。そうした作品では自然をモデルとしていて、20代はバルビゾン派と自然主義風景画に関心を示していたようです。当時の展覧会にも2点ほど風景画習作を出品していたようですが、制作年が書かれていないため製作時期については分からないとのことです。ここにはそうした作品がいくつか並んでいました。

31 オディロン・ルドン 「モルガの海」
これはブルターニュの海岸を描いた作品で、砂浜と空だけのシンプルな画面のなっています。ややくすんだ色合いが幻想的で、その後のルドンの色合いが既に観られるように思いました。

この辺には山や建物、岩を描いた簡素な風景画が並んでいました。いずれも幻想的でやや寂しげな印象を受けます。また、少し先にはドラクロワの模写などもありました。

37 オディロン・ルドン 「ロンスヴォーのローラン」
こちらは、先述の作品と同じく中世フランスの叙事詩ローランの歌に取材した作品です。大きな暗い色の岩を背景に、馬に乗った赤いマントの騎士が描かれ、右下には沢山の兵士たちの姿もあります。騎士は振り返っていて顔はよくわからずややぼんやりしているのはルドンらしい雰囲気を感じるかな。題材的にも興味深い作品で、歴史画家になりたかったのが伝わってくるように思いました。 解説によると、この作品はサロンで入選したそうで、それによって父親や弟もオディロンを画家として認めたそうです。そのためか画家自身はこの作品を生涯手放すことはなかったとのことでした。

この近くにはルドンの家庭環境についての説明もありました。オディロン・ルドンは子供の頃は身体が弱くて親戚の老人に育てられていますが、3人の男兄弟と1人の妹がいたそうで、長男のエルネストは音楽の神童としてボルドーの社交界で注目される存在だったそうです。また、妹と弟の1人は早くして死んでしまったものの、末の弟は建築家となって後に国立美術学校の教授になっています。オディロン・ルドンは兄と仲が良かったようですが、後にぶどう園(ペイルルバート)の売却を巡って激しく対立したとのことでした。

この近くには兄のエルネストの楽譜の複製なども展示されていました。

40 オディロン・ルドン 「自画像」
これはルドンの自画像で、おでこが広く口ひげを生やした姿をしています。背景は真っ暗で溶け込みそうな感じかな。知的そうにも見えますが、ちょっと神経質そうな印象を受けました。


<第2部:「黒の画家-怪物たちの誕生」>
続いては版画などの白黒の作品のコーナーです。ルドンは1870年に起きた普仏戦争に従軍し、戦後はパリのルーヴル美術館で巨匠たちを研究する傍ら国立自然誌博物館や植物園に通い、生物学や人類学の標本を観察していたそうです。そして夏になるとボルドーに帰り、ペイルルバートで木炭画を描いていたようです。その後1879年(39歳)の時に最初の石版画集「夢のなかで」を発表し、これが職業画家としてのルドンのデビュー作となりました。これには進化論などの自然科学の影響をとどめる空想的な怪物が描かれていて、続く1880~1890年代にはルドンの黒の幻想は前衛的な文学者や若い芸術家に歓迎されたそうです。ちょうどこの頃は物質主義的な時代から精神的なものを求める時代となりあったのが背景としてあるようで、ここにはそうした時期の黒の作品が並んでいました。(ここの解説や感想は以前の記事と丸かぶりですがご容赦ください…w)

46 オディロン・ルドン 「石版画集[夢のなかで] 賭博師」
これは大きなサイコロを担いだ人物が描かれた作品で、手前には黒い樹が描かれています。描かれたもの自体は写実的ですが、どこかシュールなものすら感じ、賭博師はちょっと苦しそうなポーズに見えました。

この近くにはギュスターヴ・モローの作品をモチーフにした「石版画集[夢のなかで] 幻視」なども並んでいました。

53 オディロン・ルドン 「石版画集[夢のなかで] 眼は奇妙な気球のように無限に向かう」
これはルドンの作品でも特に有名かな。 目玉のような気球から吊り下がったお盆の上に乗った人の首が描かれた作品です。気球のギョロッとした目が異様でちょっと怖いw 解説によると、三角、球、円などが多用されているそうで、このシリーズではデューラーから学んだ造形も見られるとのことです。独創的な世界に見えるけど、結構色々な事物に影響を受けた上での作品なのですね…。


ということで、ちょっと中途半端ですが長くなったので今日はこの辺までにしようと思います。さすがに版画などは見慣れた作品が多いですが、初期からじっくりと観ていけるので参考になりました。後半には見どころとなる色彩の時代の油彩もありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事

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