関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展 (感想前編)【Bunkamuraザ・ミュージアム】

1週間ほど前の土曜日に渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで「現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展」を観てきました。こちらの展示は日本初の個展ということで、メモを多めに取ってきましたので前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

2013-06-01 14.35.55

【展覧名】
 現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_lopez/index.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_lopez.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅


【会期】2013/4/27(土)~6/16(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構混んでいて、場所によっては列になっているところもありました。思ったより注目されているのかも。

さて、今回の展示は現在のスペイン美術を代表する画家アントニオ・ロペスの日本初の個展となります。アントニオ・ロペスは1936年にスペインのラ・マンチャ地方に生まれ、若くして才能を開花させ絵画・彫刻の分野においてリアリズムを追求してきたそうです。この展示では1950年代~2010年代まで幅広い時代の作品が並び、テーマごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<故郷>
まずは初期の作品や生い立ちを交えた故郷に関するコーナーです。アントニオ・ロペスは農業を営む両親の下に生まれ、その才能を見出したのは叔父で画家のアントニオ・ロペス・トーレスだったそうです。そして叔父は最初の絵画の師となり、今でもアントニオ・ロペスが尊敬している画家の1人であるようです。その後、アントニオ・ロペスはわずか13歳でマドリードに絵画修業に出て、その1年後には王立サン・フェルナンド美術アカデミーの美術学校に入学しました。そして同級生で最年少だったにも関わらず数々のコンクールで受賞を繰り返すなど、早熟の才を見せたようです。
このコーナーには故郷への思いが反映された作品が並び、故郷を離れてからもその風景や人物関係を重要視して、しばしば取り上げていたようです。しかし、郷愁や追憶という情緒は極力抑えられ、自らのアイデンティティを探るかのように内省的な作品となっているそうです。

1 アントニオ・ロペス 「パチンコを撃つ少年」 ★こちらで観られます
これは17歳の頃の作品で、屋上の上で空に向かってパチンコを構える少年が描かれています。右下には屋上で横たわる少女の足が見えていて、空には鳥が待っています。背景には街の屋根が連なる風景が広がり、地平線が低めなためか広々とした印象を受けました。柔らかい日差しに温かみも感じられます。これを17歳で描いたとは…。驚きです。

7 アントニオ・ロペス 「立ち話をするフランシスコ・カレテロとアントニオ・ロペス・トーレス」
両脇に2階建ての家が並ぶ道の中央で2人の黒い服の男性が向かい合って話し合っている様子が描かれた作品です。右側の建物の前には妊婦らしき女性や数人の人々の姿もあります。解説によると、この中央にいる2人はアントニオ・ロペスの叔父と、長らく町長を務めた人物(この人も画家)らしく、2人ともロペスと血の繋がりがあるそうです。全体的にざらついた質感で落ち着いた色合いで描かれていて、ロペス自身はこの作品を1950年代の分厚いマティエールの作品の代表的なものとして挙げているとのことでした。

この隣には同じくフランシスコ・カレテロを描いた肖像もありました。27年間も描き続けているそうで、アントニオ・ロペスは完成までに非常に時間がかかるようです。

3 アントニオ・ロペス 「花嫁と花婿」 ★こちらで観られます
シルクハットの男性の膝の上に座る ドレスを着た花嫁が描かれた作品です。左端には室内の様子が描かれ、ギラーやワインボトル、スイカ?などが書き込まれています。全体的にくすんだような色合いで、様々な色が塗り重ねられているようです。また、画面奥の静物は様々な視点から描かれたキュビスム的な雰囲気があるのが面白いです。
解説によると、ロペスはこの頃イタリアに行ったそうで、ドレスにはギリシャ・ローマの彫刻からの影響が見られるとのことでした。また、この絵は元々は女性2人の像だったのがやがて男女となり、最終的にはこの花嫁・花婿となったそうです。


<家族>
アントニオ・ロペスは美術アカデミーの下級生(年は3歳上)のマリア・モレーノと結婚し、2人の娘マリアとカルメンをもうけたそうです。アントニオ・ロペスにとって家族は大事なモチーフらしく、その作品は現在も家族が所有しているプライベートなもののようです。ここではそうした家族を描いた作品が並んでいました。

12 アントニオ・ロペス 「夕食」 ★こちらで観られます
食卓で食事をする次女カルメンと妻のマリアを描いた作品で、静かで親密な印象を受けます。テーブルの上には瓶や肉、リンゴなどが描かれていますが、リンゴなどは上から貼り付けているコラージュらしく、よく観ると確かに若干違っているのが確認できました。また、妻の顔は眉が二重になっているなど、描きかけのような感じで、これは途中で描き直したのをそのままにしてあるとのことでした。アントニオ・ロペスは遅筆のようで(というより直しを入れ続ける?)、これも9年間描いても未完のようです。後のほうのコーナーには20数年かけている作品も展示されています。

この近くには下絵や妻の彫像もありました。妻とはアカデミーを卒業して6年後に結婚したそうです。

14 アントニオ・ロペス 「マリアの肖像」 ★こちらで観られます
これは鉛筆で描かれた長女マリアの肖像です。ちょっと不安げな目でこちらを見ていて、服はかなりリアルな質感をしています。顔の部分はやや薄っすらと描かれていて、どこか儚げで幻想的にすら見えました。静かな雰囲気の作品です。


<植物>
続いては植物を描いた作品のコーナーで、特にマルメロという植物を描いた作品に焦点が当てられていました。この章の冒頭の説明によると、アントニオ・ロペスを取材して作られた映画「マルメロの陽光」というものがあるそうです。これはビクトル・エリセ監督が1992年に制作したもので、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、これによってマルメロはアントニオ・ロペスの最も有名な主題として知られるようになったそうです。ここにはその映画に出てくる作品も展示されていました。

26 アントニオ・ロペス 「マルメロの木」 ★こちらで観られます
こちらが映画「マルメロの陽光」で描かれた作品で、天候不順によって結局未完成となったそうです。緑鮮やかな葉っぱと、黄色い大きな実をつけるマルメロの木が描かれ、細部はあまり詳細ではなく、全体像を捉えている途中という印象を受けます。黄緑や黄色など明るい色が多いので爽やかで、陽の光まで感じられるように思いました。

この少し先にはバラを描いた作品が数点並んでいました。アントニオ・ロペスの作品にはよく直線が残っていて、長さを計測しているのかな??と思いながら観ていました。


<マドリード>
続いてはマドリード近郊を描いた作品のコーナーです。マドリードはアントニオ・ロペスの画業の中でも重要なモチーフらしく、20代半ばから70歳までそれぞれの時期を代表する作品が含まれているそうです。ここには大型の作品もあり、町並みを一望できる景色がその場に広がっているような迫力ある内容となっていました。

45 アントニオ・ロペス 「死んだ犬」
手前に大きく横たわる黒い犬が描かれ、肋らしきものも見えますが地面と同化するように黒く、細部はよく分かりません。背景には工場や荒野のような光景が広がり、そこに1人の男性が座って町のほうを眺めているようです。解説などは無かったので詳しい意図はわかりませんでしたが、意味深な構成となっていました。かなり厚塗されていて犬が化石のようにすら見えたのも面白かったです。

48 アントニオ・ロペス 「グラン・ビア」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、マドリードのグラン・ビア通りの起点をリアルに描いたものです。周りの建物は古くからありそうですが、1974年~81年にかけて描かれているのでアスファルトの道路だったりと最近の風景のようです。大通りなのに誰一人いない静かな雰囲気で、左の建物のデジタル時計は6:30を指しているので早朝の様子が描かれているようです。全体的に灰色が多いのでひんやりした印象を受けますが、不思議と全体的に光が感じられるように思えました。

52 アントニオ・ロペス 「バリェーカスの消防署の塔からみたマドリード」
これは横4mを超える大作で、1990年から2006年にかけて描かれたそうです。消防署の塔の上からマドリードを観た風景画で、正午の頃らしく陰影が強くて明るい日差しを感じます。非常に遠くまで見渡せるようで細かく描かれていますが、人物の姿が無くちょっとシュールな印象も受けました。作品自体も大きいので、まるで目の前に風景が広がっているような、作者のこの光景への感動が伝わってくるような作品でした。

この辺は大型の作品が並んでいました。大型の風景画は圧巻です。リアルなんだけど人がいないなどちょっと不思議な感じ。


ということで、今日はこの辺までにしておきます。私はアントニオ・ロペスの作品を観たことが無かったので、これを機会に様々な主題の作品を観ることができて良かったです。後半にも見どころがありましたので、次回は後半部分についてご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


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