関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

プーシキン美術館展 フランス絵画300年 (感想後編)【横浜美術館】

今日は前回の記事に引き続き、横浜美術館の「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


  前編はこちら


P1110578.jpg


まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 プーシキン美術館展 フランス絵画300年

【公式サイト】
 http://pushkin2013.com/

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅

【会期】2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では新古典主義やロマン主義の時代までご紹介しましたが、後半は印象派からエコールド・パリの頃の時代の作品が並んでいました。


<第3章 19世紀後半-印象主義、ポスト印象主義>
19世紀半ば頃になると、アカデミーのシステムに軋みが生じ始め、画壇への反発はやがて1874年にモネやルノワールら若い画家が企てた展覧会(第1回印象派展)へと結実し、印象派が誕生しました。そして、神話や宗教の主題から日常のモティーフへ、アトリエ制作から屋外制作へ、筆致を消した平坦な仕上げから「筆触分割」へと、主題・制作方法・表現手法など様々な変化を通じて、絵画の概念を刷新していきました。また、その後に続くセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンらポスト印象派は印象派の制作スタイルや明るい色彩を引き継ぎながら視覚的探求も進化させていったようで、ここには印象主義~ポスト印象主義の作品が並んでいました。

38 クロード・モネ 「陽だまりのライラック」 ★こちらで観られます
ピンクの花を咲かすライラックの木の下で寝そべる2人の女性が描かれた作品で、これはモネの妻と、息子ジャンの乳母の姿のようです。全体に明るめの画面で、点々とした白で光の木漏れ日が表されています。細部までは分かりませんが、光の本質を捉えた印象派らしい画風で、のんびりと明るい雰囲気となっていました。

40 ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ジャンヌ・サマリーの肖像」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で。コメディー・フランセーズで活動した女優ジャンヌ・サマリーを正面から描いた肖像です、ピンク色を背景に、顎を手に乗せてこちらを真っ直ぐ見つめ、つぶらな瞳で微笑みを浮かべています。その背景のほんのりと燃え立つようなピンク、緑、黄色といった色が響き合って、爽やかな印象を受けます。解説によると、これはルノワールの肖像の中でもかなりの傑作と言えるようでした。今回の目玉作品です。

43 ルイジ・ロワール 「夜明けのパリ」
パリの街角とそこにある屋台のようなものが描かれた作品です。夜明けの光景のようでまだ周りは薄暗く、道は濡れて人々の姿を反射しています。店の中の灯の光が温かく、周りの湿気とともに、ちょっと寂しいような清々しいような夜明けならではの風情となっていました。

41 エドガー・ドガ 「バレエの稽古」 ★こちらで観られます
バレエの稽古場で左足を後ろに上げて前のめりになり右手を前に伸ばす踊り子達が描かれた作品です。奥にも沢山の踊り子がいて、人々の配置がリズミカルに感じられます。パステルの薄い色合いなのも軽やかで、踊り子らしい瑞瑞しさが感じられます。何故か左上に木?の円形のようなものが大きく描かれているのが大胆な印象でした。

この近くにはロートレックの下絵のような作品も並んでいました。

46 ポール・セザンヌ 「パイプをくわえた男」 ★こちらで観られます
これはセザンヌの故郷の庭師をモデルとした肖像連作の1つで、机に頬杖をつくパイプをくわえた帽子の男性が描かれています。背景にはセザンヌ夫人の肖像画の一部が画中画として描かれていて、その両者ともにやや斜めになっていて、響き合うような構図です。机は三角が組み合わされたように描かれていて、これは後のキュビスムの手法の誕生を予感させるようです。幾何学性と重めの色合いがセザンヌらしい作風となっていました。

この隣にもセザンヌの男性水浴の作品が並んでいました。

47 フィンセント・ファン・ゴッホ 「医師レーの肖像」 ★こちらで観られます
青い服を着た男性の肖像画で、この人物はゴッホが耳きり事件を起こした後に入院した病院のインターンの医師のようです。細長い筆触を並べて黄色っぽい顔や髪を表現していて、服は太目の線となっています。背景は緑に赤い点やオレンジの植物文様のようなS字が並び、全体で色が強く感じられました。解説によると、この作品は医師への感謝の気持で描いたようですが、医師は全く気に入らなかったようで鳥小屋の穴をふさぐのに使っていたという逸話もあるそうです。当時の人には新し過ぎたのかも…w しかし二束三文で売られたこの絵が後にセルゲイ・シチューキンの鋭い審美眼にとまり、彼のコレクションとなり、今ではプーシキン美術館所蔵となっているとのことでした。

49 ポール・ゴーギャン 「エイアハ・オヒパ(働くなかれ)」 ★こちらで観られます
タヒチの小屋の中、半裸の男性がタバコを手に持って座っている様子が描かれ、その背後には青い服の女性も座っていて、傍らには猫も寝ています。小屋の外は明るく描かれ、犬や森の中に佇む人の姿があり、暗い室内と対比的な明るさとなっています。タイトルがちょっと変わっていますが、これには色々解釈もあるようで、このように空想していることはタヒチでは休息であり神聖な行為とされているそうです。この絵はゴーギャンの2度めのタヒチ時代に描かれたようですが、この隣にあった1度めのタヒチ滞在時の作品と比べると色は落ち着いていて、奥行きが出ているように感じました。

この近くには大きめのドニの作品もありました。


<第4章 20世紀-フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ>
1905年のサロン・ドートンヌで「野獣」と批評されたフォーヴィスムは、原色を用いた奔放な色彩感覚の表現を行いました。また、1908年にピカソとブラックが創始したキュビスムは複数の視点から分解・再構築する多面的な手法で革新をもたらしたようです。 そしてこうした前衛芸術が展開する土壌となったのは芸術家のコミュニティで、モンマルトルのアトリエ 兼 住居のバトー=ラヴォワール(洗濯船)に集ったピカソやアポリネールといった若い芸術家は、互いに刺激し合い、新しい創造の芽を育んだようです。
第一次世界大戦後になるとこうした動向に触発された各国の芸術家はモンパルナスに集い、シャガールやキスリングら外国人と、彼らと近いフランス人画家からなる芸術家達を「エコール・ド・パリ」と総称し、彼らは個性に飛んだ作品を残しました。ここにはそうした20世紀初頭の先進的な作品が並んでいました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 パリ モンマルトル界隈

60 パブロ・ピカソ 「扇子を持つ女」
これはキュビスム初期の頃の肖像で、緑のフード?のようなものを被った黒い服の女性が、緑の扇子を持っている様子が描かれています。面をつなげて表現したような直線の多い作風でキュビスムらしさを感じる一方、まだ多面的な感じは少なく若干硬いようにも思えるかな。その後の大胆さに比べるとまだ模索中な感じを受けました。

この辺にはローランサンやキスリングの小品も1点ずつ展示されていました。

61 アンリ・ルソー 「詩人に霊感を与えるミューズ」 ★こちらで観られます
巻いた紙と羽ペンをもつ紳士(詩人のアポリネール)と、祝福のポーズをとる恋人の女性(画家のローランサン)が描かれた作品です。周りは木々が生い茂りジャングルのようで、足元には直立したカーネーションのような花(他の花と間違って認識していたらしい)が描かれています。ルソーらしい素朴さがあり、ちょっとシュールにも思える独特の味わいが面白いですw 解説によると、2人を描くためにわざわざ手足の採寸までしたそうですが、2人ともやけに太った感じに見えるのがちょっと可笑しいw 非常に個性的な作品です。
蛇足ですが、ルソーはピカソに見出された日曜画家で、洗濯船のメンバー(アポリネールやローランサン)と共に賞賛されました。

57 アンリ・マティス 「カラー、アイリス、ミモザ」
植物文様のテーブルクロスの上に置かれた花束を描いた作品で、タイトル通りの3種類の花が大胆に単純化されて描かれています。花瓶や床は緑、テーブルクロスやアイリスは青、ミモザは黄色、カーテンはピンクなど、色のコントラストが非常に強く、それが生命感や装飾性を出しているように感じられました。フォーヴィスムの手法がよく分かる作品です。

65 マルク・シャガール 「ノクターン」
赤い馬にしがみつき空を飛ぶ花嫁が描かれた作品で、背景には燭台があり画面下にはシャガールの故郷ヴィテブスクの町並みと雄鶏が描かれています。いずれもシャガールにはお馴染みのモチーフですが、全体的に深い色合いで、町並みも暗く重めな画面となっています。解説によると、この絵の少し前にシャガールはナチスによる故郷の破壊や最愛の妻ベラの死など苦難を体験したようで、この絵には故郷と妻への愛惜の念が込められているそうです。その色合いが気分を反映しているのかな? 神秘的な雰囲気のある作品でした。

最後にはレジェの大型作品もありました。


ということで、満足度の高い展示でした。特にルノワールは注目じゃないかな。絵画の歴史に沿った展示の方法も分かりやすいので、多くの人が楽しめると思います。今後はどんどん混んでいくと思いますので、ご興味ある方はお早めに足を運ばれることをお勧めします。

この後、常設も観たのですがそちらはメモを取らずに観てきたので記事は割愛します。横浜美術館の常設の写真室ではアンディ・ウォーホルやリキテンスタインの作品などもあり、そちらもだいぶ楽しめました。

おまけ:
プーシキン美術館展の解説機を返却するときに、ナレーションを担当した水谷豊 氏が「相棒」のような台詞を言っていましたw 


 参照記事:★この記事を参照している記事


 
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