関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

<遊ぶ>シュルレアリスム -不思議な出会いが人生を変える-(感想前編)【損保ジャパン東郷青児美術館】

お盆休みで少し間が空きました。10日ほどまでの土曜日に、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で、「<遊ぶ>シュルレアリスム -不思議な出会いが人生を変える-」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1120057.jpg

【展覧名】
 <遊ぶ>シュルレアリスム -不思議な出会いが人生を変える-

【公式サイト】
 http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_shuru.html

【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅


【会期】2013年7月9日(火) ~8月25日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思ったよりも多くのお客さんで賑わっていましたが、混んでいるというほどでもありませんでした。たまに人だかりができるくらいかな。

さて、今回の展示は「シュルレアリスム」を「遊ぶ」という観点か俯瞰するような内容です。シュルレアリスムは第一次世界大戦直後のパリで生まれやがて世界に広がった運動で、1924年の「シュルレアリスム宣言」以来シュルレアリストを自称した青年たちは夢や狂気、偶然、非道理、オートマティスム(自動現象)などを拠り所に現実の新しい見方・生き方を探り実験的冒険を続けました。また、彼らは集団で行う遊びを試みたそうで、遊びを労働の対極として積極的に捉え、オブジェやコラージュ、フロッタージュといった様々な新しい技法を試み、誰にでもできる手作業ブリコラージュ(計画的にではなく身近な材料で気ままに組み立てる行為)の側面もあったようです。展覧会は部屋ごとにテーマが分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)
  シュルレアリスム展 感想後編(国立新美術館)
  シュルレアリスム展 2回目 (国立新美術館)


<第1章 友人たちの集い>
まずはシュルレアリスムのメンバー同士の繋がりなどについてです。シュルレアリスはアンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言 溶ける魚」が発表される前からグループでカフェに集まって夢の技術やオートマティスム、アンケートや採点などの遊びを試みていたそうで、1922年のマックス・エルンストの有名な「友人たちの集うところ」では既に超現実のイメージを含んでいたそうです。そしてグループはその後もパリのカフェを拠点として討論やゲーム、街歩き、デモンストレーション、機関紙やパンフレットの発行、集団による展覧会などを日々行いました。彼らは要領や方針を定めてそれに従っていたわけではないらしく、メンバー間の交友から自然に生まれてくる新しい発想と、それに基づく自由な集団活動を重んじる運動が本来のシュルレアリスだったようです。ここにはそうした仲間たちの作品が並んでいました。

 参考記事:
  マックス・エルンスト-フィギュア×スケープ 時代を超える像景 感想前編(横浜美術館)
  マックス・エルンスト-フィギュア×スケープ 時代を超える像景 感想後編(横浜美術館)


17 マックス・エルンスト 「王妃とチェスをする王」
これはブロンズ像で、牛の頭の人物を単純化したような作品です。その前にはチェスの駒らしきものが並んでいて、タイトルから察すると王妃と向かい合っているようにも思えますが、王だけの像となっています。解説によると、シュルレアリストたちはチェスやビリヤードを好んでいたそうで、マルセル・デュシャンはチェスの競技研究所を出したりフランスの代表選手になるほどだったそうです。そしてその相手をしていたマン・レイやマックス・エルンストらもかなりの腕前だったとのことでした。この作品は色々な所で観ていますがエルンストもそれほどの腕前だったいうのはちょっと意外です。チェス好きがこの作品にも反映されているのかな?

この辺にはマン・レイのチェス盤もありました。また、マン・レイによるシュルレアリストたちの肖像写真が並んでいました。ブルトン、マルセル・デュシャン、ジョルジョ・デ・キリコ、マックス・エルンスト、ジョアン・ミロ、イヴ・タンギー、サルバドール・ダリなどの写真が展示されています。
 参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)

13 アンドレ・ブルトン、イヴ・タンギー、ヴァランティーヌ・ユゴー、ジャネット・タンギー 「甘美な死骸」
これは4人の合作とも言える作品で、上から順にジャネット・タンギー、ヴァランティーヌ・ユゴー、イヴ・タンギー、アンドレ・ブルトンが描いたものが合わさって1つの絵?になっています。まずタイトルが変わっていますが、これは言葉合わせのゲームで「甘美な」「死骸が」「新しい」「ワインを」「飲むだろう」という5つの言葉が組み合わさってたまたま生まれたものです。そしてそれを絵画に応用したのがこの作品で、お互いの絵は何か分からないけれども繋がり合うように描いていて、上から塔、木、女性と髪、木の根か人の足のようなもの、内臓か波のようなものとなっていました。そこに意味などは無いと思いますが、まさにシュールな偶然の妙のようなものがありました。

この近くにはトランプなどもありました。また、部屋の中央にはブルトンの「シュルレアリスム宣言」をはじめとした書籍も展示されています。

37 サルバドール・ダリ 「回顧された女性の胸像」 ★こちらで観られます
ミレーの「晩鐘」とフランスパンを頭に乗せた女性の胸像で、おでこの辺りに蟻が群がりトウモロコシを首飾りにしている奇妙な姿をしています。これは今までも何度かご紹介しましたが、1936年に作られた時にはパンは本物だったそうで、ピカソの飼い犬にかじられたというエピソードが紹介されていました。まさか本物のパンを使っていたとは…w やや不気味な像ですがちょっと面白いエピソードでした。
 参考記事:
  描かれた不思議 トリック&ユーモア展 エッシャー、マグリット、国芳から現代まで (横須賀美術館)
  【番外編 フランス旅行】 パリ モンマルトル界隈

この辺にはマン・レイの写真集「マネキンの人形たち」の映像と本などもありました。


<第2章 オブジェと言葉の遊び>
続いては「オブジェ」と言葉遊びについてのコーナーです。シュルレアリスムの基本にはオブジェ(物)の表現という思想があったそうで、オブジェは用途や機能もない、時には意味も分からないという正に物自体のことを指します。マルセル・デュシャンによるレディ・メイド(既成品)こそはオブジェ芸術の始まりで、例えば有名な「泉」は男性用便器そのものですが、題名と署名を入れて展覧会に持ち込んだことで本来の用途や意味から開放され「オブジェ」となりました。
一方、マン・レイは言葉遊び(語呂合わせ)などを用いた作品を作り、彩色されたパン(フランス語で彩色はパンの同音異義語。つまりパンパン)などを作ったそうです。ここにはそうしたオブジェや語呂合わせの作品などが並んでいました。

40 マルセル・デュシャン 「L.H.O.O.Q」 ★こちらで観られます
これはレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の図版に髭をつけた作品で、タイトルをフランス語にすると「彼女はお尻があつい」(=好色だ)と聞こえるそうです。どうみても小中学生が教科書にやる落書きみたいな感じですが、これによって違う意味を持たせているようでした。我々の知っている常識とは違う視点があるというのに気づかされるような作品です。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ルーヴル美術館

42 マルセル・デュシャン 「ロトレリーフ(6枚のディスクのうち3枚を展示)」
円形の紙のディスクに円などが描かれた作品で、これをレコード盤に乗せて回転させると立体に見えてくるという仕掛けになっています。作品の隣に回転している映像があり、片目をつぶって見ると確かに立体に見えてくるのが面白かったです。一種の騙し絵みたいな感じかも。

52 マン・レイ 「マン・レイ(手・光線)」
これは黄色いボールをつまんでいる手の彫刻です。フランスでは手(Main)とマン(Man)はほぼ同じ音らしく、Rayは英語で光線となるので、光の玉を持つ手でマン・レイ自身を語呂合わせしているようです。…これは解説が無いと気づかないかもw アイディアマンのマン・レイらしい面白い発想の作品でした。

この近くには真っ青に塗られたフランスパン(先述の彩色パン)や言葉遊びで即興で作った作品などが並んでいました。また、少し先には日本にシュルレアリスムを伝えた瀧口修造のコーナーなどもありました。


<第3章 コラージュと偶然の出会い>
続いてはコラージュに関するコーナーです。「コラージュ」とはフランス語で糊で貼ることを意味するそうで、印刷物などを画面に貼りこむこの技法は既にキュビスムやダダイズムにもあったそうです。しかしシュルレアリスムはそれらとは一味異なり、例えばエルンストは1919年に身近にある教材カタログを見ていた際、いくつかの図像同士が自然に結びつて幻覚を呼び起こすことに気が付きました。そしてそれ切り取って貼り合わせると思いがけない不思議なイメージが生まれ、これもオートマティスムの一例とみなされるようになり、シュルレアリスムに不可欠なものとなったそうです。ここにはそうしたコラージュ作品が並んでいました。

82 マックス・エルンスト 「愛すべき宇宙飛行士はサン・モリッツで冬を過ごす」
簡潔に描かれた鳥の絵と人が走っている連続のシーンが貼られている作品です。まったく意味はわかりませんが不思議な光景で、タイトルも含めて謎だらけです。それが何故か心に残って面白く感じられました。

この近くにはマン・レイヤジョセフ・コーネル、エルンストのコラージュなどが並んでいました。

96 岡上淑子 「はるかな旅」 ★こちらで観られます
これは瀧口修造(日本にシュルレアリスムを紹介した人物)に見出された女性の画家の作品です。フードのコートが宙を浮くように配され、顔の部分には花がコラージュされています。左下には犬の横姿があるのですが、お腹の辺りが時計になっているなど現実離れした光景です。それが何故か怖く感じられ、見ていて漠然と不安を覚えるような作品でした。


ということで、今日はこの辺りにしておこうと思います。時系列的ではなく作家で分かれているわけでもないので流れを把握するのは難しいかもしれませんが、シュルレアリスムを概観するには良いのではないかと思います。後半にも面白い作品がありましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事
 
 
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