関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

アメリカン・ポップ・アート展 (感想前編)【国立新美術館】

ご紹介が遅くなりましたが、10日ほど前に乃木坂の国立新美術館で「アメリカン・ポップ・アート展」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1130261.jpg

【展覧名】
 アメリカン・ポップ・アート展

【公式サイト】
 http://www.tbs.co.jp/american-pop-art2013/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅


【会期】2013年8月7日(水)~10月21日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
入場規制などはありませんでしたが、かなり混み合っていてどこに行っても人だかりができているような感じでした。これからは会期末なのでさらに混雑も予想されますので、観に行かれる際は多めに時間を見積もっておいたほうがよろしいかと思います。

さて、今回の展示は1960年代以降に大きく花開いた大量生産・大量消費の大衆文化を主題とするアメリカのポップアートについての展覧会で、世界最大級のアメリカンポップ・アートのコレクションを誇るジョン&キミコ・パワーズコレクションから構成されています。これらの作品はコロラド州の広大なパワーズ邸で実際に飾られていたものらしく、ジョン&キミコ・パワーズ夫妻は評価が定まらない頃から実際にアーティストたちと交流し、パトロン及びコレクターとして収集してきたそうです。1999年にジョン・パワーズ氏が亡くなってからもキミコ・パワーズ夫人は積極的に活動を続け、2011年にはパワーズ・アート・センターを設立したそうです。 
展覧会ではそのパワーズ夫妻とアーティストとの関係を取り上げながら、作家ごとに章が分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品とともにご紹介していこうと思います。


<冒頭>
まず冒頭には今回の展示品を所有し実際に家に飾っていたというジョン&キミコ・パワーズ夫妻の肖像が並んでいました。

145 アンディ・ウォーホル 「ジョン・パワーズ」
こちらはアメリカン・ポップアートを代表するアーティストであるアンディ・ウォーホルによる肖像画で、サックスを持ったジョン・パワーズ氏が描かれています。ジョン・パワーズ氏はジャズも好きだったそうで、その顔は爽やかな微笑みを浮かべ非常に優しそうな雰囲気があります。緑の背景にオレンジの服など、アンディ・ウォーホルならではの鮮烈で軽やかな色合いで、楽しげな雰囲気がありました。

この隣にはキミコ・パワーズ夫人の肖像もありましたが、それは後の章で詳しくご紹介します。 ちなみにジョン・パワーズ氏は出版社を営んでいた実業家で、奥さんのキミコ・パワーズ夫人は名前の通り日本出身の方です。日本美術のコレクションでも有名らしいので、相当な富豪なのかな。


<1 ロバート・ラウシェンバーグ>
そして1章はアメリカン・ポップアートの少し前の時代のロバート・ラウシェンバーグのコーナーです。ロバート・ラウシェンバーグは1954年から自ら「コンバイン」と名づけた 絵画と彫刻を組み合わせた作品を作り、荒々しい筆の絵と日用品や新聞、雑誌の切り抜きなどを画面上で統合したそうです。これは当時のアメリカ美術の主流だった抽象表現主義を受け継ぐ一方で、オブジェの導入は続く60年代を予感させるそうで、その後1962年に最初のリトグラフを完成させ写真イメージと手描きを組み合わせた版画を制作し、ポップアートとは対照的に表現主義的とも言うべき画面を生み出しました。ラウシェンバーグはあらゆるものが芸術たりえると考えていたらしく、絵画・彫刻・写真・版画といったジャンルを超え、舞台芸術などにも及び、芸術と日常を等価なものとして扱い、ポップアートへ繋がる新たな芸術表現の領域を開いたそうです。ここにはそうした表現主義的な作品が並んでいました。

001 ロバート・ラウシェンバーグ 「ブロードキャスト」
これは大型の作品で、絵画と彫刻が一体化したような感じです。絵は抽象的でさっぱり分かりませんが、「HELP!」と描かれた新聞や、競馬の写真、櫛、2つのつまみなどが貼り付けられています。解説によると、このつまみはラジオの一部だそうで、絵の中にラジオが入っていて、以前は実際に聴くこともできたそうです。また、ラウシェンバーグは「僕達は現代社会のノイズの中で生きている」と言っていたらしく、この作品を鑑賞するときは2つのつまみを回して観るようにとも言っていたようです。まさにノイズのようなカオスな雰囲気の作品でした。

この少し前には白黒のコラージュのような作品も並んでいました。またこの先はリトグラフで、やはり雑誌の切り抜きなどの上に彩色していて抽象的かつ難解な印象を受けました。

012 ロバート・ラウシェンバーグ 「リボルバー」
これは円形の透明な回転盤が5枚重なり、そこに様々なイメージが描かれた作品です。大型で直系2mくらいあるんじゃないかな? 脇には5つのスイッチがあり、これを押すと2つの方向に回転するらしく、偶然重なった毎回違うイメージを鑑賞するようです。残念ながら今回の展示では回っていませんでしたが、面白い発想です。解説によると、ラウシェンバーグは芸術と科学の融合に強い関心を持っていたそうで、この作品からもそうした傾向が伺えました。

この先には布や厚紙で作られた作品などもありました。描いてあるものはよく分かりませんw


<2 ジャスパー・ジョーンズ>
続いては有名なジャスパー・ジョーンズのコーナーです。ジャスパー・ジョーンズは1954年に星条旗をモティーフにした作品の制作を始めたそうで、完成した旗の絵は彼をポップアートの偉大な先駆者として認知させると共に、20世紀で最も重要な美術品の1つとなっているそうです。また、60年以降はワークス・オン・ペーパー(紙を支持体とする作品)の制作にも精力的に取り組んだらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。

036 ジャスパー・ジョーンズ 「4つの顔のある標的」
これは赤を背景に青と黄色の縞模様の円(射的の標的)が描かれ、その上に人の鼻と口だけオレンジ地で描かれた作品です。絵のあちこちにはmの字のようなギザギザが黒で書かれていて、抽象的な感じです。解説によると、ジャスパー・ジョーンズは50年台の抽象表現主義が抽象的な色彩と形態で絵のイリュージョン(幻影)の代わりとしたのに対して、もともと2次元のイメージを選び絵画からイリュージョンを取り除こうとしたそうです。…と、理屈を聞けば何となく分かった気になりますが、小難しくて取っ付きづらい印象を受けましたw ジャスパー・ジョーンズはどうも理屈っぽすぎて苦手…。

052 ジャスパー・ジョーンズ 「彩色された数字」
こちらももともと固定された2次元の記号である数字をモチーフにした作品で、緑や青、紫などでグラデーションが付けられています。7の数字には反転したモナ・リザのような人物も見られるかな。それぞれの数字で表現が異なっていましたが、これも理屈ありきといった感じでした。

この先には数字を白黒にした版画もありました。

047 ジャスパー・ジョーンズ 「白いアルファベット」
これは真っ白な画面の作品で、近寄ってよく観るとabcというように規則正しく小文字のアルファベットの形に絵の具が盛り上がって並んでいるのが分かります。これは絵の具の上からゴム印を押しているそうで、画家のオリジナルを主張しなくても絵画作品となることを表したかったのではないかとのことです。これはアメリカン・ポップアートの考え方に近づいてきたんじゃないかな。中々驚きのある作品でした。

044 ジャスパー・ジョーンズ 「地図」 ★こちらで観られます
これは真っ暗な画面の作品で、よく観ると上下左右4つの画面に分かれ、そこにアメリカの48州(アラスカとハワイを除く)が描かれていて、地名の文字なども見えています。解説によると、右下の部分だけは木炭で他は油彩となっているらしく、明確な意図を語っていなかったものの、この木炭の部分に描かれた州はジャスパー・ジョーンズの出身地ジョージア州を含む人種差別が根深い地域で、それを暗示しているのかもしれないようです。 また、この絵を逆さにすると国旗も浮かび上がるのだとか。

076 ジャスパー・ジョーンズ 「セミ」
これは6枚からなるシルクスクリーンの作品で、5~6本の線が規則的に並ぶ模様のような絵?です。 赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫の色合いに仕上がっていて、1つ1つは見ても意味が分かりませんが、6枚揃うと色の違いで華やかに見えだいぶ印象が変わってきました。
この5~6本の線のモチーフはお気に入りだったのか、何点か似た作品がありました。

077 ジャスパー・ジョーンズ 「うす雪」
こちらも何本かの線で描かれた作品です。ジャスパー・ジョーンズはハッチング(陰影をつけるために用いる手法)を並べた作品を一時期よく描いていたらしく、この作品では上から白が薄っすらと塗られていて、確かに薄く積もった雪を思わせます。解説によると、ジャスパー・ジョーンズはジョン・パワーズ氏に日本の本を勧められたそうで、その中に「うす雪」という言葉があり、この名前が使われたそうです。
この辺にはこれと同じような感じの作品が数点展示されていました。


<3 ラリー・リヴァーズ/ジム・ダイン>
続いてはラリー・リヴァーズとジム・ダインについてのコーナーです。ラリー・リヴァーズは画家を志した時から抽象表現主義の奔放な筆致を用いながらも具体的な対象を描くということに関心を抱いていたそうで、アメリカ人なら誰もが知っている既成のイメージを取り上げ、絵画の主題は高尚であるべきとする固定化した芸術観に一石を投じました。その為、今日では抽象表現主義とポップアートの中間に位置づけられているようです。
一方、ジム・ダインは1960年頃から身近なオブジェを取り入れた作品の制作を始め、ポップアートに結びつけたそうです。しかし繰り返し描いたオブジェは愛着のある私的な物(言わば自身の代理)であり、ポップアートの匿名性やオブジェに対する客観的でクールな態度は観られないようです。そしてその目的は自己の存在みつめ、その生々しい感覚を作品を通して伝えることだったらしく、ちょっとポップアートとスタンスが違いそうです。ここにはその2人の作品が少しだけ並んでいました。

084 ラリー・リヴァーズ 「ジム・ダインの防風窓」
窓と網戸に描かれた肖像で、腕組するひげの人物(ジム・ダイン)が描かれ、窓枠が額縁のようになっています。腕は手前の網、顔の輪郭はガラス、目はその奥というようにいくつか立体に観るのが面白いかな。意図するものは分かりませんでしたが、窓に描くという発想に驚きました。

近くには色見表のような巨大な作品もありました。


ということで、前半は理屈っぽい作品が多くて難解な印象を受けました。ちょっとこの辺は好みではないのであまり楽しめませんでしたが、その後の展開を知る上では重要な流れかな。後半は一気に面白い内容となっていましたので、次回は残りの内容をご紹介しようと思います。



   → 後編はこちら



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「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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