関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

印象派を超えて-点描の画家たち (感想後編)【国立新美術館】

今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の「印象派を超えて-点描の画家たち」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


  前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に
 印象派を超えて-点描の画家たち
 ゴッホ、スーラからモンドリアンまで

【公式サイト】
 http://km2013.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/km2013/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室1E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】2013年10月4日(金)~12月23日(月・祝)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では新印象主義の誕生までご紹介しましたが、後半はその後の展開についてのコーナーとなっていました。


<3 ゴッホと分割主義>
ゴッホがパリに出た1886年には第8回印象派展とアンデパンダン展にスーラたちの作品が出品され、彼らの作品を間近で観たゴッホは翌年の1887年前半に分割主義を試みた作品を何点か集中して描いていたようです。また、同じ年にはシニャックとの共同制作を通じてその教えを受けたとも考えられるようです。しかし、忍耐力と冷静さを要するこの技法は大胆で素早い筆触を好んだゴッホの資質とは根本的に相容れることはなかったらしく、分割主義は補色や色彩のコントラストといったゴッホがオランダ時代から研究していた理論の実践という意味での刺激といったところで、ゴッホはスーラを認めながらもそれに従う気は全くなかったとも述べていたようです。ここにはそうしたゴッホの作品や、平面で出来た大胆な色彩表現によって綜合主義を築いたゴーギャン、シニャックに促されて登場したフォービズムの画家たちの作品などが並んでいました。

38 フィンセント・ファン・ゴッホ 「レストランの内部」 ★こちらで観られます
これは花束の乗ったテーブルが並ぶレストランの店内を描いた作品で、床や壁、花などに点描が施されているのがよく分かります。特に壁は赤と緑の補色で表されていて、その効果で強い色合いとなっています。スーラたちに比べると素早く点々が置かれているといった感じに見えるかな。確かに点描を試していながらも、そのまま真似ているわけではないのが伺える作品でした。

41 フィンセント・ファン・ゴッホ 「種まく人」 ★こちらで観られます
これはミレーの1850年の「種まく人」に基づく作品で、ゴッホは「種まく人」の改作を30点ほど描いているようです。中央に燦々と輝く太陽があり、やや右上に種まく人が描かれているのですが、手前の畑は青とオレンジの棒状のタッチが並ぶ大胆な表現となっています。奥の太陽や黄金に光る畑は大きめの点で表されるなど、対象によって表現が異なっているのが面白く、色合いが強烈で生命感に溢れていました。本家のミレーとはまた違った魅力ある作品です。
 参考記事:
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
  山梨県立美術館の常設 (山梨旅行)

この少し先にはゴッホの自画像(★こちらで観られます)もありました。また、キャンバスの両面に描かれたゴーギャンの作品なども並んでいます。

50 モーリス・ド・ヴラマンク 「小麦畑と赤い屋根の家」
ヴラマンクはフォーヴィスムの画家で、日本語で野獣派とも呼ばれる強烈な色彩が特徴のグループです。これは手前に小麦畑、奥に家々が立ち並ぶ様子が描かれ、ゴッホよりもさらに大胆で太く長い筆触で描かれています。特に麦は物凄い厚みで、抽象画のようにすら見えるかなw 赤・黄色・緑などが使われ、力強く激しい色合いです。一方で建物の幾何学的な感じはセザンヌからの影響を感じさせました。

この隣にはドランの作品もありましたこれも原色による激しい色合いで、分割主義がどんどん派生・進化していくのが見て取れます。


<4 ベルギーとオランダの分割主義>
続いてはベルギーとオランダにおける分割主義のコーナーで、ここは日本では馴染みの薄い画家の作品が並んでいました。ベルギーの新しい美術の振興を目指していた20人会は、フランス以外の国で最も早くスーラの分割主義を受容したようで、スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」はパリで発表された翌年の1887年には早くも20人会で展示されたそうです。20人会のメンバーもそれに影響を受けたらしく、中でもテオ・ファン・レイセルベルヘは忠実に末永くそれを継承した画家と言えるようです。その後、1890年の20人会の展覧会では4分の1を分割主義の作品が占めるなど、ベルギーにおいて分割主義は相当な熱狂ぶりだったようです。(この流れがルミニスムなどに繋がっていきます)

一方、オランダには20人会唯一のオランダ人メンバーであるトーロップによって分割主義が伝えられたようですが、象徴主義が盛んなオランダではベルギーほど分割主義は高まらなかったようです。分割主義を使った作品にも精神的で深遠な内面を感じさせる象徴主義的な側面があったようですが、アムステルダム・ルミニスム(光輝主義)を代表するレオ・ヘステルなどは色彩の鮮やかさを力強いタッチで追求したそうです。なお、今回の展覧会はクレラー=ミュラー美術館の収蔵品が多く展示されていますが、クレラー=ミュラー美術館の創設者ヘレーネ・クレラー=ミュラーの相談役だったブレマーも分割主義を追求したようで、ここにはそうした作品も含め、ベルギーとオランダの分割主義の作品が並んでいました。

 参考記事
  エミール・クラウスとベルギーの印象派 (東京ステーションギャラリー)
  アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)
  ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)


この章の最初にはトーロップによる水彩作品が並んでいました。暗めで分割主義という感じではなく象徴主義的で神秘的な作風です。また、その後はヨハン・トルン・プリッカーという画家のパステルの作品が並んでいます。こちらは色の棒を並べた作風で分割主義的な感じです。さらに、再びトーロップのチョークによる作品もあり、これは長い線が並ぶ分割的な作風へと変貌していました。 …とは言え、特に私に刺さるものは無かったので、これらの作品はメモはあまり取らず…w

52 テオ・ファン・レイセルベルヘ 「満潮のペール=キリディ」
これは20人会の中心的メンバーによる作品で、ブルターニュ半島の海辺の岩場が描かれています。非常に細かい点描で表され、岩に光が当たる様子などは緑とオレンジを組み合わせて表現しています。夕日を浴びる穏やかな雰囲気で、スーラからの影響が強く感じられました。

この辺はスーラからの直接の影響を感じる作品が並んでいました。

53 テオ・ファン・レイセルベルヘ 「《7月の朝》あるいは《果樹園》あるいは《庭園に集う家族》」 ★こちらで観られます
これは果樹園の木の下にテーブルと椅子を持ち出し、そこで何か手作業(編み物?)をしている2人の女性や、帽子を持ってくつろいでいる女性、奥にも横向きで立っている女性や木の影にも1人隠れているようです。パッと見てスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を思い起こす光景で、穏やかな雰囲気です。点描によって影は水色や紫で表されるなど、その表現方法も含めてスーラを踏襲しているようでした。

69 ヤン・トーロップ 「秋」
森の木の下の女性を描いた作品で、黄色や黄土色が使われたかなり大きめの点描となっています。大きくてモザイクのようですらあり、やや抽象的にも見えるかな。解説によると、この絵を描いた頃にモンドリアンと知り合ったそうで、大ぶりの筆触の点描はモンドリアンに大きな影響を与えたようです(それについては次の章で取り上げられています) 幾何学的な要素も感じられる作品でした。…それにしてもトーロップも結構作風が変わっているようです。さっき観たのと全然違うと思いながら見ていました。

84 ヤン・ファイルブリーフ 「積み藁のある風景」
85 ヨハン・アールツ 「砂丘の農家」
2人の画家が同じ場所から同じ家を描いた作品が並んで展示されていました。2人とも大きさも同じで一緒に描いたと考えられるようで、どちらも細かめの点描で描かれています。しかし、その絵から受ける印象は全く異なり、ヤン・ファイルブリーフは青い点が多いためか落ち着いて沈んだ雰囲気である一方、ヨハン・アールツは黄色・緑・オレンジが多いためか光が当たったような明るい色合いとなっています。どちらも良い絵ですが、同じ点描でもこうも違うのかと驚きました。この比較展示は中々面白い趣向です。

82 ヘンドリクス・ペトルス・ブレマー  「ランタンのある静物」
この画家がヘレーネ・クレラー=ミュラーに助言した人物で、自らも点描を手がけるほどだったらしく、この作品で初めて分割主義を用いて描いたようです。机の上にあるランタン、開いた本、積み重なった本などが描かれていて、特に背景は黄色と緑の対照的な色合いの点描が目立ちます。全体的に重厚で静かな感じを受け、分割主義への深い理解が伺えました。

この先にはオランダ画家の作品が並んでいました。象徴主義に分割主義を取り入れたというよりはナビ派っぽい感じがしたかな。

91 レオ・ヘステル 「モントフォールト近くの風景」
畑と空を描いた作品で、空は黄色、水色、ピンクなど太いタッチで描かれかなり大胆な印象を受けます。どこかゴッホに似たものを感じると思ったら、この画家の叔父はゴッホと共に制作したこともあったらしく、その叔父からゴッホの物の見方について聞いていたようです。また、この画家はルミニスムを代表する画家らしく、この近くにはかなり作風が異なる作品が4点展示されていました。確かにルミニスムっぽい作品もあれば象徴主義のような作品もあるなど、試行錯誤の様子が伺えました。


<5 モンドリアン―究極の帰結>
最後はオランダの抽象画家モンドリアンのコーナーです。モンドリアンは1908年にトーロップと出会い、分割主義の影響を受けたそうで、スライテルスやへステルらと共にアムステルダム・ルミニスムを頂点へと導きました。モンドリアンの色彩分割は科学的な光学理論を反映したものではなく、象徴主義的な文脈を強くとどめスーラの分割主義とは直接結びつくものではなかったようですが、線や色彩に対する考えには類似したものがあるようです。
その後、モンドリアンは1920年頃から白い地に黒い直線、赤、青、黄色といった3原色の限られた要素で画面を構成した作品を描きました。これは色彩を純色に分割しそのコントラストと調和を探求したスーラの試みの究極の帰結とも位置づけられるようで、ここにはモンドリアンの様々な時期の作品が並んでいました。

94 ピート・モンドリアン 「突堤の見えるドムブルフの浜辺」
これはまだモンドリアンが具象的なものを描いていた時期の作品で、海岸と砂丘が描かれています。かなり単純化されているものの、空には紫が点描のように打たれ分割主義からの影響を感じさせました。

この隣にはブリヂストン美術館所蔵の「砂丘」もありました。こちらはまだ具象性もあるもののかなり抽象画に近い点描です。

96 ピート・モンドリアン 「コンポジション No.II」 ★こちらで観られます
これは黒枠で区切られたたくさんの四角が並ぶ作品です。解説によると、これは水に写った木々や農場をキュビスム風に描いているとのことですが、どう見ても抽象画っぽく、見た瞬間はクレーの作品かと思いました。黒い区切りと色面を使いキュビスムから抽象画へと進めている段階なのかな。段々とよく知られるモンドリアンっぽくなってきた感じがします。

100 ピート・モンドリアン 「赤と黄と青のあるコンポジション」 ★こちらで観られます
これは黒枠に白地の大きな正方形と、同様の小さめの正方形(青、黄、赤、白)が並んでいる抽象画です。モンドリアンというとまず思い浮かぶのはこの作風かな。曲線を廃し、垂直・水平にしていったようで、色も4つしかなく分割主義をとことん突き詰めるとこういう結論になるようです。と、モンドリアンが新印象主義とそこまで深く繋がっているというのを知らなかったので、この帰結については意外でした。

最後にクレラー=ミュラー美術館の案内の映像(6分)を流していました。


ということで、中盤は見どころが多かったように思いますが、後半はちょっと別物といった感じだったかなw あまり知らないオランダの新印象主義などを知ることが出来たのは収穫ですが、若干地味な感じもしました。とは言え、近現代の美術史を知る機会でもあるので、これから美術に詳しくなりたい人にお勧めの展示です。


おまけ:
クレラー=ミュラー美術館のゴッホと言えば真っ先に「夜のカフェテラス」を思い浮かべますが、流石に来ていませんでしたw 


 参照記事:★この記事を参照している記事


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