関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

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アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界 (感想後編)【世田谷美術館】

仕事が忙しくて間が空きましたが、今日は前回の記事に引き続き、世田谷美術館の「アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


  前編はこちら

P1130332.jpg


【展覧名】
 アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界

【公式サイト】
 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

【会場】世田谷美術館
【最寄】東急田園都市線 用賀駅

【会期】2013年9月14日(土)~11月10日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半は比較的有名な画家が多かったように思いますが、後半はあまり知られていない画家の作品もありました。


<5. 才能を見出されて―旧ユーゴスラヴィアの画家たち>
5章は旧ユーゴスラビアの素朴派についてのコーナーです。ユーゴスラビアの素朴派の祖とされるイヴァン・ゲネラリッチは少年の頃から伝統的なガラス絵の技法で描いていたそうで、16歳で画家のクスルド・ヘゲドゥシッチに出会いました。1930年当時は国が独立したばかりで、若い画家たちは自国の芸術文化を模索していたようで、ヘゲドゥシッチ等の「ゼムリャ(大地)」に招かれたゲネラリッチ達は やがて社会主義国家の中で国民画家としての地位に押し上げられていったそうです。その後もユーゴスラビアは素朴画家達が数多く見出され国際的な評価を受けていったのですが、一般に素朴派は政治には無縁であるのに対して旧ユーゴスラビアにおいては国家の動向と強く結びついた一面があったようです。ここにはそうした旧ユーゴスラビアの画家の作品が並んでいました。

62 イヴァン・ゲネラリッチ 「ダブル・ポートレート」
中央に枯れ木が描かれ、その両脇に雪原を背景にした2人の老人の肖像が描かれた作品です。パイプをくわえた帽子の男性と白髪にエプロンのような姿の男性で、どちらも濃密かつ鮮やかな色合いとなっています。背景にはやけに小さな家なども描かれ、ルソーに通じるものがあるかな。意外と緻密な絵で、陰影なども付けられていました。解説によると、これは板ガラスの裏面から油彩で描いているようで、それが色鮮やかに見える要因なのかも。
この近くには同様にガラス絵の技法で描かれた他の画家たちの作品もありました。

66 イヴァン・ラツコヴィツチ 「散在する村落」
これは巨大なテーブルの上に家々が乗っているようなシュールな絵で、その下にも村が広がっています。テーブル上の端っこの方の家はこぼれ落ちるような感じで、村の周りには黒く細い木が無数にあり、村では人々が車輪遊びに興じているようです。詳しい解説などはありませんでしたが、これは元々絵が上手い人が素朴派の要素を取り入れたように見えるかな。素朴派というよりはシュルレアリスムといった感じを受けました。


<6. 絵にして伝えたい―久永強>
続いては強い思いに駆られて絵を描き始めた久永強のコーナーです。久永強は熊本でカメラ店を営みクラシックカメラの修理は一級の名人でしたが、1987年の下関で香川泰男の「シベリア・シリーズ」を観た際、夢中になり自ら封印していたシベリア抑留の記憶が一気に吹き出したそうです。しかし、これは自分の知るシベリアではないと考え、私のシベリアを描かねばならないという強い思いに駆られて絵を描くようになりました。久永は「描き始めると無念のままに死んでいった戦友たちの顔が次々に現れ、俺も描いてくれと言い出した」と語っていたそうで、健康を害して終了するまでに43点描いたようです。ここには久永の言葉と共に30点程度並んでいました。

74 久永強 「パーム鉄道建設」
暗い森と線路を背景に、やせ細り目を閉じた顔と、木材を運んでいる人々の姿が描かれた作品です。捕虜となった日本兵たちは鉄道工事に駆り出され、過酷な条件の元で厳しい労働をしていたようです。また、ロシアの夏は白夜で昼のノルマがこなせないと残業があり延々と白夜の地獄が続いたとのことで、これもそうした夜を描いているようです。力ない顔には希望が感じられず、ひたすら労働させられる哀しみと絶望に満ちて、観ていて切ないほどでした。決して画力があるわけではありませんが、心打つものがあります。

79 久永強 「友よさらば(埋葬)」
これは穴の中に置かれた2人の亡骸が描かれた作品で、画面は暗く細部まで描かれていませんが、それがかえって力無い感じを受けます。極寒の劣悪な条件と栄養不足で仲間はどんどん死んでいったようで、この作品以外にも死体がいくつも並んだ様子が描かれた作品もありました。生きながらに骨と皮だけになっていったようです…。

80 久永強 「鬼の現場監督」 ★こちらで観られます
これは鉄道工事の現場監督のロシア人を描いた作品で、ノルマのためには手段を選ばないため陰ながら鬼と呼ばれていたそうです。まっすぐにこちらを観る肖像で、周りは暗く顔の右半分は影になっています。そこに見開いた青い目が刺すようで、つり上がった眉や一文字の口などと共に恐ろしげな表情となっていました。冷徹さがよく表われた異様な存在感のある作品です。

84 久永強 「生ける屍」
これはガリガリで肋が浮き上がった人物が祈るように手を組んでテーブルに向かっている様子が描かれた作品です。そのテーブルには小さな黒いパンとスープがあり、極寒の重労働にも関わらず1日の食料は黒パン300gと雑穀スープのみだったようです。絵の右上には大盛りのご飯と魚などのおかずを前にしている日本女性が小さく描かれていて、これを夢見ているようでした。もはや食べ物を夢見ることぐらいしか希望がない悲惨な状況が伺えます。

99 久永強 「白夜の午前零時」
これは薄暗い白夜の夜の捕虜の収容施設が描かれた作品で、建物の前の木には首を吊っている人の姿が描かれています。生きることに疲れ果てた末のようで、遺体からは羽の生えた人物が上空へと向かっていく様子が描かれていました。作者はこの日は寝付かれずこの場面を観たそうです。成仏を願って羽を生やして描いたのかな…。

100 久永強 「翼が欲しい」
これは空を飛ぶ渡り鳥の群れを見上げる帽子の人物が描かれた作品です。空はどんより暗い雰囲気で、空飛ぶ鳥が羨ましくて仕方ないといった感じのようです。望郷の念と、絵からにじみ出るやるせなさや絶望感が半端じゃなかった…。


<7. シュルレアリスムに先駆けて>
続いてはシュルレアリスムの自動書記に先立つ表現のコーナーです。ヴィルヘルム・ウーデの「聖なる心の画家たち」の1人であるセラフィーヌ・ルイは天からの啓示を受けて家政婦の仕事の合間に絵を描くようになったそうで、神や霊との交信によって描くといった手法はシュルレアリスムの関心の的でもあったようです。ここにはそうしたトランス状態で描かれた作品などが並んでいました。

103 マッジ・ギル 「”マイニナレスト”モーセ」
これは守護霊との交霊がきっかけで絵を描くようになったという看護婦の白黒の素描作品で、無数の女性の顔や髪が塔のように積み重なっている様子が描かれています。いずれも虚ろな感じのする顔で、見た目はかなり怖くてインパクト大ですw 解説によると、これにはシュルレアリストたちが目指したオートマティスムが認められるそうで、トランス状態で描いたのだとか。一種の狂気が感じられました。
 参考記事:シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)

この近くには聖なる心の画家のセラフィーヌ・ルイの作品や、ミロやエルンストといったシュルレアリストの作品もありました。

109 草間彌生 「夜・魂のかくれ場所で」
これは柱状の網のようなものに沢山の歪んだフクロウが描かれている作品です。それぞれの大きさもまちまちでギッシリ詰まっていて異様な雰囲気があり、周りは暗くやや恐怖を感じました。こちらは幻覚を描いているようで、草間彌生のよく知られている水玉の作風とは異なる作風でした。
 参考記事:草間彌生 永遠の永遠の永遠 (埼玉県立近代美術館)


<8. アール・ブリュット>
半芸術、半文化、半教養主義を主張したジャン・デュビュッフェは精神の障害を持つ人々の作品に興味を持ち、独創性に満ちた作品を「アール・ブリュット」(生の芸術)と名付けコレクションと展示を始めたそうです。そしてそれは後にイギリスの著述家ロジャー・カーディナルによって「アウトサイダー・アート」と英訳され、現在でも使われているようです。ここには3点だけデュビュッフェ関連の作品が並んでいました。

110 ガストン・シェサック 「ロレーヌ十字架」
これは木に不定形の模様の色を塗り、十字に組んでその上に人の顔をつけた彫刻作品です。(カカシみたいな感じ)意味などは全く分かりませんが、色の使い方は他に類を見ない個性を感じます。裏に回ると色々貼ってあったりして、廃材だったのかも。解説によると、こうした作品は「トーテム」と呼ばれ多数作られたようです。

この近くにはデュビュッフェの作品もありました。


<9. 心の中をのぞいたら>
20世紀初頭よりヨーロッパの近代精神医学は、精神病院の中で見出された精神に障害のある人々の描く素描に強い関心を持っていたそうで、精神科医のハンス・プリンツホルンが出版した「精神病者の芸術性」はパウル・クレーを始め前衛的な画家やシュルレアリストたちにも注目されたそうです。ここにはそうした精神に障害を持つ人々が描いた作品が並んでいました。

113 アドルフ・ヴェルフリ 「ツィラー=タールの聖三位一体」
これはパッと観た時に音楽ホールのように見えましたが、実際には何が描いてあるのか分からず、十字の乗った人の顔や楽譜のような模様などが描かれているように思われます。とは言え、何かしらの規則性があり緻密で流れるような感じで、リズム感がありました。解説によると、後にこの作者はデュビュッフェやシュルレアリストのブルトンらに賛辞されたとのことでした。

115 ルイ・ステー 「身振りをする6人」
これは有名な建築家のル・コルビュジエの従兄弟の作品で、6人の人の姿らしきものが影絵のように描かれています。踊るように手振り身振りをしているようで、抽象的ながらも躍動感があるかな。解説によると、この作者はコロラド大学の美術学部長にまでなった人物ですが、精神のバランスを崩してスイスに帰国して高齢者ホームでドローイングを描いていたそうで、彼を訪問したル・コルビュジエがその才能を発見して、活動を支援していたそうです。あちこちに指紋が残っているなど制作の様子も伺えました。
 参考記事:ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)


<10. グギングの画家たち>
最後はオーストリアのウィーン郊外にあるマリア・グギング国立神経科の病院内にある「グギング芸術の家」の芸術家たちの作品が並ぶコーナーです。

125 ヨハン・フィッシャー 「猟兵」
これは猟銃を持つハンターと、獲物を持つハンターが向き合っている様子を描いた作品で、お互いに平面的な感じで「エジプトの壁画のようだ」という解説が的を射ているように思えます。さらに自身の世界観を表した造語によるテキストが画面を埋め尽くしていて、一種独特の世界が展開されていました。

133 ハインリヒ・ライゼンバウアー 「扉」
縦4つ×横7つの扉が並んで描かれた作品で、正確な等間隔ではなくややズレて描かれているものもあります。中央あたりはやや黒くなっていたり、黒ずんでいるので重厚な扉に見え、それが並んでいると若干圧迫されるような印象でした。解説によると、この作者は単一のイメージをグリッド上に整列して反復する作風のようです。


ということで、思った以上の充実ぶりで見応えがありました。中にはこれが美術なのかなというものもありましたが、型にはまらない個性派ばかりだったと思います。特に久永強のコーナーはこの先ずっと心に残りそうです。もう少しで終わってしまいますが、お勧めの展示です。


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