関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道 【Bunkamuraザ・ミュージアム】

この前の土曜日に、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで「山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」を観てきました。

P1130363.jpg

【展覧名】
 山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_yamadera.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅


【会期】2013/10/20(日)~11/18(月) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが、自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は山形県にある山寺 後藤美術館が持つ洋画の展示となっています。山寺 後藤美術館は700点のコレクションがあり、その中核を成すのはバルビゾン派だそうで、今回はバルビゾン派に至るまでの道を辿るように、17世紀の宗教画から19世紀の風俗画まで、250年のヨーロッパの絵画の歴史を俯瞰するような内容となっています。去年の春頃にも山寺 後藤美術館の展示を観た覚えがありますが、今回はさらに点数が多めで約70点の作品がテーマごとに分類されていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
 参考記事:ヨーロッパ絵画に見る 永遠の女性美 (ニューオータニ美術館)


<神話・聖書・文学>
まずはかつて一番格上の画題とされた宗教画や歴史画のコーナーです。15世紀末に盛期に達したルネサンス絵画は19世紀に至るまでヨーロッパ美術の規範で在り続けたそうで、古代ギリシア・ローマの神話と聖書や聖人たち基づく主題を描くことが絵画の志向の役割であると考えられていたようです。特に17世紀以降ヨーロッパ各国に王立や帝室のアカデミーが設置されるとこの役割は規則として定められ、神話・宗教・歴史の出来事・英雄を描く絵画が「歴史画」と総称され最も重要な使命となり、アカデミーは主題を規定するだけでなく様式・技法に至るまで画家に制約を課したようです。教育の場や展覧会でもそれは徹底され、自由な創造性を奪うことにもなりましたが、一方ではアカデミックな作品には長い修練の後に習得した技法を駆使して精緻に描き上げられた確固たる様式があり、主題を読み解く楽しみもあるそうです。ここにはそうしたヨーロッパで長く主流を務めた作品が並んでいました。

5 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「悲しみの聖母」
これは青いフードを被ってやや上を見ている聖母マリアが描かれた作品で、目には大粒の涙があり、十字架の上で犠牲となったイエスを見上げ悲嘆に暮れている様子のようです。この構図は似たような作品が結構あるように思いますが、こうした描き方がアカデミーの典型なのかもしれません。柔らかな光が体を包み、悲しげながらも神秘的な雰囲気がありました。
 参考記事:聖母像の「到来」 (東京国立博物館)

10 フランチェスコ・サルヴァトール・フォンテバッソ 「東方三博士の礼拝」
これは馬小屋の前で生まれたばかりのイエスを中心に、マリアとヨセフ、東方三博士たちや何人かの牧童、家畜たちの姿が描かれた作品です。空からは放射線状の光が降り注ぎ、顔に羽が生えた天使たちも舞っています。 全体的に結構粗削りな感じの筆致で、茶色~赤っぽい色合いとなっているのが大胆な印象を受けました、また、小屋の屋根や背景の山、三博士の背中などが左上から右下への斜めの対角線を強く意識した配置になっていて、この構図にも驚きました。この時代にこういう作品があったというのが面白いです。

この辺にはエジプトへの逃避やキリストの洗礼など聖書関連の作品が並びます。

18 ジャン=ジャック・エンネル 「荒れ地のマグダラのマリア」
これは洞窟で岩を背にして足を伸ばして横たわる裸婦を描いた作品で、その脇にはマグダラのマリアを示す香油の壺が置かれています。手を組んで目をつぶり、微笑んでいるようにも見えるかな。真横からの構図はあまり観たことがなかったので面白く感じました。解説によると、(この絵には香油壺や洞窟などマグダラのマリアを示すものはありますが)物語や神話を題材としながらも説明的要素がほとんど省略されて裸婦そのものが中心となった絵画は、19世紀のサロンで飛躍的に増えたとのことでした。

17 アレクサンドル・カバネル 「デスデモーナ」
これはじっとこちらを観て手を組んでいる白いドレスの女性が描かれた作品で、頭には髪飾りがついています。解説によると、主題はシェイクスピアの「オセロ」のデズデモーナという女性で、不貞を働いたというデマによってこの後 夫に殺されてしまうそうです。懇願するようにこちらを見つつも既に表情には絶望の色が伺えるとのことでしたが、私には睨んでいるように見えました。作風とは独特の緊張感がある作品です。


<美しさと威厳>
続いては肖像画のコーナーです。肖像画は近代以前の画家にとって暮らしを営むための重要な手段だったそうで、注文主やその家族への賛辞として制作され、女神や妖精などの愛らしい雰囲気が漂う姿が求められたようです。ヴィーナスなどの女神に見立てて描く女性像も流行する一方、男性は威厳をたたえ身分や地位を観るものに感得させることが求められたようです。そして19世紀に入ると産業革命が起き新しい中間層が生まれ風俗画が好まれ流行し、こうした新興階級の需要を汲み上げたのが画商たちでした。美術品市場が成立すると、画家たちはパトロンの顔色を伺う必要がなくなり注文主の肖像ではない人物像も描くようになったようです。ここにはそうして描かれた愛くるしい少女像や神秘的な女性像などが並んでいました。

35 ジョン・エヴァレット・ミレイ 「クラリッサ」 ★こちらで観られます
これはサミュエル・リチャードソンの小説の主人公の女性を題材にして自分の娘をモデルに描いた作品です。胸前の開いたピンクのドレスと豪華な帽子を被った女性で、手には手紙を持っているのですが、破いているように見えます。遠くを見るような顔がちょっと不機嫌そうに見えるかな。ミレイというとラファエロ前派時代の精緻な画風を思い起こしますが、これは晩年の作品のようで結構筆致は粗めに見えます。しかし、気品ある雰囲気は健在で、背景が暗いこともあって女性は明るく見えました。

この近くには以前ご紹介した「エコーの声を聴く」「少女と鳩(模写)」「愛しの小鳥」などもありました。

41 ジョアッキーノ・パリエイ 「夜会」
これは貴族たちのパーティーを描いた作品で、ドレスの女性2人が廻るように踊り、その横では椅子に座った男とそれに耳打ちしている男、右の方には音楽を演奏している者達の姿があり、左の出入口には身分の高そうな中年女性が到着して出迎えを受けているようです。全体的に華やかですが、騒々しくてどこかいかがわしくもあり、動きや感情が多く感じられました。これは各人のストーリーを想像させて面白いです。


<風景と日々の営み>
続いては今回のメインとも言えるバルビゾン派とその追随者、同時期のレアリスト(現実主義者)などの作品が多数展示されていたコーナーです。風景画は19世紀に入って急速に隆盛したジャンルで、当時は産業の発達によってパリの人口は一気に数倍に拡大し、都市を結ぶ鉄道網の発展など急激な変化があったようです。都市で暮らす中産階級も大いにストレスを感じていたようで、田園へのノスタルジーが高まり富裕層は田園や農村を描いた作品を好んで買うようになったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

56 ポール・ユエ 「春の朝」
ポール・ユエはロマン派の画家でドラクロワと生涯に渡る友情を築いた人物です。この絵には森の中の河とその河畔が描かれていて、舟が浮かび数人が漕いでいるようです。河畔にも白鳥や のんびりと草むらに寝転がった女性など全体的に穏やかな光景となっています。ぼんやりとした空気が漂うような画風で、細部まではあまり描かれておらず粗いタッチはむしろ後の印象派を彷彿とさせます。解説によると、この画家は光の効果によって奥行きを生み出す空間表現や明暗のコントラストに優れていたようで、フランス各地の森や農村などを題材にした作品を残したそうです。自然観察や空間の扱いはバルビゾン派にも影響を与えたようで、この作品からもそれが感じられました。

61 テオドール・ルソー 「ノルマンディーの風景」
平原を描いた作品で、牛が水を飲んでいて画面の上半分を占める空はどんよりした雲が覆っています。筆跡が残った厚塗りとなっていてボリュームある画面かな。牛の近くには人影らしきものがあり、のんびりとした雰囲気がありました。遠くまで見渡せる広々した光景です。

この近くにはコローの作品などもありました。

55 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、川岸の樹の下で2人の女性が休んでいる?光景が描かれています。やや灰色がかった空にぼんやりした木々の葉っぱなどからはコローらしい空気感が感じられます。柔らかく詩情溢れる画面となっていました。

65 アントワーヌ・シャントルイユ 「黄昏」
河で水を飲む牛達と牛飼いが描かれた作品で、周りはかなり薄暗く地平線のあたりが黄色くなり夕暮れ時のようです。非常に郷愁を誘われる牧歌的な光景で、暗めの色合いが好みでした。解説によると、シャントルイユはコローの教えで戸外で制作し、ドービニーたちと交わってバルビゾン村で制作したそうです。明るい色調で自らの印象に忠実な絵画を残し、印象派の先駆者とされているとのことでした。

この辺はバルビゾン派から影響を受けた画家たちの作品が並んでいました。

71 ギュスターヴ・クールベ 「波」
これは岩場に打ち寄せる波を描いた作品で、海の上にはヨットも描かれています。さらにその上には覆いかぶさるように雲が広がっていて、荒々しいタッチで力強い印象を受けます。解説によると、これはエトルタの海を描いたものですが、実際にはクールベが亡命したスイスで描いたそうで、記憶にもとづいているようです。しかしそうとは思えないほどに迫力のある画面となっていました。

62 シャルル=エミール・ジャック 「月夜の羊飼い(帰路)」
これは暗い画面の中、沢山の羊と羊飼いが歩いている様子が描かれています。画面中央あたりには輝く月があり、柔らかくも強い光を発しています。羊飼いはそれを見ているようで、月光に羊たちが照らされて神秘的な光景となっていました。


<静物>
最後は19世紀にヨーロッパ各国で描かれた静物のコーナーです。静物は古代ローマの頃から描かれている画題ですが、それがそのまま後世に繋がっているわけではないそうで、盛んに描かれるようになったのは17世紀になってからで、特にプロテスタントだったオランダとベルギーがその中心でした。オランダでは偶像の宗教画の代わりを静物がつとめたようで、そこには教訓やヴァニタス(空虚・虚栄)といったこの世の虚しさや、死への備えなどを表しているようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

45 モデスト・カルリエ 「花といちごのある静物」 ★こちらで観られます
大きなピンク色と白の牡丹の花が東洋風の花瓶に入っている様子が描かれた静物画で、その脇には皿に盛られたイチゴもあります。背景は緑で赤やピンクが一層明るく見えて一見すると華やかな印象を受けますが、手前には散った花びらやイチゴ、ポトリと落ちた牡丹の花などもあり儚さを感じさせるモチーフもあります。解説によると、イチゴはマリアを象徴するそうで、命の誕生と死を暗示しているのではないかとのことでした。

49 ジェルマン・テオデュール・リボ 「ざくろのある静物」
これは剥かれたオレンジとザクロ、りんご、ぶどう、ガラスの容器に入ったぶどう酒などが描かれた作品で、これらにはキリスト教的な寓意があるようです。ザクロはキリストの復活、オレンジや林檎は受難、ぶどうとぶどう酒はキリストの血を象徴しているそうで、何か教訓が込められているのかもしれません。大胆な筆使いで描かれ重厚な色合いで、背景が暗いこともあってオレンジとザクロが特に明るく見えました。


ということで、以前観たものも多かったですが、満足することができました。やはりバルビゾン派の頃から絵画は一気に面白くなったのだなと実感できたかなw もう会期も残り少ないですが、西洋絵画の流れを抑えたい方は是非どうぞ。


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