関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美 【東京国立博物館 平成館】

先日の土曜日に、上野の東京国立博物館で始まったばかりの「クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美」を観てきました。

P1140487.jpg

【展覧名】
 クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美

【公式サイト】
 http://www.nichibisai.jp/cleveland/about/index.html
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1624

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2014年1月15日(水) ~ 2014年2月23日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構混んでいて、特に1~2章あたりは人だかりができるくらいでした。しかし3章以降は大きめの作品が多いこともあってか、それほど気になりませんでした。

さて、今回はアメリカのオハイオ州にあるクリーブランド美術館が誇る日本美術(と中国美術など)のコレクションの里帰りとも言える展示で、同時開催の「人間国宝展」と、1/25からの東京都美術館の「世紀の日本画」とセットで日本美術の祭典と位置づけて開催されています。 クリーブランド美術館は1913年に開設され、体系的に作品収集された日本・東洋美術の他、中世ヨーロッパから近代の印象派など現代に至るまで45000点ものコレクションを誇る総合美術館だそうで、今回は選りすぐりの日本美術を中心に、ルーツが分かる中国の品なども特別展示として出品されていました。 テーマごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品を通してご紹介しようと思います。なお、作品番号に特別と書いてある作品は日本以外で作られた作品です。


<第1章 神・仏・人>
まず最初は神仏や人物を描いたコーナーです。展示されている作品同士の関係は特になく、時代も様々なので主題くらいしか接点はないかも。

15 伊年 印 「雷神図屏風」
これは6曲1隻の屏風で、有名な俵屋宗達の風神雷神図屏風を模したものです。ここには雷神しかいませんが、元は6曲1双だったんじゃないかな。左下には「伊年」の印があり、宗達の工房で作られたことがわかりますが、宗達に比べると雷神の顔は龍のようで、よりコミカルな感じになっています。太い輪郭でゴツゴツした感じもして、宗達に比べると数段見劣りするかもw とは言え、宗達からの影響がよく分かりました。

特別1 「釈迦如来像」
これは京都の東福寺にあった掛け軸で、元々は3幅対だったうちの中央で、残りの右幅と左幅(文殊菩薩と普賢菩薩)は静嘉堂文庫に残っているようです。こちらには正面を向いて座る釈迦と2人の弟子が描かれ、印を組む釈迦の爪はかなり長く描かれています。下に描かれた弟子は阿難と迦葉(かしょう)で、釈迦に比べて小さめとなっています。経年によって劣化していますが、釈迦の赤い服と緑の台座など、色の対比が鮮やかな作品となっていました。

5 「二河白道図」 ★こちらで観られます
これは浄土信仰の説話を描いた掛け軸で、中央の白い橋を境に向こう側に極楽浄土、こちら側には現世が描かれています。現世側には武装したならず者や悪獣たちが追いかけてくるように描かれていて、後戻りは出来なそうな雰囲気です。また、橋の左右には赤と青の川があり、これは憎しみの火の河と俗世の執着の水の河で、火の河には取っ組み合いをしている人々、水の川には男女の姿がありました。この主題の作品は浄土信仰を説明するためによく描かれたらしく、これは鎌倉時代の作品ですが火の河などは色鮮やかに残っていて、保存状態が良さそうでした。

13 「朝陽補綴図」
これは崖の下で片膝をついて縫い物をしている僧侶を描いた作品です。細い糸と針が横に伸びていて繊細な表現となっている一方で、僧侶の服や持っている衣は大胆な簡略化となっているなど、表現の強弱が対比的となっています。解説によると、これは禅宗の「日常の中の修行」を表しているそうで、面白い主題となっていました。

16 伝 岩佐又兵衛 「琴棋書画図」
これは掛け軸で、文人が嗜むべきと言われていた4つの教養を題材としています。上から順に、琴を弾く女性、囲碁をする男女、樹の下で本を読む男性、庭に広げた絨毯のようなものの上で肘をついて寝そべって筆を取る男性が描かれています。いずれも江戸時代くらいの人物のようで、人物がジグザグに流れるように配置された構図が面白く感じられました。

22 渡辺崋山 「大空武左衛門像」
これは大きな掛け軸に描かれた熊本藩お抱えの力士だった人物で、かなり巨大に描かれているのですが、なんと221cmもあったらしく ほぼ実寸となっているようです。牛を跨げるほど足が長いことから牛跨ぎという愛称があったそうで、江戸でも評判となり絵画にもよく描かれたようです。その大きさから誇張されて描かれることも多かったそうですが、この絵では写実的となっていて、その理由としてピンホールカメラの要領を用いた手法が用いられているようです。 とにかく大きくて迫力があるのですが、結構良い人そうな柔和な雰囲気に見えるかも。この絵の隣には実寸代のコピーと手形があったのですが、180cmの私が子供に見えるくらい圧倒的な大きさでした。江戸時代にこんな人がいたら巨人そのものですねw

20 山本梅逸 「群舞図」
これは障子が並ぶ屋敷の軒先を描いた作品で、その障子には夜の宴会で踊る人の影が写っています。横にずらっとならんでいる踊り姿は軽妙で、リズミカルかつ楽しげな雰囲気です。1~2人ほどは障子がない所で踊っている姿もあり、華やかな様子が伺えます。 一方、庭には川が流れ静かな夜の光景となっていて、室内と対照的になっていました。面白い題材の作品です。

23 河鍋暁斎 「地獄太夫図」 ★こちらで観られます
室町時代の伝説的な遊女である地獄太夫を描いた作品で、彼女は山賊にさらわれて遊女にさせられたのですが、それを前世の報いとして受け入れ、自ら地獄を名乗って地獄絵図を描いた着物をまとっていたと言われています。ここでは草木と月が描かれた屏風に向かって立ち振り返るような姿で描かれ、極彩色の紺を地に地獄が描かれた着物を着ています。お腹辺りには賽の河原と地蔵に扮する布袋、右袖の辺りには閻魔大王と福禄寿、裾には大黒と恵比寿の姿もあり、地獄と七福神が混じったような文様となっているのが面白いです。地獄太夫は美人絵のように切れ目の色っぽい表情で描かれ、妖艶な雰囲気です。河鍋暁斎らしいモチーフと強烈な色彩感覚が印象に残る作品でした。


<第2章 花鳥風月>
続いては動物や植物などを描いた作品のコーナーです。ここは点数少なめ。

24 伝 没倫紹等 「南瓜図」 ★こちらで観られます
これは水墨の掛け軸で、カボチャに綱を巻いて大勢の蟻の擬人像のような者たちが引っ張って運んでいる様子が描かれています。カボチャの上では笹を持って応援(指揮?)していたり、後ろからテコを入れたり、周りで太鼓を鳴らして鼓舞したりと何とも楽しげな雰囲気です。蟻人間は若干キモいけど、生き生きとした面白い作品でした。

28 雪村周継 「龍虎図屏風」 ★こちらで観られます
これは水墨の6曲1双の屏風で、右隻に雲間から現れた龍、左隻に岩の上の虎が描かれています。龍は上を向いて手を開き、周りの雲は渦を巻いて 波は飛沫を上げるなど 力強い風と勢いを感じさせます。一方の虎は岩の上で前足を揃えて右を見ていて、周りの竹は風になびているようです。こちらは小首をかしげて猫みたいに見えるかなw どちらも怖いというよりはユーモラスな雰囲気があり、勢いとのギャップが面白かったです。


<第3章 物語世界>
続いては物語を主題にした作品のコーナーで、特に伊勢物語に関する作品が並んでいました。

41 渡辺始興 「燕子花図屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の金屏風で、伊勢物語9段「東下り」をテーマにして沢山の燕子花(かきつばた)が描かれています。渡辺始興は尾形光琳に画を学んだとされ、この主題も光琳の作品から発想を得ているようです。花や草は上のほうだけ描かれているものが多く金の水面から顔を出しているような感じに見え、連続的に並んでいます。1つ1つの花の単純化は細やかで、金で葉っぱの線を入れるなど優美な雰囲気がありました。しかし、構図にあまりリズムを感じないというか、雑多な印象の花の配置が面白くないかなw 解説では褒めていましたがどうしても光琳の作品と比べてしまうので、イマイチ感は否めないかもw

42 深江蘆舟 「蔦の細道図屏風」 ★こちらで観られます
こちらも東下りをテーマにした6曲1双の小さめの屏風で、金地に川や山道、赤く染まる草木などが描かれています。川岸にいる人物(恐らく主人公の在原業平)は山道を下ってくる僧侶を見つめていて、これは敦賀の宇都山で知り合いの修行僧に出会い 都に残した恋人への手紙を託すシーンのようです。全体的に単純化が面白く、金や赤が響きあって静けさと華やかさが同居するような感じでした。


<特別展示 近代西洋の人と自然>
続いてはやや唐突にクリーブランド美術館が誇る近代西洋画のコーナーです。アンリ・ルソー、クロード・モネ、ベルト・モリゾ、パブロ・ピカソの4人の作品が並んでいました。

特別9 アンリ・ルソー 「トラとバッファローの戦い」 ★こちらで観られます
鬱蒼としたジャングルの中で、虎がバッファローに飛びかかっている様子が描かれた作品です。周りにはバナナの木らしきものも描かれているのですが、全体的にやや奇妙な感じを受けます。虎は犬みたいだし、バナナは逆さになっている等、一部はルソーの想像で補っているのでこんな感じに仕上がったのだと思いますが、それが妙な味わいになっています。大画面に色鮮やかに描かれているので、一際目を引く作品でした。

特別7 クロード・モネ 「アンティーブの庭師の家」
これはフランスの地中海沿岸を描いた作品で、手前に木とオレンジ色の屋根の家が描かれ、奥に海が見えています。全体的に明るい色彩となっていて、特に屋根は陽が当たっている様子が強く表現されています。 南フランスの暖かな気候まで伝わってきそうな作品でした。

この隣にはモリゾの作品もありました。また、ピカソは写実的な女性の肖像画でした。


<第4章 山水>
最後は山水画が並ぶコーナーでした。

特別5 呂文英 「江村風雨図」
これは掛け軸で、崖下の水辺にある家と船が描かれています。しかし目を引くのはそれより上の方で、右上から対角線上に幾重にも風の流れが表され、木々が揺れています。嵐なのか、風の強さが感じられ、大胆な印象を受けました。

33 狩野秀頼 「四季山水図 夏景・秋景・冬景」
これは3幅対の掛け軸で、いずれも川と山の風景を描いたものです。右幅は木々が生い茂る夏、中央は渡り鳥が来る秋、左幅は雪景色の冬となっていて、元々は春も揃いで4幅だったようです。非常に細かく描かれていて、葉っぱや山肌の点描は中国宋代の米法山水の影響が観られるとのことでした。16世紀の作品ですが、遠近感や大気の表現が観られるのも驚きでした。

この近くには米法山水の手本となった中国の米友仁の作品もありました。

36 曽我蕭白 「蘭亭曲水図」 ★こちらで観られます
これは王羲之の曲水の宴を題材にした作品で、切り立つ岩山と滝、川などが描かれています。かなり小さめの人の姿もあり、大自然と人の小ささが誇張されている感じです。蕭白らしい極端な濃淡や密度の濃さで、霞む背景とカクカクした太い輪郭の手前ではだいぶ印象が異なりました。
 参考記事:書聖 王羲之 感想後編(東京国立博物館 平成館)


ということで、日本美術だけかと思ったらそれ以外の作品も楽しむことができました。正直、国内の(特に東博の)作品などと比べると地味な印象も受けましたが、海外でこれだけ幅広いコレクションを集めているのは驚きだと思います。今季は日本美術の祭典と銘打っていますので、他の2つと合わせて観ておきたい展示です。


 参照記事:★この記事を参照している記事


 
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