関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」 【東京国立博物館 平成館】

前回ご紹介したクリーブランド美術館展を見た後、そのまま隣の部屋で同時開催の「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」を観てきました。

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【展覧名】
 日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」

【公式サイト】
 http://www.nichibisai.jp/ningenkokuhou/about/index.html
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1625

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2014年1月15日(水) ~ 2月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
閉館時間が迫りつつあったこともあり、こちらはクリーブランド美術館展よりは若干空いていました。

さて、この展示はその名の通り「人間国宝」に認定された工芸家の作品が一同に会した内容となっています。人間国宝とは重要無形文化財の保持者であり、歴史的または芸術的に価値の高いものが無形文化財とされ、より重要なものが重要無形文化財とされています。工芸では183件の指定があり、これまで166人が人間国宝とされてきたようです。この展示では数多くの人間国宝の作品が3つの章に分けて展示されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品を通してご紹介しようと思います。


<第1章 古典への畏敬と挑戦>
まずは人間国宝の作品と、彼らが目指した古典の作品が並んで展示されているコーナーです。

4 増田三男 「金彩銀壺[山背]」
これは金属製の壺で、側面に簡略化された鹿が並んだ姿の細工が施されています。その鹿の文様や銀の色合いが雅な雰囲気で、軽妙なリズムも感じました。この隣には奈良時代の国宝「金銅唐花文鋺(興福寺鎮壇具のうち)」という興福寺の堂塔を立てる際の神を鎮める地鎮具があり、お互いに魚々子紋があるのが共通しているようでした。

8 秋山逸生 「輪花文縞黒檀印箱」
これは小さめの箱で、上面や側面に花のような円形の文様が象嵌されています。縞黒壇の地と共に金や象牙などで装飾され、美しさと格調高い雰囲気がありました。

続いては刀剣のコーナーです。

24 大隅俊平 「太刀 銘 大隅俊平作 平成十年七月十日」
これは長めの太刀で、直線的な刃紋である直刃の美を追求した作品です。刃紋が並行に並んでいるのがすっきりした印象で、解説では淡い金筋が入っているとのことでしたがちょっと遠目からはよく分かりませんでした。
この隣には刃紋がダイナミックな刀があり、比べると一口に刀と言っても色々と印象が違うことがよく分かりました。

31 三輪休和 「萩耳付水指 銘 岩波」
これは赤地に白い釉薬がかかった水差しで、釉薬は豪快にかかっていて垂れてるような印象を受けます。形もややひしゃげていて全体的に力強く、萩焼のイメージを越えたものを感じました。弟の三輪壽雪 氏の作品と共通するものがあるように思います。
 参考記事:三輪壽雪・休雪 ― 破格の創造 展 (智美術館)

38 田畑喜八(三代) 「一越縮緬地鳳凰桐文振袖」 ★こちらで観られます
これは友禅染の着物で、桐の木の周りに2羽の鳳凰が色鮮やかに表されています。羽は金で刺繍され、尾羽根が着物の上を流れるように広がり絢爛かつ優美な印象を受けました。これは素人目にも凄さが分かった気がします。

39 上野為二 「縮緬地友禅訪問着[歓喜]」
これは鶏と木々の花が表された友禅染の着物で、その鶏たちは伊藤若冲の絵を彷彿とするような細かく鮮やかな色合で表現されています。一方、花は単純化され青や赤など幻想的かつ可憐な雰囲気でした。

この近くには浴衣などもありました。また、少し進むと染に使う型紙(恐ろしく緻密で針の穴より小さい)や漆芸作品、刀の鍔、染織などもありました。

62 濱田庄司 「白釉黒流掛大鉢」
これは白地の大皿に黒釉で縞状の模様が付いている作品で、大胆かつリズミカルな模様となっています。この作者は民藝運動に尽力された方らしく、民藝が持つ力強さを備えつつ流麗な雰囲気もあるように思えました。

この先は東博の名品コレクションといった感じで、火焔型土器や野々村仁清の壺、青磁の瓶、安土桃山時代の小袖や縫箔、蒔絵など、普段は常設に展示されている作品が並んでいました。


<第2章 現代を生きる工芸を目指して>
続いては現代に合った新たな技術、新たな表現を目指した作品が並ぶコーナーです。

125 平田郷陽 「抱擁」 ★こちらで観られます
これは赤ん坊を抱きかかえる座った女性を表した人形で、赤ん坊に顔を寄せお互いに安らかな表情を浮かべています。単純化され胴体は大きく、緩やかな造形がキュビスムなどを彷彿とさせるためか近代的な美しさを感じました。

95 藤本能道 「草白釉釉描加彩翡翠図四角隅切筥」
これは8角形の陶器の箱で、上面にカワセミの姿が描かれています。解説によると、この作者はそれまでタブーだった色絵釉薬の混合を展開し、輪郭を用いない没骨描法を使っているそうで、この作品でも背景は川のように見えますがぼんやりした感じで幻想的でした。形も含めて面白い作品です。
 参考記事:藤本能道 命の残照のなかで (智美術館)

この辺には現代に伝わる伊万里や鍋島などもありました。

100 田村耕一 「鉄釉あやめ文大皿」 ★こちらで観られます
これは茶色の大きな皿に黒を塗り、塗られていない部分であやめが表された作品です。あやめというよりはまるで原始美術のような感じに見えるかな。解説では清々しいとのことでしたが、私には力強さとリズムが感じられました。

128 江里佐代子 「截金彩色飾筥[花風有韻]」 ★こちらで観られます
これは8角形の筒状の箱で、細い金の線で側面に幾何学的な模様が表されています。上面にも四角が回転して重なりあっているような模様があり、幾何学的な美しさと繊細かつ可憐な文様が好みです。この方は仏像や仏画に使う截金という技法を工芸に応用したとのことで、そうした高い技術と共に女性らしい華やかな雰囲気が感じられました。

この近くには着物や漆芸などもありました。


<第3章 広がる伝統の可能性>
最後は伝統を用いた現代的な作品のコーナーです。現代は個性や独創性が重んじられる時代となり、伝統的な技をベースに新たな創作性のあるデザインを重視した作品は広く受け入れられるようになりました。ここでは伝統に新たな枠組みを提示し、伝統の可能性を広げた作家の作品が並んでいます。

139 黒田辰秋 「朱漆捩紐文火鉢」 ★こちらで観られます
これは赤漆の大きな火鉢で、側面に深く太い波が重なるように彫られています。非常に力強く大胆な雰囲気で、漆の赤がまるでスポーツカーの色のように近未来的なフォルムに感じられました。

130 徳田八十吉(三代) 「耀彩壺[恒河]」 ★こちらで観られます
これは上に小さな口がついた円形の壺で、中央に縦に白い筋が入っていて、外側に向かって黄色、緑、青といった感じのグラデーションで色が付けられています。非常に斬新な色合いが宇宙空間を思わせ、白い筋がそれを貫いていくような印象を受けました。解説によると、これはイタリアのルーチェ・フォルタナという人の作品に影響を受けているそうです。

135 森口華弘 「友禅訪問着 [羽衣]」 ★こちらで観られます
これは友禅の着物で、背面の足元辺りから渦巻く放射線状に細い線が広がっている模様となっています。これは菊が花開くのをイメージしているそうですが、伝統的なモチーフでありながら斬新な表現となっていて、目を引きました。以前にご紹介した着物に似ているかな。多分これもあったと思います。
 参考記事:クローズアップ工芸 (東京国立近代美術館 工芸館)

140 生野祥雲齋 「竹華器[怒濤]」 ★こちらで観られます
これはまるで巻き貝のようにくるりと巻かれた竹細工です。その竹の曲がり具合・しなり具合が非常に美しい曲線を描いていて、流麗な印象を受けます。竹の性質を知り尽くしているだけではなく、これだけの造形を生み出す創造性に驚きました。彫刻作品としても逸品だと思います。

129 松井康成 「練上嘯裂茜手大壺[深山紅]」
これはピンク色の丸い壺で、側面には無数のひび割れがあります。しかしそれがかえってモコモコした感じに見えるのが面白く、苔でも生えているような質感に思えました。硬い陶器なのに不思議ですw


ということで、人間国宝と聞くと堅苦しい印象を受けますが、実際に作品を観ると自由闊達かつ斬新な作品が多かったように思います。特に後半は現代美術としても面白かったので、工芸好きの方は楽しめると思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事
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