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生誕140年記念 下村観山展 (感想後編)【横浜美術館】

今日は前回に続き、横浜美術館の下村観山展についてです。前編では初期の作品からご紹介していますので、前編を読んでいない方はそちらからお読み頂けると嬉しいです。なお、この展示は既に終了していて私が観たのは後期の展示でした。


 前編はこちら


P1140499.jpg


【展覧名】
 生誕140年記念 下村観山展

【公式サイト】
 http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2013/kanzan/
 http://www.yaf.or.jp/yma/archive/2014/4032.php

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅

【会期】2013年12月7日(土)~2014年2月11日(祝・火) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では3章のヨーロッパへの留学までご紹介しましたが、後編は文展の審査員となった頃から晩年にかけてのコーナーです。


<第3章 ヨーロッパ留学と文展>

48 下村観山 「木の間の秋」 ★こちらで観られます
これは2曲1双の金地の屏風で、左右ともに直立する木々と緑の草が描かれ、手前は濃く奥は薄い空気遠近法を使っています。木には蔓や苔のようなものが付き風格を感じさせ、葉っぱの葉脈を金で描くなど装飾的な表現が見られます。これは五浦の研究所で西洋の顔料を使ったそうで、緻密な写実性と装飾性があるのは英国の美術と日本美術の両方からの影響があるのかも?? 神秘的ですらある作品でした。

下村観山 「小倉山」 ★こちらで観られます
これは横浜美術館が誇るコレクションで、6曲1双の金屏風に赤く紅葉した木々の中に烏帽子の男性が座っている様子が描かれています。これは小倉百人一首の藤原忠心(貞信公)が詠った歌の歌意を描いているそうで、金地に緑や赤が映えて大和絵的な色合いと琳派的な雰囲気があります。左右の隻は上部では繋がっているのに下部では繋がりがないのが不思議で、確かあの世とこの世の境であるという説があったと記憶しています。(1つの解釈なので正しいかは分かりませんが) いずれにせよ、観山の傑作であるのは間違いないと思います。

この近くには東博の「弱法師」の下絵などもありました。前期には本図が出ていたようです。
 参考記事:博物館に初もうで (東京国立博物館 本館)

また、その先には下村観山の絵画用具やロンドンで親交のあったアーサー・モリスンとの書簡、アーサーから貰ったトマス・ゲインズボローの素描、日記帳、大観からの手紙、西洋美術の図版、留学中の絵葉書などもありました。

53 下村観山 「美人と舎利」
これは2幅対の掛け軸で、右幅は左向きの着物の美女、左幅は直立した右向き骸骨が描かれています。その組み合わせが実に奇妙で、美人は膝から上のやや枠の下の方に描かれているのに対して、骸骨は全身が描かれているのも不思議でした。骸骨はやけにリアルで解剖したものを観たのかも? 特に解説はありませんでしたが、ちょっと気になる作品でした。

65 下村観山 「虎渓三笑」
これは掛け軸で、3人の中国風の男性が並んで立ち、笑いながら会話している様子が描かれています。これは廬山に隠棲していた慧遠法師が来訪した詩人の陶淵明ち道士の陸修静を見送りに行く際、話に夢中になり二度と越えないと誓っていた橋を渡ってしまい、3人で大笑いしたという伝統的な画題で、この作品でも表情豊かに楽しげに表現されています。輪郭の太い所や濃い所があるなど、筆使いの強弱も巧みで、色数は少ないのに生き生きした雰囲気がありました。

59 下村観山 「唐茄子畑」
これは6曲1双の金屏風で、右隻にはカラスと大きな葉っぱの唐茄子の木?とピンクの花の木が描かれ、左隻には竹組したところにカボチャがなっている様子と、樹の下にうずくまる黒い猫が描かれています。どちらも金地に緑の葉っぱが見事で、左隻の葉は一部が黄色く変色した感じまで表現されています。右隻は垂直に線が多いのに対して、左隻は水平や斜めの線が多いなど、構図の対比も面白かったです。


<第4章 再興日本美術院>
最後は晩年までのコーナーです。大正2年に観山は岡倉天心を通じて原三渓に知遇を得て、招きに応じて横浜に移り住みました。原三渓の支援の元で制作を行い、観山が亡くなるまでその交流は続きます。 また、この頃ボストン美術館で活動していた天心が健康の悪化で帰国すると、療養中に赤倉の山荘で亡くなってしまいました。その臨終に際し、観山は大観と共に日本美術院の再興を計画し、その翌年に大観、木村武山、安田靫彦、今村紫紅、小杉未醒らと共に日本美術院を再興しました。そして観山はそれまでの古典研究や西洋画研究の成果を結実させたそうで、この頃の作風としては場面を大きく占める漠然とした空間が特徴で、静けさと高い精神性を湛えているようです。 それ以降の観山は次第に宋元画の枯淡な画風に傾倒していったそうで、今後の方向を予見させる作品を残したようですが、57歳でその生涯を閉じました。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

87 下村観山 「四眠」
これは椅子に座って寝ている老僧のような羅漢と、その膝の上で寝る龍、脇で机に向かってうつ伏せる童子、その上に樹の枝で寝ている鳥 といった4者の眠りが描かれた作品です。普通、四眠は寒山、拾得、豊干禅師、虎の4者が描かれますが、ここには前述の4者に置き換わっています。淡い色彩で優美な曲線で描かれ、安らかな雰囲気でやや異国情緒がありました。

この隣にも寝ている李白を描いた作品があり、中国の高士や故事を描いた作品が並んでいました。

71 下村観山 「弱法師」
これは謡曲「弱法師(よろぼし)」を題材にした2幅対の掛け軸で、夕日に向かって盲目の俊徳丸が手を合わせ極楽浄土を観想している場面となっています。右幅には手を合わせ杖を持つ盲目の男、左幅にはかなり下の方に赤い夕日が描かれ、独特の余白の使い方となっています。これは東博の屏風の同名作品を掛け軸にしたような作品で、空間表現で言えば東博のほうが大胆かも?? これはこれで面白い作品でした。

77 下村観山 「竹林七賢」
これは中国の魏晋時代に俗世を避けて竹林に集まり、老荘思想にふけった7人の隠士を描いた6曲1双の金屏風の作品で、堀塗りという色面と色面の間を堀のように残して線にする技法が使われています。竹林の中で3人が話し合い、左の方でも座っている3人の姿があり、中央に1人が下を指さして何か呼びかけているように見えます。いずれも表情豊かに微笑みを浮かべていて、所々の竹はにじみを使ったたらし込みのような技法が使われるなど、表現や技法の巧みさも伺えました。

121 下村観山 「游魚」
これは水中の木と戯れている魚を描いた作品で、色数は少なく水墨のようにも見えます。解説によるとこの作品を描いた頃、観山は宋元画風の様式に新たな活路を見出し、枯淡な作風を示していたようです。そしてそれは次第に大型化/濃彩化していく同時代の帝展へのアンチテーゼでもあったそうです。その為か詫びた雰囲気の作品となっていました。

118 下村観山 「維摩黙然」
これは2本の指を突き出して遠くを見つめるような老僧と、その脇で蓮の花を盆に入れて差し出す裸婦が描かれています。解説によると、これは釈迦の在家信者で富豪であった維摩を描いたもので、指は「不二法門」(現象的に対立する2つの事象が根本的には一体であることを悟る道)を説いているようです。柔らかいピンクや緑、肌色などの色合いと、背景のソファ(のようなもの)の草花文など、優美な雰囲気がありつつ威厳が感じられました。上から花びらが舞っているのもそう感じさせるのかも。

132 下村観山 「魚籃観音」 ★こちらで観られます
これは中国の故事を題材にした3幅対の作品で、赤い衣の魚商の女性が中央に立ち。その周りに褐色の肌の半裸の男が3人、右側には犬の姿もあります。女性を中心に光輪が広がっているのですが、実はこの女性の正体は魚藍観音で言い寄ってくる男たちに仏経典をよく読むものに嫁ぐと言っているところだそうです。その顔は非常に西洋画的で、ダビンチのモナ・リザを土台にしているらしく、確かにそっくりな顔となっていました。その為かこの作品を出品した時は賛否両論となったそうです。ちょっと日本人の感覚としてはバタ臭いかもw


ということで、見どころの多い展示となっていました。リストを観る限り前期のほうが面白かったのかもしれませんが、十分満足できる内容でした。下村観山はよく観る画家だけに今後の参考にもなるそうです。



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「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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