関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 (感想後編)【東京都美術館】

今日は前回に続き、東京都美術館の日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』についてです。前編では混み具合や初期メンバーの作品などもご紹介していますので、前編を読んでいない方はそちらからお読み頂けると嬉しいです。

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 前編はこちら


【展覧名】
 日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』

【公式サイト】
 http://www.nichibisai.jp/nihonga/about/index.html
 http://www.tobikan.jp/exhibition/h25_inten.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】
  [前期] 2014年01月25日(土)~02月25日(火)
  [後期] 2014年03月01日(土)~04月01日(火)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
1~2章は日本美術院の成り立ちについてでしたが、3章以降は題材ごとに章分けされていました。


<第4章 花。鳥。そして命を見つめて>
4章は花鳥を描いた作品が並ぶコーナーです。この辺りから作品自体が大きく、大作揃いとなっています。

57 小茂田青樹 「虫魚画巻」
これは6図からなる絵巻で、前期後期で3図ずつの展示となっていました。それぞれ金魚、蛾、鰻の3つが描かれた図で、特に好みは蛾の「灯による虫」でした。ガラスの窓越しに金色に輝く月が見えていて、窓にはバッタやカナブン、蛙など沢山の小さな生き物がくっついています。いずれも明るく光っているような感じで、羽ばたきが止まったような蛾とともに写実的ながらも現実を超えた雰囲気となっていました。幻想的で妖しく静かな作品です。

56 前田青邨 「芥子図屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、金地を背景に右隻には真っ白な花を咲かせた芥子、左隻にはまだ蕾の芥子(2輪だけ赤い花が咲いている)が描かれています。金地に黄緑の葉っぱが目に鮮やかで、尾形光琳の燕子花図屏風から影響を受けているようですが、この絵ではかなり緻密に描き込まれていて葉脈まで見えるほどです。真っ直ぐな茎と水平に並ぶ花や蕾が印象的で、若干かっちりした構図に思えました。


<第5章 風景の中で>
続いては風景画のコーナーです。ここの解釈は結構広くて、心の中の風景を描いた作品などもありました。

64 今村紫紅 「熱国之巻(熱国之夕)」 ★こちらで観られます
これは今村紫紅がゴーギャンのタヒチ時代のような新たな画境を目指し、バンコクやシンガポール、ラングーン、カルカッタなどに行った際に観た光景から着想を得て、架空の熱国を描いたものだそうです。大きな川や赤~黄に染まる砂漠、椰子の木、赤い屋根の家々などが描かれ、全体的に金砂子がまかれています。その光景は異国情緒がありつつ手法は日本的なところがあるのが面白いです。色合いが強く、単純化された様式と相まって琳派のようでもありゴーギャンのようでもあり、どれでもないようにも思えるのも面白さを感じました。

67 速水御舟 「比叡山」 ★こちらで観られます
これは三角形の比叡山が青々と描かれた作品で、山の端が白くなっているため光り輝いているかのように見えます。解説によると、速水御舟はこの頃 岸田劉生の細密描写に影響を受けていたようで、この絵も豊かな描写によって表されています。また、この頃は群青中毒にかかっていたとのことで、この絵でも青の濃淡が静かな雰囲気を湛えていました。

68 近藤浩一路 「十三夜」
これは墨の濃淡で描かれた掛け軸で、仏塔を背景にそこに向かう現代の道が描かれています。道には3人の子供らしき姿があり、街灯がぼんやりと光っています。また、空には★の形の星が散りばめられていて、幻想的かつノスタルジックな雰囲気です。解説によると、近藤浩一路は西洋画を学んでいたそうで、「光と影の魔術師」や「外光水墨派」と呼ばれていたそうです。そのあだ名の通り濃淡の使い方が巧みな作品でした。

83 小田野尚之 「くつおと」
今は廃駅となっている上野の博物館動物園駅の瓦づくりの駅舎を描いた作品で、階段を下から登ってくる2人の姿も描かれています。階段からは光が霧のように上がってきていて、2人は逆光となっているので強い光を感じます。また、周りの壁は風化した感じで固そうな質感があり、ひんやりした空気や足音までも聞こえそうな作品となっていました。

71 岩橋英遠 「道産子追憶之巻」
これは29mにもなる長い作品で、北海道の四季の移ろいを1日の光景に合わせて描いてます。まだ暗い時間は冬眠する熊や飛び立つフクロウが描かれ、その後は雪の木々の間から登る太陽、雪原と山、枯れた木々から花咲く木々への移ろい、虹のさす広い田んぼ、無数のトンボが飛び交う夕暮れの田んぼ、藁を干している?壁のようになった束、最後は再び冬となって部屋の中でストーブで温まる人々などが描かれていました。いずれも北海道の自然の豊かさと厳しさが感じられ、人々の営みには温かみが感じられました。


<第6章 幻想の世界>
続いての6章は上階で、心の中の幻想を描いた作品が並んでいました。心の中を描く際には平面化や変形、誇張などの工夫が重ねられたらしく、ここにもそうした作品が並んでいます。

95 守屋多々志 「無明」
これは4曲1隻の屏風で、暗い中で石の階段を下る尼が描かれています。周りはパターン化されて紫に染まる竹林や、梅、左上には月が浮かんでいます。月の辺りなどにはチェック柄の線があり、紫の色調を変えて画面が分割されているのが目を引きました。絵の構成が面白く、幻想的な雰囲気がありました。

98 宮北千織 「うたたね」
これはソファの上で横なって寝ている女性を描いた作品です。布やソファのレースなどが淡くぼんやりした色で描かれ、赤、オレンジ、青、緑といった色彩がオディロン・ルドンのような神秘性を持たせていました。静かで象徴的な作品に思えます。


<第7章 人のすがた>
最後は人物を描いたコーナーです。

109 片岡球子 「面構(歌川国芳)」
これは筆を持って座る歌川国芳を描いた作品で、片岡球子の「面構え」シリーズの1つです。その隣には浮世絵風の美人が描かれ、その絵を描き上げた際に国芳がじっと出来栄えを見ている様子が表されているようです。顔は誇張されているのが独特で、やや面長に見えるかな。解説によると、片岡球子は国芳の権力にも屈しなかった自由な心意気に感銘を受け、彼女にとっての神様のような存在と言っていたそうです。

111 平山郁夫 「日本美術院血脈図」 ★こちらで観られます
これは馬に乗って右手を上げる白い衣の岡倉天心を描いた作品で、背景には紅白の幕を垂らした日本美術院、周りには横山大観、下村観山、菱田春草ら創立メンバー、一番手前の辺りには安田靫彦や小林古径、前田青邨らの姿があります。他はぼんやりした感じになっていますが、これまでの日本美術院の先輩たちへの敬意が強く感じられ、特に彼らを導く岡倉天心は神々しいまでの雰囲気でした。


ということで、日本美術院の名品を観ることができました。結構観たことがない作品が多かったのが嬉しいです。時代も画風も様々でそれぞれの個性を観るような感じかな。明治以降の新しい日本美術の粋が楽しめました。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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