関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

皇室の名宝―日本美の華 <1期> (感想後編) 【東京国立博物館 平成館】

前回の記事の続きです。まだ前編を読まれていない方は、先に前編をお読みいただけると嬉しいです。 こちらです。
<1章 近世絵画の名品>で既にだいぶ感動したのですが、後半の明治以降の作品もかなり面白い内容でした。

DSC_6114.jpg

【展覧名】
 御即位20年記念 特別展「皇室の名宝―日本美の華」
 1期 永徳、若冲から大観、松園まで 

【公式サイト】
 http://www.bihana.jp/
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6890
 http://www.kunaicho.go.jp/20years/touhaku/touhaku.html

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】
  1期:2009年10月6日(火)~11月3日(火・祝)
  2期:2009年11月12日(木)~11月29日(日)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適 ※入場規制はありませんでした

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
後編も気に入った作品ばかりでどれをご紹介したら良いか悩むところですが、特に面白いと感じたものを中心にご紹介します。

<1期 2章 近代の宮殿装飾と帝室技芸員>
2章は明治以降の「帝室技芸員」の作品が展示されていました。この「帝室技芸員」は分かりやすく言えば、現在の人間国宝にあたるもので、幕府や大名の後ろ盾を失った絵師や工芸家の保護や制作活動の促進を目的として制定されました。当時の日本では美術品も主な輸出品だったのでこうした動きは国策に合っていたようです。まさに全身全霊を注いだかのような作品の数々に当時の外国の人も驚いたんじゃないかな?

荒木寛畝・野口小蘋 「旭日双鶴松竹梅図」
3枚セットの縦長の絵で、左から松と梅の花、2羽の鶴と旭日、竹とキノコが描かれています。真ん中が荒木寛畝(あらきかんぽ)作で、両脇が野口小蘋(のぐちしょうひん)作のようです。真ん中の鶴は、写実的で優美な印象を持っています(若冲の鶴を観た後だったので若干麻痺していましたが良い絵ですw) 両脇の松竹は上へと一直線に力強く伸びていて、鮮やかな緑色と相まって爽やかな印象もありました。3枚とも目出度いモチーフなのも面白かったです。

杉谷雪樵 「大納言公任捧梅花図」
全体的に白い雪が覆う屏風。右隻には屋敷が描かれ、左隻には小川と橋のある庭園で雪のついた梅の枝と扇子を持っている大納言の様子が描かれています。空には月が描かれ、周りの木々には雪が積もっていました。屋敷や景色が雪の中に消えていくような、雪と境が曖昧になっている表現が幻想的で美しかったです。

平福百穂 「玉柏」 ★こちらの「作品紹介」で観られます
金地の屏風です。右隻にはごつごつした柏の木と、緑鮮やかな葉っぱが大胆に描かれ、その枝にはつがいの鳩が描かれています。この鳩は明治天皇と香淳皇后の仲睦まじい様子を表現しているようです。左隻には岩場に生える竹林と上り坂が描かれています。こちらの竹も生命力に溢れ、鮮やかな緑色から爽やかな印象も受けます。緑が非常に印象的でした。

高取稚成 「赤坂離宮御苑」
これも屏風です。右隻には青く広がる池と、その周りの松や丘が描かれていて、優雅な雰囲気です。左隻にはオレンジっぽい色に紅葉した木々と小川などが描かれ、金地と相まって艶やかな色彩となっています。大和絵の優しく雅な空気に包まれていて、観るものを和ませるような屏風でした。

横山大観 「朝陽霊峰」 ★こちらで観られます
この絵はちょっと鳥肌が立ちましたw 右隻には黒い山々の上にのぼる満月と雲が描かれ、右隻に繋がっています。そして右隻には金色がかった雲の海から頭を出す金の富士山が描かれています。 さいわい、人の切れ間ができた時に観ることが出来たので、ちょっと離れて見たのですが、離れてみるとより一層、雄大さ・神々しさを感じ、心に訴ったえる力がありました。大観の作品でもかなりの傑作じゃないかな。

横山大観 「御苑春雨」
これも大観ですが、こちらは幽玄な雰囲気で、金地に墨の濃淡だけで湖と周辺の山や木々を描いています。題名の春の雨にかすむような表現が見事でした。しとしとと雨の音だけが聴こえそうな静けさに満ちた作品でした。

高村光雲・山崎朝雲 「萬歳楽置物」 (鋳造:野上龍起 蒔絵・螺鈿:由木尾雪尾)
「萬歳楽」というのは天皇即位の際などに4人で踊られる舞で、これはそれを彫刻にしたものです。見事な螺鈿の蒔絵の上に、精巧かつ優美な舞人が立っています。硬いブロンズでできているのですが、マントのように翻る服の質感は本当に服のように滑らかに思えました。蒔絵もかなり好みだったので、この作品は見所が多かったです。

大連窯業株式会社 「菊桐鳳凰文ガラス花瓶」
南満州鉄道(通称:満鉄)から献上されたという、大きなクリスタルガラスの花瓶です。日本の近代ガラス工芸における傑作なのだとか。 花瓶は2つあって、どちらも鳳凰(たぶんどっちかが雄です)が彫刻されています。どちらもかなり細かく描かれていました。帝室技芸員の工芸は半端じゃない…心からそう思い始めるのがこの作品あたりからでしたw

川端玉章 「群猿之図」
隆々とした力強さのある岩山に沢山の猿が集まっています。岩山から伸びる木にぶら下がっていたり、子猿?を抱きかかえていたり、踊っているかのようなポーズの猿もいます。よく観ると猿1匹1匹の毛のふわふわした感じが凄い! 毛の薄さを感じるのにふわっと見える表現は驚異です。左上がりの対角線上に伸びる木や、右上がりの対角線を描く崖の構図も面白かったです。

池田泰真 「山路菊蒔絵文台・料紙箱・硯箱」
金ぴかの蒔絵だー!!と、お宝臭がするとついテンションが上がりますw 硯箱、料紙箱、文台のセットで、古今和歌集の「濡れてほす山路の菊のつゆのまにいつか千年を我は経にけむ」という詩をモチーフにしているようです。観ているときは気づかなかったのですが、解説によると硯箱に「ぬれてほす」料紙箱に「いつか」、文台に「われはへにけん」という文字が見られるそうです。…見逃したw できればまた観て確認したいです。

石川光明 「古代鷹狩」
多分、象牙だと思うのですが、鷹匠と鷹の牙彫です。 と、文字で書くと一言ですが、実に繊細かつ写実的に彫られていて、並々ならぬ心血を注いだことが容易に想像できます。鷹匠の腕にとまった鷹は身をかがめて今にも飛び立ちそうで、鷹匠の表情はあたりを見渡しているようでした。乳白色の材質も優美で、滑らかな質感がこの作品の風格を増しているように思いました。

高村光雲 「矮鶏置物」
鶏のつがいかな? 2羽の鶏の木像です。結構可愛い顔していて本物みたいです。特に雄の尾っぽが見事でした。木目が残っているようにも見えました。

並河靖之 「七宝四季花鳥図花瓶」
「黒色透明釉」という黒地に、鮮やかな緑のもみじと逆の面には桜が描かれている七宝の花瓶。 この「黒色透明釉」は素人目に見ても凄かったです! その名の通り、透明感のある黒と言うか、鮮やかな黒と言うべきかw 実に艶やかな黒で、その上に描かれた桜やもみじを引き立てていました。この展示の中でもかなり気に入った作品です。

旭玉山 「官女置物」
先ほどの鷹匠と同じく官女を彫った牙彫です。結構でかくて驚きです! いくつものパーツを組み合わせているようですが、どこで接合しているのかわかりませんでした。 そして表現も素晴らしくて、何枚も重ね着した衣のひだが細かく表現されていて、その質感のせいか柔らかさを感じました。 本当に帝室技芸員は恐るべしです。

川之邊一朝ほか 「菊蒔絵螺鈿棚」 ★こちらで観られます
螺鈿のある蒔絵で作られた棚で、帝室技芸員たちによる全身全霊の作品と言って良いかと思います。明治天皇から命を受けて作られ、完成までに12年の歳月を要したのだとか。各分野の名工たちが名を連ね、至るところまで細かい金細工や螺鈿が施され、棚の中や台の裏側にも隙がありません。当時、「明治の3大製作」と呼ばれたそうで、その気合の入り方は尋常じゃ無かったです。必見の1点でした。

香川勝廣ほか 「花唐草透彫水晶入短刀拵(短刀「宗瑞正宗」の拵)」 ★こちらの「作品紹介」で観られます
この作品の隣に太刀もあったのですが、それと先ほどの棚を含めて「明治の3大製作」の1つのようです。名前の通り、鞘の部分に金で唐草模様の透かし彫りがされていて見事です。太刀より細工が細かくて好みでしたw

川島甚兵衛(三代) 「春郊鷹狩・秋庭観楓図壁掛」
物見遊山する貴族達を描いていて、壁一面のでっかい壁画だなーと思っていたら、なんと織物です。 しかも、でかいのに細部はミリレベル…。帝室技芸員のやることは半端じゃないですw フランスのゴブラン織というのに触発され、日本の伝統的な綴織で作ったものらしいです。色鮮やかで完全に絵画のようでした。

海野勝 「蘭陵王置物」 ★こちらで観られます
これまた精密の極地と言える作品で、「蘭陵王」を演技している役者の像です。斜め上に伸ばした右手に棒のようなものを持ちポーズをとっています。顔には金の仮面をつけ、豪華な衣装をまとっています。この服の細かい紋様には毛彫など様々な技術が駆使されている層で、彫金技術の結晶と言える作品のようです。なお、この仮面は着脱可能で、図録では外した顔を観ることが出来ます。(丸みのある顔で、切れ長の目をしていました)

濤川惣助 「七宝月夜深林図額」
縦長で、川とその側に生える木、空に浮かぶ月を描いた水墨画かな?と思ったら、七宝ですw この墨の濃淡のような色を出すために300種類もの釉薬が使われたのだとか。本当に帝室技芸員の根性は凄まじいですw 墨のかすれた感じや滲んだ感じまで表現されていました。たとえこれが普通の水墨画としても絵だけでも十分素晴らしいのに、凄いとしか言葉が出ません。

川合玉堂 「雨後」
かすむような池のほとりを書いた作品で、池からはうっすらと虹が出ています。消えるか消えないかくらいの虹で、爽やかさと儚い感じがしました。向こうに見える木々は途中でぼやけて霧の中に消えていて、光までも表現しているようでした。手前で蓑をかぶって船の上で作業する様子も趣がありました。

鏑木清方 「讚春」
屏風ですが、えらくモダンな雰囲気の作品です。右隻には緑豊かな皇居でのんびりしている2人のセーラー服の女学生が描かれ、背後ではクラシックな車が走っています。そして左隻には近代的な橋(隅田川の清洲橋)が描かれ、手前には小舟で暮らす母子の生活が描かれています。母子は貧しいようですが、舟には桜の枝があり意外とのんびりした様子です。左右では対照的な身分を感じますが、平等に訪れた春を楽しむ内容みたいです。左隻の貧しい母子の絵はよく皇室に収めたなーと妙なところで感心してみたりしていましたw

上村松園 「雪月花」 ★こちらで観られます
上村松園の作品は大好きなんです(><) 雪、月、花を題材にした3枚セットで、私の好みは雪です。この前、山種美術館の上村松園展でもありましたが、御簾の後ろに透けて見える表現が堪能できます。それにしても清よらかで優雅な美女たちは流石でした。

ということで最初から最後まで感動しっぱなしの展覧会でした。流石に混んでいますが美術ファン必見の展覧だと思います。
なお、平成館1Fでは参考展示で近代の大和絵も展示されていました。こちらは気づかない人が多かったようですがお見逃し無く。。。

次回は特別展の後に観た、東京国立博物館本館の常設の写真をご紹介します。
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