関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝- 【上野の森美術館】

ちょっと前になりますが、上野の森美術館に「聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝-」を観に行ってきました。かなり濃密で、まさにチベットの至宝が観られる驚くべき内容でした。

P1080917.jpg P1080916.jpg

【展覧名】
 聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝-

【公式サイト】
 http://www.seichi-tibet.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2009年9月19日(土) ~ 2010年1月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
これだけの内容をよく持ってきたなと驚きっぱなしの内容で、かなり充実した展覧会でした。チベットというとダライラマや密教のイメージが強いものの、漠然としたイメージだけで、実体はあまり知りませんでした。しかし、この展覧ではかなり詳しく説明されていて、一気にチベットの仏教文化について知ることができました。特に解説機は長過ぎるくらい詳しく説明してくれますw(全部理解するには少々難しいかも)
今回も章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。いくつか同じような名前の作品もあるみたいなので、作品Noも記載しておきます。

<序章 吐蕃王国のチベット統一>
密教はインドで体系化されたものですが、チベットの密教は「後期密教」というもので、日本の真言宗と天台宗に伝わった「中期密教」とはインドから伝わった時代が違うそうです。このコーナーではチベットに仏教がもたらされた成り立ちをテーマにしていました。
元々、チベットはシャーマニズムと自然崇拝の宗教である「ボン教」が主流でした。しかし、7世紀はじめにソンツェンガンポという王がチベット高原を統一し、吐蕃王国を建設した後、仏教国である中国(唐)とネパールからきた2人の妻の影響でチベットにも仏教が根ざしていきました。
 ★チベット密教については公式サイトにも詳しく書かれています。 http://www.seichi-tibet.jp/points/about.html

003 「魔女仰臥図」 ★こちらで観られます 序章右 
チベットの地図が魔女の形になっている絵です。この魔女はボン教の抵抗を思わせるという解説がありました。占いでチベットの地には魔女が横たわっていると出て、その動きを封じる12の間接や急所に位置する場所に仏教寺院が建てられたそうです。仰向けであがくような姿の魔女が強烈な印象の作品でした。

001 「ソンツェンガンポ坐像」 ★こちらで観られます 序章左
観音菩薩の生まれ変わりと呼ばれたチベットの王の坐像です。先ほどご紹介したとおり、2人の妃(唐とネパール)を向かえ、仏教を受け入れた王です。ターバンのようなものを被って、胡坐を組む姿で、頭の上には阿弥陀如来の頭部が乗っかっていました。ちょっとインド風の雰囲気かなと思いました。

<第1章 仏教文化の受容と発展>
仏教はその後、7世紀末にティソンデツェン王の時代に国教として制定され、チベットには沢山のお経や美術品が持ち込まれたそうです。ここではその受容と発展していく様子が紹介されていました。

006 「弥勒菩薩立像」 ★こちらで観られます
インドパーラ朝の仏像だそうで、象嵌や宝石が使われた豪華な立像です。上半身をくねらせ、ゆるやかな曲線を描いています。そして金色の肌に沢山の装飾をつけ非常に優美な姿です。均整が取れてインドっぽい弥勒菩薩でした。素晴らしいです。

014 「釈迦如来坐像タンカ」
正方形の曼荼羅みたいな絵です。掛け軸っぽい形式の絵を「タンカ」というらしく、この後も○○タンカは沢山でてきます。 この作品は左上から時計回りに釈迦の一生が描かれて、真ん中にはマーラを退けた時の場面が描かれています。何やら鬼みたいなのが取り囲んでいて、ちょっと漫画っぽくて面白い絵でした。

023 「ナイラートミヤー坐像」
この作品がある一画は、入った瞬間に、「おおっ!」という驚きを感じました。というのも、生き生きとしたポーズの僧の坐像がいくつもならんでいて、オーラを放っているようでした。チベット仏教は師から弟子へのつながりを重視するらしく、これらは「師祖」と呼ばれる開祖の像のようです。
この像は、「サキャ派」の師祖らしく、無我・空を表す女性の像という説明がありました。額に第三の眼があり、3つの眼は見開いて迫力があります。手には鉢を持っていて、死体の上に胡坐を書いて坐わり、頭に被った冠には5つの髑髏をモチーフにした飾がついていました。そうした異様な格好などから、ちょっと恐ろしくて迫る勢いの存在感がありました。(この5つの髑髏については4章でご紹介します)

028 「アティーシャ坐像」
インドの高僧の像です。印を組んで坐り、澄んだ顔で問いかけるような表情をしていました。この人はチベットの様々な仏教をまとめて、その後の本流となる流れを作ったそうです。その当時は仏教が弾圧され、ボン教が勢いを取り戻していた時代だったらしく、国も分裂状態だったと説明がありました。 

032 「ダライラマ1世坐像」
有名なダライラマの初代です。「ダライラマ」とは「大海のような広い徳を持つ」という意味らしく、モンゴルの王に名づけられ、僧でありチベットの王となりました(3章でその関係も説明されています) これは小さな坐像で、印を結んでいます。小さいけれどもオーラのある風貌でした。

005 「蓮マンダラ」
蓮の形をした置物です。蓮の花びらの1枚1枚の内側に、ダーキニー(元ヒンドゥーの女神)などの小像が置かれ、中央には明妃を抱くチャクラサンヴァラ(10本の腕と3つの顔)が配されています。その細かさに驚きますが、さらにこの蓮は開閉式でつぼみのように閉じることができるそうです。精密かつ豪華で力強さを感じました。

017 「八千頌般若波羅蜜多経」
額縁のような中にびっしりと仏や文様が描かれたものです。その前には巨大なお経が置かれていました。 この辺は様々なお経が置かれていて、日本のとはちょっと違う雰囲気でした。


<第2章 チベット密教の精華>
ここまでの内容でもかなりの見応えでしたが、本展覧で最も見所の多い章がこの2章でした。
ボン教が勢いを取り戻した頃、チベットは再びインド後期の密教を受け入れました。そして地方勢力と結びつき、荘園を経営するなど力をつけていったようです。この時期を「後伝期」と呼ぶそうで、イスラムに滅ぼされたインド仏教はチベットに逃れたと解説されていました。

039 「十一面千手千眼観音菩薩立像」 ★こちらで一部見られます (上部バナー) 
この作品の部屋に入ると、まず眼に入って驚くのがこの像です。360度ぐるっと観られる展示方法なので、じっくり観てきました。まるでハリネズミの針のように無数の手を持っていて、本当に1000本ありそう。頭も縦に4段積み重なっていて、それぞれ3面くらいあります(合わせて11面のはず) 細部まで半端じゃなく気合が込められているように感じました。この展覧でも重要な見所の1つだと思います。

036 「薬師マンダラ」
8体並んだ仏像です。それぞれ違った手の動きをして坐っています。チベットでは薬師を重視していたようで、チベット医学では煩悩こそが病の源と考えられていたらしいです。ストレスは万病の元だからあながち間違いじゃないかもw 

033 「金剛界五仏坐像」
5体の如来像で、大日如来(知恵)、阿しゅく如来(力)、宝生如来(富)、無量如来(慈悲)、不空い如来(利益)を意味して5体で宇宙を表しているのだとか。見応えのある壮観な像でした。

043 「カーラチャクラ父母仏立像」 ★こちらで観られます 2章左
ポスターにもなっている等身大の仏像で、本展覧会でも頂点といえる作品だと思います。(解説でもチベット彫刻の最高傑作として説明されていました。) 方便(慈悲)の象徴である父と、空の知恵を象徴する母が抱き合う姿を彫刻にしています。2人とも4つの顔と多くの手があり、合わせて24本の手には武器や法具を持って、額には第三の眼があります。それぞれの顔には厳しさ、恐ろしさ、穏やかさといった様々な表情を見せ、強いエネルギーを感じました。こんな素晴らしいものを日本に持ってくるとは驚きです。しかも普段は布をかけられているらしく、全身を拝めるのは滅多に無いかも? これだけでも価値の高い展覧だと思います。

044 「グヒヤサマージャ坐像タンカ」 ★こちらで観られます 2章右 
極彩色で描かれたタンカ(掛け軸みたいなもの)です。タントラの主尊を描いています。藍色の肌で、正面は藍色の顔、左側は真っ白な顔、右側は赤い顔をしています。色合いの強さもあって力強い印象を受けました。赤い後背は燃え上がるようです。

051 「マハーカーラ立像」
マハーカーラというのは大黒様のことです。これは金でできている像で、顔はユーモラスながらも額に第3の眼を持ち、3つの眼すべてが見開いてちょっと怖い感じです。日本の大黒様の親しげな面影はあまりなく、ちょっとショックでしたw


この辺から2Fに移ります。


056 「緑ターラー立像」
腰をくねらせた優美なポーズの女性の仏です。観音に付き従った白と緑のターラーはあらゆる物を救うとしてチベットでは人気があるそうです。(ターラーは全5色いるらしいです) トルコ石をはめた冠や植物のつるのような光背など、女性美を感じる像で好みでした。

047 「ヤマーンタカ父母仏立像」
牛のような顔を持つヤマ(閻魔)の立像です。9つの顔、34本の手、16本の足を持ち、正面で妻を抱いています。パワフルな印象で迫り来るような形相がインパクト大でした。こういう抱き合う仏像が多いのもチベットの特徴なのかも。

060 「ダーキニー立像」 ★こちらで観られます 2章中央
褐色の肌の女性の像ですが、恐ろしい姿です。自分の足まで届くネックレスには無数の髑髏を繋いでいて、頭に被る冠にも髑髏があしらわれています。牙が生えた口を開き、3つの眼を見開いて、足で人間を踏みつけています。非常に恐ろしい姿ですが、良好な関係なら快楽の先に悟りをもたらしてくれる存在なのだとか。機嫌を損なうと食い殺されるそうですw 女は怖い(><)

062 「蓮マンダラ」 ★こちらで観られます
1章の005でも「蓮マンダラ」をご紹介しましたが、こちらは蓮の花びらの内側に沢山の仏がいます。(これも開閉するみたいです。) これらは立体曼荼羅といわれるものらしいです。葉の部分まで非常に細かい細工で、金色が煌びやかな雰囲気でした。観た瞬間に国宝クラスとわかりますw

075 「カパーラ」 ★こちらで観られます
高僧の頭蓋骨で作った髑髏杯で彫刻されたオレンジの蓋と台が付いています。頭蓋骨には真言が書かれ、蓋には金剛杵の取っ手がついていました。どうやらチベットは「髑髏」も1つのキーワードだなと思い始めるのがこの辺でした。


この辺には燭台やマニ車、香炉などどれも精密な細工のある品々が並んでいました。また、動物の頭をした法具(大きなペンくらいの大きさと形)などもあり、可愛らしいかったです。


<第3章 元・明・清との往来>
このコーナーは何やら政治的なものを感じるコーナーでしたw チベットは中国のものというメッセージが込められてるのではないか?と勘ぐっていたら、こんなページをみつけました。
 侵略された聖地チベット - ポタラ宮と天空の盗まれた至宝-
 ※このブログでは政治的な問題は取り上げない方針ですが、とりあえず公平にリンクしてます。
あえてこれ以上追求するのは避けますが、ここではチベットが歴代の中国とどう付き合っていたかを紹介していました。

サキャ派のサキャ・パンディタは元(元寇の元です)の王に会って、モンゴルがチベットを支配するのを認め、その代理としてチベットを支配したと解説されていました。そして、チベット仏教は元の国教となったそうです。これには元は宗教的な後ろ盾が欲しかったという思惑もあったらしいです。

097 「大元帝師統領諸国僧尼中興釈教之印」 ★こちらで観られます
白い玉(ぎょく)の印鑑で、取っ手に龍が2頭絡まっています。これは初代帝使パクパに渡された印とのことです。パクパは元(げん)の王の宗教的な師として、チベット密教を元の国教としたのに貢献した人らしく、隣には玉でできた坐像もありました。国権の象徴だけに立派な印鑑でした。

102 「青花高足碗」 ★こちらで観られます
明の時代になると、元時代のサキャ派統治とは違い、各宗派を競わせて均衡を取るように統治していたと説明されていました。これは景徳鎮の窯で焼かれた碗で、内側に青い釉薬でチベット文字が書かれています。明からチベットに贈られたものでしょうか? いずれにせよチベット仏教と中国に繋がりがあったことを示しているようでした。

105 「夾彩宝塔」 ★こちらで観られます
清の時代になると、清は積極的にチベット密教を受容したと説明されていました。これは七宝のような磁器の塔で、黄色主体の煌びやかな装飾が眼を引きます。清朝の豊かな文化を感じる作品でした。


<第4章 チベットの暮らし>
最後はチベットの暮らしや風習を伝えるコーナーでした。

116 「胸飾」
大きな胸飾で、四角形が斜めに組み合わさった形です(ダビデの星の四角バージョンみたいな) 鮮やかなトルコ石を中心に、珊瑚や真珠が飾られて非常に豪華で独特の雰囲気を持っています。これは仏の加護や魔よけの効果があるそうです。 それにしてもチベットの山奥で珊瑚や真珠というのは、交易が活発だった証拠ですね。

111 「チャム装束(チティパティ)」 ★こちらで観られます 4章中央
大きな髑髏の面と骸骨模様の祭礼用装束です。髑髏がリアルにちょっと黄色がかっているのも怖いw よく観ると面には第3の眼があり、頭の上には5つの髑髏が乗っています。さて、ここまで何度も髑髏を見てきましたが、チベット仏教ではこの5つの髑髏はよく出てきて、貪欲・妬み・愚かさ・幼稚さ・欲情を表しているそうです。戒めみたいなものかな? 

114_115 「ドゥンチェン」「ドゥンチェン架」
長いラッパのような楽器です。長さは3m25cmもあるらしく、チベットホルンと呼ばれているそうです。長すぎてどう運ぶんだろ?と思ったら、収納して折りたためるみたいです。解説機で実際に音を聞いてみたところ、重低音が重厚で、宗教的な雰囲気に満ちていました。また、これには固定する台座があり、そこには骸骨がペアで踊っているような彫像があり、2人の間に台があってホルンを担ぐような感じです。また骸骨w やはりチベットは髑髏や骸骨が必須のようです。

一番最後には医学のタンカが5点ほどあったかな。チベット独特の価値観を感じます。


ということで、かなり情報量も多く、素晴らしい作品の数々に圧倒されました。会期が長めなのも嬉しいので、また行くかもしれません。特にチベットに興味がある方には面白いと思います。


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