関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画 【山種美術館】

昨年末に、山種美術館で「没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画」を観てきました。前回の速水御舟展はかなり混んでいましたが、今回は空いててゆっくり観ることが出来ました。

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【展覧名】
 没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.or.jp/exh_current.html

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】2009年12月5日(土)~2010年1月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日11時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
作品充実度は③なのは、下絵やスケッチを含めて50点程度と作品点数があまり多くないためです。前回の速水御舟展では会場に所狭しと作品が並んでいましたが、今回はスペースを大きく使って展示していました。(その分作品点数が少ないのですが…) 年末のせいかお客さんもそれほど多くなかったので、じっくり観ることができました。

この展覧会は、その名の通り、東山魁夷を中心とした展覧会ですが、東山魁夷の作品は半分もないと思います。残りはその周りの画家や「昭和の日本画」となっていて、個展というわけではありませんでした。それがちょっと残念だったかな。bunkamuraのロートレック展と同じような感じかも…。

一応、コーナーに分かれていたのでそれに沿ってご紹介します。


<第1章 東京美術学校の師と仲間>
まず、東山魁夷の生涯をごく簡単に説明すると、東京美術学校に入り、そこで川合玉堂、松岡映丘、結城素明らの指導を受け学び、帝展に入選。東京美術学校を卒業した際に東山魁夷を名乗ったそうです。また、ドイツに留学するものの父の病気で帰国しました。その後、川崎小虎の娘と結婚したのですが、しばらくの間は絵も売れず、肉親も次々と亡くなるなど、不遇の時代を過ごしたようです。そして42歳の時、日展で「道」という作品が話題となったのをきっかけに人気が出て、独特の青の色彩を中心に90歳で死ぬまで活動を続けたようです。

このコーナーでは、東京美術学校の師や仲間の作品と一緒に展示されていました。


結城素明 「春山晴靄」「夏渓浴雨」「秋嶺帰雲」「冬海雪霽」
掛け軸が4幅あり、右から春夏秋冬の順で並んでいます。いずれの絵も小さな人が描かれ、自然の雄大さが感じられます。水辺の山?や緑鮮やかな松が目を引きました。
この結城素明は先述の通り、東山魁夷の先生の一人で、東山魁夷に「自然の中に入り、心を鏡のようにして観ておいで」と教えたそうです。

川合玉堂 「竹生嶋山」
玉堂も先生の一人として紹介されていました。これは琵琶湖北部の島の神社を描いた絵です。打ち寄せる波と岩の上にある神社、背景には霞むように山のようなものが見えます。 解説によると、近景と遠景を異なる技法で描いているようで、近景は線による表現で強弱・濃淡をつけ質感を表し、遠景はぼかしの技法によって、霞の空気感を出しているそうです。特にぼかしの技法は流石でした。

東山魁夷 「白い嶺」
何故か56歳の作品。(学生時代のコーナーじゃないのかよ!w) 雲ひとつ無く落ち着いた青の空を背景に、真っ白な雪の積もった木々が並んでいます。微妙に明暗があり森らしい静かな雰囲気でした。雪のふわっとした感じがよく出ていました。

東山魁夷 「白い壁」
これも44歳の作品。全体的に青っぽい感じで、夜の白い壁の蔵が描かれています。月光が当たっているのか、壁が白く光に照らされているみたいです。しずかな夜を感じる作品でした。


<第2章 皇居新宮殿の絵画にちなんだ作品>
このコーナーは1968年に作られた皇居の新宮の内部装飾を飾った作品にちなんだコーナーです。日本画家の錚々たるメンバーが新宮のために描いた作品を、一般にも見せたいと考えた山種美術館の初代館長が、画家たちに同じ意向の作品を作ってほしいと直接頼んで描いてもらった作品が並んでいます。それだけに大作のある迫力あるコーナーでした。

東山魁夷 「波(スケッチ1):満ち来る潮のための」
波と岩場を描いたスケッチです。同じようなスケッチが8枚並んでいました。波が岩にぶつかり激しく飛沫をあげる様子が描かれています。緑がかった青い海と、水が流れ落ちる岩が実際の光景を見ているかのようでした。

東山魁夷 「満ち来る潮(小下図1)」「満ち来る潮(小下図2)」
こちらは先ほどのスケッチと同じ「満ち来る潮」のための下図です。同じ構図の絵が2枚展示されているのですが、そのうち1つは縦・横・斜めに格子状に定規で細かく線を引き、その配置やリズム感を確かめているような感じになっていました。この下図を観てから本図を観るとより楽しめます。

東山魁夷 「満ち来る潮」 ★こちらで観られます
これが先ほどのスケッチと下図の完成図です。恐らく縦は2mくらい、横は9mくらいある大作で、実際の浜が目の前に広がっているかのような迫力があります。海の岩場に波がぶつかる様子や、今まさにぶつかった波が大きく飛沫を飛ばしています。右上・左下には金粉が使われ、白波にはプラチナも使われているらしく、目に鮮やかです。 緑がかった海や岩にも所々金が使われていて、非常に装飾的な雰囲気とダイナミックさがありました。 なお、この画題は万葉集から取られているそうです。

山口蓬春 「新宮殿杉戸楓4分の1下絵」 ★こちらで観られます
完成することなく下絵で終わってしまった作品のようですが、十分見応えがあります。目の覚めるような鮮やかなオレンジのモミジが描かれています。そのモミジはスタンプのように同じ形をしていて、デフォルメされているかのようでした。背景もオレンジに染まり、装飾的な華やかさを感じました。

橋本明治 「朝陽桜」 ★こちらで観られます
これは先ほどのモミジの絵と対になっている感じでした。こちらも紋章かスタンプのように単純化された桜の花で埋め尽くされています。背景は金で、所々に花の上にも金がまぶしてあります。これはどうやら陽の光を表現しているようです。同じ形ですべて正面を向いた桜はリズム感があり、堂々とした風格を感じました。琳派っぽい装飾性があるようでした。


<第3章 昭和の日本画>
このコーナーは昭和の日本画を紹介するコーナーで、東山魁夷の作品は2点のみです。
昭和時代、官展である帝展と在野の院展が2大勢力を形成していたようですが、やがて不安定になり、日本画滅亡論まで囁かれた激動の時代に入っていったようです。そうした中、西洋のスタイルを取り入れるなど切磋琢磨していき、また、百貨店や画廊でも展覧会を開くなど大衆化にも力を入れるなどして、盛り返していったと説明されていました。ここではそうした激動の中の作品を紹介していました。

横山大観 「松竹梅のうち 松(白砂青松)」
川合玉堂 「松竹梅のうち 竹(東風)」
川端龍子 「松竹梅のうち 梅(紫昏図)」

3人で松竹梅の作品を持ち寄ったセットです。特に好みは梅で、藁葺きの小屋と梅の木が簡略化されて描かれていました。その筆遣いは大胆さと流麗な流れを感じました。

横山大観 「松竹梅のうち 梅(暗香浮動)」
川合玉堂 「松竹梅のうち 松(老松)」
川端龍子 「松竹梅のうち 竹(物語)」

これも3人で松竹梅のセットです。分担を変えて3通り作っていたようで、この展覧ではこの2セットがみられます。この中で特に好きなのは梅で、手前には梅の木か描かれ、背景には霧かモヤに包まれた山?とぼんやりと太陽も描かれています。陸と空の境界が曖昧で、暗香浮動という響きがなんとなくわかる気がしました。

川崎鈴彦 「潮霧」
全体的にモヤがかかっている感じの港町?の絵です。見おろす感じで、瓦屋根の家々の中に、ぽつんと真っ白な灯台が浮かぶように描かれています。灯台の周りは黒い影のようになり、灯台の白さや存在感を増しているようでした。また、瓦屋根の家々はキュビスムを思わせる幾何学な美しさもありました。

石川響 「房総」
澄んだ空、砂浜、水平線が描かれ開放感がある爽やかな絵です。波打ち際には馬が横向きになって頭をたれています。砂浜に残った水が鏡のように馬や空を映しているのが一際美しさを感じました。

杉山寧 「響」
大瀑布の岩で仰向けになり、右足を上げる裸婦が描かれています。裸婦の肉感的な感じや影のつき方は西洋画のように思います。また、背景の滝の垂直への流れや、三角形の岩、脚で三角形を描いてオイル裸婦など、構図はかなり計算されているそうです。生命感や躍動感を感じる一方で不思議な感じのする作品でした。

川崎春彦 「霽るる」
フォービスムのような濃い色彩で、群青の海と富士山を描いた作品です。円を描くような雲と、波の飛沫との境目が曖昧で幻想的な感じでした。力強く神秘的な雰囲気のある作品でした。

<第4章 魁夷が描く京の四季>
最後のコーナーは東山魁夷の京都をテーマにした作品が4点だけある小部屋です。京都は今描いておかないと無くなるという川端康成の言葉を聴いて、東山魁夷は京都の四季の連作に取り組んだそうです。ここにもいずれも美しい四季が揃っていました。

東山魁夷 「緑潤う」
川とその周りを描いた作品。水色の水面と濃く鮮やかな緑が落ち着いた雰囲気を出していました。 また、水面に空や木が反射して見えていて、時が止まったかのような静けさを感じました。

東山魁夷 「年暮る」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品です。しんしんと降る雪の下、軒を連ねる家々が描かれていて、雪の夜景を、微妙な水色~白の濃淡の屋根で表現しています。屋根からは幾何学的なリズムを感じ、手前で灯りがうっすら漏れている家など温かみを感じる部分もありました。


ということで、全体的に数は少ないけれども素晴らしい作品に会うことが出来ました。この量で1200円ってのは高いなとも思いますがw 
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