関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

小村雪岱とその時代 【埼玉県立近代美術館】

前回ご紹介した河鍋暁斎記念美術館に行った後、京浜東北線に乗って北浦和に移動して、埼玉県立近代美術館で「小村雪岱とその時代」展を観てきました。

P1110437.jpg P1110445.jpg


【展覧名】
 小村雪岱とその時代

【公式サイト】
 http://www.momas.jp/3.htm

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅


【会期】2009年12月15日~2010年02月14日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私は上村松園や鏑木清方、伊東深水といった淡く優美な絵を描く画家の作品が大好きなのですが、どこか似たような雰囲気を持つ小村雪岱(こむらせったい)も気になっていました。しかし今までたまに名前を見ても詳しくは知らなかったので、今回の展覧は良い機会でした。
実際に観てみると、かなり分量のある展覧で、学生時代の作品から時代を追って知ることができる貴重な内容となっていました。 今回も章ごとに気に入った作品を追いながらご紹介しようと思います。(似たような名前の作品もいくつかあったので、一応作品番号を振っておきます。)

<第1章 粋でモダンな東京で -資生堂意匠部時代->
まずは雪岱の学生時代から仕事の始まりについてのコーナーです。雪岱は東京美術学校の日本画科を経て、松岡英丘や下村観山に学びました。その後、小説家の泉鏡花との出会いによってデザインの道へ入り、資生堂の意匠部に入社しました。そこで日本調のデザインを担当していたようで、資生堂時代の作品もこのコーナーに展示されていました。
 参考リンク
  泉鏡花のwiki

1-6 小村雪岱 「北野天神縁起絵巻模写」
松岡英丘が文部省から模写の依頼を受けて、学生だった雪岱が担当した2枚のうちの1枚。貴族たちが家で何かを話している様子を描いた作品で、色鮮やかで緻密な模写でした。

1-12 小村雪岱 「香水 菊」
これは資生堂意匠部時代の作品で、香水瓶です。海外進出を考えていた資生堂の社長は、日本風のデザインが欲しかったらしく、日本の象徴である菊を描いたこの作品もその意向に沿ったもののようです。他にも水仙、フリージア、マグノリアなどの香水瓶が展示されていました。

<第2章 『日本橋』-装幀家・小村雪岱の誕生>
2章は本の表紙や見返しなどをデザインする「装幀家」となった雪岱の仕事がメインの章です。元々憧れていた泉鏡花と交流し、彼の小説『日本橋』の装幀を手がけたのが装幀家としてのスタートでした。 『日本橋』が出版されるとその装幀が絶賛され、以降のほとんどの泉鏡花作品は雪岱が手がけることになったようです。ちなみに「雪岱(せったい)」の画号は泉鏡花に名づけてもらったそうです。 この章では雪岱が泉鏡花らの作品と共に装幀家としての不動の地位を築いて行くのがわかります。

2-4 装幀:小村雪岱 『日本橋』
初めて装幀を手がけた、表紙や見返しが美しい本です。簡略化されデフォルメされた感じで、淡く上品に雪の町並みや夜の裏小路などを描いています。柳と誰もいない畳の部屋を描いた挿絵も好みでした。、

2-71 装幀:小村雪岱 『綵房綺言』
本の表紙を両面観られる展示方法でした。寝転んで本を読む青い着物の女性と、膝に本を置いて読む桃色の着物の女性が描かれています。どちらも清純な雰囲気でかなり好みの作風でした。

2-17 装幀:小村雪岱 『芍薬の歌』
大きな川か港湾か判別できませんが、そこに長く弧を描く橋が架かっている絵です。静まり返ったような水面の薄い青が美しい作品でした。

2-55 小村雪岱 『スヰート』表紙
明治製菓の広報誌の表紙です、その題字は雪岱が資生堂に勤めていた頃にデザインしたものらしいです。実際には「トーヰス」と書いてあって昭和初期を感じる雰囲気のある表紙でした。

2-15 装幀:小村雪岱 『紅梅集』
四角い窓が3つ並ぶ部屋の中に、狛犬?みたいな首だけの像が台の上に乗っています。他に部屋には何も無くがらんとしていて、シュルレアリスムのようにちょっと不安を覚える作品でした。

2-33 口絵:鏑木清方 『無憂樹』
そういえばこの前サントリー美術館で観た清方ノスタルジアでも、鏑木清方と泉鏡花との関係について言及していたなと思ったら、この章には鏑木清方の作品もありました。小村雪岱と鏑木清方は泉鏡花の信奉者は集まった「九九九会」のメンバーだったそうで、(他には岡田三郎助などもいます) 会費が99円9銭だったからそういう名前だったらしいです。
この口絵は、屏風のこちら側で肩の袖を押さえる着物の女性と、屏風の裏で同じような女性(同一人物?)が灯りの下で巻物を読んでいる様子が描かれています。清方らしい繊細で清らかなイメージの作品でした。
 参考記事:
  清方/Kiyokata ノスタルジア (サントリー美術館)
  清方/Kiyokata ノスタルジア 2回目(サントリー美術館)

2-44 46 鏑木清方 「註文帖」「註文帖画譜」
泉鏡花の『註文帳』に想を得て描かれた何枚か連なった作品。これを三越で観た雪岱が感動し、清方から借り受けたそうです。しかし、返すのが惜しくなり、せめて木版画だけでも手元におきたいと考え、新小説社の社長を説得し、ついに木版画集を完成させたのだとか。清方と雪岱の関係がわかるエピソードで面白いです。 私が特に好みだったのは第6図で、淡く背景に消え入りそうな美人が描かれている作品。髪だけは濃く描かれているのに、足は幽霊みたいに消えかかっていました。妖しい雰囲気は泉鏡花の影響?w


<第3章 白と黒の美学-「雪岱調」、挿絵界に新風>
里見(さとみとん)の「多情仏心」で初めて小説の挿絵を描き、名実共に不動にしたのは邦枝完二の『おせん』の挿絵らしいです。『おせん』の成功により雪岱は「昭和の鈴木春信」と絶賛され、小説の売り上げも伸びたようです。この章では小説の挿絵などが展示されていました。

3-55 小村雪岱 「刺青のお伝」 ★こちらでほぼ同じ絵が観られます
布団の上でうつ伏せの上半身裸の美女と、背を向けたまげをした男性が描かれています。「痛いだろうけど動かないで」という小説の文章が読めて、どうやら刺青を彫っているようです。女性の真っ白な肌が色っぽく、少し緊張しているような面持ちが小説の場面を端的に現しているようでした。

3-35 小村雪岱 「おせん」 ★こちらで観られます
おせんの挿絵は鈴木春信の絵を参考にして描いたそうです。 いくつかの場面があった中で気に入ったのが、傘の絵。 大きな傘が15個くらい並んでさされている様子が描かれています。さしている人の顔は傘に隠れて見えず、傘の円形がリズミカルに並んでいるのが面白いです。また、上の方が余白を大きく取っているのも独特の雰囲気でした。


この作品のちょっと先のあたりには実際の雑誌が並んでいるコーナーがありました。何故か竹久夢二とかの作品もあったり。

3-145 小村雪岱 『サンデー毎日新作大衆文芸号』 宣伝ポスター
大きく3段にわかれたサンデー毎日の宣伝ポスターです。上段は2人の着物の女性が向き合い、(一人は背を向けています)しゃがんで手にナスや赤い植物を載せてお互いに見せている優美な絵が描かれています。中段は掲載作家と作品名の一覧、下段は大きな字で「サンデー毎日」と書かれていました。絵の2人が可憐な感じで、現在のサンデー毎日とえらくイメージが違うw 

3-106 小村雪岱 『演藝画報』表紙原画 絵番附
開いた障子から真っ青な空が見え、そこに細い月が浮かんでいます。そしてそれを振り返って見る着物の美女が描かれていました。大きく開かれた空の青が目を引く作品でした。

この辺に、先ほどご紹介した「おせん」を雪岱の挿絵を使ってストーリー紹介する映像がありました。縁側でおせんが切った爪を即座に床下で春信が集めて、家に持ち帰ってやかんで煮て爪の香りを楽しむ・・・そんな場面もありましたw 隣の住人は臭くてたまらんとやってたのも妙にリアルできもいw なお、この映像は文字が小さい割りに字幕の切り替えが早くて着いていくのが大変でした。 


3-146 小村雪岱 「青柳」 ★こちらで観られます
高い目線(2階くらい)から向かいの1階の広い和室を見下ろすような構図の絵です。畳の緑と柳の緑が映え、爽やかな印象です。畳の上には鼓と三味線が置かれていて、お稽古の途中で抜け出したのかな?とか想像を掻き立てられました。

3-149 小村雪岱 「春告鳥」 ★こちらで観られます
鶯色の着物を着た女性が地面にしゃがみこみ、振り返っている絵です。その目線の先には鳥(燕?)が描かれていて、これが恐らく春を告げる鳥でしょう。春を待つ気持ちが伝わってきそうな絵でした。

<第4章 檜舞台の立役者-名優の信頼をあつめて>
最後の章は舞台装置の仕事に関するコーナーでした。雪岱は舞台装置のデザインも手がけ、その活動範囲は歌舞伎座、東京劇場、帝国劇場、明治座、新橋演舞場と名だたる劇場に及んだようです、「一本刀土俵入り」などの演目では今でも雪岱の舞台装置が踏襲されているとのことでした。ここにはそうした舞台の原画などが沢山展示されていました。

4-2 小村雪岱 「河庄」
歌舞伎「心中天網島」の一場面です偽りの愛想尽かしを述べるシーンらしく、店の中の豪華な着物の女性と、店外にいる青と白の縞模様の着物を着た男性の後姿が描かれています。その解説を読んだせいか静かな雰囲気ながらも緊張感があるように思いました。

4-9 小村雪岱 「源氏物語 葵の巻」舞台装置原画
葵上に嫉妬した六条御息所が生霊となって現れるシーンの舞台です。寝殿造りで御簾のようなものが描かれている原画でした。隣には実際の舞台の写真もあり、この絵が活かされていたのがわかるのが面白かったです。

4-12 小村雪岱 「すみだ川」舞台装置原画
緑の築山と桜の白さが目を引く作品で上品な雰囲気でした。

4-15 製作:数馬英一 「一本刀土俵入り」舞台装置模型
雪岱の原画を基にした舞台装置の模型です。正面から見ると本当の舞台のようにも見えます。 雪岱はこの作品の舞台となる土地に実際に出向いて写生をしたらしいです。この模型の近くには他のシーンの原画もありました。ここまで徹底したから現在でも愛されているのかもと思いながら観ていました。

舞台装置のほかにも着物のコーナーもありました。そのデザインも雪岱が手がけたらしくデザイン画もありました。


最後の部屋は何故か3章の扱いのようです。美しい版画(エスタンプ・複製版画)が並んでいました。
3-167 小村雪岱 「雪兎」
大きな傘をさし、雪の道?でしゃがむ着物の美女が描かれています。手には白い兎を持っていて可愛らしかった…。

3-169 小村雪岱 「筑波」
遥か向こうに見える筑波山と、後姿の着物の女性が描かれています。その間には白い空間(雲?)があり、清清しい雰囲気の作品でした。美女の顔も観たいw


ということで、雪岱の時代ごとの作品や周囲の交流関係などもわかる濃密な内容となっていました。せっかくなら音声ガイドとかあればもっと良かったのにとも思いましたが、作品の横にかいてある解説の情報量も多かったです。(ちょっと難しめ)
後々まで参考になりそうな展示でした。

特別展の後、常設にも行ったのですが、今回は残り15分くらいしかなかったので、かなり急ぎで回る羽目にw (そのため今回は常設の感想は割愛します)
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おまけ。この日の雲はシュルレアリスムの絵にでも出てきそうな雲だったので、ついでに写真を撮ってみました。
P1110454.jpg
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