関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

歌川国芳-奇と笑いの木版画 【府中市美術館】

もう会期末間近となってしまいましたが、府中市美術館へ「歌川国芳-奇と笑いの木版画」展を観に行ってきました。私が行ったのは後期展示となります。

P1120468.jpg


【展覧名】
 歌川国芳-奇と笑いの木版画

【公式サイト】
 http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/kuniyoshi/index.html

【会場】府中市美術館
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など

【会期】
前期:2010年03月20日~04月18日
後期;2010年04月20日~05月09日

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日10時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末のせいか結構お客さんが入っていて、この美術館で列を作って作品を観たのは久々だと思います。場所によっては空いているのですが、部屋の角とかは混雑感があったかな。この展示は子供向けの企画もあり、子供も多く観にきていました。
今回は作品充実度を④にしていますが、これは浮世絵の性質上、展覧会でよく観る作品が多いためこうしました。しかし、揃えはこれでもかというくらい良い作品が並んでいて素晴らしい内容となっていて、かなり面白いです。細かい章節分けで様々なテーマから紹介する切り口も私のような素人にもとっつきやすく素晴らしかったです。詳しくはいつものように気に入った作品を通してご紹介しようと思います。
(なお、章・節の区切りはリストに載っていませんので、メモを頼りに書いています。メモを取ってないところもあるので、下記の文中には不足してる章・節があります)


まず入口付近には役者絵などがプロローグ的に展示されていました。

歌川国芳 「今様六夏撰 昼寐」 (団扇絵)
団扇の作品。美女が髪を触っていて、整えているのでしょうか、そばには本が置かれていて、うたたねかた起きたのだろうかと想像させます。白い肌や、青い着物、赤い唇などが色鮮やかに仕上がっています。

<第1章 国芳画業の変遷>
1章は歌川国芳の生涯の作品を一気に観られるコーナーです。国芳は1797年に染物屋の息子として生まれ、10代の頃に豊国の弟子に入りました。そして30代で水滸伝を描いたシリーズが人気となり、遅咲きの人気絵師となっていったようです。天保の改革で厳しい綱紀粛正の時代もありましたが、一層豊かな着想で作品を生み出し、50代になると奇想に満ちた作風になったようです。
 参考リンク:天保の改革のwiki

歌川国芳 「頼朝時代きやうげんづくし」 (墨摺絵 筆彩あり)
19歳の時の作品で、A4くらいの大きさの紙に12人の役者の顔が描かれています。解説によると硬い面もあるようですが、それぞれの個性を出している出しているそうです。細かく各役者の情報が書きこまれていました。

歌川国芳 「あふみや紋彦」 (大判)
屋内の中にいる美女が描かれた作品ですが、美女よりも目を引くのが窓の格子の影でした。放射線状に伸びた光と影がストライプを描いて、斬新な雰囲気を出していました。

歌川国芳 「通俗水滸伝豪傑百八人之壱人 短冥次郎阮小吾」 (大判)
31歳頃の出世作で、水の中で取っ組み合いをする2人の男が描かれています。右上から左下に向かって対角線上に2人が配され、逆の対角線上には差し込む光や逃げる魚などが並んでいます。このように構成も練られていますが、水の透明感や2人の気迫も感じる素晴らしい作品でした。

歌川国芳 「坂田怪童丸」 (大判)
真っ赤な肌の金太郎が自分よりも大きな鯉を抱え持ち上げている様子が描かれています。しぶきが舞って鯉の背中をつたう水の流れが面白い作品でした。解説によると水滸伝と同じスタイルで描かれた作品なのだとか。


[景色を描く 天保期の風景画志向]
この辺は30代半ばの作品で、穏やかでのんびりした雰囲気の風景画が並んでいました。西洋絵画から得た技法をどう使うかというのが当時の絵師たちの共通認識だったようです。

歌川国芳 「東都名所 するがだひ」 (大判)
緩い弧が重なった構図の絵です。手前に見える左上がりの弧の坂を人々が登り、それに呼応するような黄色い虹を眺めています。これを幾何学的な単純化だと考えると、相当に未来を先取りした作品ではないか??と思いながら観ていました。

歌川国芳 「東都三ッ股の図」 (大判)
腐食防止のために小舟の底を火であぶっている2人の人物が描かれ、背景には港が描かれた作品です。立ち上る煙と雲と空の境界線が重なり合って表現されているのが面白い作品でした。発想も凄いです。


[美人画 文政末から天保の頃]
国芳の美人画というのは観たことがありませんでした。解説によると初期の作品に近く、画面を色々なモチーフで埋め尽くす傾向があるそうです。賑々しい色遣いで濃密な画風のようでした。

歌川国芳 「文月の七夕」 (大判)
真っ赤な着物の女性が突風に煽られている様子が描かれています、背景では七夕飾りなども風になびいていました。色合いが非常に濃く、目に鮮やかな作品でした。


[天保の頃]
質素倹約の綱紀粛正が行われた天保の改革によって、遊女や役者絵を禁止されるようになると、国芳は様々なアイディアで面白い作品を生み出していきます。後に嘉永の頃になると再び役者絵も描かれるようになったそうです。

歌川国芳 「白面笑壁のむだ書(「みんなわらつている」とある図)」
これは表情豊かな6人の役者が1枚になった絵で、役者絵が描けるようになってきたころの作品です。乱暴な殴り描きのように見えて細やかに描かれていて、白黒みたいでも微妙な色の重ね具合などで表現していました。この辺には似た作品が3枚くらいありました。

歌川国芳 「金魚にめだか」 (中短冊判)
金魚とメダカの描かれた縦長の作品です。水色の中の金魚が鮮やかに映え、縦に並んだ魚達が一連の流れのように見えるのが優美な雰囲気でした。涼しげで爽やかです。

歌川国芳 「大漁鯨のにぎわひ」 (大判三枚続)
江戸に漂着した鯨を描いた作品です。黒い島のように大きく描かれ、三白眼を見せています。周りには沢山の舟で見物人が集まってきていて、空には2羽の鶴もやってきて、背景には富士山が見えるなど、お目出度くて賑わっている雰囲気が出ていました。

歌川国芳 「里すゞめねぐらの仮宿」 (大判三枚続)
吉原の宴会の様子を描いた作品ですが、先述の通り天保の改革で遊女の絵が禁止されていたので、遊女の頭がすずめに置き換わっている絵です。遊郭の賑わいが数え切れないくらいのすずめ人間で描かれています。ちょっとキモいw もう一つ気になったのが遊女達の服も地味めだったことかな。弾圧をアイディアで乗り切った作品の1つじゃないでしょうか。

歌川国芳 「欠留人物更紗 十四人のからだにて三十五人にミゆる」 (大判)
人のあくびを止めようとする人が他の人にあくびを止められ…という連鎖で繋がった人たちの絵です。14人どころじゃないように見えますが、35人もいるようにも見えないw 半裸のおっさん同士で見苦しい気もしますが滑稽で笑える作品です。

歌川国芳 「百種接分菊」 (大判三枚続)
当時話題になった1本の木に100本の菊を継いだものと、それを観にきた人たちが描かれた作品です。100本あるかは数えませんでしたが其々の花の色形の描き分けや、群集の心理まで伝わるような描写が良かったです。こうした流行り物を取り上げるのが浮世絵師らしいのだとか。
なお、このあたりから3枚セットの作品が増えてきました。「大判三枚続」というのは3枚セットの作品です。


[嘉永期]
歌川国芳 「吉野山合戦」 (大判三枚続)
縦に3枚並んだ赤い五重塔の作品で、中々のインパクトがあります。塔の前で源義経の家来がなぎなたを構えていて、屋根の上にも武士が乗っています。周りや屋根に白い雪が積もり、赤との対比も綺麗でした。

歌川国芳 「大物之浦平家の亡霊」 (大判三枚続)
白い帆の船と、大きくうねり船ほどの高さの青い波が描かれています。背景には影絵のような亡霊たちが描かれていました。ダイナミックで色の対比も素晴らしく、ストーリー性も感じさせました。 この辺は作品が充実しててヤバイくらい面白いですw

歌川国芳 「艶曲揃」 (団扇絵)
寝転んで本を読む女性を描いた作品で、背中には白黒の猫が乗っかっていて、背景には花が咲いています。最も目を引くのは女性の着物で、うっすらと縦の縞が入り、その上に市松模様が描かれ、市松模様の中にも紋様が描かれています。それぞれの色が重なっているのが驚きの表現で、4版重ねて摺っているらしいです。素晴らしい作品です。

歌川国芳 「横浜本町之図」 (大判三枚続)
開港した横浜の様子を描いた作品です。左の手前から右の奥へとずら~~~っと店が軒を連ね、奥行きを感じさせ圧巻です。通りには行きかう人々、背景には海が描かれていました。大胆な画面に驚きを感じました。


[忠臣蔵にみる画業の変遷]
忠臣蔵は人気作だけあり、生涯に渡って描かれた作品でした。その変遷を追うことで作風の変化も知ることができます。浪士たちが密集して描かれている初期、西洋画のような表現の天保期など、実に様々な忠臣蔵が描かれ真面目なものから遊び心溢れるものまで並んでいました。

歌川国芳 「蝦蟇手本ひやうきんぐら 三段目・四段目」 (大判)
タイトルも遊んでますが、役者絵が描けなかった頃に赤穂浪士をがま蛙の姿にして描いた作品です。抜いた刀はよく観るとナメクジだったり、家紋はオタマジャクシだったりと細部まで遊び心を感じました。隣には蛙どころか提灯になった忠臣蔵までありました。

歌川国芳 「忠臣蔵義士両国橋引取り」 (大判三枚続)
橋を埋め尽くす浪士たちが描かれた作品。橋の描写もダイナミックですが、初期の密集した表現とはまた違う表現となっています。どう違うかは言葉にするのは難しいですが、こちらのほうがすっきりして1人1人がよく分かる感じかな。


<第2章 国芳の筆を楽しむ>
今回の展示はほとんどが錦絵ですが、こちらは貴重な肉筆のコーナーです。点数は少ないですが滅多に無い機会でした。

歌川国芳 「納涼立美人図」 (絹本着色)
白地に藍色の着物を着た女性を描いた作品です。ぶどうのような実と葉っぱが描かれた模様の着物が目を引き、伸びやかかつ優美な雰囲気を漂わせていました。肉筆の美人画は珍しいらしいです。


<第3章 もう一つの真骨頂>
3章は今回の展示でも美味しいところを集めたような章です。奇想天外というに相応しい遊び心溢れる作品が並び、絵画に興味が無い人でも楽しめるコーナーじゃないかと思います。

歌川国芳 「東都名所 新吉原」 (大判)
夜の吉原の近くの道を描いた作品で、道行く男や遊郭に向かう篭が描かれています。目を引くのは空に浮かぶ白い月で、その周りに大きな光輪ができているのが面白いです。解説によると影の表現なども見所なのだとか。

歌川国芳 「近江の国の勇婦於兼」 (大判)
後ろ足を蹴り上げる馬の絵で、押さえようとしている怪力のお鎌(女性)も一緒に描かれています。西洋画のような画風で描かれていて馬の影の表現などからダイナミックさを感じました。

歌川国芳 「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」 (大判三枚続) ★こちらで観られます
今回の展覧はダイナミックな作品も多いのですが、その中でも特に驚くのがこの作品です。3枚に渡って描かれた巨大な魚(ワニザメ)と荒波が描かれ、海を漂う舟の上には自害しようとする男(為朝)が座り、周りには無数の影のようなカラス天狗がそれを止めようとしています。激流のうねりとワニザメの表情がさらに力強さを感じさせる作品でした。

歌川国芳 「朝比奈小人島遊」 (大判三枚続)
3枚の画面いっぱいに半裸の大男(むしろ巨人)が描かれていて、画面が狭く感じるくらいです。輪郭線が太く、その大きさをより強調しているように見えます。そして、その男の前には小人のような大名行列が粛々と歩いているのがシュールでした。この人たちには見慣れた光景なんでしょうかw

歌川国芳 「五拾三次之内 岡崎の場」 (大判三枚続)
男性の役者2名と、大きな化け猫と、女に化けた化け猫などが描かれ、妖怪絵のようです。しかし、よく見ると周りには立って踊っている2匹の猫がいて、怖いだけでなくちょっと可愛いさもありましたw 怖さと可笑しさが同居しているような絵です。 この辺には猫人間や化け猫など猫に関する作品が多々ありました。

歌川国芳 「其面影程能写絵 おかづり、ゑびにあかがひ」 (大判二枚)
2枚セットの作品で、影絵遊びを題材にしています。障子ごしの見え方と、実際に障子の中の様子が同じ構図で描かれているのが非常に面白いです。これは釣竿を持って植物や木を並べているのが影になると伊勢海老に見えるという作品でした。去年人気を博しただまし絵展でもこのシリーズの作品が何点かあったので、ピンとくる方も多いかもしれません。
参考記事:
 奇想の王国 だまし絵展 (感想前編) (Bunkamuraザ・ミュージアム)
 奇想の王国 だまし絵展 (2回目 感想後編) (Bunkamuraザ・ミュージアム)

歌川国芳 「其まゝ地口猫飼好五十三疋」 (大判三枚続)
東海道五十三次を文字って猫にした作品です。「にほんばし」が「にほんだし」、「ほどがや」が「のどかい」、「三島」が「三毛ま」というように駄洒落を駆使しつつ、猫の百態を描いています。よっぽど猫が好きなんだろうな!というくらい愛嬌溢れる猫の仕草の描写の思わずニヤニヤしてしまう作品ですw

歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 (大判) ★こちらで観られます
裸の人が集まって、大きな人になっている作品です。ちょっと不気味な可笑しさがある作品で、特にへばりついてる感じの鼻の部分の人と縮こまっている耳の人が笑えます。背中の部分もお辞儀している福助の後姿のようにも見えました。
参考記事:
 江戸東京博物館の案内 (2010年03月)

ということで、かなり楽しんできました。これだけの内容でさらに前期・後期だったと考えると素晴らしい充実ぶりです。しかも入場料が600円で、解説機が200円か300円だったのも驚きで、ずば抜けたコストパフォーマンスだったと思います。もうすぐ終わってしまいますが、お勧めです。
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■2011/11/21
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■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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