関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新 【パナソニック電工 汐留ミュージアム】

前回の記事でご紹介した資生堂ギャラリーに行く前に、パナソニック電工 汐留ミュージアムで「HANS COPER ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新」を観てきました。この展示は楽しみにしていた展示でした。

DSC_13507.jpg

【展覧名】
 HANS COPER ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新

【公式サイト】
 http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/10/100626/

【会場】パナソニック電工 汐留ミュージアム
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅
【会期】2010年6月26日(土)~2010年9月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいたわけではありませんが、私が行った頃にはチケット売り場に何人か並んでいて、会場にも絶えず人が来ていました。結構人気があるのかも。

今回の展示は陶芸家のハンス・コパーの個展で、日本では初めての大規模な回顧展だそうです。いつも、陶芸はわからない!と言っている私ですが、ここ1年間ですっかりルーシー・リーに魅せられてしまい、その助手として出発したハンス・コパーの個展も首を長くして待っておりました。
構成はルーシー・リーの助手の時代から晩年まで時系列で辿っていき、類似の作品はまとめて展示するなど作風の変遷が見て取れるのが良かったです(解説は少ないので深い理解は難しいかも) 詳しくは章ごとに気に入った作品とともにご紹介しようと思います。同じ名前の作品も多いので、念のため作品番号もつけておきます。

 参考記事
  ルーシー・リー展 (国立新美術館)
  アートフェア東京2010 (東京国際フォーラム)
  U-Tsu-Wa (21_21 DESIGN SIGHT)


<アルビオン・ミューズ 1946~1958>
まずは彼の陶芸家としてのスタートの時代についての章です。ハンス・コパーは1920年にドイツのザクセンで生まれました。彼はユダヤ人だったので、戦争の時代になるとナチスの迫害を逃れてロンドンに亡命しました。ロンドンでも辛酸を舐めたようですが、苦労の末に1946年にルーシー・リーの工房で働き出しました。工房では急速に技術を身につけていったそうで、特にテーブルウェアでの貢献は大きいようです。コパーがロクロをひいて成形したものにリーが釉薬を施すなど、共同の作品も作られ、1950年には2人の合同展も開かれたそうです。(今回の展示でもそうした共同作も観ることができました。)

まず最初に、まるで宝石か貴金属のようなルーシー・リーの美しいボタンが展示されています。このボタンは戦争の時代に依頼を受けて作られたものですが、釉薬の使い方などはその後のリーの作品にも繋がっていると思います。 また、こうした戦争時代~戦後に材料などが不自由だったことも、後のコパーに大きな影響を与えているとのことでした。

102 ハンス・コパー 「セルフポートレート」
自画像です。キャンバスに引っ掻き傷のように描かれていました。コパーは絵にも関心があったようで、何点か絵画の作品もありました。

1 ハンス・コパー 「ポット」
縦に無数の白い線が入った焦げ茶の器です。これはルーシー・リー展でも観られた掻き落としの技法かな? リーの作品とよく似ているように思いました。

3~5 ハンス・コパー 「ポット」
幾何学模様の入ったざらついた素地の器です。円形の口など未来的な雰囲気を持っていてどこかキュビスムのような感じを受けました。解説によると、リーの工房で作られた初期の作品は焦げ茶の地に白で半抽象の文様が表された作品が多いようです。どうやらピカソなどに憧れていたようなので、実際にキュビスムからも影響を受けているようでした。

99 ハンス・コパー/ルーシー・リー 「プレート6点組」
焦げ茶の皿に、白い円のような渦巻き模様のような文様が入った作品です。シンプルながらも洗練された雰囲気がありました。

101 ハンス・コパー/ルーシー・リー 「コーヒーセット7点組」 ★こちらで観られます
取っ手の長い水差、コーヒーカップ、受け皿のセットです。いずれも焦げ茶で、白い2本の横線と、無数の縦線が描かれていて、垣根のような文様となっています。これもシンプルでありながら優美な作品で、人気商品となったとのことでした。(←売ってたら欲しいw)

105 ハンス・コパー 「頭部」
これはコパーの彫刻作品。老婆の頭部のようで、リーの顔かな??と思いましたが詳細は不明です。

7~8 ハンス・コパー 「頭部」
2点の彫刻作品です。いずれも柔らかい曲線と円を組み合わせたキュビスム的な彫刻で、素地が土器のような質感です。形から先進さを感じる一方で、質感から素朴さ・古代の遺物のような風格を感じました。

106 ハンス・コパー 「ドローイング(ヌード)」
ドローイングと版画のコーナーもありました。これは女性の体を簡略化された輪郭線と薄っすらと塗った水性インクで表現したものです。理知的でどこか洒落た雰囲気に思いました。絵画にも美的センスを感じます。
解説によると、コパーは1956年に「空間の鳥」等を作った彫刻家コンスタンティン・ブランクーシを訪ねにパリに行ったそうで、フランスからの帰国後に一時期絵画に関心があったとのことでした。

10 ハンス・コパー 「ポット」 ★こちらで観られます
これは縦長の楕円形の白い器です。胴の部分がくびれていて、どうやら2つの器をくっつけたように見えます。また、表面をよく見てみると層のようになって斜めに流れるような肌理があるようでした。これも一見シンプルな形に見えますが、その造詣に驚きます。

6 ハンス・コパー 「ポット」
平たい口、丸い2つの鉢を合わせた胴、台形の台という4つの部分をくっつけて作られた作品で、この技法は「合接」と呼ぶそうです(先ほどの作品もこの技法だと思います)
 非常に変わった形をしていて、表面にも直線を境に茶色とクリーム色に分けるなど幾何学的な要素を感じます。解説によると、この2色の色分けの複雑な質感は、何度も水で溶いた粘土をかけて乾かし、研磨し、掻きとるというのを繰り返して出しているとのことでした。 リーの作品にも「コンビネーションポット」というパーツを組み合わせた作品がありますが、リー以上に複雑な形状となっているように思いました。


<ディグズウェル 1959~1963>
コパーは1959年にリーの工房を離れ、ディグズウェル・アーツ・トラストの運営するディグズウェル・ハウスに移りました。ここでは自分の時間を全て制作に使うことが出来たそうで、同じハウス内の他ジャンルの芸術家との交流を持つことも出来るなど、恵まれた環境だったようです。また、コパー自身はこの時代を「建築の時代」と呼んでいるそうで、タイル、レンガ、便器、洗面器、公共建築の壁画、大聖堂の燭台 など建築に関わる作品を残しているそうです。いくつかそうした作品も並んでいました。

28~29 ハンス・コパー 「コベントリー大聖堂の燭台のためのマケット」
第二次世界大戦で壊れたコベントリー大聖堂を再建する際に作った、聖堂内に置く6本の燭台の制作模型です。階段の手すりの柱みたいな形と言えば良いのかな?w 3つくらいの部品が合接し、すらっとした優美な姿をしています。 この模型から実際に聖堂のための燭台を作っている写真も展示されていたのですが、観たところかなり大きく2m以上はありそうでした。

25~27 ハンス・コパー 「ポット」「花生」
カップの下に皿を合わせたようなもの、その下に台という感じで、4つくらい繋げている形をしています。しかし、これは陶器ではなくブロンズで出来ていて、ディグズウェル・ハウスの芸術家たちに手伝って貰って作成したそうです。陶器とは違った精悍な感じで黒光りしていました。質感が違うとまた別の味わいがあって面白いです。また、ディグズウェル・ハウスでの交流が伺える作品でした。

31 ハンス・コパー 「ウォールディスク」 ★こちらで観られます
これは今回の展示の中でも面白い展示方法の作品です。壁に、10個くらいのドーナツ状の陶器を嵌め込んでいる作品で、覗き穴のように向こうが見えます。(これは実際にこのように使われていたそうです) 中々遊び心を感じます。それにしても、結構厚い壁に嵌め込まれていました。


<ロンドン 1963~1967>
コパーは1963年にロンドンに戻ってきて工房を構えたそうです。そのせいか、この時期は多作な時期だそうで、究極にまで彼の個性が花開いた時期でもあるようです。 また、19677年にはリーとの共同展が開催されるなど、評価が高まっていったそうです。

この辺には平らな皿(帽子のつば状の円盤)を乗っけた丸いポットがずらっと並んでいました。幾何学的な感じとざらっとした質感が特徴に思えます。こうした形が面白い作品が多くなってくるのがこのコーナーでした。

38 ハンス・コパー 「ティッスル・フォーム」
巨大な器で、公式ページの頭にある写真の作品に似ています。ざらついた茶色の表面で、開いた口、2枚の鉢をくっつけたような胴、胴の真ん中に目玉のような茶色いへこみ、そして台 といった不思議な形状をしています。もはや文章では伝えるのが至難なくらい面白い形の作品で、自由な発想で作られているように思います。 結構大きいので迫力もありました。

<フルーム 1967~1981>
ロンドンで暮らした後、田舎暮らしに憧れて1967年にフルームという土地に移ったそうです。この頃には古代美術への親近感を示す「キクラデス・フォーム」という作品が生まれるなど、さらなる進化をしていたようですが、1975年に筋肉が萎縮する病気と診断され、1980年まで制作を続けたものの、その翌年の1981年に生涯を終えました。なお、この頃には国際的な評価も高くなっていたそうです。

68~69 ハンス・コパー 「スペード・フォーム」
これは正方形の胴の下に円筒が伸びたような形で、横から見るとふくらみがあるのがわかります。この辺にはこうしたスペード・フォームという作品がいくつかありました。(スペードと言うよりは四角いスコップの先のような形のが多いかもw) 形ごとに何点かずつ比較しながら観られたのが面白かったです。

81 ハンス・コパー 「ティッスル・フォーム」
ティッスル・フォームというのはアザミ形のことで、アザミの花の形に似ているそうです。広く開いた口、丸い胴、円筒の組み合わせで、真ん中に円の文様が見えました。形が独特で、用途がよく分かりませんが神秘的な感じがしました。

86,90 ハンス・コパー 「キクラデス・フォーム」 ★こちらで観られます
白いやじりを下向きにして、そこに黒い台をつけたような形をしたものと、黒くて先の丸まった壷のようなものに台をつけたような形の2点の作品です。「キクラデス・フォーム」というのは古代エーゲ海のキクラデス彫刻にちなんで彼の妻が名づけたそうです。台との境がかなり細くなっていて、どうやってバランスをとっているのか?と思ったら、中に編み針を芯として差し込んでいるのだとか。
この辺にはこうした台との境が極端に細い白黒の作品がならんでいました。


ということでこれでコパーの作品は終わりですが、まだ続きがあります。


<ルーシー・リーの陶芸>
最後はルーシー・リーのコーナーでした。流れ的に最初の方が良かったのでは?とも思いますが、代表的な作風が観られてプチ ルーシー・リー展といった趣きでした。

123 ルーシー・リー 「花生」
ブロンズとピンクの釉薬が交互に帯状になっている花生けです。ピンクの帯には掻き落としで縦線が無数に描かれています。また、器の下の方にはコバルトブルーの帯も1本だけあり、色を引き締めているようでした。美しい色と形で、流石はルーシー・リーといった華やかさがありました。

130 ルーシー・リー 「花生」
薄い水色で首の長い器です。表面には気泡のようなボツボツがあるので、溶岩釉と言われる技法だと思います(多分) 釉薬や色、質感などの面白さを味わえる作品でした。

131 ルーシー・リー 「花生」
薄い茶色と焦げ茶でできたスパイラル文の器です。これも溶岩釉のようでした。(スパイラル文についてはルーシー・リー展の記事をご参照ください。)


ということで、非常に充実した内容で期待して待っていた甲斐がありました。特にルーシー・リー展をご覧になった方は必見の展覧会じゃないかと思います。 両者とも知らない方でも、なんだこれ!?と驚く形状の作品が多いので楽しめるんじゃないかな? お勧めの展覧会です。
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