関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ブリューゲル版画の世界 (感想前編)【Bunkamuraザ・ミュージアム】

先週の日曜日に、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界」を観てきました。元々ブリューゲルが好きなのに加えて、インパクトのあるポスターを見て楽しみにしてたのですが、予想以上の濃い内容でした。そのため結構メモを取ってきましたので、この展示は前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1130972.jpg

【展覧名】
 ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/shosai_10_brueghel.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_brueghel/index.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【会期】2010年7月17日(土)~8月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まずは気になる混雑についてですが、まだ始まってそんなに経たないのに、凄い混み具合でした。入場制限もなくチケットやロッカーはすんなり通ったのですが、中に入ると列を組んで見ている感じで、特に七つの大罪のコーナーなどは人で溢れていて観るのも至難でした。私は人の後ろから見ていましたが、非常に細かく描かれた作品が多いので、後ろからだともっと近くで観たいと思うこともしばしば・・・。人の出入りが多くて押し出されるようになったりと、少し離れても落ち着かない環境でした。 作品自体は大満足でしたが、満足度を④にしたのはそういった混雑ぶりが原因で、自分の思うように観ることが出来なかった為です(><) 私も混みには慣れていますが、絵が細かいのでいつもと勝手が違ったかな。美術品観賞用の双眼鏡・単眼鏡をお持ちの方は持っていった方が良いかも知れません。

さて、中身についてですが、これはポスターの作品も物語るように奇想天外な世界が広がる少々グロくて非常に面白い展覧会でしたw 全部で150点余りの作品が並んでいたのですが、こうしたブリューゲルの版画展は日本では20年ぶりくらいだそうです。詳しくはいつもどおり章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
なお、この展覧会には楽器の出てくる絵が多いのですが、解説機を借りると、そうした作品に関する楽器の音色をいくつか聞くこともできました。


<プロローグ>
まずはプロローグです。このコーナーはピーテル・ブリューゲル自身の肖像や、当時の様子を知ることができる作品などが並んでいました。会場内には当時の管楽器の音色も聞こえていました。

不詳 「ピーテル・ブリューゲルの肖像」 ★こちらで観られます
ピーテル・ブリューゲル(父)の肖像画です。作者はわかりませんが彼の死後に作られたようで、左側を向き、長い髭そたくわえ帽子を被っています。解説によると、ピーテル・ブリューゲルの名前が初めて登場するのは、1551年にベルギーのアントワープにあった聖ルカ組合という画家の組合に登録した時だそうです。
なお、この展示では特に説明がなかったのですが、ピーテル・ブリューゲルは親子で同じ名前なので、通常は(父)と(子)というように後ろにどちらか分かるような記載があります。 今回の展示は全て(父)ということで省略させて頂きます。

ヨースト・アマン 「アントワープの寓意的地図」
大きな建物の中で商取引をする様子や、交易の積荷を運んでいる姿を描いた作品です。上部にはアントワープと交易していた都市の紋章なども描かれていました。当時のアントワープが交易で栄えていた様子がわかる作品でした。


<第1章 雄大なアルプス山脈の賛美と近郊の田園風景への親近感>
さて、ここからが展覧会の本番です。ピーテル・ブリューゲルは画家に登録した後、2~3年ほどイタリアに旅行したそうで、その時に観たアルプスを主題にした「大風景画」シリーズを作成したそうです。解説によると、アルプスの風景作品は斬新な構図などで革新をもたらしたそうで、高い評価を受けているのだとか。このコーナーではそうした風景画の作品が並んでいました。

ピーテル・ブリューゲル 「悔悛のマグダラのマリア」
一見、風景画のように見える作品ですが、タイトルとなっているマグダラのマリアが右下の方に描かれている作品です。粗末な木を組んだ家?の中で本を読んでいる姿が描かれていて、その後ろに描かれた川沿いの町は何とも平和な感じです。 マグダラのマリアが荒野で悔悛の生活を送ったエピソードは西洋画ではよく観る主題ですが、これはむしろ風景の方が目に入りやすい作品だったように思います。

ピーテル・ブリューゲル 「広大なアルプス風景」
手前の切り立った崖の上で、馬に乗った人が目の前に広がるアルプスの尾根の風景を見ている作品です。広々とした原にいる沢山の家畜や、木々などが見え、遠くには城も見えていて雄大で物語性を感じる景色となっていました。
この辺にはこうした遙かな風景が多かったです。

ピーテル・ブリューゲルとヨーリス・フーフナーヘル 「イカロスの墜落のある川の風景」
空を飛ぶイカロスとダエダロス(イカロスの父)が描かれ、イカロスはまっ逆さまに落ちていってます。その下には船が沢山浮いている川が流れていました。風景画を背景にした物語の作品という感じかな? ドラマチックな絵でした。
解説によると、この頃は画家が絵を描いて彫師が彫り、出版社が印刷するという工程で版画が世に出されていたそうです。


<第2章 聖書の主題や宗教的な寓意を描く>
さて、今回の展示の中でも特に面白かったのがこの2章です。普通、宗教画というと難しい感じがしますが、このコーナーは奇抜で奇妙な絵ばかりで、普段美術に関心が無い人でも興味が持てるような内容だと思います。

ピーテル・ブリューゲル 「聖アントニウスの誘惑」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている版画で、ブリューゲルより40年前の画家ヒエロニムス・ボス風に描いた初めての作品です。この主題は西洋絵画ではよく観るもので、聖アントニウスが幻想の中で誘惑と戦っている場面なので、画家の自由な発想で描かれることが多いのですが、この絵は特に奇妙な感じです。 水面に巨大な悪魔の顔が浮かび、口から煙を吐き、口の中から人が出てきています。周りにもおかしな生き物が溢れてカオスですw 悪魔なのにユーモラスでひょうきんな感じすらします。 画面の右下には光り輝く聖アントニウスが完全に無視しているようでした。この後もこうしたボス風の作品が続いて非常に面白いです。

ピーテル・ブリューゲル 「冥府へ下るキリスト」
大きな魚の口から出てくる預言者たちと、真ん中で光り輝くキリストと7体の天使が描かれています。どうやらキリストが冥府から人々を助けているようです。 周りにはやはり奇怪な生き物もいました。

ピーテル・ブリューゲル 「バベルの塔(1563年の油彩画に基づく)」
これはピーテル・ブリューゲルの油彩作品の中でも特に有名なバベルの塔に基づく版画です。バベルの塔は頽廃の象徴であるはずですが暗い雰囲気は無いように思います。版画でも塔の迫力が伝わってきました。 解説によるとこの作品はハプスブルグ家のコレクションを版画化した時のものだそうです。

ピーテル・ブリューゲル 「貪欲」
この2章には特に混みあって大人気だった「七つの大罪」のコーナーがあり、この作品も大罪の1つです。真ん中に女性が腰掛けていて、その周りには金貨の入った壺が囲み、女性はうっとりした表情を浮かべています。背景では皿を質草に変える人々など、搾り取られているような光景が描かれていました。

ピーテル・ブリューゲル 「傲慢」
ドレスを着て手鏡を持つ女性が、自分を見てうっとりしています。その隣では孔雀が羽を広げ、誇らしげな様子です。周りにも奇妙な悪魔が鏡を見てたりして、「傲慢」の罪に溺れているいるようです。その後ろの建物は傲慢の罪を犯した者を裁いているようで、煙が出ているのは罪人を焼いているのだとか…。 ちょっと可笑しい雰囲気があるけれども恐ろしい罰が待っているという教訓めいたものを感じました。自惚れで焼かれるとは厳しいですねえ。

ピーテル・ブリューゲル 「大食」 ★こちらで観られます
こちらは大食の罪を描いた作品です。左の方で酒をラッパのみしている女性が描かれ、周りにはやはり奇妙な悪魔や、顔の形をした風車などこの世のものとは思えない風景が広がっていました。なお、大食を象徴するのは豚だそうで、この絵にも描かれているようですが、見つけることができないうちにお客さんの波に押し出されてしまいました…。

この他にも「激怒」(剣を持った人と熊) 「怠惰」(ロバの上で寝る人) 「嫉妬」(心臓を食べている女と七面鳥) 「邪淫」(裸体の人物とヒキガエル)という感じで擬人化した罪人と象徴となる獣が描かれた大罪シリーズが揃っていました。邪淫だけは左右反転した2枚あったかな。

ピーテル・ブリューゲル 「節制」 ★こちらで観られます
七つの大罪とは反対に、七つの徳目をテーマにしたシリーズもあり、これはそのうちの「節制」となります。中央に馬のくつわを噛んで、その綱を自分自身で持つ女性が描かれています。他にも頭には時計を載せ、手には知性を表す眼鏡を持つなど様々な意味をもった品々を身につけていました。その周りでも本を読む人や働く人が沢山描かれ、勤勉な様子を表現しているようでした。細かく沢山の物事が描かれていました。

ピーテル・ブリューゲル 「正義」
剣と計りを持つ女性が描かれ、これは罪の重さを計るものだそうです。手前の左側では拷問されている人が描かれ、右のほうでは裁判をする様子、奥では刑が執行される様子など、残酷な雰囲気も受けます。解説によるとこれは当時の裁判を描いたものなのだとか。この頃の現実の方が悪魔以上に怖いかも…。 

他の徳目には「信仰」「希望」「愛徳」「剛穀」「賢明」といったものがありました。


<第3章 武装帆船やガレー船の驚くべき表現力>
続いて3章は打って変わって写実的な作品のコーナーです。プロローグでもご紹介した通り、当時のアントワープは海洋都市として栄えていて、様々な船が出入りしていたようです。ここではそうした船を描いた作品が並んでいました。

ピーテル・ブリューゲル 「外洋の3本マストの武装帆船および同行するガレー船」
大小2隻の帆船が描かれた作品で、大きく帆を張る姿が非常に写実的で細かく描かれています。船は大砲を装備していて、海賊船との交戦に備えているようです。当時の海運事情が伝わってくるようでした。 なお、ブリューゲルは船の構造まで知っていたそうです。だからこそここまで描けるのでしょうね。

ピーテル・ブリューゲル 「3本マストの武装帆船および空中のダエダロスとイカロス」
海を行く立派な帆と多くの大砲を持つ帆船が描かれ、空には落ちて来るイカロスと父のダエダロスが描かれています。どうして当時の船と一緒に描かれているのか分かりませんが、イカロスの話が好きだったのかな?? これも緻密な作品でした。


ということで、今日はここまでにしようと思います。 前半からすでに可笑しくて奇怪な生き物(悪魔?)が跋扈する内容となっていて、その異形の姿や細かい描写に驚きの声を上げている人たちが多かったです。この後の4章以降には、そうした作品は勿論、庶民に目を向けた作品なども出てきますので、次回は展示の後半についてご紹介しようと思います。


 ⇒後編はこちら


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