関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 【松屋銀座】

前回ご紹介したポーラミュージアム アネックスを観た後、すぐ近くにある松屋銀座の8Fで、「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展」を観てきました。

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【展覧名】
 アール・ヌーヴォーのポスター芸術展

【公式サイト】
 http://www.matsuya.com/ginza/topics/100804e_artnouveau/index.html

【会場】松屋銀座
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2010年8月25日~9月6日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場には結構人がいて、デパートの展示なのでちょっと騒がしい感じもしますが、混んでいるというほどでもありませんでした。
内容は、さらっと観られるだろうと思っていたら予想以上に濃い内容で驚きでした。チェコ国立プラハ工芸美術館とチェコ国立モラヴィア・ギャラリーのコレクションを中心に、130点くらいあるそうで、アール・ヌーヴォーだけでなく同時期の作品なども含め展示されていました。詳しくは気に入った作品を中心にご紹介していこうと思います。なお、作品リストは無かったので、メモを元に作品名を書いています。間違っていたらすみません^^;

<冒頭>
最初はハイライト的に数点の有名作が並んでいました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「ディヴァン・ジャポネ」 ★こちらで観られます
黒い服と帽子の女性が横向きで座っている様子が描かれ、背後には杖を持ったシルクハットの老人、左上には黒い長手袋をした舞台の女性や楽器のようなものが描かれています。今回の展覧会の解説にはありませんでしたが、これは「日本の長椅子」という意味の名前のキャバレーのポスターです。その名の通り、日本の浮世絵的などから影響を受けたものだったと記憶しています。
ロートレックはこの他にも結構あるのですが、bunkamuraのロートレック・コネクション展の時にも観られたポスターがいくつかありました。
 参考記事:ロートレック・コネクション (Bunkamuraザ・ミュージアム)

アルフォンス・ミュシャ 「椿姫」
これは「椿姫」の芝居のポスターです。 目をつぶり白いドレスを着た女性が描かれ、足元や髪には椿の白い花があります。うっとりするような表情や、周りに無数に浮かぶ青い星(六ぼう星みたいな)などから可愛らしく可憐な雰囲気がありました。(物語を考えると何か違う気もしますがw)
この辺には今回のポスターになっている「JOB」(煙草のポスター)や「ジスモンダ」など先日のアルフォンス・ミュシャ展の時にも観られたポスターもいくつかありました。
 参考記事:アルフォンス・ミュシャ展 (三鷹市美術ギャラリー)
 参考リンク:「ジョブ」の画像

ウィリアム・ブラッドリー 「ヴィクター自転車」 ★こちらで観られます
白、黒、薄い青の3色のポスターで、軽やかに自転車に乗った女性と、それを見つめる男性が描かれています。周りには白い花が浮かぶように描かれ、華やかでちょっと幻想的な雰囲気を感じました。男の目も女性に憧れているように見えたかな。
解説によると、当時は自転車は女性解放の象徴だったそうです。


<第1章 ウィーン分離派と世紀末 美術の潮流>
1章はウィーン分離派に関するコーナーでした。クリムトらによって結成されたウィーン分離派は、グラフィックデザインへの志向が強かったので、ポスター作品も多いようです。解説によると、大胆な構図や斬新なタイポグラフィ(文字)、色彩とフォルムの組み合わせの完成度が高いそうで、ここには気に入る作品が多くありました。
なお、この章はこの展覧会でも特に凄いところで、ウィーン分離派展のポスターがずらずらずら~~~っと並んでいます。これだけ一気に観る機会なんて滅多にないかも知れません。
 参考記事:ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)

グスタフ・クリムト 「第1回ウィーン分離派展」 ★こちらで観られます
これは記念すべき第1回のウィーン分離派展のポスターです。2枚同じようなポスターが並び、右は検閲前、左は検閲後となっています。検閲前のポスターの上部には、裸のテセウスがミノタウロスに剣を突こうとしている様子が描かれ、ポスターの右側には槍と人面の大きな縦を持ったアテナが描かれています。解説によると、テセウスは分離派、ミノタウロスは古い美術界、アテナは分離派の守護神を表しているそうです。このポスターは、テセウスの局部が描かれていることが検閲に引っかかった為、手前に黒い木立を描いて隠すことで検閲に通ったようです。その検閲前後の違いをじっくり見比べられるのが面白かったです。
 ミノタウロスの参考リンク:ミーノータウロスのwikipedia

アルフレート・ロラー 「第14回ウィーン分離派展」
波線で描かれた髪や、目のマークのようなドレスなど、幾何学的なパターンを使って描かれた女性像です。白い球体をもって、お辞儀をするようなポーズで、エジプトの壁画みたいな雰囲気のデザインで面白かったです。解説によると、この第14回ウィーン分離派展はマックス・クリンガーのベートーベン像の為だけに開催されたそうです。

ロラーはこの他に第4回と第9回も好みでした。

フェルディナント・アンドリ 「第26回ウィーン分離派展」
三角や波線のパターンの連続で山のようなものを描いたポスターです。幾何学的な美しさと先進性を感じました。

エゴン・シーレ 「第49回ウィーン分離派展」
シーレはウィーン分離派ではありませんが、第49回ウィーン分離派展は非会員の作品ばかりを集めた内容で、ポスターも非会員のシーレが抜擢されました。ポスターには、9人の男たちがL字に曲がった長い机に向かって本を読んでいるところが描かれています。背景が黒く机が灰色なせいか、静かで厳粛な雰囲気を感じます。また、オレンジや赤の服からは不思議な力強さを感じました。
解説によると、一番奥の人物はシーレで、一番手前の誰も座っていない席はこのポスターを描いている時に亡くなったクリムトの席と考えられているようです(シーレにはこのポスターと同じ時期に「友達/食卓の客」という2点の絵画作品があるようで、それらからこのポスターについて様々な考察ができるようです)
なお、シーレはこの第49回で名声を高めましたが同じ歳にスペイン風邪で夭折してしまいました…。


<第2章-1 市民生活の夢とポスター 新しい演劇・コンサート・展覧会・博覧会>
2章は2つに分けられていて、まずは19世紀に広がった新しい娯楽に関するポスターのコーナーです。この頃は新しい市民の娯楽が次々と登場したようで、ポスターでもそれらを宣伝していたようです。また、この時期にポスターが広まった理由の1つに、リトグラフ技術の発達があると説明されていました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「歓楽の女王」
 ↓これは以前、東急のショーウインドウに飾られていた複製を撮影したものです。
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この作品はロートレックコネクション展でもご紹介しましたが、今回の展示でも観られました。好色の銀行家と娼婦がキスしているところをシニカルに描いている作品ですが、この銀行家はロスチャイルドをモデルにしているという説が紹介されていました。

ロートレックの「ジャヌ・アヴリル」やミュシャの「メディア」などもこのコーナーで観ることができました。

ジョン・ハッサル 「ニューコミックオペラ "アマシス"」
象形文字のようなものが描かれたオベリスクの上部に窓?があり、そこからエジプト風の人物が手と顔を出しています。そして、オベリスクの下の方にはニヤニヤ笑っている猫がいて、猫の周りにある音符から察するに歌っているようです。しかし、猫の頭上には赤いレンガのようなものがあり、危ない!というシーンとなっています。 もしかして上の人が落としたのかも?? ストーリーを考えてしまうような面白い作品でした。

ジョルジュ・ド・フール 「サロン・デ・サン」
帽子を被った女性が白い花を両手でいじっている様子で、目は横に向けて悩んでいるように見えます。繊細な筆遣いと共に好みの作品でした。

この辺にはムーラン・ルージュやムーラン・ド・ラ・ギャレットといったキャバレーのポスターや、ミュシャの「ハムレット」や「サマリアの女」など芝居のポスター、ロダン展・ムンク展などの展覧会のポスターなどもありました。展覧会のポスターは内容と全然違う絵だったりするのが面白かったw


<第2章-2 市民生活の夢とポスター 都市に溢れる様々な商品-出版・自転車・飲料・観光ポスター>
2章の2つ目は、出版や商品のポスターのコーナーです。この時代は新しいメディアの時代で、出版界では雑誌や書籍の創刊が相次いだそうです。それに合わせて様々なポスターが作成されたようで、面白いポスターがいくつも並んでいました。

グスタフ・クリムト 「厚紙カレンダー(文字印刷前)」
10人くらいの女性や少女が花束を持ってこちらを向いている様子が描かれています。淡い雰囲気がありつつも華やかな色使いが好みでした。みんな真顔で向いているのがちょっと神秘的で不思議な感じがしたかな。

フランク・ヴァーベック 「新聞 "ザ・ジャーナル"」
大きな帽子を被って傘を持った女性と、足元のうさぎが描かれた作品です。服、帽子、うさぎは新聞を貼り付けたようなデザインとなっていて、あちこちに「THE JOURNAL」と入っていたのが面白かったです。

この辺はミュシャから影響を受けたようなポスターが多かったかな。また、アール・ヌーヴォー期のドレスを展示したコーナーがありました。この時期のドレスは極端にくびれたウェストと大きく突き出た胸(S字型のライン)に特徴があるそうで、コルセットをつけて着ていたようです。 やがてポール・ポワレがコルセット無しのドレスを出すと、急速に衰退してしまったそうで、当時スポーツが盛んになったこと等がその背景としてあったようです。
ドレスの他に、扇や化粧道具なども置かれていました。

テオフィル=アレクサンドル・スタンラン 「ヴァンジャンヌの殺菌牛乳」
真っ赤な服を着た金髪の少女が大きく描かれ、両手で牛乳の入った杯を持って、そおっと飲んでいるようです。そして、その足元では3匹の猫がそれを物欲しそうに見ていて、1匹は前足を少女の膝の上に乗っけているのが可愛いです。これは牛乳の広告で、それまで牛乳は長距離輸送ができなかったのですが、この時期にワインの低温殺菌法を応用してそれが可能になったそうです。このポスターでは少女が飲むことで安全性を強調しているようでした。
また、この少女はスタンランの娘だそうで、彼らの家は猫屋敷と言われるほど猫がいたそうです。以前「シャ・ノワール巡業公演」という黒猫のポスターも観たし、本当に猫好きっぽいw

アドルフ・カペロス 「海上輸送ロイド・トリエステ」
写実的に満月の中で航海している船の甲板が描かれ、甲板の柵に2人の人魚が掴まったり乗ったりしていて、それを観た船員は驚いているようです。 このシーンのどこが広告になるのか分かりませんが、物語的で面白かったです。

エテルス 「墨(インク)」
鮮やかに描かれた日本風の絵です。座って紙に文字を書く人と、それを見つめる赤い着物の女性が描かれ、華やかな印象をうけました。日本の浮世絵そのものという感じすらしました。

この辺には化粧品や香水のポスターも並んでいました。また、再び当時のドレスが展示されていて、今度はアール・デコ期のドレスでした。この頃になるとウェストラインがかなり低い(直線のドレス)が流行っていたそうで、中流階級にも広がっていたそうです。当時のダンスの流行などもこのデザインの広まりを後押ししたようでした。

この辺はもう出口が近いので、映像のコーナーもありました。当時の時代背景や今まで観てきた作品をおさらいするような内容で、語りは三遊亭円楽でしたw

アルフレート・ロラー 「シュネーベルク鉄道」
最後は旅行や輸送関連の作品が並んでいます。これは、羽の生えた巨人が煙を吐きながら山の間を飛んでいるポスターで、背中には10人ほどの観光客が乗っています。どうやらこれは登山鉄道を擬人化したもののようで、逞しさを感じさせる作品でした。

A・M・カッサンドル 「北極星号」 ★こちらで観られます
以前ご紹介したカッサンドルのこの作品もありました。もう完全にアール・デコですw 結構、微妙な濃淡があるのですが、これはエアブラシで色合いを出しているそうです。
 参考記事:所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)


ということで、予想以上に充実していて、有名作からあまり見る機会のないものまで幅広くて参考になりました。 会場を出てからもミュージアムショップのグッズが中々凝っていて、これも1つの楽しみになると思います。
たった2週間しか開催されていないのが勿体無いくらいですので、興味がある方はすぐに行くことをお勧めします。

この後、さらに銀座の展覧会をハシゴしてきました。
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