関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

アンドリュー・ワイエス展 【埼玉県立近代美術館】

この前の日曜日、埼玉県立近代美術館に行って始まったばかりの「アンドリュー・ワイエス展」を観てきました。

P1150340.jpg

【展覧名】
 丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展 -オルソン・ハウスの物語-

【公式サイト】
 http://www.momas.jp/3.htm

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
 

【会期】2010年9月25日(土)~12月12日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんはまばらで、ゆっくり観ることが出来ました。この展示は、埼玉県朝霞にある「丸沼芸術の森」が所蔵するワイエスの作品コレクションを展示するもので、ワイエスが繰り返し題材にした「オルソンハウス」関連の作品が全部で240点も展示されていました。(半分以上は鉛筆の習作ですが^^;)
 参考リンク:丸沼芸術の森
解説に詳しいことが書いて無かったのですが、アンドリュー・ワイエスは1917生まれで2009年に没した、アメリカの国民的画家です。(最近だと2008年末にbunkamuraで大きめの展示があったのですが、その後亡くなっていたとは知りませんでした。) 静かな雰囲気を持ちながらも情感溢れ、水彩(作品は主に水彩)でも強い印象を与えてくれる画家なので、今回の展示も楽しみにしていました。詳しくは気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、同じような作品名が多いので作品番号も添えておきます。
 参考リンク:
  アンドリュー・ワイエスのwikipedia
  2008年のbunkamuraの展示

001 アンドリュー・ワイエス 「オルソンの家」
今回の展示はひたすら「オルソン・ハウス」という家を描いた作品の展示となっているのですが、これは初めてこの家を描いた頃の水彩作品です。丁寧だけど素早さを感じる筆致で、丘の上に建っている家を描いています。丘と言ってもこれを見るとやや平坦な気が…w  静かな中で存在感を感じる家でした。解説によると、この絵は車の屋根の上に乗って描いたそうです。

この辺にはこの家を描いた作品がずらっと並んでいます。ワイエスは後の妻となるベッツィの紹介で、オルソン家の姉弟と知り合ったそうです。姉のクリスティーナは病気で足が不自由な女性で、弟のアルヴァロは寡黙で気難しい性格で、漁が好きだったのですが父の死によって農夫に転向したという人物です。この2人のことを知っておくと、オルソン・ハウス関連の作品の背景が理解できるかと思います。

005 アンドリュー・ワイエス 「菜園のアルヴァロ」
オルソン・ハウスが見える畑を描いた鉛筆のスケッチです。白黒でも情感豊かに田舎風景を描いていました。アルヴァロも菜園で作業をしているようでした。

007 アンドリュー・ワイエス 「ブルーベリーをかき集めるアルヴァロたち」
水彩で、腰をかがめてブルーベリーを収穫する2人と、パイプを咥えて木を見ている男が描かれ、背景にはオルソン・ハウスが見えています。素早く力強い印象の線と、少し寂しげな雰囲気がある色合いがワイエスらしさを感じました。
この辺はブルーベリー用の熊手や箱の水彩・習作が何枚かありました。

054 アンドリュー・ワイエス 「カモメの案山子」
オルソン・ハウスを背景に、丘の斜面に立つ長い棒にカモメの死体が吊るされているのを描いた水彩です。これはブルーベリーを食べるカモメを怖がらせるためのカカシとのことで、カモメの羽の表現が軽やかな感じを受けます。それに対して背景は荒涼とした感じを受けたかな。
この辺りにはこのカモメの案山子を題材に、角度を変えて描いた水彩や習作が何枚かありました。

061 アンドリュー・ワイエス 「オルソン家の納屋の内部」
暗い納屋の中で、横向きの牛が立っている様子が描かれた水彩です。牛だけ光が当たったように明るく、牛がやけに左の方に寄っているような構図が気になりました。
この辺にはこうしたオルソン家の牛や馬を描いた作品が並んでいました。馬の尻だけ描いた作品とかもありましたw

101 アンドリュー・ワイエス 「オルソンの家」
納屋の中から見るオルソンハウスを描いた水彩で、家の左半分だけが見える角度となっているのが面白い作品です。納屋の中には質感豊かに描かれた農具などが描かれていました。 また、家の左にはぽつんと石柱が立っていて、これは馬を繋ぐ柱のようです。この作品の近くにはこの柱を描いた作品や納屋の中が描かれた作品が並んでいました。

066 アンドリュー・ワイエス 「《青い計量器》習作」
袋の上に乗った青い器を描いた水彩です。袋の布地や青い器にこびりついた白い粉のようなものの表現が素晴らしく、まるで油彩のような色合いに感じました。
他にもバケツや計量器を作品は何点かありました。

046 アンドリュー・ワイエス 「オルソン家の納屋のツバメ」
納屋の天井近くにある割れた窓から入ってくる沢山のツバメを描いた水彩です。窓からの光や、天井の古そうな色合い、ツバメの飛翔する動きなどが感じられました。
この辺にはオルソン・ハウスの模型が置かれていました。これも今回の展示を楽しむ上で結構役立ちます。

108 アンドリュー・ワイエス 「霧の中のオルソン家」
オルソン・ハウスを横側から描いた水彩です。画面の中央くらいの高さまで草原が描かれ、家は上部に描かれているのが面白いです。家は霧に包まれて、白くぼんやりとした感じがよく出ています。まるで水墨画のように少ない色彩なのに、味のある作品となっていました。

037 アンドリュー・ワイエス 「《幽霊》習作」
オルソン家のクリスティーナの寝室の隣の部屋は何故かいつも閉じられていたそうで、ある日、ワイエスがその部屋のノブを回すととあっさりと開き、そこには男が立っていたそうです。ワイエスはそれに非常に驚いたそうですが、よく見るとそれは埃がかった鏡に写った自分でしたw 分かってしまえば何だ~と言う話ですが、ワイエスはこれにインスピレーションを受けたようで、「色彩感覚を失った」という体験を元にこの作品を描きました。 ぼんやりと佇む白いシャツの男の輪郭や、白っぽい画面はちょっと幽霊っぽいかも。この時の驚きを表現しているようでした。 この作品は見覚えあるような…。

010 アンドリュー・ワイエス 「《オイルランプ》習作」
オルソン姉弟の弟アルヴァロを描いた鉛筆素描です。窓辺で座る、少し歳をとり気難しそうな表情のアルヴァロが描かれ、その右にはうっすらとランプらしきものが描かれています。そのランプの光のせいか、顔の左側には長い影が伸びていて、強い陰影に思えました。なお、この作品はオルソン姉弟を描いた肖像画だそうですが、アルヴァロは頑固でこれ以降肖像画のためにポーズをとることは無かったようです。

ランプを描いた素描はこの他にも何点かありました。解説によると、この頃ワイエスの父と甥が列車の事故で亡くなったそうです。それがきっかけなのか、その後は自分の作風を確立していったようです。
また、この辺には薄いカーテンがなびいている「海からの風」という作品の習作が沢山並んでいました。

031 アンドリュー・ワイエス 「《クリスティーナの世界》習作」
これはワイエスの代表作「クリスティーナの世界」の水彩の習作で、この完成作でワイエスは画家としての地位を高めたそうです。
ピンクのワンピースを着て、後ろ向きで足を横に出す感じで座っているようなクリスティーナが描れています。前述の通り、クリスティーナは生まれつき足が不自由だったそうですが、この作品には、地面を這いずって家に向かう姿に逞しさと、ピンクのワンピースを着ている女性らしさというクリスティーナの2面性が表現されているようです。ワイエス自身も子供の頃は体が弱かったそうで、クリスティーナに自分を重ねあわせたのではないかと解説されていました。1枚の絵でその人の人生を感じさせるのは凄いことだと思います。
この辺は「クリスティーナの世界」の素描が沢山並んでいました。後姿や手だけを描いた作品もあったかな。また、「薪ストーブ」や「ミス・オルソン」といった作品の習作も何点かずつ展示されています。

109 アンドリュー・ワイエス 「オルソン家の朝食」
オルソン・ハウスの渡り廊下のような部分を描いた作品です。ここは食堂だったらしく、煙突から煙が上がり窓の中には人影が見えます。解説によると、これは朝食の準備をするアルヴァロが、外の地面に座っているのは誰だろうと観ている様子らしいです。(そんなところで朝っぱらから座っているのはワイエスくらいしかいないと思いますがw) 細々と描かれた草や、そらに溶け込むような煙、深い色合いの屋根など、独特の穏やかな雰囲気が出ているように思いました。

この辺は「さらされた場所」という作品や、バスケットや穀物袋を描いた習作がずらりとならんでいました。

107 アンドリュー・ワイエス 「《アンナ・クリスティーナ》習作」
台所で椅子に座って窓の外を見るクリスティーナを描いた水彩で、これがクリスティーナを描いた最後の作品(の習作)らしいです。(弟のアルヴァロが死んで1ヶ月くらいでクリスティーナも亡くなったそうです) 静かな雰囲気の中、ちょっとぼーっとした感じに見えたかな。
この辺には同じくアンナ・クリスティーナの習作が沢山あり、その後にはお葬式やお墓を描いた習作もありました。

120 アンドリュー・ワイエス 「《オルソン家の終焉》習作」
オルソン家を描いた最後の作品の習作です。3階から見る煙突と屋根を描いていて、背景には緑の多い風景が描かれています。解説によると、ワイエスはこの煙突を家の耳のように思っていたそうで、以前は2人の声が台所の煙突にこだまして聞こえていたそうです。 しかし、この絵は落ち着いた色合いで静寂のみが漂っているような雰囲気でした。 ここまで同じ家を見てくると、最後はちょっと寂しいものがあります。

会場の出口付近には映像コーナーがありました。今でもオルソン・ハウスはアメリカの文化財として保存されているようで、オルソン家のあちこちを映像で流していました。映像で観ても味がある風格をしています。
会場を出ると、丸沼芸術の森コレクションの展覧会の歩みを写真ボードなどで紹介するコーナーがあり、ワイエスの写真などもありました。 また、この展覧会では習作しかなかった作品の完成作のコピーなどもあります(どうせならコピーと書いて会場内にあれば分かりやすいだろうに…) 「クリスティーナの世界」はbunkamuraの時に見たかも。

ということで水彩や鉛筆の習作が中心の展覧会だったように思います。派手好きの私としては、もうちょっと完成作を観たかった気もしますが、制作過程などを詳しく知りたい「通」な人には面白い展示じゃないかと思います。
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「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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