関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き 【府中市美術館】

10日ほど前の日曜日に、府中市美術館に行って「バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き」展を観てきました。この展覧会は開館10周年を記念した展示のようでした。

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【展覧名】
 府中市美術館開館10周年記念展
 バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き

【公式サイト】
 http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/barbizon/index.html

【会場】府中市美術館
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など


【会期】2010年9月17日(金)~2010年11月23日(祝)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日12時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場はそこそこお客さんが入っていましたが、混んでるという訳ではなくゆっくりと鑑賞することができました。
タイトルから、てっきりバルビゾン派のみの展示かと思っていましたが、「バルビゾンからの贈りもの」の「贈りもの」の部分が結構なウェイトだったりしますw 単にバルビゾン派の作品を並べるというよりは、その周辺の時代の作品や、後世にどのように影響を与えたかが分かる展示となっていました。詳しくはいつも通り気に入った作品を通じて章ごとにご紹介しようと思います。
なお、今回の展覧会には作品リストがあるのですが、作家名の表記がめちゃくちゃ分かりづらいです! (某美術館の影響でしょうか…) 慣れ親しんだ表記と異なり、「テオドール・ルソー」が「ルソー、テオドール」という日本風?の順となっています。発音も微妙に一般的な表記と違うので、長い名前だと本当にややこしい…。なので、このブログでは作品リストとは違う、より一般的な表記としようと思います。


<第1章 ドラマチック バルビゾン>
最初はバルビゾン派そのもののコーナーでした。バルビゾン派とは何ぞや?的な説明はあまり無かったように思いますがざっくり言うと、フランス郊外のバルビゾン村に集まった画家たちの集まりのことです。主に田舎の風景や農民の生活といった、それまであまり描かれなかったものを題材とし(絵画=神話/宗教画という時代です)、屋外で絵を描くなど、当時としては革新的な手法を用いていました。屋外で描くスタイルはその後の印象派などにも連なっていきます。
ということで、この章ではそうしたバルビゾン派の特徴がよく出た作品が並んでいました。

 参考記事:
  山梨県立美術館の常設
  浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派 (千葉県立美術館)
  村内美術館の案内

 参考リンク:
  バルビゾン派のwikipedia

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー  「嵐の近づく風景」
バルビゾン派の展覧の初っ端に何故ターナーが出てくるのだろう?とかなり不思議に思いましたw これは最近八王子で観た覚えがあります。(記事にはしていませんが…)
荒波の上に浮かぶ船が描かれ、海の手前は明るいのですが、空は暗く、奥には影があります。ターナーらしい雄大さとドラマ性を感じる作品なのですが、解説よるとこうした自然に対する畏怖などを込めた創造は、バルビゾン派に連なる要素なのだとか。ちょっと納得。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「夜明け」
やや茜色に染まる空や湖を背景に、森の木の下にいる3人の女性を描いた作品です。空の色の柔らかい空気感や、妖精のような女性達など、少し神話的な雰囲気すら漂っていました。コローらしい素晴らしい作品です。

この辺にはエルネスト・ルヌーの野外写生用具一式が展示されていました。当時の野外写生の様子が垣間見れるのは面白い趣向です。

ジュル・デュプレ 「山村風景」
はるか遠くに山々が見え、少し奥にぽつんと立った農家が描かれています。手前の井戸のようなところでは3人の農婦たちが水を汲んだりしているようです。空には雲がかかり、どこか冷たい感じも受けますが、山や家などはキリッとした風格が出ていました。真ん中の家の辺りだけ色が明るいせいか目が行きます。

フェリックス・ジエム 「フォンテーヌブローの森の鹿」
大きく取られた青空を背景に木が風に揺れて、その後ろを鹿が飛び跳ねている様子を描いた作品です。空が爽やかで、鹿に躍動感がありました。

この辺にはブリヂストン美術館のギュスターヴ・クールベの鹿の絵や、ミレーの「乳絞りの女」、村内美術館のデュプレの「小さな荷馬車」などもありました。今回の展示は、予想通り村内美術館の作品が大活躍です。

シャルル・エミール・ジャック 「森はずれの羊飼いの少女」
森のそばの草原で寝そべっている羊飼いの少女と犬が描かれています。羊も沢山休んでいて、のんびりした雰囲気です。一方、森から漏れている光と影になっている表現がくっきりしていて、好みの作品でした。

ジャン=フェルディナン・シェニョー 「砂けむりの中を行く羊の群れ」 ★こちらで観られます
美しいグラデーションの夕日と積み藁を背景に、広々とした平原を歩く羊の群れと羊飼いを描いた作品です。帰路でこちらに向かっているようで、砂煙が舞い上がっている様子も細かく描かれています。ほっとするような、郷愁を誘われるような、情感のある作品でした。

ジョルジュ・ガシ 「バルビゾンの平野に沈む夕日」 ★こちらで観られます
手前から左に向かって緩いカーブの道が描かれ、背景には赤々と染まる夕暮れの空が広がります。道の先には犬を連れた人の姿や、脇で馬を休ませている?人なども描かれ、農村ののどかな光景が広がっていました。全体的に赤っぽいのですが、道のわだちの水に夕日が反射しているなど、色の配置のせいかメリハリがあるように思いました。

テオドール・ルソー 「夕暮れのバルビゾン村」
もうだいぶ暗くなってきた時間帯の風景を描いた作品です。手前から伸びる道を、親子らしき2人が歩いていて、奥には赤い夕焼けと森が描かれています。森は暗いのですが、木々は細やかに描かれているのが驚きでした。森の哲人とも言われるT・ルソーの木々の表現は流石です。神々しさすら感じました。


<第2章 田園への祈り-バルビゾン派と日本風景画の胎動>
続いて、2章はバルビゾン派が日本に伝わり、それを学んだ画家たちが描いた作品が並んでいました。

高橋由一 「墨水桜花輝耀の景」
これは高橋由一の初期の傑作だそうです。左上から右下にかけて、対角線上に伸びる桜の木の枝が大きく描かれています。その背景には隅田川沿いの様子が描かれ、手前の枝のせいか奥行き表現が強調されているように感じました。結構写実的なのも影響を受けた点なのかな。

アントニオ・フォンタネージ 「沼の落日」
この画家はパリ万博でバルビゾン派に感銘を受けた人で、日本人の弟子が何人かいます。この絵は、だいぶ暗い夕暮れの中、川の畔の船と3人くらいの人たちが描かれていて、こうして並んでいるとコローやT・ルソーらバルビゾン派の影響がよくわかります。空、周りの空気感、暗い中の赤などが印象的でした。夕暮れの帰り支度はどれも良いですねえ。

このちょっと先にはフォンタネージの弟子の浅井忠の作品も数点あり、以前ご紹介したポーラ美術館の「武蔵野」も近くにありました。
 参考記事:ポーラ美術館の常設

本多錦吉郎 「豊穣への道」
夕暮れを背景に、鍬やカゴなどの農具を持った日本の農民達が描かれています。こちらを向いて、帰るところかな? 主題や画風はここまで見てきたバルビゾン派そのものと言ったところで、しっかりと立つ農民達には威厳すら感じました。労働を賛歌した姿勢までバルビゾン派から受け継いでいるようでした。

この辺には関東近郊の風景画が並んでいました。また、ミレーの「種まく人」の模写などもありました。当時の日本では貴重な模写だったようです。

小山正太郎 「濁醪療渇黄葉村店」 ★こちらで観られます
小山正太郎もフォンタネージの弟子です。左右に藁葺きの家がある道が描かれ、曲がりくねった道に奥行きを感じます。 どうやら左の方は茶屋のようで、馬に乗った侍達が休憩しようと馬を止めている様子も描かれてます。また、道の脇に生えている木々の紅葉も美しく、秋の風情がありました。ちょっとタイトルは難しいのですが、「濁醪(どぶろく)が喉の渇きを癒してくれる黄葉の美しい村の酒店」という意味なのだとか。侍達が描かれていることで歴史画的な要素もあるようでした。

本多錦吉郎 「景色」
これは開催地である府中にある大国魂神社の参道を描いた作品です。恐らく冬の景色のようで、かれたケヤキ並木を農婦たちがこちらに歩いてくる様子が描かれています。写実的で、晴れた秋冬の爽やかさを感じました。人と比べると並木や木などが大きく見えたかな。並木の奥に目が行くような遠近感のある構図も面白かったです。

この辺にある日本の洋画はかなり良い揃えで、ちょっと驚きでした。

浅井忠 「収穫」
これは浅井忠の代表作です。沢山の藁の中、3人の農民が手作業で脱穀している様子を描いています。結構リアルに描かれているのですが、これは写真を使っているとの説もあるようです。明るい色合いの中、黙々と作業している様子が崇高なものに感じられました。藁の色は似ているのに微妙に違っているのも凄い…。

和田英作 「渡頭の夕暮」
これは東京芸大で見た覚えがあるかな。川に向かって腕を組んで佇む子供と、同じ方向を向いている農民達が描かれています。これは渡し舟を待っている様子のようで、左の方では母親と話しながら右を指差す子供などもいて、その場の雰囲気がよく伝わってくるようでした。水面に映る夕焼けも美しいです。


<第3章 人と風景-その光と彩りの輝き>
3章は再びミレーの作品などもありました。

ジャン=フランソワ・ミレー 「羊毛を紡ぐ少女(オーヴェルニュ地方の山羊飼い)」
土の段差に腰掛けて、槍のようなものに羊毛を紡いでいる農民の少女を描いた作品です。右には後ろを向いている山羊もいるので、山羊飼いのようです。足を組んで黙々とつむいでいる姿が静かな感じでした。 なお、この作品はパステルで描かれていました、油彩よりも淡い感じで明るい印象を受けます。 こうしたパステルは、ドガやピサロ、スーラなどにも影響を与えたそうです。
 参考記事:ドガ展 (横浜美術館)

ジャン=フェルディナン・シェニョー 「シコレ爺さん」
杖を突いている老人と、黒っぽい牧羊犬、そして沢山の羊たちが描かれた作品です。老人は草を食む羊をじっと見ていて温和な印象を受けます。全体的にも柔らかい日差しにつつまれて穏やかな雰囲気でした。

ラファエル・コラン 「フロレアル(花月)習作」
何故かコランもありました。コランもバルビゾン派に影響を受けているのかな?(印象派から影響を受けている流れかも) 川の見える草原の上で寝転がっている裸婦が描かれ、神話に出てくるような瑞瑞しい身体をしています。明るい色彩も美しく上品な印象を受けました。
たしかこの辺に弟子の黒田清輝の作品も1点だけありました。

<第4章 バルビゾンからの贈りもの-光と彩の結実>
最後はバルビゾン派から影響を受けた印象派や、さらにそこから派生していった様子などがわかるコーナーでした。

久米桂一郎 「果園の春」
この画家はコランの弟子です。これは果園の中にある3本の木を描いた作品で、コランや黒田に似た、明るく柔らかい色彩から印象派の影響を感じました。木々と緑の草が目に鮮やかです。

この辺りにはシスレーやモネもありました。  さらに進むと最後のほうはだいぶバルビゾン派から時が経った作品のコーナーになっています。

梅原龍三郎 「霧島(栄の尾)」
山道から望む山を描いた作品です。全体的に緑色で、師事したルノワールよりさらに単純化が進んでいるように思います。梅原らしい、自由奔放な感じを受けました。

児島善三郎 「田植」
田んぼを俯瞰するような視点で描かれた作品です。デフォルメされた田んぼで、身をかがめて田植えをしている人々も描かれ、画面には無数の縦線が引かれ雨が降っているようです。緑の鮮やかさや田んぼの配置のリズム感から軽快な印象を受けました。幾何学的な要素もあるのかな。かなり好みの絵です。

最後はバルビゾン村や府中の森の写真が展示されていました。何枚か府中を描いた作品もあったし、日本人画家にとって府中はバルビゾン村的な農村だったのかな。


ということで、バルビゾン派目当てにこの展示に行ったのですが、それに負けないくらい日本の近代絵画も良い作品が多くて、嬉しいサプライズでした。この美術館は駅からちょっと離れているのが難点ですが、良い展覧会でした。
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