関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 【サントリー美術館】

前回ご紹介したミッドタウンクリスマスに引き続き、ミッドタウンの記事です。昨日の記事とはまた別の日ですが、10日ほど前の土曜日にサントリー美術館で「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」を観てきました。この展示は6回の展示替えがあり、私が行ったのは4期目でした。

P1160783.jpg

【展覧名】
 歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/10vol04/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2010年11月3日(水・祝)~12月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この日、ミッドタウン自体が非常に賑わいを見せていて、サントリー美術館内も沢山のお客さんで混み合っていました。特に最初の方は展示ケース前に列を作るような感じで、こんなに混んでいるのは久々に見ました。

さて、今回の内容は江戸時代の版元、「蔦屋重三郎」に焦点を合わせた展示となっていました。絵師が主役の展示は数あれど、版元に注目した展示というのは珍しいのでは? タイトルの通り歌麿と写楽が中心なのかと思ったら、さにあらず。蔦屋重三郎のプロデューサー・経営者としての腕前がよく分かる興味深い内容となっていました。彼自身の作品などもあったりします。 詳しくは各章で気に入った作品を通じてご紹介しようと思います。


<第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサー>
最初はハイライト的な作品や、蔦重こと蔦屋重三郎とは何者か?がよく分かるエピソードを交えた作品が並んでいました。

勝川春英 「三世市川高麗蔵 三世坂田半五郎 中山富三郎」
ほぼ白黒の役者絵です。刀に手をかけていて、眉、目、口がハッキリした感じがします。解説によると、しゃくれた顎などあまり美化していない描写だそうで、口を結んで凄んでいるようでした。

山東京伝 「箱入娘面屋人魚」 ★こちらで観られます
蔦屋重三郎が膝をついて挨拶する姿が描かれた本の序文のページです。この頃、洒落本などに対する幕府の取締りが厳しくて、山東京伝が執筆を辞めたいと言い出したのを、今年だけは書いてくれと頼んだという旨の言葉が書かれています。本の内容は倦怠期に入った浦島と乙姫についてで、浦島が浮気して人魚の子を作る話なのだとか。 当時の世相を感じる序文でした。
余談ですが、折りしも東京都も漫画の規制で騒いでいるので、時代は巡るものなのかもしれません。

浅草市人/葛飾北斎 「『東遊』 蔦屋の店先」
蔦屋の店先を描いた若い頃の北斎の作品です。本を作る作業なども描かれていて、当時の様子がよく伝わってきます。また、暖簾に「耕書堂」と富士山型に蔦の葉が描かれているのが蔦屋の紋のようでした。
それにしても北斎も人脈に入っているとは驚きでした。北斎は無名時代に蔦屋で役者絵を描いたりしていたようで、蔦屋重三郎の目利きぶりが分かります。また、解説によると蔦屋重三郎は一介の貸本屋から10年程度で日本橋に進出するほどの卓越した経営手腕の持ち主だったようです。

この近くには蔦屋重三郎の自作の狂歌などもありました。狂歌師との付き合いが貴重な人脈を作ったようです。 この辺は本が多目の展示でした。


<第2章 蔦重を生んだ[吉原] ― 江戸文化の発信地>
2章は遊郭のあった吉原についてのコーナーです。蔦重こと蔦屋重三郎は生まれも育ちも吉原で、吉原のガイドブックである「吉原細見」の出版で財を成していきました。遊郭というといかがわしい感じがしますが、当時は文化人のサロンと言える存在で、自身も狂歌会に参加するなど活動していたようです。ここにはそうした吉原や狂歌に関する作品が並んでいました。

最初に「吉原細見」の本が数冊並んでいました。情報を詰め込み、絵師を使って洒落た感じに作られた吉原細見は、他の版元を駆逐するほどの人気を博したそうです。お店の一覧や行事、華道の本のようなものもありました。

北尾政演(山東京伝) 「吉原傾城新美人合自筆鏡」
2人の売れっ子遊女とお付きの禿(かむろ)や新造を描いた作品です。結構大きいのですが、細やかに描かれた着物が華やかです。着物は当時の流行を取り入れているようでした。
この辺には遊女が詠んだ狂歌などもいくつか並び、吉原の文化の高さが伝わってくるようでした。

喜多川歌麿 「青楼十二時 続 亥ノ刻」
遊郭の様子を2時間ごとに描いた12図セットの作品で、私が見たのは 申、酉、戌、亥の刻でした。特に気に入ったのは亥の刻で、今の時間に直すと22時くらいでしょうか。背筋を伸ばし、盃を画面の外にいる客に差し出す遊女と、その脇で眠そうにしている禿が描かれています。2人の姿が対照的で、遊女の気品が強まっているように感じました。
それにしても、幼い禿が眠いのも無理はないかな。以前、遊女の一日のスケジュールを見たことがありますが、遊女はかなりハードな毎日を送っていたようです。
 参考記事:江戸東京博物館の案内 (江戸編 2009年12月)

この辺りは遊郭っぽいレイアウトになっていて雰囲気が出ていました。少し進むと続いては狂歌師に関する展示です。蔦屋重三郎は自分でも狂歌を詠むほどで、喜多川歌麿の絵と流行の狂歌を合体させた豪華本を刊行しました。この辺りには狂歌師の肖像や当時の服などがあり、奇抜な仮装をしたものもあります。

宿屋飯盛/喜多川歌麿 「画本虫撰」
写実的で細やかな絵が描かれた狂歌絵本です。大きな葉っぱ、コガネムシ、蛙が描かれているページと、トウモロコシ?にとまるセミと蜘蛛を描いたページが展示されていました。どちらも非常に優美で、洒落た感じがします。解説によると狂歌師たちはこれを見て、自分の作品もこうして載せてみたいと考えたとのことです。そりゃそうだろな~と思う一方で、そうして狂歌師の気持ちを引き込む戦略に経営手腕の一端を見た気がしました。
近くにあった「百千鳥狂歌合」という作品も素晴らしかったです。

この他にも、蔦屋重三郎が20代後半から30代前半に手習いなどの教科書となる「往来物」など確実に売れる本を出して、経営基盤を固めていったことがわかる展示品もありました。武家諸法度、暦、占卜の本、経本、武者絵本など学問や詩歌の本にも進出していたそうです。 そうしてお店は成長して行ったのですがその後、洒落本や黄表紙に対する幕府の取り締まり(一種の見せ締め)によって蔦屋重三郎は処罰を受け、財産の半分を没収されてしまったそうです。(山東京伝も手に鎖をつけて50日間謹慎という厳重処分)

2章が終わると下の階です。階段を下ると耕書堂の店先の再現があり、道具や摺りの工程が分かる版木の再現などが並んでいました。


<第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生>
3章は喜多川歌麿のコーナーです。それまで役者絵の手法であった大首絵(上半身の肖像)を取り入れた美人画を寛政期頃に発行し、人気を博したようです。ここには肉筆画もあり、貴重な内容となっていました。

喜多川歌麿 「夏姿美人図」 ★こちらで観られます
歌麿の貴重な肉筆画です。衝立に手ぬぐいをかけて手鏡で自分を見る女性が描かれ、足元には団扇が落ちています。夏の風呂上りらしく爽やかな印象を受けました。大きくとられた余白のような部分のバランスも絶妙な感じがしました。

喜多川歌麿 「婦女人相十品 文読む女」 ★こちらで観られます
この作品はこの女性の人相を見て性格を当てるという連作の1つだそうです。両手で手紙を持って真剣に見る女性が描かれていて、これは恋文でしょうか。 眉を剃ってお歯黒をしているのは既婚者らしいですが、さてこの表情はどんな性格なのか…(皆様も公式サイトで画像を見てお考え下さいw) ・・・解説では「慎み深い性格」と紹介していました。あまりにじ~~っと見ているので「疑り深い」かと思ってしまいましたw

喜多川歌麿 「青楼七小町 玉屋内明石」
少しうつむいた感じの遊女を描いた大首絵です。大きなかんざしをつけ、口もとの紅が色っぽく艶やかでした。
それにしても歌麿を見出すとは驚きですが、蔦屋重三郎の名伯楽ぶりはまだまだこの後も続きます。

意外と歌麿の作品は少なく、続いては歌麿のライバル?の作品が並んでいました。鳥居清長や勝川春朗、葛飾北斎などの作品が数点ずつ展示されています。

富士唐麿/葛飾北斎 「潮来絶句集」
小舟に乗った2人の女性を描いた作品です。1人は傘を持って背を向けています。どこか優美な感じがあり、人物の性格までも伝わってきそうな描写となっていました。
他にも北斎の若い頃の作品もありました。早くから北斎の才能を買っていた蔦屋重三郎ですが、北斎の脂が乗った後年にはすでに他界していたようです。(しかし、お店との関係は続いていたみたいです。)


<第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界>
最後のコーナーは写楽に関する展示です。写楽は謎が多く、活躍した時期も1年に満たないですが、海外にも影響を与えた日本を代表する画家の1人と言えると思います。そのデビューは、28枚同時に豪華な黒雲母摺で出版されるなど、異例尽くしだったようです。蔦屋重三郎は寛政の改革からの巻き返しを狙っていたのかな? ここには写楽の特徴的な作品が並んでいました。

東洲斎写楽 「二世嵐龍蔵の金貸石部金吉」 ★こちらで観られます
毎年何回かこの作品を見ているような気もしますw 袖をまくって凄んでいる金貸しを描いた作品です。何とも憎たらしい表情で、役者の特徴と役柄が伝わってくるような感じがします。 そのせいか、写楽は役者をかっこよく描いてくれないと当時の評判も微妙だったようですが、ちょっと愛嬌もあると思いますw
 参考記事:浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)

東洲斎写楽 「谷村虎蔵の鷲八平次」
刀に手をかけたずんぐりした感じの役者の絵です。いぶし銀の脇役(悪役)らしく、口をへの字に曲げて憎たらしい顔をしていました。

東洲斎写楽 「八歳の大童山」
数少ない相撲絵の1枚だそうです。太った少年力士が描かれ、物を持ち上げていて力がありそうです。 ちょっと肥満が過ぎていてヤンチャそうな感じかな。この大童山は当時のアイドル的存在だったようで、写楽のお気に入りでもあったようです。

最後の辺りに勝川春草や勝川春朗、勝川春英など勝川一門の作品もありました。


ということで、絵師ではなくプロデューサーに焦点を当てるという面白い企画でした。今まで何と無く知っていた程度でしたが、版元からの視点だと、絵師との繋がりなども分かり、今後の鑑賞にも役立ちそうな知識を得ることができました。当時の時代背景も分かりやすかったのも良かったです。勿論、作品そのものもレベルが高いです。

おまけ:
ちなみに、レンタルショップ大手のTSUTAYAと蔦屋重三郎に直接の関係はありません。TSUTAYAの創業者が現在の蔦屋になる!という意気込みでつけた名前なのだとか。紛らわしいですw
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