関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 (感想前編)【太田記念美術館】

今日、原宿にある太田記念美術館へ行って「没後150年記念 破天荒の浮世絵師 歌川国芳」を観てきました。以前は前期の展示をご紹介しましたが、今回は後期の「遊び心と西洋の風」の展示となっていました。前期よりもメモを多く取ってきたので、前半・後半に分けてご紹介しようと思います。

P1200428.jpg

【展覧名】
 没後150年記念 破天荒の浮世絵師 歌川国芳
 後期:遊び心と西洋の風

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H230607kuniyoshi.html

【会場】太田記念美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅


【会期】
 前期:〈豪傑なる武者と妖怪〉 2011年6月1日(水)~6月26日(日)
 後期:〈遊び心と西洋の風〉  2011年7月1日(金)~7月28日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前期に行った時よりも混んでいて、列を組んで観るような感じでした。狭いところも多いので、たまに他のお客さんに触れるくらい混んでいます。

さて、冒頭にも書きましたが、今回は後期の展示ですべて前期から入れ替わっていて別の展示と言えるくらいでした。今回も楽しい作品がてんこ盛りでしたので、各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。
なお、後期もさらに3期と4期に分かれているようですので、お目当ての作品がある方は事前に作品リストで展示時期をご確認することをお勧めします。…と言いつつ、私もあまりチェックしていなかったのですが、楽しみにしていた「其まゝ地口猫飼好五十三疋」は4期のみの展示のようでしたw まあ、今年は晩秋にも森アーツセンターで国芳の展示があるようなので、そちらにも期待しようと思います。
 参考記事:破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
 参考リンク:出品作リスト


<肉筆画>
まずは座敷になっているところの肉筆画のコーナーです。

歌川国芳 「舌切り雀図」
有名な舌切り雀のラストシーンを描いた作品です。意地悪婆さんが大きなつづらを開けてしまったところ、中からきゅうりを持った河童や、坊主頭のろくろ首、大蝦蟇に乗った異形の者などの妖怪が飛び出してきています。手前の婆さんは爺さんのようにも見えますが、膝を落としながらも必死に逃げている様子でした。一方、妖怪は意外と愛嬌があって面白い表情でした。国芳の妖怪ものは肉筆にもあるんですね。

この辺には美人画の肉筆もありました。三日月型の窓?に肘を掛けているような美人画も良かったです。

歌川国芳 「役者夏の夜図」
恐らく国芳の作品と推定される作品で、隅田川で夕涼みをする10人の役者を描いています。 背景には満月に照らされた隅田川があり、その上には屋形船の姿も見えます。役者達は個性豊かに描かれ、その手前には月光によって影が落ちていました。屋形船も水面に影を落とすなど、洋風の表現を取り入れているようでした。


<(遊)戯画・狂画 >
続いては「戯画・狂画」のコーナーです。国芳の生きた時代には質素倹約を推し進めた天保の改革があったのですが、これによって役者絵も禁じられるなど、絵師にも影響が出ていました。武者絵や役者絵を得意としていた国芳にもダメージとなるはずでしたが、国芳は粋で洒落の効いた戯画や狂画に転化することで、逆に想像力を増していったようです。ここにはそうした奇想の作品が並んでいました。

歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」
沢山に人々が集まって、人の顔を成しているというちょっとキモくて面白い「寄せ絵」という技法の作品です。彼らは曲亭馬琴の読本「朝比奈巡島記」の登場人物だそうで、よくみると胴体の部分は主人公の巨人、朝比奈の後姿(頭を垂れてる感じ)となっていて、顔は朝比奈が巡った島々の住人となっているそうです。この作品は何度か観ていますが、そういう元ネタ?があるのは初めて知りました。観る度に発見があって面白いです。
 参考記事:江戸東京博物館の案内 (2010年03月)

この辺にはこれ以外にも人々が合体して顔を作る作品シリーズが並んでいました。展覧会最後の地下では、この作品を実際にやってみた人たちのチャレンジ映像も見ることができます。

歌川国芳 「猫の当字 ふぐ」
猫や河豚が並んで「ふぐ」という字のように配置された作品です。「ふ」の中央の部分では河豚が身をくねらせ、その周りの3つの点々の場所には猫たりが河豚を狙っている様子が描かれています。「ぐ」のほうは丸くなったり伸びをしている猫たちが並び、平和そうw にゃんこの可愛さと発想の面白さがなんとも微笑ましい作品でした。
この隣には同じように猫を並べて字を書いた「猫の当字 かつを」(★こちらで観られます)も展示されていました。

歌川国芳 「流行猫の曲手まり」 ★こちらで観られます
擬人化され着物を着た猫たちがまりを頭や肩に乗せたり、扇子に乗せたり、階段でそっと運んだりして曲芸をしている様子が描かれています。それだけでも面白いですが、よく見ると、猫たちの着物は小判や鈴、スルメ等々の猫が好きそうなものが描かれた模様となっていました。機知と洒落が効いていて思わず笑ってしまう愉快な作品でした。

この辺には猫が擬人化された作品が並び、歌舞伎を演じる猫の作品や、以前ご紹介した「猫のすゞみ」(船着場の女猫と舟渡しの猫の作品)なども展示されていました。
 参考記事:東京国立博物館の案内 (2009年08月)
国芳はたいそうな猫好きだったらしく、常に数匹から十数匹の猫に囲まれていたそうで、死んだ猫も仏壇を作って供養するほどだったそうです。ここら辺の作品からは猫好きぶりがひしひしと伝わってきます。

歌川国芳 「猫のけいこ」
これは猫を擬人化した山東京伝との合作の物語です。歌舞伎役者の似顔絵もあるのですが、半分は猫人間も混じっていて、ちょっと妖しい感じもあります。ここには7冊ほど展示されていたのですが、解説によると天保の改革で役者を禁じられたことによって、時期によっては役者の表現が異なっているとのことでした。

歌川国芳 「かさねのぼうこん」 ★こちらで観られます
これは去年の8月に80年ぶりに見つかって話題となった作品で、「かさね」というのは累と書き、夫に殺害された女性の名前です。絵はそれに相応しく右上には巨大な亡霊の顔、左下には慌てふためいて逃げ惑う百姓達が描かれています。さらによく観ると、亡霊の髪は沢山の後ろ髪の人物が集まっていて、鼻は白い肌の人物の尻、歯はふんどしを締めた沢山の人たちの尻、目は提灯となっています。百姓達も5人いるように見えるのですが、頭の部分は2人分しかなく、1つの頭に3人が合わさっているような奇妙な構図となっていました。観るからに恐ろしい感じがしますが、寄せ絵となっているなど面白い作品でした。個人蔵なのでこれを観られるのは貴重な機会かも。

続いて2階です。

歌川国芳 「江州坂本入江の浪士白狐にたぶらかさるる図」
3枚セットの続絵で、狐達が人間に化けて、大名行列のように浪士をかごで運んで化かしている様子を描いています。中央でかごに乗った浪士以外は全部狐だそうで、浪士の周りや前のほうは人間そのものなのですが、行列の後ろのほうの変身は手抜きで、明らかに狐の姿をしていました。 ひょうきんでどこか憎めない狐達ですw

歌川国芳 「其面影程能写絵 おかづり ゑびにあかがひ」
2枚セットの作品です。左には海老と赤貝のシルエットが描かれた作品があるのですが、これだけ観ても面白くありません。右には釣竿を持ち、体の回りに草や木を配置した人物が描かれていて、これが左の影の正体となっていますw こうした影絵は江戸時代の遊びで流行ったらしく、このシリーズは他にもいくつか見たことがあります。また、この作品の隣にも「其面影程能写絵 猟人にたぬき 金魚にひごいっ子」(★こちらで観られます)という影絵のような作品も展示されていました。
 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
  奇想の王国 だまし絵展 (感想前編) (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  奇想の王国 だまし絵展 (2回目 感想後編) (Bunkamuraザ・ミュージアム)

歌川国芳 「其佛手あそびづくし」
杵をつくウサギ、赤い顔の獅子舞、蒲焼を焼く人?、俵を背負った人形、ウサギの玩具などが描かれた作品です。玩具を描いた作品なのですが、その顔は歌舞伎役者の顔となっていて、杵のウサギはそのアンバランスさがちょっと怖いw 天保の改革で役者絵を禁じられても、こうした形で表現を続けた国芳の発想力がよく分かります。

歌川国芳 「亀喜妙々」
これも3枚続きの作品で、人面亀が無数に描かれています。例によってこの亀の顔も役者の顔だそうですが、手足は黒くひょろっとしていて、1匹1匹でも非常にキモいw それが無数にいるのだから、鑑賞者たちは見た瞬間にうえ~~っと声を上げていました。解説によると、亀の甲羅に描かれているのは彼らの家紋だそうで、版元はこれは売れる!と思って2000部刷ったそうです。しかし、結局150部しか売れなかったとのことで、流石に人気は出なかったようです。 …何故売れると思ったんだろう?w エピソードも含めて記憶に残りそうです。

この他にも役者の顔をした魚の絵もありました。

歌川国芳 「狸のうらない/狸のかんばん」
擬人化された狸が描かれた作品で、上下で2つのシーンとなっています。上段は占いをする狸が描かれ、自分の金玉を屋根に乗せて小屋のようにしています。下段は通り沿いの店の軒先で、屋根の上で金玉を看板のようにしている狸の姿が描かれていました。…何で狸の金玉をこんなに風に描いてみようと思ったんだろうw その発想だけでも面白いです。
この作品の近くはこうした狸の金玉シリーズで、魚採りの網のようにしたり、相撲の土俵にしたり、夜店のシートにしたりと、滑稽でフリーダムな使われ方をしていました。狸すげえw

歌川国芳 「福禄寿あたまのたはむれ すずめ取り/たこ」
これも上下2面の作品です。上段にはタライにつっかえをした雀取りの罠と、その紐をもって潜む福禄寿が描かれています。福禄寿の頭は縦に長く伸び、その頭の先端は俵のように藁の帽子?を被っているようになっています。 それに対して下段は、福禄寿が頭に赤いものをつけて、頭がタコに見えるような格好をして子供達と遊んでいる様子が描かれていました。どちらも福禄寿の頭の形を他に置き換えているような発想ですね。 この辺にはこれ以外にも福禄寿の頭の長さを活かした作品が並んでいて笑えました。また、同じように天狗の長い鼻を題材にした作品も数点ありました。


…長くなるので、今日はこの辺までにしようと思います。まだ「戯画・狂画」の途中で、ちょっと半端な切り方になりますが、この辺で大体半分くらいです。 この後は「戯画・狂画」の続きと、美人画、西洋からの影響がわかるコーナーとなっていましたので、それらは次回の記事でにご紹介しようと思います。



  ⇒後編はこちら


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