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空海と密教美術 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

もう10日ほど前の土曜日に、東京国立博物館の平成館で「空海と密教美術」を観てきました。メモをたっぷり取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。なお、期間によって作品の入れ替えがあるようで、私が観たのは7/23時点の展示となります。

P1200753.jpg


【展覧名】
 空海と密教美術

【公式サイト】
 http://kukai2011.jp/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1393

【会場】東京国立博物館 平成館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2011年7月20日(水) ~ 2011年9月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
公開してから初めての土曜日に行ったのですが、かなり混んでいて人でごった返す状態でした。特に序盤やガラスケースに入った小さめの品は行列が出来るほどで、観るのも大変です。結構細かい作品が多いので、近くで観るとしたら相当時間がかかると思います。私はミュージアムスコープでちょっと離れたところから観るようにしていました。
 参考リンク:Nikon モノキュラー HG 5×15D

さて、今回の展覧会は真言宗の開祖である空海(弘法大師)と日本の密教美術についての内容となっています。前半の展示は空海の人生や業績、持ち帰ってきた品々などについてで、後半が真言宗のお寺の仏像が並ぶコーナーとなっていました。詳しくは章ごとにご紹介していこうと思います。なお、作品の入れ替えがあったり、似たような名前の作品が多いので、作品番号を併記しておきます。中には作品名の漢字が表示できないものもあるので、気になる方は作品リストをご確認ください。
 参考記事:作品リスト
ちなみに今回の展示の国宝・重要文化財の占める割合は98.9%なんだとかw


<第1章 空海―日本密教の祖>
まず簡単に空海の来歴をご紹介すると、空海は774年に香川県の善通寺あたりに生まれました。父は国造で母も豪族の出身だったというので、それなりに身分があったようです。15歳の時に皇子の個人教師も務めたことのある阿刀大足に中国の古典籍を学び、18歳で都の大学寮に入って学問に励んだようです。しかし、もう大学に学ぶものが無いと考えたのかはわかりませんが、大学は中退しています。 大学を離れた後は山林をめぐる修行を行い、797年(24歳)の時には儒教・道教・仏教の中で仏教が最も優れているという書物「聾瞽指帰」(No.5)を著しました。
最初の章は、その「聾瞽指帰」やそれにまつわる品、空海の人となりなどが紹介されていました。

1 「弘法大師像」 ★こちらで観られます
最も古い空海の肖像の1つで、平安時代のものです。だいぶ古く変色していますが、廟を背景にやや左向きに、右手に五鈷杵、左手に念珠を持って座っている姿が描かれているのが分かります。(結構見づらいです) こうした構図は空海像に共通する構図とのことでした。意外と普通に人間っぽく描かれているように思います。

5 空海 「聾瞽指帰」 ★こちらで観られます
これが22mもある24歳の時に描いた三教指帰の自筆草稿です。空海は達筆でも有名ですが、しっかりと力強くリズム感のある字で描かれ、非常に美しいです。ところどころ読める文字もあったのですが、べつ毛先生という名前があり、これは儒教を擬人化した人らしく、道教、仏教の擬人化の3人で話している場面のようです。戯曲風に仏教の優位性を説いている作品のようでした。
 参考記事:知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」 -道教の神々と星の信仰- (三井記念美術館)

この辺には経本や漢文の本などもありました。しかし、混みっぷりは半端ではなく全然進みませんでしたw そして高齢者のマナーの悪さはヤバい…。 

11 伝 空海 「崔子玉座右銘断簡」
これは空海が書いたとされる書の断簡です。ふにゃっとした字で読めないのですが、後漢時代の人物の座右の銘で、
 之 説 短 人 無
 長 己 無 之 道
と書かれているそうで、意味は、「人の短を道う(いう)こと無かれ、己の長を説くこと無かれ(人の短所・自分の自慢をしないように)」だそうです。先ほどの書とはだいぶ字が違って見えましたが、空海は様々な書体を使いこなしたそうなので、初見ではまったく分かりませんねw


<第2章 入唐求法―密教受法と唐文化の吸収>
続いての2章は空海が遣唐使に同行して中国に渡り、密教を授かって帰ってくるまでのコーナーです。空海は25歳の時に大日経を知り、それを学ぶために31歳の時に遣唐使にメンバーとなりました。 その時に天台宗の開祖である最澄も一緒だったのですが、短期留学の最澄と違って空海は予定では20年の留学僧でした。(実際は2年で帰ってきます) 一行は変な所に着いて紆余曲折があったものの804年に唐の都の長安に到着し、空海らは遣唐使とともに唐文化を吸収します。遣唐使が帰ってからは、青龍寺という中国密教の中心地で、大成者の恵果と出会い密教を学びます。空海は2年で奥義を収め、恵果が亡くなる時には密教の流布を託されたようです(正統な後継者となっています) 伝説によると、恵果は夢の中で東から凄い人物が来るのを観ていたらしく、それでトントン拍子に進んでいったのかもしれませんが、驚異的なスピードです。さらに恵果は自作したり師から相伝した、両界曼荼羅、祖師図、密教経典、法具などを空海に与えました。
この章ではそうした経緯で持ち帰ってきた品々などが並んでいました。

14 空海請来、李真 等 「真言七祖像」 ★こちらで観られます
7枚セットの掛け軸で、展示されている作品は期間によって入れ替えがあります。私が観たのは龍猛と善無畏で、ボロボロになっていて分かりづらいですが、真言を正しく伝えた人物が描かれていました。周りには大きな漢字で何かが書かれているのですが読めなかったです。歴史の重みを感じます。

17 空海請来 「?陀穀糸袈裟」
恵果より付与された袈裟です。色々な生地を繋いだ糞掃衣(ふんそうえ)風の模様を綴織で表しているようで、模様なのかシミなのか分かりづらいのが長方形にパッチワークのように繋がれていました。結構大きくて、ガラスケースに入っているので目を引きました。
この辺には漢文の書や本が並びます。

20 空海撰・最澄筆 「御請来目録」
箇条書きに書かれた目録で、唐から持ち帰った品々が書きこまれています。空海が書いたものを最澄が写したものらしく、2大宗派の始祖のコラボですね。この2人は最初は交流があったようで、この頃はお互いの名前がよく出てくるようです。

なお、空海の言葉で、密教は奥深く言葉では伝えるのは大変なので絵で伝えるという旨の説明もありました。それが曼陀羅だったり仏像だったりするのですが、それは後のコーナーでご紹介します。

24 「兜跋毘沙門天立像」
冠をかぶり槍を持って立つ毘沙門天の像で、中国からもたらされました。その体躯も見事ですが、目は嵌めこまれてあり表情豊かです。また、足の下には毘沙門天を持ち上げるような地天女と、その脇に2匹の鬼の姿もありました。非常に立派で、よくこんなものを唐はくれたものだと感心します。

この先には鍍金された五鈷鈴や独鈷杵といった法具が並んでいました。側面に仏などが細かく彫られ、工芸技術の高さを伺わせます。

33 「錫杖頭」 ★こちらで観られます
金色で、輪っかが付いた錫杖の頭の部分です。かなり大きめで、阿弥陀三尊像と四天王の彫刻まであり、てっぺんには火焔宝珠もありました。これは後ろからも観られるのですが、裏にも仏像が彫られていて驚かされました。精密かつ荘厳で、まさに国宝と言える貴重な品でした。

この辺は法具のコーナーで、その隣は白檀で彫られた曼荼羅などもありました。

25 伝 空海所持 「金念珠」 ★こちらで観られます
これは10日間限定で公開されていた作品で、この記事を書いている時点ですでに公開が終わっています。その名の通り金色の数珠なのですが、この1玉1玉が物凄い! 精巧に彫られた彫刻のようで、肉眼で観てもよく分からないくらいでした。金の数珠の間には瑪瑙、琥珀、珊瑚などの赤い玉もあり、全体的な見た目も綺麗です。 これは竜光院の秘宝だそうで、これまた貴重な機会でした。


<第3章 密教胎動―神護寺・高野山・東寺>
続いての3章は空海の帰国後のコーナーです。806年に帰国した直後のことはあまり分かっていないようですが、809年には京都に入ったようです。高雄山寺に居を求め、経典の貸し借りを通じて最澄とも交流しています。 812年11月~12月には初めて仏や菩薩、天などと縁を結ぶ結縁灌頂(けちえんかんじょう)を行い、この際にも最澄も参加したようです。その後、816年に高野山の下賜を許され、817年に開山に着手します。さらに823年には京都の東寺も賜ったそうで、朝廷公認の存在となっていきました。この章ではその原点となった寺院や絵画、書籍、仏像、工芸などが紹介されていました。

37 「五大力菩薩像」
超巨大な3枚セットの掛け軸です。中央に菩薩、両脇に明王らしき仏の姿があるのですが、菩薩も火炎を背負って牙の生えた口を開けていて、まるで明王のようです。3体とも3つ目で力強い憤怒の様相を呈していました。迫力があります。

41 「両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)」 ★こちらで観られます
これまた巨大な掛け軸で、胎蔵界・金剛界の2枚の両界曼荼羅図のうち胎蔵界だけ展示されていました。(期間で入れ替え) 元々は金泥・銀泥で描かれていたらしいのですが、ボロボロで仏の輪郭を観るのがやっとかな。上の方はスコープで観てもよく分かりませんw まあ何となくわかった気になる感じでした。 近くにあった映像やコピーで詳細を紹介していますが、在りし日の姿を想像するのは大変かもしれません。

39 空海 「灌頂歴名」 ★こちらで観られます
結縁した時の歴名を書いたもので、参加者と仏の名前が書いてあります。僧最澄の名前もあるのですが、この頃既に最澄は朝廷公認の天台宗を開いていたので、だいぶ偉かったようです。空海自筆で、さらさらっと一気に書いたらしく、あちこちに黒く塗りつぶして書きなおした跡もありました。これぞ弘法も筆の誤りかな?w 中々興味深い作品です。

この次の部屋は三鈷杵や鉢や皿などの工芸品が並んでいました。

50 「女神坐像(八幡三神のうち)」
八幡三神のうちの1体の神像です。東寺の中にある鎮守八幡宮に置かれている像で、檜の霊木で作られています。蓮のつぼみを持って印を組むようなポーズで座っていて、目は遠くを見るような澄んだ目をしていました。姿は神像というよりは仏像そのものかな。ふっくらとして堂々としていました。
 参考記事:番外編 教王護国寺 (東寺)の写真

51 「細字金光明最勝王経」
空海筆と伝わる非常に細かい字で書かれたお経の巻物です。5文字ごとに少し間があり、現代人でも読みやすいです。すっきりと厳格な字で、印刷物のような正確さがありました。これだけ上手い字で延々と書くのは凄い労力でしょうね。

53 空海 「大日経開題」
空海が重視した大日経の要点をまとめた本の下書きです。あちこちに書き込みや訂正があり、如何にわかりやすく正確に伝えるかを推敲している様子が伺えます。空海は人智を超えた超人のイメージですが、こういう苦労の跡も観ることができるのは面白いです。

56 「仁王経五方諸尊図」
3枚セットの掛け軸で、東方、中方、南方の3つで構成されていますが、元は西方、北方も加えて5枚セットだったようです。菩薩、明王、天などを細い線で描いていて、線が濃くスッキリとした画風で力強い素描のようでした。


ということで、この辺で半分くらいです。非常に貴重な品ばかりで、一気に空海にまつわる品を目の当たりにすることができるので面白いです。まあ、私は空海に興味があるので楽しめましたが、前半は書や古い絵が多くてお勉強みたいな感じがしなくもないかなw 素人目にすげ~!となるのは後半の仏像かと思います。次回は仏像曼荼羅を含む4章をご紹介しようと思います。



 ⇒後編はこちら


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