関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展 (感想前編)【国立新美術館】

日付が変わって昨日となりましたが、平日にお休みを取って国立新美術館で「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展を観てきました。この展示は結構楽しみにしていて、メモも多めに取ってきましたので前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展

【公式サイト】
 http://american2011.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/american/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室1E  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2011年9月28日(水)~12月12日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
平日で大雨だったせいか意外なほど空いていてゆっくり観ることができました。

さて今回の展示はフィリップス・コレクションというワシントンの近くにあるアメリカ最古の近代美術館の作品110点が並んだ展示で、イタリア・スペインを巡回してきた国際的な巡回展となっています。フィリップス・コレクションはダンカン・フィリップスとその妻マージョリーが集めた作品を元に作られた美術館で、ダンカン・フィリップスは当時まだ評価の定まっていなかったアメリカの作家の作品を積極的に購入するだけでなく、その支援を行うなどアメリカの美術界の発展に大きく寄与していたようです。
展覧会では、そうしたコレクションを時代・テーマごとに10章に分けて展示していました。詳しくは気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 ロマン主義とリアリズム>
18世紀以来のアメリカ美術の主流はロマン主義のリアリズムだったそうで、最初のコーナーはそういった作品が並んでいました。見慣れない名前や作風が多かったのでじっくりと観てきました。

エドワード・ヒックス 「平和な王国」 ★こちらで観られます
川岸でライオンや熊、豹、水牛?などと人々が一緒にくつろいでいる様子を描いた作品です。細密に描かれているのですが、どこか素朴派のような味わいがあるかな。解説によると、この画家は宣教師だった人で、この作品はイザヤ書に基づいた主題だそうです。(こうした作品を60点以上作成していたそうです) 看板広告を手がけていたこともあるそうで、この絵にもその特徴が見られるようでした。

ウィンズロウ・ホーマー 「救助に向かう」
砂丘を登る2人の女性と、ロープを持った男性を描いた作品です。全体的に暗めの画面で、これは海岸に難破した船を救助しに行く姿のようです。リアリズムで写実的な画面となっていて、ドラマチックで力強い雰囲気がありました。どこか緊張した感じもあります。

<第2章 印象派>
続いて2章は印象派のコーナーです。1880年代にアメリカでも印象派が紹介され、パリたミュンヘンで学んだアメリカ画家たちも戸外で制作を行うようになりました。また、ニューイングランドを中心に開かれた夏の野外授業を通して若い画家にも印象派の技法を伝えていったようです。本家であるフランスの印象派と同様に日本美術や写真の影響もあるそうですが、アメリカのリアリズムの伝統も残った特徴があるようでした。ここにはそうした作品が並んでいます。

ジョン・ヘンリー・トワットマン 「エメラルド色の池」
アメリカのイエローストーン国立公園にあるエメラルド色の池を描いた作品です。全体的に明るくざらついた質感で描かれていて、背景には青い山々が見えます。アメリカらしい雄大な雰囲気があり、エメラルドの池は大きく描かれているせいか非常に鮮やかで目を惹きました。解説によると、この絵が正方形であることや地平線の位置が高いのは日本美術からの影響だそうです。

ウィリアム・グラッケンズ 「ベルボードの水浴」
ヨットの浮かぶ水辺と、手前の桟橋を描いた作品です。桟橋には赤い帽子を抑えて歩く女性の姿があり、可愛らしい雰囲気です。奥にはボートで遊ぶ人々などもいてのんびりとした光景となっていました。いかにも印象派らしい明るく光を感じる作品です。

アーネスト・ローソン 「春の夜、ハーレム川」
全体的に青~緑がかった画面に大きな橋がかかり、その下の川のほとりには人々や建物が描かれていて、光が水面に写っています。手前にはこちら側の岸に生えた枯れ木が描かれているなど面白い構図となっていました。この橋はモダンな感じで、後のほうで他の画家の作品にも登場します。

モーリス・プレンダーガスト 「パッリア橋」 ★こちらで観られます
手前に橋があり、奥にはヴェネツィアの港と街並みが広がる光景で、橋の上には沢山の貴婦人が色とりどりの傘を持って渡っている様子が描かれています。あちこちに点描のように描かれた箇所があり実験的な感じも受けます。解説によると、これは留学で得たものだそうで、この画家の構造的な技法はセザンヌに通じるものがあると、当時から高く評価されていたそうです。


<第3章 自然の力>
20世紀になっても、大自然はアメリカ画家を魅了していたようで、ここには自然をテーマにした作品が並んでいます。前時代の表現を融合させ、新しいモダニズムを追求する動きもあったようです。

ロックウェル・ケント 「ロード・ローラー」
大きなロードローラーの上に4人の男たちが乗り、それを沢山の黒馬に引かせて雪原を進む様子を描いた作品です。馬は黒々していて細部はわかりませんが、力強い雰囲気があります。手前で追っかけてきたような犬の姿があって、皆で自然に立ち向かっているかのようです。雪原や男たちの眼前に広がる雲は大自然の大きさを感じさせ、光と影がくっきりした表現が劇的な雰囲気を出していました。

ハロルド・ウェストン 「突風、アッバー・オーサブル湖」
湖の上から描いたような視点で、水面が波立つ様子を描いた作品です。奥から放射状に広がるような湖に、白波が波紋のように立っていて風の強さを感じさせます。厚く塗られた絵の具も力強さを強調しているかのようでした。

マースデン・ハートレー 「山中の湖、秋」
かなり単純化・抽象化された画風で、湖とその周りの紅葉した山々を描いた作品です。フォーヴのような力強い色彩で、緑・赤・黄色をリズミカルかつ対比的に並べたような感じでした。非常に目に鮮やかに映ります。


<第4章 自然と抽象>
4章は第一次世界大戦の後の好景気に沸く1920年代のコーナーです。こちらも自然を描いた作品が並び、一見すると抽象的ですが、客観に基づいた作風が多いようでした。

ジョージア・オキーフ 「私の小屋、ジョージ湖」
ダークブラウンの屋根と茶色の壁の小屋を描いた作品です。周りは木や山で、小屋には白枠の窓がついています。四角や三角といった単純な形と、平坦な色彩が何とも不思議な非現実感となっていて、具象的だけど象徴的な感じを受けました。オキーフというと花をトリミングしたような作品を思い起こしますが、風景画も観ることができたのは収穫でした。

ジョージア・オキーフ 「葉のかたち」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、ワインレッドの楓のような形の葉と、白い葉、緑の葉が重なっている様子が描かれています。単純化されているようですが、構図や色使いは緻密で、エレガントな雰囲気すら感じました。解説によると、オキーフは「リアリズムほどリアルでないものはない。取捨選択と強調によってこそ、もののリアルな意味がある」と語っていたそうです。
オキーフはこれも含めて全部で4点あるのですが、どれも良かったです。

アーサー・G・ダヴ 「赤い太陽」 ★こちらで観られます
山の上に浮かぶ巨大な赤い太陽を描いた作品です。太陽はペロペロキャンディーのようにぐるぐると渦を巻いているのが異様な迫力を出しています。周りの山や雲も波打っていて不穏な感じも受けました。中々インパクトのある力強い作品です。
解説によると、アーサー・G・ダヴはアメリカで初めて抽象画を描いた画家で、フィリップスの支援を受けていたそうです。また前述のオキーフはアーサー・G・ダヴを気に入っていたらしく、この世で一人のアメリカンペインターと言って賞賛していたそうです。この作品も含めて4点ほどまとめて展示されていたのですが、抽象的すぎて何を描いているか分からない作品もありましたw

ジョン・マリン 「海、ケープ・スプリット、メイン州」
波が打ち寄せる岩場を描いた作品です。抽象的で、岩と波が混ざり合うような感じすらします。素早そうな筆致や色も含めて自然の厳しさや力強さを感じました。


<第5章 近代生活>
先ほどのアメリカの印象派はアメリカの産業化にはあえて注目しなかったようですが、若い世代は近代都市の生活にも高い関心を持っていたようです。ロバート・ヘンライ、ジョン・スローン、ジョージ・ラクスらは大都会の孤独な個人の姿など卑近な主題を描くことで「アッシュカン・スクール(ゴミ箱派)」と揶揄されたようですが、ヨーロッパの伝統に反旗を翻した彼らはアメリカ美術を新しい方向に導きました。そして、リアリズムの流れ受け継ぎ都市の裏側を描くスタイルはエドワード・ホッパーなどにも受け継がれていったようです。

ジョージ・ラクス 「占い」
赤い服に白髪の老女が、青い皿のようなものをじっと観ている様子を描いた作品です。暗い中で真正面を向いていて、右から左に強い光がさしているような明暗表現となっています。見るからに貧しそうな老女で、悲哀を感じました。

ウォルト・クーン 「羽飾り」
大きな羽飾りを付けたショーで踊る女性を正面から描いた作品です。白の羽や黒の羽など色の対比も面白いのですが、何と言っても女性の表情がやばい! 目が死んでいますw 疲れきって無表情になっているのと華やかな飾りが対照的で、強く心に残る作品でした。

エドワード・ホッパー 「日曜日」 ★こちらで観られます
こちらも今回のポスターの作品で、大きな窓の店の前で座り込んでタバコを吸う初老の男性が描かれています。周りには人の姿はなく、いくら日曜日でもここまで人がいないのかというくらい寂しい光景です。よく観ると店の中もがらんどうで、男の顔も虚ろなので、店が潰れてしまったのかというくらい不安な気分になります。解説によると、この絵の三年後に世界恐慌が起こったらしいですが、何か予兆のような感じすら受けました。この味はフランスの絵にはありませんね。


ということで、この辺で大体半分なので今日はこの辺までにしておこうと思います。知らない画家や観たことがない作品ばかりで、アメリカの美術の流れを知ることができるのはかなり貴重な機会だと思います。特に4~6章あたりは好みの内容でしたので、次回は6章から最後までをご紹介していこうと思います。



  →後編はこちら


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評価




コメント
No title
混んでいるかな?と思っていましたが…。
まだサンデー美術館でやってないのでしょうか?

オキーフが好きなので行ってみようと思っています。e-276
2011/10/06(木) 16:15 | URL | パンピー #-[ 編集]
Re: No title
>パンピーさん
コメント頂きありがとうございます。
意外にも空いていました^^
平日で土砂降りだったこともあるでしょうが、有名な画家が少ないせいかもしれませんねw
オキーフはどれを観ても好みです。個展を観てみたいなあ
2011/10/07(金) 01:40 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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