関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~ (感想前編)【江戸東京博物館】

前回ご紹介した旧安田庭園に行った後、この日の目的である江戸東京博物館へ行って、「世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~」を観てきました。かなり情報量の多い展覧会で、メモをたくさんとってきましたので、前編・後編にわけてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~

【公式サイト】
 http://www.go-venezia.com/
 http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/exhibition/special/index.html

【会場】江戸東京博物館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR両国駅/大江戸線両国駅
【会期】2011年9月23日(金・祝)~12月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいて、場所によっては人だかりができる(特に小さめの作品やガラスケースの周り)くらいの盛況ぶりでした。しかし、特に入場制限は無く、帰る頃(土曜日18時頃)にはガラ空きだったので、狙い目は19:30まで開館している土曜の夜だと思います。

さて、今回の展示は1000年に渡って独立国家を築いたヴェネティアを題材にしています。ヴェネティアは1987年に世界遺産に登録されたイタリア北部の都市で、年間2000万の観光客が訪れる世界的な観光地でもあります。今回はそのヴェネティアにある7つの美術館・博物館の作品が一堂に会する内容で、3章構成158点もの貴重な作品を観ることが出来ました(一部は東京のみ) 東京を皮切りに日本全国を巡回するのですが、とりわけ仙台にも巡回するのは意義深いことだと思います。これだけ貴重なものを震災後の被災地に貸し出してくれるヴェネティアには頭が下がる思いです。

まず先に入口~1章付近にあった大まかなヴェネティアの成りたりと歴史を紹介すると、ヴェネティアは起源6世紀頃にビサンティン帝国の政権下に生まれた都市で、他民族から逃れる為に攻めにくいこの地にやってきた人々によって築かれたようです。ラグーナと呼ばれる湿地に沢山の杭を打って建物を建てていき、その後成長していくと速やかに独立国家となります。西暦697年に総督(ドージェ)が初選出されて以来「自由と独立」を貫き、強大な海軍力と交易を背景に力を伸ばしていました。その体制はドージェを頂点に少数者が権力を握るという独裁的なものでしたが、時代と共に変遷していきます。
ヴェネツィアは海との関わりが強く、海洋国家として国立造船所(アルセナーレ)はヨーロッパ最大規模だったそうです。やがて新大陸の発見後、神聖ローマやその他の大国(スペイン、イングランド、フランスなど)の重要性や国力が増すとヴェネティア艦隊は徐々に衰退していったそうで、最後はナポレオンが来た際に評議会の決議によって支配権を譲渡してヴェネツィアの独立が終わったようです。一方、文化的にはルネサンス期に爛熟期を迎え、ヴェネツィア派を形成するなど様々な文化が花開いたようです。それについて詳しくは各章で気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考リンク:ヴェネツィアのwikipedia


<第1章 黄金期 La Serenissima>
入口ではヴェネツィアの風景映像と、本を押さえつけている羽の生えたライオンの彫刻が置いてあります。中々大きな像で迫力があり、このライオンはヴェネツィアのシンボルとなっています。また、ヴェネツィアの守護聖人であるサン・マルコの象徴でもあり、サン・マルコ=本を持つ有翼のライオンと同一視されているようです。

[ヴェネツィア共和国の成り立ち]
まずはヴェネツィアの成り立ちについてのコーナーです。

ヤーコポ・デ・バルバリ 「1500年のヴェネツィア(ヴェネツィア景観図)」
巨大で精密なヴェネツィアの地図で、鳥瞰図のように非常に高い位置から観た視点で描かれています。これは鐘楼や教会で写生したものを1つにしたものだそうで、写実的です。 あちこちに海の神などの顔も描かれ霧のようなものを吹いているのも描かれていました。隣にはカラーの似た地図もあり、この作品を元に16~17世紀に当時の変容にあわせて改変したものとなっています。

ヴィットーレ・カルパッチョ 「サン・マルコのライオン」 ★こちらで観られます
右足で本を抑えつけている翼のあるライオンを描いた作品で、背景にはヴェネツィアの町並が描かれています。その前足は陸地、後ろ足は海の中に浸かっていて、これはヴェネツィアの勢力範囲が陸地と海にまたがっていることを示しているようです。また、前述の通り、ライオンはヴェネツィアの守護聖人サン・マルコを示していて、ライオンの持っている本にはヴェネツィアがサン・マルコの遺体を収めている正当性を示しているそうです。解説によると828年に信心深い2人の商人がエジプトのアレキサンドリアにあったサン・マルコの遺体を盗んでヴェネツィアに持ってきたそうで、その由来はサン・マルコが生前に死んだ後にこの地に安置されれば安らぎを得るというお告げがあったためのようでした。絵自体も素晴らしく、大きくて迫力があり色の鮮やかさが見事な作品でした。

[海洋の帝国]
10世紀になるとヴェネツィアはアドリア海や地中海沿岸の小都市を海賊から守る海の警察の役目を果たすようになり、同時に帝国内の免税特権を活用して東西貿易で莫大な富を得ていたようです。12世紀には巨大な国立造船所(アルセナーレ)が作られたり、各地から商人が集まって初めての銀行の為替業務が行われていたようです。

アンドレア・ミキエッリ、通称ヴィチェンティーノ 「レパントの海戦」
大きな横長の絵で、見渡す限り無数の巨大な船が並んでいる様子を描いています。これはキリスト教軍とトルコ軍の決戦の様子らしく、キリスト教側が勝ったそうです。ヴェネツィア船はこの戦いの主要な部分を占め、勝利に決定的な役割を担ったそうです。写実的で迫力があり、当時の様子が伝わってくるような作品でした。

[マルコ・ポーロとジパング]
1271年に17歳のマルコ・ポーロは父と叔父と共にヴェネツィアからアジアへの旅に出ました。富と財宝を得て帰ってきたのは24年後で、帰国して3年後に戦争に従軍した際に捕虜となり、その時に口述をまとめて有名な東方見聞録が書かれました。その中には黄金の国ジパングについても紹介されているのですが、その内容は当時の中国人の日本のイメージとなっているようです。この辺にはマルコ・ポーロに関する品が並んでいて、旅の成果を報告する様子を描いた絵や、世界地図、地中海地図、天体観測の道具、地球儀、天球儀、日時計、コンパス、望遠鏡、ガレー船の模型などが展示されています。

ヴィンチェンツォ・コロネッリ 「地球儀」
このコーナーの部屋の中央にあった大きな地球儀です。これはルイ14世の為に製作された直径4mの地球儀の縮小版レプリカだそうですが、これでも1mはあり充分大きいです。日本やアメリカ、オーストラリアなどもあって結構正確でしたが北海道がないなど細かいところは未完成な感じでした。

[総督(ドーシェ)と共和制]
ドージェは元首のことで、貴族の年配から選ばれることが多かったようです。任期は終身で、独裁的な権力を持っていたのですが、身内に世襲しようとする傾向が強くなってきたため選挙による選出となっていったようです。その後は権限を厳しく監視されるようになり、運営は大評議会や十人委員会が主導していくようになります。ドージェには様々な儀式を執り行う義務があり、特に重要だったのは「海との結婚」と呼ばれる儀式で、船に乗って「我々は汝、海と結婚する」というフレーズと共に海へ投げ込むものだったそうです。 ここにはドージェに関する品々が並んでいました。

作者不詳 「真実の口(密告用投書箱)」
ローマの観光名所と同じ名前の作品で、こちらも郵便ポストが人の顔となり、口のなかに投函する形式となっています。これは十人委員会に向けて告発状を送るためのもので、町のあちこちに置かれたそうです。ぎょろっとしていて、ちょっと悪そうな顔に見えるような…w 面白い表情をしていました。こうやって汚職などを監視していたのですね。

この辺にはドージェが護身用に持っていた小さな銃を隠し持てる祈祷書や、とんがった部分のある変わった形の帽子(ドージェの肖像は必ずこの帽子をかぶっている)、ギルドの投票用の壺、高官の服なども展示されていました。

ジェンティーレ・ベッリーニ 「総督ジョヴァンニ・モチェニーゴの肖像」
横向きのドージェの肖像です。この横向きのスタイルは「プロフィール」と呼ばれる当時の典型的な構図で、先ほど観た変わった形の帽子を被って豪華な衣装を身にまとっています。写実的に描かれ、厳格そうでキリッとした表情をしていました。しかし、理想化はしていないようで、その為一層に人格がよく現れているように思います。

ヴェネツィアの画家 「ドゥカーレ宮殿の「大評議会の間」」
長さ52m、幅26mあるという巨大な会議室に集まった沢山の人々が会議をしている様子を描いた作品です。部屋には豪華な飾りや絵が施され、奥にはティントレットの巨大壁画「天国」の下の玉座にドージェの姿もあります。遠近法が強調されているように感じ、天井の装飾が迫ってくるような感じでした。豪華でドージェの権力を感じさせます。

この辺にはヴェネツィアのサン・マルコ広場など街並みや祭礼の様子を描いた絵画や、コイン、委任状などもありました。委任状はほとんど本にしか見えませんw

[唯一の都市ヴェネツィア]
ヴェネツィアは400以上の橋で結ばれた小島で、建物は無数の丸太を粘土層に打ち込んで作った地面の上に建てていきます。地上には歩行者用の歩道しか無く、人や物資の運搬はゴンドラや船を使い、車両は一切通りません。1846年の鉄道敷設までは完全に独立した島で、1898年に導水管が通るまでは水は雨水を集めて井戸でろ過するシステムとなっていました。このコーナーにはそうしたヴェネツィアの都市機構そのものをテーマにした作品が並んでいました。

作者不詳 「井戸の井筒」
広場のあちこちにある井戸の井筒で、これは9~10世紀頃のカロリング朝様式のものだそうです。側面にパターン化された十字架やアーチが浮き彫りとなっていて、植物紋様らしきものも彫られています。ヴェネツィアは海に浮かんでいるため、井戸を掘っても水を得ることは難しいので、先述の通り雨水を広場の地下などに溜め込んでいたようで、石灰などでろ過をしていたようです。井戸1つをとっても装飾的で洒落た雰囲気があるのはさすがです。

ヴェネツィア製 「ゴンドラ用フェッロ(船尾用鉄製部品)」
ゴンドラの舳先(へさき)に付いている装飾です。元々は船体保護や強化のためのものでしたが、16~17世紀に富や栄華を誇示する装飾となったそうです。人々や草花が組み合わさったような金属のレリーフで、優美で複雑な紋様となっていました。

この辺には街の様子を描いた絵画作品なども展示されていました。

ジュゼッペ・ボルサート 「リアルト橋」
アーチ状の橋の上に商店などが入った、有名なリアルト橋を描いた作品です。これはヴェネツィア最大の運河カナル・グランデに架かる橋で、ルネサンス期に一般公募によってデザインのコンペが行われました。コンペにはかのミケランジェロも応募していたようですが、長年の審議の末に最終的にはアントニオ・ダ・ポンテの案が採用されました。非常に重い橋らしく、基礎工事の際には500万本もの木の杭が打たれたそうです。この絵自体は写実的かつ精密に描かれていて、隣に並んでいた現在の橋の様子と遜色ない姿をしています。若干、白いはずの橋が茶色っぽく見えるくらいかな。今も昔も変わらない姿を見ることができます。

この辺には、ヴェネツィアの街の仕組みを模型にしたものがあり、広場、井戸、運河、邸宅などが再現されていました。地下まで断面図のようになっていて、水が浄化されて集まる仕組みや、粘土層に杭が打ち込まれた上に柱が立つ様子、家が歩道と運河の両方に面している様子などもわかります。模型は2章に進むと裏側から観ることも出来て、1階は商用スペース、2階以上は住居スペースや美術品を並べた部屋などもあるようでした。


ということで、まだ1章しかご紹介していませんが、長くなってきたので今日はここまでにします。とにかく1つの都市を展覧会に詰め込んでいる感じなので情報量が凄いですw 観ているだけでヴェネツィアに行ってみたくなります。
後半には有名な絵画作品なども展示されていましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


  →後編はこちら

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