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世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~ (感想後編)【江戸東京博物館】

今日は前回の記事に引き続き、江戸東京博物館の 「世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~」展 の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら

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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~

【公式サイト】
 http://www.go-venezia.com/
 http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/exhibition/special/index.html

【会場】江戸東京博物館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR両国駅/大江戸線両国駅
【会期】2011年9月23日(金・祝)~12月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編の1章ではヴェネツィアの歴史や都市機構などについてご紹介しましたが、後編は美術品が中心の2章・3章をご紹介します。


<第2章 華麗なる貴族 La Vita nel Palazzo>
ヴェネツィアのパラッツォ(邸館)の日常生活は長い歴史の中であまり変わることは無かったそうで、カーザ(家)-ヴィッラ(別荘)形式に由来する建物に住んでいました。家族や使用人の生活の機能と、商業や貿易に結びつく機能性を兼ね揃え、1階は歩道からも運河からもアクセスできるようになっていたようです。また、芸術や家具の分野も成熟していき、ヴェネツィアの人々はよく生きることに努め、お祭りに惜しみなくお金を使うなど人生を楽しんでいたそうです。
ここには貴族の肖像やコーヒー沸かし器、水盤、香炉、燭台、手箱などが並び、イスラムやエジプトからの影響を感じる品々となっていました。精巧で美術性の高い雰囲気があります。

[ヴェネツィアの食卓]
東方との交易で栄えたヴェネツィアは、オリエントから持ち込まれた香辛料や砂糖を使った料理を生み出し、ヨーロッパの商人や王侯貴族を虜にしてフランス料理にも影響を与えたそうです。ここでは面白い逸話が紹介されていて、有名なカルパッチョという料理は、医師から加熱した料理を禁じられた伯爵夫人の為に考案された際、その料理の名前を聞かれたシェフが赤色の使い方が特徴的だった「ヴィットーレ・カルパッチョ」(ヴェネツィアの画家)の名前を出して、この名となったそうです。(カルパッチョの作品は1章や3章に展示されています) 

ミケーレ・ダマスキノス(?)(ティントレットの原作に基づく) 「カナの婚礼」 ★こちらで観られます
ティントレットの「カナの婚礼」を翻案して縮小した作品です。手前から奥にかけて長いテーブルに沢山の人々が座って食事をしていて、奥にはキリストが母マリアからぶどう酒が無くなったことを聞いて、水をぶどう酒に変えたという奇跡の様子が描かれています。明るい色調で描かれていて鮮明な印象を受けるのですが、何か違和感を感じると思ったら衣装などはこの時代のヴェネツィアの様式を反映しているようです。身なりや習慣、調度品など16世紀イタリアの生活の様子や流行りが伝わってくるようでした。

この辺は通路が狭いこともありかなり混んでいました。

[ヴェネツィアン・グラスとマジョリカ焼]
ヴェネツィアでは工芸の技術も進み、ガラス工芸はムラーノ島に職人を集め技術が流出しないようにしていました。また、マジョリカ焼はスペインから陶器を輸出する際の中継地点であるマジョリカ島に由来し、13世紀後半以降イタリア中部で生産されるようになり、特にフィレンツェ周辺で盛んになりました。15世紀頃には完成度が頂点となりヴェネツィアにも広まってきたようです。
 参考記事:あこがれのヴェネチアン・グラス ― 時を超え、海を越えて (サントリー美術館)

このコーナーのガラスケースには色鮮やかで細かい絵の描かれたマジョリカ焼きが並んでいました。ちょっとバタ臭いくらい鮮やかで私の趣味ではないですが、神話や歴史を題材にした派手な陶器が並んでいます。また、その向かい側にはクリスタッロの透明ガラスを使った器やレースグラスなど様々な技法のヴェネツィアン・グラスが並んでいました。こちらも素晴らしい技術に驚嘆します。

少し進むと貴族の男女の服や靴、バッグ、扇、かつら用の化粧箱なども並んでいます。特に驚いたのは50cm以上の高さの靴で、厚底というよりもはや竹馬みたいな感じでしたw 解説によると当時のヴェネツィアの貴族はイタリア本土に土地を持ち、ヴィラと呼ばれる館を構えて地主となり、享楽的な生活を送っていたそうです。この辺に展示されている服などは華やかなパリのファッションを取り入れていたようでした。

不明 「カ・レッツォーニコ様式のシャンデリア」
部屋の中央に設置された巨大なシャンデリアです。透明なガラスに混じってピンクや水色のガラスがあり花をあしらっているのかな? 上の方には花の形のガラスも見られます。ちょっと異様な造形と色使いで、乙女チックな感じを受けるようなw ほとんど手作業で作られているらしく、中々驚きのシャンデリアでした。

ピエトロ・ロンギ 「ポレンタ」
ポレンタというのはトウモロコシの粉を練ったものらしく、庶民らしき若い女性が鍋から黄色い塊を出している姿が描かれています。その周りには座ってそれを見る男や楽器を持っている男、後ろにも若い女性の姿があります。解説によるとこれは男女の誘惑の場面だそうで、楽しげな雰囲気がありました。

ピエトロ・ロンギは貴族の邸宅やカーニヴァルの絵を専門に描いていたそうですが、初期にはこうした日常の姿も描いていたようです。この部屋の両側にはピエトロ・ロンギとその工房の作品が並び、庶民生活、修道院の面会所、賭博場など当時のヴェネツィアの生活を伝えてくるようでした。賭博場の人々は仮面をつけている人が多かったです。

ピエトロ・ロンギ 「香水売り」 ★こちらで観られます
黒い三角帽に白い仮面、黒いマントをつけた2人組みを描いた作品です。その左側で盆に入れた香水を売る老婆が立ち、仮面の1人がそれを買い求めているようです。ちょっとわかりづらいですがこの仮面の人物は女性のようです。2人組の背景には薄暗いショーウィンドウやその前でたむろしている人?なども描かれているのですが、仮面の2人に柔らかい光が差し込んだような明暗表現となっていて、自然と目が行きました。全体的に何処と無く妖しい魅力のある作品です。

少し進むとサイコロゲームなどのゲームセットがいくつか展示されていました。

南ドイツ製? 「キャビネット」
大きくてカラフルな装飾が施されたキャビネットです。アメジストの柱などが使われ豪華な雰囲気があります。キャビネットとして機能するのか疑問に思うほどの装飾だったのですが、鑑賞用に作られたもののようでした。まるで建物の模型のような感じです。

3章に入る辺りで約8分程度の映像があり、ヴェネツィアの歴史や文化についてざっくりと紹介していました。


<第3章 美の殿堂 La Galleria dei Dipinti>
ヴェネツィアの多くのパラッツォ(邸館)には収集室や絵画ギャラリーと言えるスペースが設けられていて、17世紀中頃まで私的なギャラリーを作る必要性を感じた人々が絵画を収集していたようです。古いものからイタリア各地、フランドル、オランダなど海外の作品まで集められたそうで、ここにはそうした作品が並んでいました。

ジョヴァンニ・ベッリーニ 「聖母子」 ★こちらで観られます
当時最大規模の工房を抱えていたベッリーニの作品です。青空を背景に赤い服をきた聖母マリアと、裸で手すりの上で母に抱かれているキリストが描かれています。キリストの顔は磔刑の時の顔に似ているように見えました。マリアも悲しげな表情で、解説ではわが子の運命を予見しているように見えるとのことです。空の青が深くて現実感が喪失していたようにも思いました。

ヴィットーレ・カルパッチョ 「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」
手をあわせている赤と青の服を着た聖母マリアと、その脇に立つ子供の頃のキリスト、その向かいの窓枠には子供時代の洗礼者ヨハネが描かれています。色合いが非常に鮮やかで、華やいだ印象を受けました。素晴らしい作品です。

[ルネサンスに花開いたアート集団-ヴェネツィア派]
16世紀になるとヴェネツィアは美術の黄金期を迎えました。この頃はすでに経済的・軍事的にはヴェネツィアの覇権は傾いていたようですが、文化の舞台では主役であり続けたようです。ベッリーニ一族やカルパッチョ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレットとなどを排出し、ヴェネツィア派と呼ばれる流れが生まれました。ヴェネツィア派の特徴は明るい色彩感覚で、官能的で華やかな表現となっている点のようです。ここにはそうした画家の傑作が並んでいました。

ヴィットーレ・カルパッチョに帰属 「総督レオナルド・ロレダンの肖像」
横向きの「プロフィール」の構図のドージェ(総督)を描いた肖像です。独特の形の帽子を被り、オレンジ地に金の刺繍の服を着ています。また、背景の窓にはサン・ジョルジョ島も見えていました。非常に精密かつ写実的な作風ですが、色が明るくて力強くも華やかな雰囲気がありました。これも素晴らしい作品だと思います。

この近くには今は失われたミケランジェロの作品の模写などもありました。

セバスティアーノ・リッチ 「ヴィーナスとサテュロスとキューピッド」 ★こちらで観られます
ベッドの上で横たわる裸のヴィーナスを描いた作品で、背後から好色なサテュロスがにじり寄ってきているのをヴィーナスが指差していて、サテュロスは驚いた表情を浮かべています。また、ヴィーナスの前には息子のキューピッドが眠りこけているようでした。ヴィーナスの肌は柔らかく明るい色で描かれていて、気品と官能的な雰囲気を兼ね揃えているように思います。これもかなりの傑作じゃないかな。

ヴィットーレ・カルパッチョ 「二人の貴婦人」 ★こちらで観られます
東京限定で展示される15世紀ヴェネツィア絵画の頂点とも言える作品です。非常に有名な作品なので、これが来るとは驚きました。手すりの脇で何かを待つ2人の女性と、その周りにいる子供や鳩、犬、キジ、花瓶などが描かれていて、色が明るく緻密で気品を感じます。この作品はミステリアスなところがあり、女性たちは何を待っているのかわからず、近年までこの2人は娼婦ではないかと言われていました。しかし、1963年になってこの絵は実は分割された絵の下半分であることがわかり世紀の大発見となります。その上半分はアメリカのロサンゼルスにあるポール・ゲッティ美術館所有の「潟(ラグーナ)での狩猟」であり、「二人の貴婦人」の左上にある花瓶から伸びる茎と、「潟(ラグーナ)での狩猟」の花がピタリとくっついて1枚の絵となります。それによってこの2人は狩猟をする夫を待っている妻であることが判明し、周りに描かれた生き物たちの意味も明かされて行きました。キジバトは夫婦の絆、孔雀は多産、犬は忠実などの意味が込められているようです。 しかし、それでもなお不自然なところがあり、「二人の貴婦人」の左下の犬は頭だけを残して体は描かれていません。これは、元は扉絵であった為、この左側にさらに同じサイズの絵の続きがあったと考えられています。残りの部分は未発見のようですが、何が描かれていたのか想像をかきたてます。この作品を観られたことは人生の宝になりそうです。
この作品の隣にはバーチャル映像で「潟(ラグーナ)での狩猟」とくっつけた絵を流していました。かなり絶妙なトリミングであったことが分かりますが、何故このように切り離したかは不明のようでした。

アントニオ・カノーヴァ もしくは ガスパーレ・ランディ 「アモールとプシュケ」 ★こちらで観られます
新古典主義の画家アントニオ・カノーヴァの作品と思われるものの、その知り合いのガスパーレ・ランディの作品である可能性も考えられる絵です。ルーブル美術館所蔵の大理石像に着想を得て描かれたもので、上から覆いかぶさるように裸婦(プシュケ)を抱く羽の生えたアモールと、それを向かい入れるように手を挙げて仰け反るプシュケが描かれています。ダイナミックな構図と滑らかな人体表現で、理想化された美しさがありました。

この隣にもカノーヴァの作品があり、理想的な雰囲気があります。また、近くにはカナレットによる奇想画やカナレット工房の風景画なども並び、好みの作品ばかりでした。

ティントレットと彼の工房 「天国」 ★こちらで観られます
前編で「ドゥカーレ宮殿の「大評議会の間」」という作品をご紹介しましたが、その作品の総督の玉座の上に画中画として描かれていたティントレットの「天国」の下絵です。現在の大評議会の間の絵とは違うようですが、ダンテの「神曲」に基づいた主題で天国で戴冠するマリアを描いています。円が幾層にも重ねられるように、同心円上の雲の上に沢山の聖人・聖女などがその様子を見守っていて、その円のせいかマリアのあたりに自然と目が向きました。凄い迫力と神聖な雰囲気が伝わってきます。
なお、この作品にはほぼ同サイズの下絵がルーブル美術館にもう一枚あるそうです。また、マリアを描いているのは受胎告知の日に建国したヴェネツィアの正当性を誇示するためのようでした。


ということで、私としては後半は特に面白く感じられる展覧会となっていました。私はヴェネツィアに行ったことがないのですが、行ったことがある方にはより一層面白く感じられるんじゃないかな? これを観ているうちにヴェネツィアに行きたくなること必至ですw 会期も長めですので、気になる方は是非どうぞ。
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