関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

世紀末、美のかたち 【府中市美術館】

先日、府中まで遠征して府中市美術館で「世紀末、美のかたち」を観てきました。会期中、一部の展示品の入れ替えがあるようで、私が観たのは前期の日程となっていました。

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【展覧名】
 世紀末、美のかたち

【公式サイト】
 http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/seikimatsu/index.html

【会場】府中市美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など


【会期】
 前期:2011年09月17日~10月16日
 後期:2011年10月18日~11月23日
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示は19世紀末の絵画や工芸を80点ほど集めた内容となっています。名前から分離派の展示かと思いましたが、アール・ヌーボーやルドン、ドニ、ゴーギャンなど数名の作家の作品が並ぶ展示となっていました。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、似たような作品名が多いので、作品番号も入れておこうと思います。
 参考記事:
  オルセー美術館展 パリのアール・ヌーヴォー (世田谷美術館)
  アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 (松屋銀座)
  群馬ガラス工芸美術館の案内
  エミール・ガレの生きた時代 (目黒区美術館)


<自然とかたち>
まずは自然をモチーフとした作品の並ぶコーナーです。(まあどの章も自然をモチーフにした作品が多いですがw) 19世紀末には自然観に大きな変化があったそうで、生命の根源に対する驚きや畏怖、興味が作家たちの創作の理念を生んだそうです。

3 アルフォンス・ミュシャ 「アイリス」
アイリス、百合、カーネーション、バラの4枚セットのポスターのうちの1枚です。伏目がちの女性が立ち、周りにはアイリスの花々が描かれています。ミュシャ特有の装飾的で優美な雰囲気があり、花の精のような女性像でした。
隣には百合の作品もありました。また、同じアイリスを主題にしたガレの花器もあります。
 参考記事:アルフォンス・ミュシャ展 (三鷹市美術ギャラリー)

1 ルネ・ラリック 「ブローチ 羽のあるニンフ」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品で、水から上がって来たような、腰をくねらせた蝶の羽の生えた女性のブローチです。繊細で優美で煌びやか! ラリックらしさのよく出ている気品のある作品でした。
隣にあった甲虫のブローチも可愛らしかったです。
 参考記事:
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想前編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想後編 (国立新美術館)
  ラリック家の女神たち (箱根ラリック美術館)

10 ドーム兄弟 「蔓草文花器」
大きめの緑色のガラス花器です。ほっそりした首で側面に蔓(つる)の模様があります。被せガラスで繊細な色合いで意匠と共に楽しめました。
この辺はガレやドームのガラスの花器が並んでいます。

7 エミール・ガレ 「魚文瓶」
丸っこい胴と細い首の瓶です。瓶の先端には魚の尾のような栓があり、胴にはヒレのような物がついていて、全体的に下を向いた魚のような形となっています。また、胴には青っぽく飛び散るような斑点が無数にあり、海を思わせます。その真ん中辺りに頭を出す大きな魚もあしらわれ、上方の小魚たちを食べようとしているかのようでした。形も側面も魚をモチーフにしていて面白かったです。

16 ルネ・ラリック 「三足鉢 シレーヌ」
半透明の皿に裸婦が彫りこまれている作品です。これは船人を美しい歌声で海に引きこんで死なせる妖精シレーヌをモチーフにしたもので、髪の毛は水泡となっていて足は水の中に溶け込むような感じです。曲線や流体の表現がしなやかで、妖艶な美しさがありました。
この近くは同じようにシレーヌをモチーフにした作品や、カリプソという海の女神を象ったガラス器もありました。結構見覚えがある作品が多いですが、久々に観ると改めて良さを感じます。

20 ルネ・ラリック 「花瓶 シレーヌ、人物像の栓 あるいは 群像」
扁平な瓶の蓋が、頭を抑えている女性(シレーヌ?)になっている作品です。オパルセントガラスの柔らかい乳白色の色彩が高級感と気品を感じさせます。本体側面の両脇にも女性像と思われるものがおぼろげに表現されていて幻想的な雰囲気がありました。


<文字を刻む>
この時代の絵画や工芸の中には時折、文字を刻んだ作品があるそうで、例えばガレは深い文学的な言葉を刻んでいたこともあるそうです。これは芸術の中で絵画や彫刻に比べて下位とされていたガラス工芸を本格的な芸術に高める試みと考えられるようです。一方、ミュシャはポスターという文字が重要な媒体において、絵と文字を等価的に扱い装飾と化して融合させたそうです。ここにはそうした文字を作品に取り込んだ作品が並んでいました。

25 アルフォンス・ミュシャ 「サラ・ベルナール」
女優サラ・ベルナールを正面から描いた作品です。頭に星型の飾りのティアラを被り、沢山の白百合をつけています。巻き髪は様式化されて、背景には光輪のような輪があってサラ・ベルナールの名前が装飾的に書かれていました。周りも星模様で可愛らしい雰囲気です。
この隣にはミュシャの「ジスモンダ」のポスターにそっくりな「アメリカン・ツアー」という作品がありました。ミュシャがジスモンダを元に改変したもののようです。また、ポール・ゴーギャンの「ノア・ノア(かぐわしい、かぐわしい)」なども展示されていました。
 参考記事:ゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)

21 エミール・ガレ 「好かれようと気にかける」 ★こちらで観られます
ちょっと暗めで分かりづらいですが、トンボとそれを見るカエルが象られた壺です。下の方には文字が刻まれ「Souci de plaire」とあり、これが「好かれようと気にかける」という意味のようです。Souciというのはキンセンカを指す意味もあるようで、文字の隣には花も彫られていました。カエルはトンボを食べようとして好かれようとしているのか、単にトンボに恋したのか、詳しい意図は不明だそうで、見るものの想像をかきたてる作品となっていました。ガレはカエルやトンボを題材にした作品が多いように思います。
 参考記事:国立エルミタージュ美術館所蔵 皇帝の愛したガラス 感想後編(東京都庭園美術館)


<異形の美>
ガレの器の虫や海の生物、ルドンの奇怪な怪物など、この時代の作品には異形な生物がよく使われたそうです。当時は醜いと捉えられたようですが、このコーナーではそうした作品を並べた面白い趣向となっていました。

39 オディロン・ルドン 「すると魚の体に人間の頭をつけた奇妙な生物が現れる『聖アントワーヌの誘惑』第1集5」
白黒の版画作品です。これは神を描いたもので、魚の体に人の頭を持った生き物の姿で表現されています。水の中を漂っているような感じで、その近くには顕微鏡で覗いて描いた微生物などもあり奇妙な現実感と幻想性を持っていました。
他にも「いたるところで瞳が燃える」などの有名作品も並んでいます。
 参考記事:19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)

40 エミール・ガレ 「蘭文花器」
八角形のカクカクした形の花器です。側面に蘭の花が貼り付けられていて、花器としては異形の雰囲気があります。花びらまで立体的で飛び出しているので、文様というよりは彫刻作品のようです。その発想が面白い作品でした。
この辺にはガレのタツノオトシゴの形の花器もありました。ガレやドームのガラスケースの合間にルドンの作品が並んでいる感じです。

33 エミール・ガレ 「クニダリア文花器」
クニダリアというのはクラゲや珊瑚、イソギンチャクなど毒針を持った生物の総称だそうで、側面にイソギンチャクかクラゲかわからない奇妙な生き物が揺らめいています。若干キモい感じもしますが独創的な主題の作品で驚きました。
近くにはトカゲや虫をモチーフにした作品や、ドームの蜘蛛の巣の花器などもありました。


<光と闇>
印象派以降、新たな光の表現が生まれ絵画意外にも広まって行きました。ここには新たな光と闇の表現の作品が並んでいました。

43 ポール・ゴーギャン 「デ・ポ(大いなる夜) (『10の木版画集』)」
素朴な白黒の版画です。簡素なベッドに横たわる少女と、その後ろにいる3人の人々が描かれていて、この3人はタヒチで暗闇に住むと恐れられた死霊たちのようです。それを恐れてか脇でランプを灯しています。当地の風習や闇への畏れを感じる作品でした。

53 オディロン・ルドン 「彼はまっさかさまに深淵へおちてゆく(『聖アントワーヌの誘惑』第3集17)」
太陽神アポロが日輪の馬車から奈落の底に落ちていく様子を描いた作品です。のけぞって真っ暗なところに落ちて行く様子や、立ち上がっている馬が光りに包まれている表現が神秘的でした。

49 エミール・ガレ 「樹陰」
森の中の木々を表現した花器です。周りは暗めで被せガラスを重ねて森の中の雰囲気を出しています。後ろから光を照らす展示方法となっていて、まるで森の中で木漏れ日が覗いているような感じでした。これは面白い展示方法でした。

58 エミール・ガレ 「蜉蝣文鉢」
黄色っぽい鉢の側面に無数のカゲロウが描かれた作品です。茶色の物や白いもの、シルエットのようなものなどが重なりあって神秘的な雰囲気がありました。

55 オディロン・ルドン 「眼をとじて」 ★こちらで観られます
水面のようなところで男か女か分からない人が目をつぶって頭を出している様子を描いた作品です。水面や周りの光が柔らかく描かれ、幻想的な雰囲気です。どういう意味があるのか分かりませんが静かで夢の中のような感じを受けました。これは、以前オルセー展で観た作品と似ている気がします。
 参考記事:オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想後編(国立新美術館)

78 ドーム兄弟 「蜻蛉に水草文花器」
縦長の花器で、水面と蓮の葉、その上を飛ぶトンボの姿が描かれ、夕焼けに染まった背景と共に美しい色合いです。単純化されていて、どこか日本風の雰囲気もありました。

66 モーリス・ドニ 「それは敬虔な神秘さだった(『愛』4)」
ドニの版画集「愛」のコーナーにあった7点のうちの1点です。これは婚約者マルトへの愛情を綴った作品で、リトグラフで柔らかい色彩となっています。この作品は窓辺で母娘のような2人が向かい合い眼を閉じて触れ合おうとしています。窓から入る光が2人を包み神聖な雰囲気がありました。
 参考記事:モーリス・ドニ -いのちの輝き、子どものいる風景- (損保ジャパン東郷青児美術館)


ということで、アールヌーヴォーが多めの展示で楽しむことができました。静かに見ることが出来たのも良かったです。
この後、常設も楽しんできました。次回はそれをご紹介したいと思います。
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