関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

柳宗悦展-暮らしへの眼差し 【そごう美術館】

前回ご紹介した横浜美術館の展示を観た後、横浜駅に移動してそごう美術館で「没後50年・日本民藝館開館75周年 柳宗悦展-暮らしへの眼差し」を観てきました。

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【展覧名】
 没後50年・日本民藝館開館75周年 柳宗悦展-暮らしへの眼差し

【公式サイト】
 http://www2.sogo-gogo.com/common/museum/archives/11/1022_yanagi/index.html

【会場】そごう美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】横浜駅


【会期】2011年10月22日(土)~12月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて自分のペースで観ることができました。

さて、今回はアーツ・アンド・クラフツ運動の日本版とも言える民藝運動で有名な柳宗悦(やなぎ むねよし)の展覧会となっています。柳宗悦は1936年に日本民藝館を開設し、そこを拠点に四半世紀に渡って生活の美を重んじ仕事の復権を目指す「民藝運動」を進めました。今年は柳宗悦が亡くなって50年、民藝館が開設されて75年というメモリアルイヤーとなっているようで、その活動の様子を展示していました。また、民藝館の3代目館長でありデザイナーである息子の柳宗理(やなぎ むねみち 通称:そうり)も併せて展示されています。いくつかの章に分かれていたので、章ごとにご紹介していこうと思います。(今回は個々の作品ではなく、会場の雰囲気をご紹介していきます)
 参考リンク:日本民藝館の公式サイト


<プロローグ>
柳宗悦は1889年に東京の現在の港区で、海軍少将の柳楢悦の3男として生まれました。学習院で学び白樺派の同人として活躍し、その後は東京帝国大学哲学科に進学しました。卒業後には声楽家の中島兼子と結婚し、妻は物心ともに柳宗悦を支えたそうです。2人の間には4人の子供が生まれ、長男の宗理はデザイナー、二男の宗玄は美術史家、三男は若くして夭折してしまいましたが、四男の宗民は園芸家となっていったようです。

まず最初のこのコーナーには柳宗悦の身の回りの品が並び、眼鏡、ペン置き、文鎮、版木、インク入れなどが置かれていました。木製のものが多いかな。流石に手仕事を感じる品が並んでいました。


<第2章 「白樺」の時代 西洋美術から工芸へ>
柳宗悦は学習院高等学科在学中の1910年に雑誌「白樺」の創刊に参加し、中心メンバーとして活躍しました。宗教・哲学・芸術を精力的に論じて、展覧会の企画や展示に優れた能力を発揮したそうです。この活動を通じて生涯の友となるバーナード・リーチをはじめ、ロダン、梅原龍三郎、岸田劉生らとの交流も深まっていきます。

この辺にはバーナード・リーチのエッチングや皿、宗悦を描いた作品などが展示されています。特に「楽焼ペリカン文皿」というリーチの作品は面白くて、単純化された首の長いペリカン?の絵が描かれ、茶色地に朱色で素朴な感じと装飾的な感じの両面を感じました。

少し進むとデューラーの版画や先日ご紹介したウィリアム・ブレイクの版画(ヨブ記やダンテ関連の作品など)が並んていました。解説によると宗悦は白樺の中では最年少だったようですが、アートディレクター的な役割を果たしていたようで、ウィリアム・ブレイクに傾倒し「美と信仰」の融和を唱えるブレイクの思想に大きな影響を受けたようです。
 参考記事
  ウィリアム・ブレイク版画展 (国立西洋美術館)
  黙示録―デューラー/ルドン (東京藝術大学大学美術館)
  アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然 (国立西洋美術館)

他にも「白樺」の本や書簡、「白樺美術館」の設立趣意書などもありました。この趣意書によって寄付を募り、ゴッホやセザンヌの作品を購入していたようで、いち早く近代西洋美術を日本に紹介していた白樺の活動ぶりが伺えます。…学生時代にこれだけのことができるというのは凄いです。


[朝鮮を想う]
白樺派で西洋美術の吸収・紹介を行なっていた柳宗悦ですが、1914年に転機が訪れます。浅川伯教という人物がロダンの彫刻を見せて貰いに宗悦を訪ねた際に、手土産として持ってきた朝鮮磁器を大変気に入り、それがきっかけで関心が西洋から東洋へ・美術から工芸へと向かって行きます。1916年以降、たびたび朝鮮に渡り、1921年には「朝鮮民族美術展覧会」を開催し、1924年には「朝鮮民族美術館」をソウルに開設したそうです。朝鮮文化の紹介に努め、固有文化の保全に尽力したようで、ここにはそれに関連した作品が並んでいます。

朝鮮の壺や香炉、酒注、箱、筆筒、水滴などが展示されていて、宗悦が朝鮮にのめり込むきっかけとなった「染付秋草文面取壺」も展示されていました。白い八角形の側面に青い染付で秋草が描かれているのですが、質素で地味な感じがするような…。形は面白いですがその良さが私にはイマイチわかりませんでしたw 周りにあった白磁は滑らかな形をしていて日本のものとは違った味わいがあるかな。
少し進むと、「螺鈿花鳥文箱」という梅の木?や鳥たちを描いた螺鈿細工があるのですが、これも日本の蒔絵と比べるとプリミティブというか版画のような感じの絵柄で、ちょっと野暮ったく思ってしまいました。どうも朝鮮の品は私の好みではありません…。

[木喰仏の発見]
暮らしの眼差しは日本にも向けられ、木喰(もくじき)の作った仏像にも注目したようです。仏師ではなく遊行僧である木喰上人の作った奔放な作風で、かつては信仰の対象となっていたのですが、宗悦が再発見した時には忘れ去られつつあったようです。1924年から3年間に渡って日本全国を巡りその全体像を明らかにしていったようで、木喰上人に関する本なども展示されています。
肝心の木喰仏も2体展示されていて、地蔵菩薩像は手を上げて満面の笑みを浮かべていました。彫りが深くリズミカルな感じすらします。これは1924年に甲府郊外で初めて出会った木喰仏のようで、木喰84歳の頃の作品だそうです。これを譲り受けたことで木喰への研究を始めたとのことでした。

なお、この頃の宗悦は関東大震災の混乱を避ける為に京都へ移っていたようで、京都では濱田庄司の紹介により河井寛次郎など後に大事な仲間となる人物とも出会っています。


<第3章 柳宗悦の眼 民藝美の発見と民藝運動>
朝鮮陶磁器、木喰の調査、京都の朝市での下手物(げてもの)蒐集などを契機に民藝の発見へと展開していきます。そして1925年に河井寛次郎、濱田庄司と共に「民藝」という新語を作り、翌年に日本民藝美術館の設立趣意書を発表しました。手仕事の復権や美の生活化を啓発していったようで、ここにはそうした運動に関する品が並んでいました。

[江戸期の民藝]
民藝館の所蔵品は江戸後期のものが最も多いらしく、ここには茶碗、絵馬、看板、燭台、瓶、布地、竹かごなどが並んでいました。結構地味な感じですが、竹かごの編み方などは確かに熟練の手仕事の技を感じる美しい出来栄えです。もう少し進むと、皿、羽織、のれん、お盆、横木なんてものまでありました。まさに生活の中のあらゆる品に美を見出していたようです。
また、この辺には琉球やアイヌの品々も並んでいました。アイヌの玉首飾りや刀下げ帯は独特の雰囲気があります。宗悦は彼らの文化も尊重していた様子がわかりました。

[手仕事の日本]
宗悦は同時代の工芸品にも積極的に眼を向け、優れた手仕事を選び「正しい工芸」の姿を示していくために民藝運動者らと日本全国で調査を行ったそうです。友人の賛同を得て工芸店の経営や、各地での民藝館の設立といった活動も行ったらしく、ここにはそれに関連いした作品が並んでいます。土瓶、わっぱ、手箱、錠前、鉢、徳利など美術品とは言えないものの、単に用をなすだけではない芸術的な要素があるように思えてきました。

また、ここには西館(旧 柳宗悦邸)の応接室セットの再現もありました。木のテーブルと椅子が置かれ、バーナード・リーチの皿や棟方志功の版画なども飾られています。こうして部屋全体を再現していると全体で1つの作品のようで面白いです。


<第4章 柳宗悦の心 美信一如>
宗悦は美と宗教を探求していったようで、宗悦の仏教美学とは新しい美学の集大成であり、民藝美の本質を仏教の他力本願の思想で解き明かせると考えていたようです。また、茶道と仏教は縁が深く、民藝運動の精神とも一如であるという信念があったらしく、ここには茶道具も並んでいました。
茶器や屏風、柄杓、釜など並び、茶碗などは侘びた雰囲気がありました。

[美の法門]
宗悦は1948年に大無量寿経から啓示を受けて「美の法門」を書き上げたそうで、これは宗悦の根本思想を示すものだそうです。この時読んでいたのは「無有好醜(むうこうじゅ)の願」というもので、これは本来は物事に「好醜」(美しいとか醜いということかな?)の無いことを説いているらしく、名も無き職人が作り出す器物が何故、無上の美と結ばれていくのかという命題が氷解したと感じたそうです。…この理屈が私にはちょっと難しくてよくわかってない状態ですがw 

ここには「無有好醜」と書かれた掛け軸や、舎利塔、厨子、来迎図、燭台、錫杖などの仏教関連の品が並んでいました。また、棟方志功の版画を貼りあわせて屏風にした作品や、自らの短文の「こころうた」というものを書いた掛け軸や屏風などもあります。

少し進むと民藝館に関する資料があり、「工藝」の雑誌や棟方志功の版画もありました。

<柳宗悦から柳宗理へ 日本民藝館の歩み>
宗悦が亡くなった後、2代目館長は濱岡庄司が務め、その後に宗悦の長男の宗理が3代目を務め、任期は30年ほどだったそうです。宗理は「消費を煽るようなデザインは本当のデザインではない」と警鐘し、「民藝は美の根源でありそこから物づくりのあるべき心構えを学びとって欲しい」と発言していたようです。

この章の最初にはデンマークのプラスティック製の胡椒入れや朝鮮の白磁の蓋物、イギリスの剪定バサミ、アイスクリーム用のスコップ、セロハンテープなどが柳宗理の解説と共に並んでいました。いずれもシンプルながらも機能と優美さのあるデザインで、遊び心がありました。
また、宗理による「机上の計算や図面、画ではなく手によるデザイン」が基本的なデザインスタイルの品々が並び、キッチン用品や椅子の模型、タンブラーなど素朴ながらも温かみを感じる作品がありました。

最後の一角には民藝館の今までの展示のポスターなどと共に、柳宗理の中でも有名な「バタフライスツール」という椅子や、カウンターテーブル、三角(象脚)スツール、神像、仮面などがならび、風土とアートを感じるような空間となっていました。


ということで、若干地味な作品が中心の展示でしたが、民藝運動という大きな運動の原点を知ることができる展示でした。今後の展示を観る際に大いに参考になると思います。民藝館にも行きたくなる展示でした。
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