関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

生誕130年 松岡映丘-日本の雅-やまと絵復興のトップランナー 【練馬区立美術館】

日付が変わってつい昨日のことですが、練馬区立美術館へ行って「生誕130年 松岡映丘-日本の雅-やまと絵復興のトップランナー」を観てきました。この展示は途中で入れ替えがあったらしく、私が観たのは11/1~11/23までの内容となっていました。

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【展覧名】
 生誕130年 松岡映丘-日本の雅-やまと絵復興のトップランナー

【公式サイト】
 http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/matsuokaeikyu2011.html

【会場】練馬区立美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】中村橋駅

【会期】2011年10月9日(日)~11月23日(祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが、空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回は新興大和絵という近代の大和絵を展開した松岡映丘の生誕130周年を記念した展覧会となっています。松岡映丘は1881年に兵庫県で生まれ、父は儒学者の松岡操、兄弟には医師の松岡鼎(かなえ)、国文学者の井上通泰(やすみち)、民俗学者の柳田國男、海軍軍事であり言語学者でもある松岡静雄という松岡家5兄弟がいる超優秀な家柄となっています。(他の3人の男児は夭折)

 参考リンク:
  松岡操のWikipedia
  松岡鼎のWikipedia
  井上通泰のWikipedia
  柳田國男のWikipedia
  松岡静雄のWikipedia
  松岡映丘のWikipedia

映丘は幼い頃から絵を描いていたようで、上京して14歳で狩野派の橋本雅邦に師事しますが自分に合わないと、住吉派の山名貫義に入門して大和絵の道に入り、東京美術学校の日本画家を首席で卒業したそうです。しばらくは展覧会でも落選続きだったようですが、大和絵の古典に学び、やがて文展で入選すると話題作を次々に世に送り評価されていきました。その後、母校の東京美術学校で指導し、優秀な弟子を育成するなど教育者としても活躍したそうです。
今回はそうした映丘の作品を初期から晩年まで70点と画稿等20点と合わせて紹介するものでした。特に章形式というわけではなかったのですが、詳しくは気に入った作品とともに会場の様子をご紹介しようと思います。

まずは1階の展示です。

松岡映丘 「佐保姫(さおひめ)」
掛け軸で、中国風?の装飾的な模様の衣を着た結い髪の女性を描いた作品です。これは春をつかさどる女神らしく左手で小さな草花を摘んで、顔をやや上向きにして遠くを見るようなポーズとなっています。色合いが淡いのに鮮やかな印象があり、優美で神秘的な雰囲気の女性でした。

松岡映丘 「春光」
掛け軸で、鮮やかな青の水辺に舟を浮かべ、舟から岸にある高い松を見上げている平安貴族のような女性たちを描いた作品です。単純化された平面的な画面で装飾的な雰囲気があり、まさに大和絵といった作風です。色合いの美しさと雅さが非常に好みの作品でした。

この辺には大和絵らしい歴史物の作品が並んでいました。

松岡映丘 「道成寺」
6曲1双の屏風で、中央付近の手前に満開の花を咲かす桜が描かれ、その奥に能や歌舞伎の題材で有名な「道成寺」の登場人物らしき人々が描かれています。右隻には恐らく清姫と思われる笠を持った女性、左隻には釣られた鐘もありその後の物語を感じさせます。華やいだ色彩で、非常に上品な雰囲気でした。この色彩感覚は日本人の琴線に触れるものがあると思います。
 参考記事:安珍・清姫伝説のWikipedia

松岡映丘 「宇治の宮の姫君たち」 ★こちらで観られます
源氏物語の場面を描いた6曲1双の屏風で、右隻は「橋姫」が題材らしく、室内で琴や琵琶を弾く姫君たちと縁側で後ろ向きに座っている薫の姿が描かれています。左隻は「須磨」が題材らしく、満月を見ている光源氏と部屋の戸をそっと開けて見送る女性が描かれています。女性たちの色とりどりの着物が華やかな右隻に対して、左隻は色が少なめで静かな雰囲気があり、対比的な感じでした。何故この2場面を組み合わせたのかな?と思いましたが、それについては分かりませんでした。

この部屋の中央にはスケッチ的な作品が数点ありました。「源頼義」という作品は6歳の頃に描かれた武者絵で、硬くてたどたどしい感じがあるものの6歳とはとても思えない驚きの作品です。
壁には写真があり、生人形をモデルにしていたような写真や、妻の静野が十二単を着ている写真、武士の格好で弓を弾く映丘の写真などが並んでいます。

この辺で2階に移ります。階段付近には兄弟たちの紹介がありました。

松岡映丘 「江口の里」
御簾で仕切られた畳の部屋の中で、盤面に碁石のようなものを置いたゲーム(双六?)に興じる2人の女性が描かれた作品です。2人は向き合い手前の女性は背を向けているのですが、奥の女性は平安時代の女性のような顔立ちで、肌蹴た感じで着物を着て巻物のようなものを持っています。ちょこっと出した手が色っぽくて、どこか知的な雰囲気もありました。御簾越しの表現も良かったです。
なお、江口の君は遊郭の遊女で、西行法師と和歌を応酬した人物です。その正体は普賢菩薩の化身で、よく日本画の題材とされます。

続いては武者絵のコーナーです。先ほどの6歳の頃の作品も武者絵だったように、映丘は幼い頃から武者絵が好きだったそうで、成人してからは実際に本人が鎧を着た写真が結構残っています。どうやらただのコスプレマニアというわけではないようで(私はコスプレマニアだと疑っていますがw)、自らも鎧を作成するなど鎧を研究して、それを絵の中の表現にも活かしているそうです。鎧を着るまでの順序を感じさせる作品もあると紹介されていました。

松岡映丘 「池田の宿」
大きめの掛け軸で、太平記を題材にした作品です。日野俊基が鎌倉幕府に謀反を起こそうとしたものの失敗し、早朝に池田の宿から護送されていく様子を描いています。藁葺きの宿の中から出てくる烏帽子の男性と、庭先で馬をとめる者、籠の脇で控えているものなど出発の光景となっていて、脇には心配そうに見守る人々の姿もあります。屋根の上の木々は空気に霞み、早朝らしさがありつつも寂しげな雰囲気が漂っていました。
この近くにはこの作品の下絵も展示されていました。

松岡映丘 「千草の丘」 ★こちらで観られます
美人が描かれた大きな掛け軸で、今回のポスターにもなっている作品です。モデルは大正から昭和にかけて活躍した女優の水谷八重子という女性で、これは21歳の頃の姿だそうです。ここまでずっと歴史物の作品だったので、近現代風の女性が出てきたのには驚きです。山の上で秋草に囲まれながら一歩踏み出すような姿勢で、やや振り返り気味な様子で描かれ、淡黄色の着物など色合いが爽やかです。(解説によるとこの服の色などは仏画から影響を受けているそうです。)右手が色っぽく、顔も知的で写実的に描かれていました。また、背景の松が小さくて地平線がやけに低く感じるせいか、どこかシュールな雰囲気すらあるように思いました。
この作品が展覧会に出されるとかなり話題になったそうで、東京朝日新聞に映丘とモデルの八重子の写真が載ったそうです。こちらの解説ボードでそれも観ることができました。

松岡映丘 「今昔ものがたり 伊勢図」
醍醐天皇が屏風を作らせた際に、和歌が一句足りないということで、伊勢の御息所に和歌を詠ませることとなり、藤原伊衡(これひら)が伊勢の元に来た様子が描かれている作品です。中央の御簾で区切られた所で伊衡が座り、十二単の女性が接待しているようです。右のほうでは筆を持って和歌を詠む十二単の伊勢の姿も描かれていました。色の取り合わせが美しく、御簾の緑の透明感などが華やかで雅な雰囲気を出していました。

この辺はまた歴史物の作品や下絵などが並んでいました。少し進むと映画劇場やギターを弾く洋服の男性、西洋の街並みを描いた下書き風な作品もあって驚きました。
また、夏目漱石の小説「草枕」に映丘の挿絵が入った巻物「草枕絵巻(復刻)」もあり、そこにはジョン・エヴァレット・ミレイのオフィーリアと同じポーズをした「オフェリア」という絵もありました。(実際、小説ではミレイのオフィーリアについて言及しています)
さらに進むと、自画像や写真、ローマ法王庁からもらったメダル、勲章、印章、印譜なども展示されています。

松岡映丘 「みぐしあげ」
部屋の中を高いところから俯瞰するような伝統的な構図で、平安貴族の女性たちの生活を描いた作品です。ピンクの十二単の女性の黒髪を整えている女性や、周りの女官たちが描かれ、ありこちに鮮やかな布や屏風、御簾などもあります。その色合いが鮮やかで貴族たちの優美さと合っていました。解説によると、この作品は関東大震災で消失したものを再作成したもののようでした。

続いては風景画のコーナーです。映丘はそれまで背景に過ぎなかった大和絵の山水表現を風景画として独立させることに力を注いだらしく、ここにはそうした作品が並びます。

松岡映丘 「さつきまつ浜村」 ★こちらで観られます
高い位置から大きく湾曲する港湾を描いた作品です。陸地は緑豊かで、海岸の町や船の姿なども描かれています。左下の手前には松の生えた崖が描かれているなど、遠近感がありパノラマ的な光景となっていました。色合いなどは確かに大和絵ですが、表現方法は近代の要素を取り入れているように思いました。

この辺には海辺を描いた小さめの作品も数点ありました。

松岡映丘 「大三島」
高い位置から複雑に入り組んだ海と島・半島を描いた風景画です。沢山の船も浮かび、穏やかな雰囲気があります。青い海に緑豊かな島が浮かぶようすはリズミカルで、観ていて心地良い作品でした。

この辺には「明治天皇像」と矢澤弦月の「昭憲皇太后像」が対になるように展示されていました。

松岡映丘 「矢表(やおもて)」 ★こちらで観られます
最後の部屋にあった6曲1双の屏風で、源平合戦の屋島の戦いを描いたものです。左隻の右上には右隻に向かって飛んでいく1本の矢が描かれ、その左下にはその矢を放った武将の部下(子?)が刀を持って走っています。それに対して右隻には、右端に源義経がいて、矢から義経を守るために武将たちが取り巻く様子が描かれています。その集団から1頭の黒馬が立ち上がるように抜け出していて、これは佐藤三郎兵衛嗣信だそうです。嗣信はこの矢に真っ先に向かって盾となったようで、この後絶命してしまいます。そして、その首を取りに左隻の男がやってきて、返り討ちに合うそうです。こうしたストーリーをうまくまとめている上に動きを感じるのは凄いの一言です。特に左隻の構図(矢の位置とか)には驚きました。


ということで、元々好きなジャンルでもあるので見応えのある満足度の高い展覧会となっていました。もうすぐ展示が終わってしまいますので、気になっている方はお早めにどうぞ。置くスペースがないので渋ったけど、図録は買っておくべきだったかも…。
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コメント
No title
こんにちわ!!
 私は10月に行きました。1階に展示してあった「伎芸天女」が良かったです。
 コスプレマニア。。。。同感です。
2011/11/13(日) 15:25 | URL | だまけん #-[ 編集]
Re: No title
>だまけんさん
コメントありがとうございます^^
「伎芸天女」は20代初め頃の芸術の守護神の作品ですね。若い頃から凄い才能を感じます。

以前から何点か本人の写真を観たことがあったのですが、これだけ鎧を着てる写真が揃うと、相当好きだったのがわかりますねw 面白かったです。
2011/11/13(日) 23:36 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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